しんぶん赤旗 2021年12月11日(土)
抜粋でご紹介
(写真キャプション)中絶薬の早期承認などを政府側に求める塚原さん(右端)や参院議員たち=9日、参院議員会館
人工妊娠中絶のための飲み薬が年内に承認申請される見込みとなったことを受け、早期承認や必要な人が安価に利用できる仕組みを求める集会が9日、国会内で開かれました。参加者は政府側に、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を保障する運用や法整備を要請。厚生労働省の担当者は、製薬会社の年内申請の動きを「把握している」と述べ、申請から1年程度で承認されるとの見通しを示しました。
主催は、中絶問題研究家の塚原久美さんが主宰するRHRリテラシー研究所。塚原さんは、承認に当たり価格が不相応に高く設定されたり、入院が必須となり十数万円かかったりする恐れがあるとして、「世界の平均価格は約780円だ。日本でも、必要とするすべての人が使えるようにすべきだ」と強調。厚労省は価格設定への明言を避けました。
塚原さんは、中絶は国際人権規約に位置付けられた基本的人権であり、世界保健機関(WHO)が安全な中絶方法として推奨する中絶薬は82カ国で承認されていると指摘。早期承認と、中絶する女性への社会的なスティグマ(負の烙印=らくいん=)の源泉となっている刑法堕胎罪や母体保護法の配偶者同意要件の廃止、遠隔医療による自己管理中絶の導入、助産師なども中絶薬を扱えるようにする運用を求めました。
日本共産党の倉林明子(党ジェンダー平等委員会責任者)、吉良よし子、立憲民主党の塩村文夏、田島麻衣子、寺田静、社民党の福島瑞穂の各参院議員が参加しました。
ネット署名も始まる
人工妊娠中絶のための飲み薬が年内に国内で初めて承認申請される見込みとなるなか、必要とするすべての人に届く方策を求めるインターネット署名が9日から始まりました。中絶の配偶者同意要件の撤廃を求めて活動する梶谷風音さんら4人が呼びかける「中絶における女性の負担を減らしてください!」の署名で、公開から1日で200人余が賛同しています。署名は、「海外では中絶は女性の心とからだを守るためのあたりまえの医療」だと指摘。女性の健康と権利を尊重するため、中絶薬の早期承認や適正価格、刑法堕胎罪と母体保護法の配偶者同意要件の撤廃、オンライン処方・自宅服用の解禁、中絶薬を扱える職種の拡大の5点を求めています。
署名を呼びかける梶谷さんとRHRリテラシー研究所のメンバーは、刑法や母体保護法、国内で主流の掻爬(そうは)法による手術、高額な手術費用など、女性に過度の負担を強い、中絶への障壁となっている日本の遅れを指摘。「すべての女性が心身の負担を負わずに、自分の人生や身体をコントロールし、安心して生きられる国にしよう」と呼びかけています。
梶谷さんは、薬の承認の段階で、服用時に医師の診察や入院が必須か否かや価格が定められ、「一度決まると覆すのが難しくなる」と指摘。「必要な人が入手しやすい環境や法整備がなければ、薬が承認されても選択肢が増えることにならない。いま大きく声を上げ、世界標準の人権、運用、価格を実現したい」と話しています。
署名は、インターネットサイトchange.orgでできます。