リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

S40年までの国会議事録検索「中絶」「胎児」「生命」

第8回国会 参議院 本会議 第6号 昭和25年7月18日
009 奥むめお
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奥むめお君 自分の生活に照し合せて政治を批判し、自分の生活に直結するよい政治の在り方を求めておりますところの多くの消費者の立場から、私は日常の問題について御質問申上げたいのでございます。
……
 尚、厚生大臣に併せてお伺いしたいのは、妊娠中絶を少くともここ三年間、希望する者には自由に行えるように優生保護法を改めて欲しいということです。日本の人口増加率の大きいことが世界の関心を深くしております。政府はこの狹められた国土に溢れる程の人口を持つておる日本について苦慮せられておることと思うのでありますが、国民自身においても、より一層自分の問題として切実にこれを考え、切実に苦労しておるのでございます。できることなら適当な数の子供を適当な期間をおいて生みたいのです。併しそれの正しい方法は一体どうしたらいいのだ。まだ宣伝も啓蒙も行き亘つておりませんから、ほんの一部の少数知識階級の手にこれが握られておるだけで、一番産兒制限を必要とするところの貧しい或いは無知な階層の人々には殆んど知られていないし、行うすべも知られていないのでございます。私共は厚生省が避妊薬や避妊の器具の許可制度をとつていらつしやることに大変期待を持ちました。併しながら去年あたりこれらは大きな新聞紙、雑誌の広告によりまして売出されて、非常に売れて非常に儲かつたらしい*1のでございますが、この頃はとんと広告も見られない。売上げも非常に減つた。何故でございましようか。これは私はそれらの器具や薬が避妊に効かないというのではないのです。効かないものもあるでしよう。又惡徳な者の手によつて出されたものもございましよう。併しそれよりも、その使い方を知らない。その効用を理解していないのです。これに対しましてはもつと国のすみずみにまで避妊の正しい方法を教えなければならないから、大急ぎでこれのために力を注がねばならん。併しながらそれを待つというのには、現実の差追つた生活の不安でございます。この生活の不安を幾分でも緩和するために、私はせめてここ三年間、日本の人口問題緩和にも多少はなるでしよう。又かわいい子供の出生を悲劇に終らせないためにも役つでしよう。ともかくここ三年間を限つて妊娠中絶の手術を広く開放して、自由にできるように優生保護法を改正して行きたいと思うのでございますが、厚生大臣は如何ようにお考えになりますか。無論これは営利を目的とする者に任せることはできないのでございます。


015 黒川武雄
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国務大臣(黒川武雄君) お答えいたします。

 第二問にお答えいたします。生活困窮者に対して経済的理由から人工妊娠中絶を許すかどうかということは、昨年第五国会におきまして、優生保護法の一部改正のとき大いに論議されたのでございますが、結局單に貧困という理由から胎兒の生命を絶つということは許されぬという理由で、母体の健康を著しく害する虞れある場合にのみ認められることになつたのでございます。その事情は今日におきましても変つていないのでありまして、單に経済的理由のみで中絶を認めることは適当でないと考えるものでございます。政府といたしましては、全国に優生結婚相談所を設けまして、受胎調節の正しい知識の普及により、この問題の解決に努める所存でございます。(拍手)

第34回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 昭和35年3月29日

030 中原武夫
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○法制局参事(中原武夫君) 諸外国と日本との比較で御質問がありましたので、一言御説明申し上げます。この第十四条の規定は、刑法の堕胎罪の規定の条件の緩和の規定でございます。この十四条で緩和してあります条件は、大きく分けて、身体的な理由によるもの、優生学的な立場からのもの、社会的な立場から条件を緩和したもの、それから経済的な理由に基づいて条件を緩和したもの、大体この四つに分かれるのであります。そのうちで一番問題になっておりますのが、経済的な理由によって緩和した点であります。諸外国においても優生学的な理由とか、社会的な理由とか、身体的な理由によって堕胎罪の条件を緩和したのは非常に多くの国が緩和しております。ただ、経済的な理由によって中絶を認めるということは日本だけであります。ソ連が大体日本と同じ程度に広く緩和しているようでありますが、詳しく存じません。なぜそういうことにしたかと申しますと、堕胎罪に対する国民の考え方、そういうことに根本的な理由があると承知しております。と申しますのは、堕胎罪の規定というものは実は教会法が作り出した規定であります。胎児は神様が与えたものである。で胎児になればもう生命が宿るのであるからそれを殺すことは殺人と同じだという考え方の上に立つ教会法が作り出した理論であります。そのことを裏返して言いますと、この堕胎罪をささえている精神的な基盤はキリスト教精神なのであります。日本では、明治十五年のフランス刑法にならった旧刑法を作りましたときに、堕胎罪の規定を一取り入れました。しかし、その堕胎罪の規定をささえる精神的な支柱であるキリスト教の精神は日本は入っておらなかったわけであります。そこで堕胎罪の規定に対する国民の考え方というものが、西洋と違って日本には多少ゆるやかなものがあります。そうなりますと、この堕胎罪の規定をささえるものは何かといいますと、主として社会的な条件であろうと考えるのであります。子供を産んで子供を育てるということは、これは母性の本能でありますから、だれもそれを断ちたいという者はありません。しかし、どうしても自分が生きていくためにその胎児の生命を断たなければ——生命といってよいかどうか——ともかく胎児をおろさなければならないような事態がきたときに、西洋では、——キリスト教精神のささえのあるところでは、精神的のささえと社会的なささえと両方がささえておるわけです。ところが、日本では、片一方の宗教的な支柱が弱いので、社会的な条件が非常に悪くなってきたときには、ある程度これを許しておきませんと、ちょうど食糧管理法のようなことになるわけであります。そういう日本の国民感情というものが西洋と違った特異な形を持っていることが、この経済的理由によって条件を緩和する条項を取り入れざるを得なかった基盤の一であると私は承知しております。
031 小柳勇
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○小柳勇君 ただいまの意見については若干私は問題があると思います。討論すれば相当長くなると思いまするが、ただ、その堕胎罪がキリスト教精神だけではない、私はそのように感じます。また、討論すれば時間が相当かかりましょうが、優生保護法の全体的な問題でありませんので、きょうは私は意見は出しません。今手続的な費用負担の問題とそれからこの薬品販売期限、販売の延期問題でありますが、優生保護法の全体的なものが、今部長が言われたようなものであるならば、私は根本的にこれを検討し直さなければならぬと思う。それではあまりにこの優生保護法の精神自体が物質化しておるものと私は理解しております。この問題は私は討論を省略いたして最後に一つだけ質問いたしましょう。
 これは延期、販売の期間を五年にお切りになりましたのは、谷口先生おっしゃいましたように、現在受胎調節の国民的なパーセントが四二・五%であるからもう少しこれを前進さすべきである、それでは五年くらいでよかろうという意味でございましょうか。何か別に五年に期限をお切りになりましたところに理由がありましょうか。その点だけお聞きしまして私質問を終わります。
032 谷口弥三郎
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○谷口弥三郎君 実は前回も、まあ五年ぐらいたてばよほど情勢が変わるだろうというので、五年間というので第一回にこの受胎調節実地指導員に対する販売を許可してもらったのであります。それで、今度も五年ぐらい、そのときの情勢によりましょうから五年ぐらいに切っておいて、そうしてまた延期してもらった方がよかろうというふうに考えただけでございます。
033 藤田藤太郎
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○藤田藤太郎君 私は厚生省にお聞きしたいのです。今中原部長が言われたような歴史が優生保護の歴史の概念、これは全部と言えるかどうか知りませんけれども、非常に問題点をつかれていると思うのです。厚生省は行政をおやりになるのだから、なぜそういう問題点を研究されたり、つまびらかにしてさっきからお答えにならないかということを私は不思議に思うわけです。これが一つです。それは、私はなぜそういうことを言うかというと、やはり四号の経済的な理由によって法で保護する。これはお医者さんの玄関に行きますと、何でもかんでも、それじゃまあ都合が悪いと言えば自由に処理をするという格好じゃないか。だから、今日妊娠中絶二百万とか二百五十万とか言われているのは、私はそこに原因があるのじゃないかと、こう思うのです。この改正案はそこに触れていませんから問題にしませんけれども。そういう点、厚生省としては少しその法の番人として、行政をやる者として怠慢じゃないか。私はそういう工合に、十四条の四号の経済的な面からという問題についてですね、今外国でもそういう例がないと私は思うのです。政治をやる者としては、何といっても子供をですね、他の理由なら別として、経済的理由で生めない。それは処理してよろしいということじゃ、あまりにも政治のうまみといいますか、政治に対する不信感というものを、貧困者はのたれ死にしていいということにつながってくると、私はそう思うので、厚生省はそういう面から一々検討されて、この問題を厚生行政の面にどう生かしていくかということを私は検討されるべき問題じゃないか。私はその一言だけ意見を申し上げたい。これは大臣も見えておりませんから何ですけれども、担当者どう考えているか、ちょっと聞かして下さい。勉強不足だ。
034 大山正
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○政府委員(大山正君) 児童局といたしまして、家族計画、受胎調節を所管してただいまその推進をはかっておるわけでございますが、お話のように、人工妊娠中絶によるこのいろいろな弊害、特に母性の健康上の弊害というようなものも非常に大きく感ぜられますので、私どもはあくまでこの人工妊娠中絶を減らしたい。その方法といたしまして受胎調節の方法で家族計画を推進しなければいけないというような観点から、特にこの受胎調節、家族計画の面を推進するように努力しておるような次第でございます。
035 藤田藤太郎
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○藤田藤太郎君 ちょっと、私の言っているのは少し理由が違うのですよ。経済的な面から妊娠中絶をしてよろしいというなら、お医者さんは、妊娠中絶して下さいと言われれば適当におやりになると思うのです。結局生活が苦しいから子供を産むとか産まぬとかいう理由になってきましょうけれども、そういう数が三百万も二百五十万も妊娠中絶があるといわれている今日において、母体を守るということも必要だ、しかし、そういう経済的な面は国の施政でそういうものを守ってあげるというのが本来の政治の姿なんです。こう私は考えるから、そういう面の検討を厚生行政としてはなぜおやりにならないかということを言っているわけです。母体を保護するのは当然のことです。しかし、経済的な面、理由からその子供を産めないというような人を、自由に妊娠中絶してよろしいということは、家族計画の問題とは違うと思うのですね。金持ちの子供は優生児であり、貧乏人の子供は優生児でないというものにも、理屈を言えばつながってくるのだから、そういう問題は人口問題の計画の問題との関連においてももっと公平でなくてはいけませんし、それで経済面が足らなければ、政治の面でその経済の援助をしてあげる、こういうところに理論の中心があるのじゃないかということを言っているのです。そういう点では行政が、少し皆さん方のこれに対する研究が足らないのじゃないかということを言っているのです。今のあなたのお答えとは違うのです。それで、御意見があったら……、なければよろしい、大臣が来たとき聞きます。
036 高田正巳
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○政府委員(高田正巳君) 優生保護法の所管は私ではございませんけれども、しかし、今御指摘の問題は、私どもの方にも関連がある問題でございます。広く、何と申しますか、国民の経済生活と関連のあるものですので、実はこれは非常に貧困な方々につきましての生活保護法というような制度の中には、御存じのように、妊産婦加算とか何とかいうようなこともございますけれども、しかし、今指摘されましたような問題は、もう少し広範な問題でございまして、十分問題がある規定のように私は考えます。従いまして、私ども厚生省といたしまして、今後十分検討をして参りたい、かように考えるわけであります。
037 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記を落として下さい
   〔速記中止〕
038 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) では速記を始めて下さい。
 他に御発言はございませんか。——御発言もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
039 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。なお、修正の御意見がもしあれば、討論中にお述べを願いたい、かように思うわけであります。
 御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
040 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。
 それでは優生保護法の一部を改正する法律案につきまして採決いたします。
 本案を原案の通り可決することに賛成の方は挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
041 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 議長に提出する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
042 加藤武徳
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○委員長(加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。

第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 昭和35年4月13日
036 滝井義高
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○滝井委員 最後に、提案者の谷口先生に一言お伺いをしておきたいのですが、いろいろ政府当局からの御答弁はお聞きの通りでございます。谷口先生は与党の中の重鎮でございますが、こういう政策は民族の一番根本的な問題であるにもかかわらず、案外盲点になっておる。そして予算も御承知の通り四千七百万程度しかつけられない。その割にこれは日本の国民の半数を占める御婦人の間では相当の関心を持たれておるものだ。しかし予算はついていない、こういうことでございます。そこでこの提案者としては、今後五カ年間も薬事法の特例を法律の上で実現をし、そしてあわせてその実地指導というようなものを普及していこう、こういう心がまえでございます。従ってこれはどうですか、来年は、提案者としても、与党の重鎮の谷口先生としても、御責任をもって一つ政府を督励して、この政策がほんとうに国民大衆の中に堅実に、しかもヒューマニズムにあふれた民主的な方法で実現ができるように御確約ができるかどうか、これを一つ提案者として意見を述べていただきたいと思うのです。
037 谷口弥三郎
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○谷口参議院議員 ただいま滝井委員からのお話は、私どもがかねがね思っておるようなことでございまして、この受胎調節実地指導員に渡す金などは、もっとどうしてもふやしていただかなければならぬと思っておりますが、まあいろいろな事情で本年はこの程度にきまったのでございますけれども、明年度はぜひこれを拡大してもらって、十分その目的を達するようにしたいと存じております。
 また先刻お話しの精薄児童などにいたしましても、民族の逆淘汰方面を——特に私どもも母性保護の上からも民族の優秀化の上からも、ぜひそれを実現したいと思いますし、ことに精薄児は御承知のように分娩時などにおいての難産が非常な原因になっておりますので、妊娠の間あるいは分娩時の方面にも国がもっと指導してもらいたいと思って、この前の予算のときにもいろ
 いろお願いもしたのですが、どうも微力で、先生のおっしゃるようにそう重鎮でもないものですから、思うように
 いかずにおりますが、ぜひともそういう方面ももっと十分にやって、民族の優秀化、あるいは逆淘汰などの起こらぬように大いにやりたいと存じております。それは私の及ぶ限りにおいてやりたいと思っております。
038 滝井義高
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○滝井委員 それからもう一つ政府の方にお願いをいたしたいのは、やはり妊娠中絶あるいは受胎調節というようなものには、犯罪的なニュアンスが伴いがちでございます。従ってそういう悪い血に対する是正と申しますか抑制と申しますか、そういう方面に対する注意という点はやはり怠ってはならないと思うのです。一方非常にいい面もありますが、暗い面も中絶や家族計画というものには伴いがちでございます。そういう点に対する配慮というかPRと申しますか、そういう点をぜひ政府は心がけていただきたいと思いますが、そういう方面に対して何か政府の方で考えておることがあれば、この機会に御説明願っておきたいと思います。
039 尾村偉久
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○尾村政府委員 これにからまる犯罪的ニュアンスというと、私の方の感じでは二つあるかと思います。一つは、いろいろな犯罪等に関連する関係者がこういうようなものに非常に——ことに先ほどの人工妊娠中絶の場合にはやみの問題、こういうような当事者自身をめぐる問題、それからもう一つは、今度別個に、本人あるいは家族あるいはこれに関連する医師等に、恐喝その他これを種にする犯罪が起こりやすい。大体今までこういうような二つの問題をわれわれ聞いておるのでございますが、このいずれにいたしましても、こういうふうな非常に必死なことを当事者としては行なう場合に、そう陥らざるを得なかったような原因ないしはこれを中心にしていろいろな犯罪が起こるということについては、これを探知するのはやはり医師を初めこれの届出等を受けて保護に当たる保健所その他の衛生行政の担当者ないしは福祉関係のものと思いますので、こういうようなチャンスをつかまえまして、その防止には十分注意しなければいかぬと思いますので、一そうその点につきましては注意を喚起いたしたいと存じます。
040 滝井義高
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○滝井委員 以上で終わります。
041 八田貞義
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○八田委員長代理 本島百合子君。
042 本島百合子
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○本島委員 ただいま滝井委員から相当詳しく御質問がありましたので、それとダブらないように御質問いたしたいと思います。
 第一点は、優生保護にかかりますとき非常に日にちがかかるのです。これは審査会があって、それで決定されるということになりますので、こういう点で妊娠中絶をしようということを決心されるのが非常におそいようです。大体貧しい家庭の方々でも、あるいは病弱者の場合でも、どうしてもいかぬからということで、それでおそくなって申請される人が多い。申請されてからその決定までまた日にちがかかる。そんなことをやっていられない。お医者さんなんかからも、月がたって参りますと中絶する場合に非常に置くなるから、こういう注意があったりするものですから、どうしても借金してでもやってしまうというような方がたくさんあるわけです。こういう点については、厚生省としては、一体申請されてからどのくらいでこの手術が行なわれていたというふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
043 尾村偉久
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○尾村政府委員 ただいまのお話で、優生保護の中で、いわゆる結紮その他を行ないまして妊娠をしないようにいたします優生手術、それから先ほどから百何万ということで問題になりました妊娠してからの人工流産と、この二つございまして、いずれも手術的行為でございますが、手術という方は前者の妊娠しないようにする手術でございます。この方はいろいろ認定いたしまして、条件がそろっておる場合にやる場合と、それから遺伝性疾患その他で、これは本人の納得なしでも、民族優生の立場で審査会にかけまして、これが認定して強制的にやる、こういうことでございまして、人工妊娠中絶の方は現在、申請いたしまして認定を受けるというようなことはございません。これはあくまで条件がそろっておりますれば、指定を受けた——指定も都道府県がいたすのではなくて、地方の医師会がこの人工妊娠中絶に当たる医師の適任者を選定いたしまして、そこで条件に合っておるものならば医師が行なうのであります。従いまして行政機関との関連で認定を受けるまでの期間が云々という場合には、今の強制優生手術、先ほど年間千何件と申しました、これだけでございます。これは相当慎重にいたします。といいますのが、本人の意思に反しまして国の立場から強制的にもう妊娠しないようにする手術でございますから、これはむしろ家系の調査から既往歴その他厳重にいたしますので、これの手術がおくれたのでという不満の非難は今までのところほとんどございません。むしろ、受けるのが不適当だというので、中央優生審査会等へ受けないための再審査の要求等もまれに起こります。以上のような状況でございます。
044 本島百合子
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○本島委員 質問がちょっとはっきりしませんで失礼しましたが、前者の場合には、今言われたように調査が非常に厳重で、受けたくないからという不満もあるようですが、その場合にはこういうことが起こるのです。本人はそう言っても、むしろほかの人たちからすれば何としてもしておかぬとあと生まれてくる子供がもうどうにもなるまいというようなことで本人と家族との間に摩擦が起こるということもあるようです。けれども後者の場合、今おっしゃる通りですが、そうするとこの改正の一点にかかってくるのが——私どものところに相談に来る人はみんな、役所に頼むとおそくてどうにもならない、それでこの線で、たとえば私どものところですぐそれぞれに注意をいたします。そして二十日以内におかげさまでと言ってくる人はあまりないようです。一カ月越して来る方が多いのです。それはどこに原因があるのでしょうか。私どものところへ来る人の話では、そういうところに頼めばおそくなってみすみす、今二カ月か三カ月になるかという——人工流産の場合ですよ——そんな程度だと思っていたのに、役所に頼んだばかりにこれが月を越して、四カ月になってきました、五カ月になってきました、こう言ってくるのですが、これはどこに欠陥があるのでしょうか。
045 尾村偉久
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○尾村政府委員 ただいまのは、先ほど申しましたように、役所に届けたりあるいは認定を受けなければいかぬということになっておりませんので、医師だけの問題でございますが、もしそういうことがあるとすれば、それは役所といいますよりも、たとえば生活保護階層で費用の問題、それの費用の出しどころの、医療券をもらうとかそういうような福祉事務所の問題ではないかと思います。この点、私の管轄でございませんのでつまびらかにしておりませんので、御了承を願いたいと思います。
046 本島百合子
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○本島委員 わかりました。こういう問題については、そういう点もやはりお調べいただいて、今後そういうことがあまりないようにしていただきたいということが一つです。
 それから先ほど滝井委員も指摘されましたように、ボーダーライン層は一年間に三百円とおっしゃるのですが、現実に末端でやっておるところを見ておりますと、たとえば薬品、器具をいただきましても、人によって度数は違うでしょうけれども、それでも絶対足りないのです。そういたしますと幾ら指導いたしましても、それを買うことができない。それじゃ抑制できるかというと、これまたできないことですから、ここでいつも食い違って、最も受胎調節をしなければならない階層というものができないできておるのです。それじゃ全然指導されていないのかというと、指導は受けておるのです。受けておるが、今言ったように、こういうところにひっかかってくるわけなんです。ですからこれは年間でなしに、月にそのくらいもらえればどうにかいくのじゃないか、こう言っておるのです。ですからこの点はことしの予算の中で、追加をとってでもやっていただきたいということです。
 それからもう一つは、特別指定地区をはずすとおっしゃったのですが、今までの家族計画等の運動を見てみますと、行き詰まっておるということが私どもによくわかるのです。ということは、しなければならない階層のところではできない、そして中産階級的なところで、少し子供さんでもふやしてもらいたいというようなところは割合に着実にやっていらっしゃる。これが現状だろうと思うのです。そうすると、私どもがどこの都道府県へ行って聞いてみましても、それじゃ一体どうすればうまくいきますかと聞くんですね。そうすると現在のように、昔産婆さんでこういう指導員になられた方がテクシーや自転車でてくてくやっていらっしゃる、これだけではもう手に負えないということです。私は東京都におりますとき、キッチン・カーみたいな料理の車はある、あるいは移動図書館の車はある、こういうものはそろっておりますが、この受胎調節の指導という面においてのそういう車を使っておるところはほとんどないのです。私どもは、指導員というような方々があるからうまくいっておるだろう、こまかく回られているからいいだろう、こういうふうに考えておりますが、東京都の場合でも一カ月に千円、そして百人見当の指導といわれると足が出ちゃうのです。ほんとうに一生懸命にまじめにやられる方に聞きますと、これはみんな足が出ちゃうのです。ですからこれがうまくいかないという原因がここにも出てくるわけです。
 それから最も必要な階層、こういうところ見つけていくということがなかなか、また人権侵害ということを言われるわけです。積極的にこちらが行くとしかられる、向こうから来るのを待つというと、保健所あたりにもちゃんと相談所がございますけれども、なかなかどこの保健所でも一ぱいになっておるというところはないようです。なぜそうなるのかというと、人間心理で、そういうところへ行って相談すればいいんだけれども、行くことがなかなかむずかしいし、調節よりも妊娠してしまってから片づけた方が早いんだ、これが一般の風潮になっておるから、やみの中絶が多くなってくる、こういう理屈にもなってくるわけです。ですから今回の予算で削られたなんということは、これは私ども削られちゃ困るということでいろいろお話し申し上げたはずでございますが、積極的にやっていくという意欲で考えていったらばどうすればいいか。その点で私どもの経験からすれば都道府県に車くらい用意をして、そしてこちらから出向いていって車の中ででも相談を受けてやってやるというような積極性がなければ、もうある程度行き詰まっているというのが現状だと思う。こういう点をどういうふうにお考えになっておるか。
047 大山正
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○大山政府委員 ただいま受胎調節の実際の指導面につきましていろいろ貴重な御意見をお述べになったのでございますが、受胎調節の予算につきましては確かにまだ不十分でございまして、先ほど申し上げました生活保護階層の年間一人当たり三百円といいますのは、五日に一ぺんというような度数の計算になるかと思うのでございますが、これは平均でございますので、それぞれの個人的な事情によりまして多少これの金額を動かして実施するということになるのでございます。もちろん十分でござませんので、今後ともこの面の増額につきまして努力したいと考えております。
 それから特別地区につきましては、先ほど申し上げましたように特に地区を限らずに、一般的に全国を通じまして特に低所得階層につきまして施策の重点を向けていきたい、こう考えております。その機会に、何か巡回する車でも用意するかということでございますが、事柄の性質からいいまして、あまり大っぴらに訪問するというわけにもいかない面もあろうかと思いますので、その点は一つ十分検討するようにいたしたい、かように考えております。
048 本島百合子
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○本島委員 今の考え方が、やみの中絶がはやるもとじゃないでしょうか。大っぴらにとおっしゃるけれども、法律相談でも何でも巡回自動車でやっているわけです。やはり個人の秘密にわたるものが多いわけですけれども、割合来ているのです。こういう問題ですと、自分が保健所まで行くといっても、保健所までの距離が遠い地域がある、なかなか行けるものじゃない。こちらから出向いていってよく指導する、そのときにはもちろん指導員の方も一緒に来てくれるわけですから、こっちから出向いていくと案外来るものなんです。これは女の人の一つの心理かもしれませんが、自分一人だと、あの人はああいう相談をしたとか、こういうことがあったというようなことが案外漏れるのですが、大ぜいの中で指導を受けるということは割合なさるのです。ですからその点は男の人と女の人の感じの食い違いだと思うのですが、やはり積極的にそういう地域に出向いていく。そうして、民生委員さんもいらっしゃるし指導員さんもいらっしゃるのですから、たとえばこういう家庭へは主として行かなければいかぬだろうという家はわかっているわけです。そういうところに力をかけてやっていくという積極性がなければ、この受胎調節の徹底ということはできない。
 それからもう一つは、家族計画協会というものが全国的に組織されていると思うのですが、これは全国的にでき上がっておりましょうか。
049 大山正
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○大山政府委員 ただいま御質問になりました家族計画に関する団体は、全国を対象とするものとしまして家族計画連盟ができ上がっておりますが、まだ各県にそれの支部ができるという段階にまでいっておらないようでございます。各県にそれぞれ独自の団体が若干ありますが、まだ各県にすべてそういうものがあるという段階には至っておりません
050 本島百合子
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○本島委員 会に対する補助金というものがあるはずなんですが、それを見てみますと非常にきついものがつけられておるようですね。たとえば工場地帯にどのくらいの従業員があって、その従業員数のところで何回やったとか、それからたとえば小さい中小企業ならば、これくらいの従業員のあるところで何回くらいやったか、そういうような形で補助金が出るという形をとっていらっしゃると思うのですが、そうですか。
051 大山正
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○大山政府委員 現在団体補助につきましては、中小企業に対する受胎調節の指導ということを団体にお願いするという意味で補助金を出すことにいたしまして、現在二団体に出しておるのでございますが、今後さらに全国的な団体、その他のこの方向の相当指導力のある団体もできるようになりますれば、その実績等十分考えまして、その補助金の配付につきましては十分検討して参りたい、かように考えております。
052 本島百合子
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○本島委員 その団体名はどういうところでしょう。
053 大山正
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○大山政府委員 現在補助金を支出しております団体は、社団法人家庭生活研究会と社団法人東京都家族計画協会、この二つであります。
054 本島百合子
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○本島委員 この点ですけれども、役所仕事といいましょうか、いつでもワクをはめて、そのワクにはまってこないとやってやらないぞ、こういうのですね。保健所あたりもやっているのに実績が上がってこない。そして最もやらなければならない階層のところには、こういう受胎調節の正しい教育が行なわれていない。そしてその力が足りないからこういう民間団体に多少の補助金を出してやらそうとなさるわけですね。こういう場合に実績とおっしゃるけれども、むしろ私は力が足りないのであれば、地方の団体でも受胎調節なんかを指導していらっしゃるというところはまじめな団体が多いのです。それで力が足りないで依頼されるのですから、そういう団体をもう少し積極的に皆さん方の方で見つけて、一つの力をかりるというふうになさったらどうかと思うのです。ということは、基準をきめて、何名以上の工場でこれこれやっていなければ、それは出さないんだ、こう言われるのです。そうすると実際問題として、そういう小さいところの中小企業団体あたりでも、そういう方を呼んで指導を受けてなんということになってきますと、工員さんなら別ですが、そうでない、その家族の奥さんなら奥さん、こういうものを指導していくわけでしょう。なかなかうまくいかないのです。ですから私は、この五カ年間器具の販売について延ばされるということになれば、当然この五カ年というものを目途としてもう少し積極的にやって、ある程度の普及ができてしまえば手を抜いてもいいのじゃないか。ところが今日もうすでに予算上では減額されてきておる。それはその減額されたものが消化しきれなかったからだ。消化し切れなかった理由はどこにあるかというと、さっき言ったようにワクがある、たとえば一年間に三百円というようなワクがあるから、こういう金にひっかかってくる。そして回数を先ほど言われたように五回、こういうことを言われているのだけれども、お前たちは貧しいのだからそっちの方も節制して五日目になんて、こういうことがすでにもう人間性を無視しているのです。ですから、そういう階層は、いつもそういうことを指導を受けながら、またできちゃいました、できちゃいました、こうなってしまうのでしょう。こういうことが仏作って魂入れずというところにひっかかってくるのだと思う。こういうところで、私はむしろ今日ある予算が不足ならばあとで追加してやるから、そういうところを徹底的に指導していけ、そういう方へもどんどん渡してやる、そういうことになってくれば楽なんです。またそういうふうにしなければボーター・ライン層並びに生活困窮者の場合はどうしても、そういうはずではなかったが、ということが出てくるわけです。ですから、その点は、私は本年度から追加予算をとってでもやってやるというような意欲を持っていただいて、正しい受胎調節の方向へ方向づけていただきたい。それが一点。
 それからもう一つは、受胎調節を受けない——先ほど犯罪的な面で言われたのですが、これは、私は犯罪の面ばかりで見るべきではないと思うのです。あくまでも子供を産みたいというのは、女でも男でも本能で、特に女の場合は、育てられるものなら育てたいと思っているわけなんです。ところが、それが育てられない事情にあるから中絶するわけですね。やみの中絶が非常に多いと言われますが、そのことを責める前に、大体薬の中でインチキ広告が非常にたくさん出ていると思うのです。この売薬でもっておりるのだという考え方が、ある新聞や何か雑誌など見ていると出てくるわけです。こういう点について、どういう啓蒙をされてきたか。それからお医者さんの中でも、正規のお医者さんにかかればいいものを、そういうお医者さんでは割合に費用がかかるというので、変なやみの医者というのでしょうか、そういうところにひっかかっていく人もあるわけです。先ほどもちょっと滝井先生も言っていらっしゃったのですが、こういう点の、何といいますか、罰則規定とか、そういうものはないのですか。
055 大山正
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○大山政府委員 ただいまの御質問のうち、前段の受胎調節に関して私からお答え申し上げます。受胎調節予算が、今日まで必ずしも十分消化されて実績が上がっておらないという点はまことに遺憾でありまして、私ども本年度から、先ほど申し上げましたように、特別地区というようなことでなしに全国的にやるということ、それから実地指導員に対する手当につきましても、従来単に受け持ちが何人であるということで出ておったのでございますが、むしろこれを実際に指導いたしました件数に応じて払うというような形にいたしまして、できるだけ実績を上げて参りたい、かように考えておるのでございますが、今後ともこのやり方につきましては一つ十分検討いたしまして、実効の上がるような方策を考えて参りたい、かように考えております。
056 尾村偉久
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○尾村政府委員 ただいまの人口妊娠中絶、優生保護法によらざるいわゆるやみの中絶でございますが、これは刑法による堕胎罪の罰則適用がございます。
057 本島百合子
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○本島委員 私の聞いたのは堕胎罪とかなんとかいうことではなしに、そういう医師会なら医師会に対して、皆さんの方で警告をしていただく。値段もある程度の協定があると思うのですが、医者によっては非常に高いものをとっているのです。それからお医者さんによっては実費程度だというのもあるわけです。そういう点で警告を発せられたことがあるかどうか。それから売薬については、これは売薬がこういうもので悪かったという実証が上がった場合には、それを売った者、また製造した者に対する罰則があると思いますが、そういうのではなくて、そういうものを使ってはいけないのだ、そういうものはだめなんだというようなPRなんかをされたようなことがあるかどうか、これを聞いているのです。
058 尾村偉久
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○尾村政府委員 具体的に、こういう事実が多いからということで、それを取り上げて医師会に警告したことは、具体的な例はございませんが、ただこれは医師会の倫理といたしましても、せっかく正しいものであるならば、指定を受けて堂々とできるように優生保護法はできておるのでございますから、それ以外のやみの行為等はしないようにするというのは、医師会の方でも各地いずれも十分注意されているごとでありますので、特段に行政庁からそういうことを指摘してということは——ふだんからお互い話し合っていることであると思いますが、さような形でいく。ことにただいま慣行料金という問題がありましたが、料金の問題は、健康保健法、社会保険の診療報酬の規定で、人工流産も正規にちゃんと載っているわけでございまして、これはほかのいろいろなやみ料金ということが全然絶無ではないと思いますけれども、この点は行政庁としてなかなか介入しにくい問題であります。しかしこれは一番大事な点でございますので、医師会あるいは医療従事者の団体でも関心を持たれてやっておられることでございますので、この点は特段に通知を出すというようなことはただいまのところ不適当かと存じております。それから国民に対する、今のあまりきき目のありっこない、人工流産が起こるというような内服薬の問題でございますが、これはいわゆる誇大広告ということで、薬務局が所管しております薬事法である程度規制できるわけでございますが、しかし幾ら広告を規制しましても、国民の力で、昔からのいろいろな風習がございますが、そういうことではいけませんので、正しい受胎調節、それからいたずらな人工妊娠中絶が行なわれないようにするということは、家族計画の一環として、PRの重要な内容として一そう努力しなければいかぬ、かように存じております。
059 本島百合子
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○本島委員 もう一点、やみの問題でお尋ねしますが、そういうやみ中絶をやらなければならないという人自身も、これはせつないことだろうと思うのです。ですからそういうことのないように、もう少し積極的にPR活動をしていただいて、母体を保護してやっていただきたいということが私どものお願いなんです。それについては予算が、先ほどから聞いております通り零細な金で、全国的に啓蒙運動をなさるのにうまくやれるのだろうかと不思議に思って聞いているくらいなんです。ですからこういう点については、五カ年間これを延長されるということであれば、五カ年の間にそういう間違ったやみ中絶をする人はなくなるのだ、あるいは売薬を飲む人はなくなるのだというくらいまで、予算の中からでも見てもらいたいと思います。それからもう一つは、この優生保護でも、やみの場合でも同じですが、三カ月過ぎてきますと持ち帰って埋葬しなければならぬということになるのですが、まず埋葬する方というのは少ないようです。みな川や公園、雑草のはえているところに捨ててあるので、それがよく問題になってくるわけです。こういう点について何か厚生省としては施策はないものか、それはちゃんとした赤ちゃんであれば、死んだということでだれでも埋葬は考えるでしょうが、そこまでなっていない子供、これはお医者さんが持って帰れとおっしゃるんですが、持って帰って埋葬するということになれば金がかかってしまう。どうしても埋葬費というものに金がかかるものですから、自然、川に捨てたり、やぶのところにほうってあったりするんです。そういうことが全国的に非常に多くあるわけです。ですからそういうものに対して、何か金がかからないで埋葬がしてあげられるという考え方に立っていただけるかどうかということをお伺いしたいと思います。
060 尾村偉久
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○尾村政府委員 現在のところ四カ月以上でございますと、死産の届けを出すようになっておりまして、同じ人工流産でございましても、四カ月以上ですと、ある程度形ができておりますので、同じ胎児とはいいましても、今のお話のように、人間の感じが近くなりますので、跡始末が、三カ月以内の小さい、胎盤と一緒に不潔物として処理する場合と、確かに感じとして差があると思います。ただ、ただいまのところは、これはまだ普通の死体というふうにはしておりませんで、基地埋葬法でも、四カ月というようなものは、正規の墓地埋葬法による埋葬とかそういうような対象にも、実は法的にもいたしておらないわけでございます。従って実態的にそういう感じに合うようにやる。従来地方によりましては、むやみなところに捨てるのは忍びないということで、えなを集めてやる団体等ができまして、これを一括して人の目につかぬところで焼却をするとか埋没をするとか、そういうことがございますが、確かに今の点、病院でもそういうようなものが出たのを、普通の汚物と一緒に処理するのは感じとして工合が悪いので、本人に持って帰ってくれ、こういうことが起こりがちだろうと思います。この点は今のところ具体的に、今までそこまで施策をしておりませんので、十分検討いたしまして、実態に合ったように、しかしこれはあまり画一的に全国一斉にこうでなければならぬとなりますと、風習とかあるいはそれぞれの処理場の——処理した医療機関の能力によっても違いましょうから、これはあまり画一的ではいかぬと思いますが、できるだけこれは検討いたしまして、持ち帰れといわれて、せっかく目的を達した人が跡始末に困らぬような方法を検討してみたいと思います。
061 本島百合子
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○本島委員 これで終わりますが、この優生保護的な面で特に気をつけていただきたいことは、いろいろ社会的に問題になって初めて厚生省は、これではいけなかったということをおっしゃるのですが、家族計画についてだけはもっと積極的に、日本は多産国で困っておるのですから、といって将来子孫を残さなければならない階層だけが減っていくというような形がもうすでに現われてきておると思うのです。こういう点については役所としても施策にもっと万全を期していただかなければ、この形はまだだんだん進んでいく。そうして悪い階層あるいは遺伝性の人たち、こういうところではどんどん子孫が繁栄するという形が出てくるだろうと思うのです。これを憂えて人口問題研究会なんかでも盛んに言われるわけなんです。ですからこういうものを改正されるときには、厚生省としてもやはり今後の対策として、今までの惰性でなくて、新しい施策というものが予算の中にも打ち立てられ、そうしてこちらにも改正が出てくるというふうになっていれば一番よかったのですけれども、そうなっておらなくて、びっこになっているようですから、こういう点については特段の研究をされて、特にこういう面の研究家もたくさんいることですから、積極的に民間の人たちとの懇談会などもおやりになって、そうして足らざるところを補っていくというふうな形をもってやっていただきたいと思うのです。保健所だけを頼られても解決しない問題が多いのですから、そういう点を要望いたしまして私の質問を終わります。
062 八田貞義
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○八田委員長代理 小林進君。
063 小林進
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○小林(進)委員 こういう機会ですから、しろうとの私も日ごろ疑問に思っておりますることの一、二を質問いたしたいと思います。
 第一番目の、今もお話のありました流産の胎児の処理の問題ですが、これは話のついでですから、私はこういう企画があったことだけを申し上げて、一つ御意見だけ聞いておきたいと思うのであります。それは流産を病院なり医者のところに行って行なうときに、手術料の中に胎児を処理する料金を含めてお医者さんにとってもらう、これは強制的にとってもらう。そのかわり都なり市なり——町村まではいきませんけれども、それを処理する何かの機関を設けて検討する。そうして病院の通知を受けて、四カ月なり三カ月なりの胎児を引き取って、正規の火葬場なり埋没の場所なりに行って処理をする、こういうふうにしたらいいのではないかという意見が、数年前ですけれども相当あった。そういうことを具体的にやろうという運動も東京都内にはあった。一時は東京都内だけでも七十万人も百が人もそういう流産した胎児があるというようなことがあって、それが五カ月も六カ月もたちますると完全な人間の姿をしておりますから、それが川の中に捨てられ、便所の中にほうってあったりするというようなことは、どうも日本人の古来の美徳から見て感心しないから、やはり引き取って、一応坊さんにお経でも読まして、そうして完全に焼却するというような方法を講じなければいかぬのじゃないか。そのためには中絶や、やみからやみに葬るようなことをする女性みずからにその金をもらうわけにはいかぬから、お医者さんが二千円なり三千円なり手術料をとるときに、半強制的にその埋没料を加えてとってもらったらどうかという企画があったのですが、どうでしょうか、厚生省がお考えになりまして、実際上それは一体実現性ありやいなや、御意見を一つ承っておきたいと思います。
064 尾村偉久
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○尾村政府委員 ただいまのところ、この四カ月以上の死産については、法的にはまず医師は死亡者と同じに届出の義務が医師法で課されております。それから死体解剖保存法でも、四カ月以上の死産児は死体と同じ取り扱いになっております。ただし人工流産の方では——この対象はいわゆる人工流産の中に入りまして、三カ月も四カ月も、別に線はなくて同じ扱いになっている、さような関係でございますので、形の上では、原則といたしましては死体と同じにその保護者が引き取りまして、埋没については墓地埋葬法による許可を受けて処理するというのが原則でございます。相当原則は守られておりますが、今のお話のように現実には人工流産——掻爬されて形もくずれて出たというものを、一々そういう許可を受けて、棺を作って高い金をかけてやるということは現実に合わぬものでございますから、実際はそういうことになっておる。従ってこの法にきめられたものを、他人がまとめて一括してやるという方法については、これは相当研究を要するわけでございます。従いまして原則はあくまで尊重するけれども、そういうような便法もこの法のもとでできるかどうか、この点がございますが、しかし実際にはこれは何とかしないと確かに不適当なことがあるようでございます。それから、それが動物の死体と一緒に発見されて問題を起こすというようなことも、かつて新聞紙に何度か出たことがございます。これはぜひわれわれの力でも研究いたしまして、法的にどういうふうに処置するか、あるいは法の中でできるならば、そのようなふらちなことが起こらぬような団体なりを設立させるとか、そういうようなことを至急考えてみたいと思います。
065 小林進
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○小林(進)委員 今までは本人みずからにそれを引き取らせたり処置せしめるというところに、どうもいろいろ公けの社会風潮を乱すような欠陥もあったようですから、一つ十分御考慮いただきたいと思いまして、この問題はこれで打ち切ります。
 次に、これは提案者に一つお尋ねしたい。これは質問があったかもしれませんけれども、今まで国庫支出でありましたものを、今度は県がその費用を支弁する、国庫はそれを負担する、こういうわけなんですが、全額はやはり国庫が御負担なさるわけですか。
066 谷口弥三郎
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○谷口参議院議員 さようでございます。
067 小林進
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○小林(進)委員 そうすると国庫は、国庫からいえば費用は変わらずにおやりになるが、その行政事務といいますか、手続だけは県がおやりになる、こういう形になるのでございますか。
068 谷口弥三郎
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○谷口参議院議員 これまでは国が全額を支出することになっておったのでございますが、先刻もお話のございましたように、国から出すのでは非常に手数もかかるし、円滑に進まぬから、それで地方でそれをいわば代理に支出をしてもらっておいて、そしてあとで国がその全額をいわゆる間接支払いをやろうというのでございます。
069 尾村偉久
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○尾村政府委員 今谷口先生が説明された通りの内容でございまして、形といたしましては県費で一ぺん概算を計上いたしまして組みまして、そしてそれに対しまして精算で全額同額を県費に交付する、こういうような形にいたします。現実にはそれが一番正しく、また県としても事業計画がはっきり立つわけでございますが、現在は国から、この法律で、直接払うのをここ数年来県が実際にはやっておるわけでございます。非常にあいまいになっておるわけで、そこをはっきりと法的に是正して、県もやりいいようにしよう、こういう形でございます。
070 小林進
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○小林(進)委員 それでは大体この問題はわかりました。
 それから改正の第二点ですが、これも先ほど質問があったかどうか知りませんが、これは調節の実地指導をする助産婦、保健婦、看護婦というような者が受胎調節のための医薬品を販売することができるということを五年間延長されるというのですが、この販売品は厚生省か何かが一括してこういう指導を行なう者に卸値でおろして、若干の中間マージンをこういう指導者がもらって、そして販売する、こういう形になっておるのですか。一体その卸と小売の値段の、その利益の配分なんかどんなふうになっておるのですか。もう少し詳しく承りたいと思うのですが……。
071 大山正
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○大山政府委員 実地指導員がこの条項によりまして販売できる薬品は、ゼリー剤、クリーム剤、錠剤、親水性堕剤等でございますが、これをそれぞれの実地指導員が自分で購入して販売しておるというのが大体の実情でございまして、県である程度あっせんをし一括してやっておる場合もあるようでございますが、先ほど滝井先生からも、そういうものは厚生省で十分調べて、何かいいものを安く一括して入るような工夫をしたらいいではないかという御意見もございましたので、この点十分一つ検討してみたい、かように考えております。
072 小林進
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○小林(進)委員 それは先ほど滝井委員の質問があったか知りませんが、私も同感です。それは看護婦や保健婦助産婦が勝手に薬屋から——結局薬局でしょうな、こういう品物を売っているといえば……。そういうところから買って、そうして持ち歩いて販売しておるというよりは、やはりこういうものは厚生省である程度その卸元を教えるとか、販売のあっせんをするとか、あるいは優良品を指定して、特に助産婦や看護婦等々にはそれを使用せしめるような指示を与えて、若干の販売をしたら、その中間のマージン的なものはその看護婦なり保健婦のふところへ入るように、幾らか便宜をはかってやられた方がいいのじゃないかと思いますがね。今までだって若干利益はあるのでございましょうな。
073 大山正
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○大山政府委員 その助産婦、看護婦等の実地指導員がその間若干の利益を得られるというような意味もありまして、こういうような特別な条項を設けておるというのが実情でございます。
074 小林進
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○小林(進)委員 私はこういう人たちにはやはり利益を与えてやることはいいことだと思いますね。さらにその利益を、優良な品物をもってもっと多く利益が与えられるように、これは厚生省でもう少し積極的に御指導していただいた方が、具体的な方策を講じて上げた方が非常にけっこうだと私は思いますので、そのように一つお願いいたしたいと存じます。
 次は、私は若干しろうとめくかもしれませんけれども、こういう機会ですから、一つ御質問することを許していただきたいのでありますが、それは優生保護法の第三条に基づく強制手術といいますか、医師の認定による優生手術、この手術が年間一体どれだけの人に行なわれておるか、先ほど千人なんぼとかおっしゃったように聞いておりまするが、一体どれだけの人数が年間に行なわれて、その中で女子の受胎調節が大体何人、男子の優生手術がどれくらいになっておるか。ついでですから、その中で第一号から第三号までに至る人員の区分、そういうことを私は少し数字でお伺いしておきたいと思うのであります。
075 尾村偉久
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○尾村政府委員 実は先ほど三十三年の分は滝井先生の御質問のときにお答えした数でございますが、三条によりますのが四万九百四。その内訳といたしましては、このうちの一号にあたりますものが百九十二、二号が百四十二、らいが七十二、それから母体の生命危険が一万五千八百二十一、母体の健康低下が二万四千六百七十七であります。これは強制でなくて、いわゆる医師の認定によるものであります。それから今お話の四条のいわゆる強制する方は千二十七。この内訳を男女別に申し上げますと、これは私の方の男女別の資料が会計年度になっておりまして、今言った資料が歴年になっておりますので、端数が少し違いますが、五対七、すなわち千二十七の場合には女が約六百、男が四百という程度の数になります。正確なことを申し上げますと、女が六百三十三、男が三百九十四という数字になります。それからもう一つ飛びまして、十二条によるものが五十四でありますが、これは非遺伝性の精神疾患であります。
076 小林進
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○小林(進)委員 次に、第十四条の医師の認定による人工妊娠中絶、これも数字をお知らせ願いたい。
    〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
077 尾村偉久
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○尾村政府委員 これは先ほどお答えしましたが、三十三年度を申し上げますと、合計いたしまして百十二万八千二百三十一。これを号別に申し上げますと、一の遺伝性疾患が千六百三十、らい疾患が三百十五、それから母体の健康は十四条の四号になっておりますが、これが百十二万四千六百九十七、それからこれの五号の中の暴行、強姦等が三百五十八、それから届け出の内容がどれに当たるか不詳というのがございますが、これが千二百三十一、以上のような内容でございます。
078 小林進
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○小林(進)委員 第十四条の一号から三号までは、財団法人たる医師会の指定する医師が、左の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得てこれこれのことができる、こういうことになっております。そういたしますと、これは大体医師個人の認定によって人工中絶が行なわれて、あとは医師が別にまとめて報告さえしておけばよろしいということになるのですが、実際にはこの一号から三号までに該当しないもの、つまり不義で子供ができたとか、あるいは何かでできてしまった、だから人工中絶をしようというようなものも、正式な医師の手によって事実こういう中絶が行なわれる場合も考えられますが、あなたの先ほどの説明によると、そういうものはやみ中絶になりましょうね。あるいは正式の医師の資格を持たざるしろうとだとか、あるいは個人の関係だとか、実際に人中絶をやる資格も技術も持たない者がこういうような人工中絶の作業をするやみ行為と、資格のある医師が実際は第十四条に該当しない人工中絶を行なうというやみ行為と、やみ行為というものは二つに分けられるのではないでしょうか。一体その数字がどれくらいあるものか。これは推定の数字になると思いますがどれくらいあるものかお知らせ願いたいと思います。
079 尾村偉久
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○尾村政府委員 ただいま一から三までという御意見でございましたが、実際にはこの公式というのは五までできると思うのでございます。ただいま御意見に出ました経済的理由または身体的理由によって、妊娠の継続が母体の健康を害する、これがただいま申し上げましたように百十二万八千のうちの百十二万四千を占めております。これがいわゆる正式のものであります。これは指定医がこの法律の第四号と認めまして行なったものであります。これを合わせて百十二万であります。従いまして、今のやみ行為と言われましたのは、指定医にあらざる者が、この条項にも実際に照らせば合うか合わぬかわかりませんが、これは指定医以外にはできないのでございますから、従ってやみということが大部分かと思うのでございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、実数はやみの性格から見まして行政的になかなか把握できないので、むしろ実際に当たっておる医師会、医学会その他のいろいろな分析の文献が発表されておりますが、そういうのを総合して、大体百十二万である正規のものの五割ないし九割の範囲内であるのではないか。大体こういうような数字を実は推定の参考にしております。
080 小林進
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○小林(進)委員 正式に届け出のありました百十二万に対する五割から九割というのがやみの流産とおっしゃるのですが、そのやみの流産を行なういわゆる窓口といいますか、やみ行為をやる手術者というか、それが一体どういう人か、その実態をお知らせ願いたい。今おっしゃるように、いわゆる医師会の指定によらざる医師が人工流産をやる、これもやみですね。それから全然医師にあらざる者がやる、しろうとがやる人工中絶というものが一体考えられないかどうか。昔は取り立てばばというものがありました。今でも農村に行くと、そういう古い経験者がそういう行為をやるということも、土地の習慣によってはあるということを聞いておるのですが、調査せられた範囲でよろしいのですが、お知らせ願いたい。
 それからいま一つは、こういうやみ流産によって死亡した妊婦の数は年間どれくらいになるものか。あるいは死亡までに至らないけれども健康を害したり、そのために、何とかいういろいろの病気がありますけれども、そういう病気にかかる人たちが年間どれくらいあるのか。これもおわかりになっておる範囲でお知らせ願いたいと思います。
081 尾村偉久
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○尾村政府委員 指定医以外の医師が人工流産をやれば、これはいわゆる法律外でやることでございますから、違法行為になりまして、これは刑法に引っかかるわけであります。従って、これが具体的につかめておりますれば、法的にいいますと片っ端から刑事事件が起こっているはずでございまして、そこが人工中絶のやみのやみたるゆえんでございますが、行政的には何としても把握できない。行政的に把握すれば当然これは告発なり、そういうことが続々と起こるはずであります。人工流産は、やった当事者のみならず、堕胎を受けた当事者もやはり違法行為になる。そこが非常にむずかしい問題で、実際のところ正確な数字は何とも言えないのであります。しかし先ほど言いましたような膨大な数があるということで、これはわれわれ行政を預かる者としては何とも申しわけないことなのでありますが、現在のところさようでございます。
 それから、いわんや医師法に違反してしろうとが刑事上の堕胎行為をする、これはもってのほかでございまして、これは医学的な知識がない者がやるのでございますから、堕胎行為それ自身がいかぬほかに、母体の保護どころではなくて、これは傷つけることは大体間違いないということでございますから、これはもしあれば厳格に摘発していかなければならぬ。堕胎罪で摘発される者は、特別には医師が入っている場合もありますけれども、医師法違反のような、いわゆる医師をかたってやるというのが毎年何件か事例が出て参るわけであります。ただこれも、ただいまのところ私資料を持っておりませんので、これはあるいは医務局の方で持っております資料を調査すればある数が出るだろうと思います。
 もう一つは人工流産の結果、妊娠中絶を正規に受けてなおかつ死亡がどのくらい出るかということでございますが、大体におきまして、今から二年ほど前に、谷口先生が会長をやっていらっしゃいます母性保護医協会という大きな産婦人科の先生方の団体がございますが、これが学術的に協力されまして、人工妊娠中絶の弊害調査をされました。非常に膨大な貴重な資料でございますが、それによりますと、直接障害率三・九%、人工中絶百人ありますと三・九人の直接障害がある。それから門後障害、その後長期にわたりまして腰痛とか不時の出血を起こすとか、いろいろな障害が起こるとかいう、これのデータは八・九%でございまして、これを合わせますと一割をこすわけでございます。ただ直接死亡例というのは非常に少ないのでございまして、一昨年のこの調査の中では、死亡数としては統計に出ない。ただ一例とか二例、たとえば子宮の穿孔を起こして、突き抜いて腹膜炎で死んだというのがその中にまれにございます。しかしその数はいずれも数例以下でございまして、全体の二万何千件という中からは率には出ないわけであります。
082 中山マサ
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○中山委員 関連して。今これから出て参りますいろいろな障害について承ったのでございますが、かつて私が厚生政務次官をいたしておりましたときに、英国の厚生省と申しますか、そういうところの人が来て、日本はこういうふうなやみ行為を見のがしておるのか、これによって、そのときに直接の障害があることはむろんであるけれども、後年になってガンのもとになるということを非常に心配して私のところにおっしゃりに参りましたことがあるのでございます。この件について、そういうことをした結果ガンになる人はどれくらいあったか、そしてまたこういうことを一度ならず二度も重ねる人を私は聞き知っておりますが、こういう手術に何回までからたが耐えられるものか、そしておそろしい結果が後年において起こるということを母性保護医協会の会長の谷口先生は婦人層に御警告になったことがあるのでございましょうか。また厚生省としてこの問題について、婦人層に、あまりにも再々これを繰り返せばこういうおそれがあるということを教えて、そういうおそれがあるゆえに避妊というところに努力しなければいかぬという警告を発せられたことがあるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
083 谷口弥三郎
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○谷口参議院議員 ただいまの人工妊娠中絶を何回もやったとかやるような人がおるということでございますが、日本母性保護医協会という指定医の会におきましては、人工妊娠中絶というようなことは最後の手段であるから、ます受胎調節をやれ、そして受胎調節をやったけれども失敗したという場合でも、いろいろの優生保護のワク内においてのみ人工妊娠中絶をやれということは、会員はもちろんのこと、いろいろな会合に臨んだ場合、婦人層その他の方人にも申し上げておるのでございます。
 それから手術を何回もやったらいろいろな障害が起こりはせぬか、これはたびたびやった場合には、いかに優秀な医者でありましても、何回もやればいろいろな障害が起こらぬということは言えぬと思います。ただし子宮ガン腫とかあるいは子宮外妊娠であるとか、いろいろなのが人工妊娠中絶後に非常に多いのではないかというような説もありますので、私ども並びに産婦人科学会ではそれについてもただいま研究をいたしておりますが、実際にはそういうようなことがそのために起こったというような例はまだはっきりわかりません。しかしむろんそういう場合がありはせぬかというので、会の研究題目として研究いたしております。
084 小林進
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○小林(進)委員 私はこれで終わりますが、人工避妊の問題とあわせて、やみによる人工中絶の問題、今の厚生省のお返事だけでも、五十万から百万近い、こういうやみの人工流産があるいうようなことは、私は、優生学上からももちろん、社会風紀、公序良俗の面からいっても放任できないものだと思います。いかにしてこういうものをなくするかという、そういう方法を、私は、先ほども同僚諸君が申しましたけれども、真剣に一つ考えていただきたいと思うのであります。そのやみの人工流産の中には、あるいはおっしゃるように、それは生活上の問題、経済上の問題もたくさんあると思います。そういう原因を一つ一つ追求していただいて、金がなくて原因をなしておる者にはあたたかく一つ保護してあげるし、あるいはまた一時のうわ気か何かで風俗を乱してやった結果である者には取り締まりを強化するとか、具体的な幾多の事例をとらえて、そしてこういう好ましからざる行為がわが日本の中にあまりどうも風潮となっていかないように、あとを断つように大いに努力をしていただきたい、これをお願いいたしまして私の質問を終わることにいたします。
085 中村英男
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○中村(英)委員 これは受胎調節を指導員が指導される場合に、厚生省がどの程度の指導教育をされておるのかわからぬものですから私お伺いするのですが、農村の実例として、御承知のように、農村では農繁期と農閑期の労働力の山がある。そういう場合に、農閑期に受胎して、当然結果として農繁期に出産するのです。案外こういう点も指導員の諸君は忘れている、そこまで気がつかずにおると思うのですが、これは非常に農村における家族の問題あるいは労働力の問題、母体の問題、いろいろ大きな問題を含んでおると思うのです。ですから、私は受胎指導員を厚生省が指導される際には、当然農村における受胎、出産は農閑期と農繁期を十分考えて——農村においては、おそらく農閑期になったからほっとして受胎する場合自が多いと思います。それはやはり少なくとも母体を維持するという建前から、あるいは農業の労働力を維持する建前から、むしろ農繁期に受胎すれば農閑期に出産するのです。そうすると農村における労働力も影響しないし、母体も傷つけないのです。それを自然なままで男女関係を置いておくと、農閑期に受胎して農繁期に出産しなければならない、母体も傷つけるし労働力にも非常に影響しますから、こういう点は一つ、受胎調節を普及員が指導されるのでしたら、そこまでこまかく農村における指導はされなければいかぬと思っております。私農村を回ってみてそういう点をちょっと感じましたので、御注意を願いたいと思います。
086 永山忠則
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○永山委員長 岡本委員。
087 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 一点だけお尋ねしておきたいと思います。先ほどからの議論の中で、日本の今の人口問題が非常に人口の逆淘汰の方向へいっているということは、これは政府の側もお認めの模様に思うのであります。そこでその人口の逆淘汰に対する対策をどういうふうに立てておられるのか、また今後どういうふうに進めていかれるのか、それを伺いたいと思います。
088 尾村偉久
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○尾村政府委員 逆淘汰になりますといろいろ内容が多岐にわたるわけでございますが、一番中心になりますのは何といいましても悪性悪質の遺伝による人口分率がふえていくということが逆淘汰の一つの最重要要因とされております。従いまして悪性の者を極力増加しないようにして優良な者を逆にふやしていく、これが今度正しい意味の逆淘汰に反対する政策でございます。その意味で、この逆淘汰を阻止するためにできたのがこの優生保護法の最初の立方の趣旨と思います。従いまして先ほどからいろいろと御意見を承った点を、正しくこれを実行して是正していく、むしろ悪質な者、今まで見のがされている者を勧告あるいはPR等によって見つけ出して、この方は積極的に優生手術なりあるいは優生人工流産なり、これらによりまして、はっきりした者は阻止していく、これが第一に必要な点だ。ただし逆淘汰と言いましても、これが今のような医学的な優生遺伝の性格を持った以外の、たとえば現在の世代が偶然貧乏であるとか、いろいろな社会環境上からの因子で、ある程度社会の負担になっておるということは、これは必ずしも逆淘汰とは言えないので、そういうような点はむしろほかの経済政策とか、そういうので見ていく。やはり逆淘汰阻止は、行政的に手を加えて積極的に阻止するという場合には、優生遺伝の問題を中心にしてやっていくべきではないか、そちらには大いに積極的に馬力をかけていく、こういうふうに存じております。
089 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 私のお尋ねとお答えとが時点がややずれておったと思うのですが、なるほどあなたのおっしゃるのは純粋に医学的な意味におけるところの逆淘汰の問題、私もそれについて二つの、広義の解釈と狭義の解釈とに区別せずにお尋ねしたところにそういうずれが出てきたと思うのですが、しかしながら今政府が推し進められておるところの家族計画というものを見ておりますときに、私は一つの逆淘汰の傾向が出ていると思う。というのは、家族計画というものは非常に理知的な、理性に基づいて行なわれるものです。ところが性生活というものは感情や情緒に基づいて行なわれる生活、従ってそういうふうな性生活の中において理性を強く働かし得る人たちというものは、そういう意味においてはある種の優秀な人たちなんです。そういうふうな優秀な人たちの間でどんどん家族計画が推し進められ、そしてそういうふうな人たちの間では出席制限が行なわれる。しかしながらそういう理性というものを性生活の中に働かし得ないような人たちはたくさんある。そういう人たちの間では家族計画が行なわれない。だからいわばもう生活が困るのを承知していながら産んでいく人たちがあります。単にその人たちは、必ずしも貧乏即人間的な質が低いという意味じゃございませんが、その中には相当いわゆる頭脳的に低い人も含まれておるわけですね。だからそういうふうな一群の、先ほどから本島さんなんかたびたび言われておる、むしろほんとうに家族計画が行なわれるべき階層の中へ、今のような政府の方針では家族計画というものがなかなかしみ通っていかないと私は思う。それをどういうふうにしてしみ通らせていくか、そのことは私は日本の将来の人口分布というものにおいて非常に大切なことだと思うのです。その点について政府はどういう方針をお持ちになっておるのか、こういう点を私はお伺いしておきます。
090 大山正
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○大山政府委員 ただいまもお話にございましたように、貧困といわゆる逆淘汰問題というものは必ずしも結びつかないと思うのでございまして、私どもといたしましてはそれぞれの家庭、家族の状況に応じまして、適当な数の子供を適当な間隔をおいて産むというのが家族計画であるというような考え方でいろいろ指導して参っているのでございますが、実際問題といたしまして、生活保護階層あるいはボーダー・ライン階層等におきまして貧困を脱却して立ち上がるというためにも、家族計画をやはり実施する方が望ましい。しかし実際にそういうことに十分知識もなく、あるいは費用もないというようなことが考えられますので、私どもの方で行なっております予算的措置といたしましても、貧困階層に対する特別普及事業というのに重点を置きまして、実地指導員等も主としてそちらの方面において十分活躍していただくというような方法で進めておる次第でございます。
091 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 家族計画について三つの階層が今ある。それは政府が考えておられるような方法で理性的に家族計画を実行しておる、妊娠の予防を実行しておる、しかしながらその予防を実行しようとしながらなかなかやはりそういう感情の生活の中では理知を十分働かし得ないで、予防をしつつもときどきしくじっては、いわゆる妊娠中絶の御厄介になるという階層、さらにまた、もうそういうふうな予防の必要性というものを聞いてはいても、知ってはいても、実行できないという意思薄弱組、従ってそれは毎回妊娠すれば妊娠中絶の御厄介になる、あるいはそれすらも、中絶しておかなければ困るということは知りながら、ついついそのまま出産にまで持っていってしまうというような三つの階層があると私は思うのです。特に私は今いう逆淘汰という意味において問題にしなければならないのは、そういうふうな非常な意思薄弱なことのために、結局は出産数をふやしていくという人たちを私たちは問題にしなければならない。これは私は貧富ということとは別に、ある一つの自分の計画とか、あるいは自分の考えというふうなものの中へ理性を十分に働かし得ないという、そういう意味においては一つの人間的な弱さを強く持っている人たちであると思います。そういうようなある立場において、たゆまず重ね得るか、し得ないかという、そのことにおいては、その人は劣性であると思います。そういう劣性群の中には、単にそういうふうな理性を働かし得るかどうかということは、妊娠予防の問題だけではなしに、そういう人たちの中には、たとえば犯罪の場合であるとか、あるいは飲酒の場合、その他いろいろな場合においても、結局はやはり理性でもってみずからの感情を押え得ない人たちが相当まじっておるわけであります。だからそういうふうないわゆる家族計画を完全にやり得ない階層というものの中には、相当多くの劣性遺伝分子というのが私は含まれておると思うのです。そしてその家族計画をやり得る人たちは、それは自分の生活を強く規制し得るだけあって、いわゆる世の指導層となる、そういう意味においては一つの優性的な人たちであると思うのです。だから私たちはそういうような予防対策をみずから講じ行ない一群の人たちというものの中にもっと強くいろいろな対策を講じていかなければ、どうしてもいわゆる人口の逆淘汰というものが私は生まれてくると思う。だからそういう点において政府は何か考慮をめぐらしておられるのか、これはもうやむを得ないというふうに考えておられるのか。何か対策が必要であると思われるなら、どういう対策をお考えになっておられるのか、そういう点を私はお伺いしておきたい。
092 大山正
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○大山政府委員 ただいまの御意見はまことにごもっともでございます。ただ大へんむずかしい問題だと思うのでございまして、そういう階層に対して強力に進めていかなければいかぬと思いますが、一つの方法といたしまして、直接先生のお話に当たるかどうか存じませんが、たとえば私どもの方で所管しております保育所に子供を通わしている家庭というような場合をとって考えますと、それは子供を持っておって自分で育てる時間がない、働きに出なくちゃいかぬ、あるいは病気であるというような家庭の子供が多いわけでございますから、こういう家庭などには相当強力に、直接私の方で把握もできますし、指導する面があるのではなかろうか、そういうようないろいろな場をつかまえまして強力な指導をして参ることがよろしいのではないか、かように考えております。
093 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 私はそういうふうな意味において、政府の方針として受胎調節に重点を置いていられる、私の見ようでは政府は受胎調節一本やりでいっていられるというところに、この問題の解決の困難性があるのではないかと日ごろ考えている。そういうような非常に意思の弱い、たゆまざる努力のできない人たちには、やはり思い切って優生手術をやらせる、優生手術を奨励していく、こういうことは、これは人道問題であるとかいうふうなことも出て参ります。しかしながら、ある点、私は相当これは日本の今の傾向から見るならば、やはり同時に——もちろん重点は受胎調節に置いていかなければなりませんが、たとえば民生安定所などで種々気をつけておれば、この両親はだいぶ知能が低いというふうなことがわかっている場合、それが悪質遺伝はない、あるいはまたとても強制的に手術させるというほどの低い知能程度でもない、しかしながら、ある程度この人たちの子供にはそういい子供は生まれないぞというようなことが考えられるような場合においては、その人たちには一応優生手術を勧めてみる。しかもこのごろは男性の優生手術というものはきわめて容易に、簡単にできるということはすでに御承知であると思います。ついこの間も読売かなんかの週刊誌に大きく男性の優生手術の記事が出ておりましたが、男性の優生手術というものはきわめて簡単なものであり、あまり弊害がないことはらい療養所その他ですでに長い経験があって、決して日本では浅い歴史ではないと思います。だから絶えず民生安定所その他厚生省で注意をしておられて、たとえばすでに三人四人の子供がある、しかもその人はたびたび中絶を繰り返しているとか、生活保護なんかがあればすぐわかるのですから、そういう場合に、厚生省の方ももっと積極的に優生手術を受胎調節とあわせて人口対策の中の一つの問題として取り上げていかなければならない段階ではないかと私は思うのでありますが、その辺についての厚生省のお考えを承りたいと思います。
094 尾村偉久
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○尾村政府委員 優生保護法によりまして、優生手術は先ほど申し上げましたように年間四万余実施されております。この大部分は女子でございまして、強制の場合には先ほど言いましたように非常に女子の場合が多い。そういう形でございますが、この優生手術を今のように広い意味の逆淘汰にまで拡大いたしまして、合法的にさせるかという点は、これはまた非常に重大な問題でございます。現在のところはあくまで医学的な、規定にある遺伝性のもの、さらに本人たちの配偶者等を含めた同意があれば、十二条によりまして別表の三十の疾患にかかっておる者はやってもいいことになっております。ただしこの中の、ただいまお話の一番関係がありますのは、別表の中にあります二と三で、すなわち二の遺伝性の精神薄弱、それから三の顕著な遺伝性精神病質、性欲異常、犯罪傾向、これが先ほどのお話にあたりまして、このうち意思薄弱というのがはたして精神薄弱の一環としての意思薄弱であるか、あるいは正常な心理構成の上での意思が弱いという意味か、これは非常に重大であって、従って精神障害者の範疇に入らぬ者まで、ただいまの社会的観点から見て工合が悪そうだという広い意味の逆淘汰防止という意味でやるには相当考慮を要しますので、現在のところはまだそこまで拡大してやった方がいいというような点は、私だけの考えではとても御答弁できませんが、しかし十分検討したいと思っております。
095 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 あなたは純粋に、今法律的な立場に立って議論を進めておられますが、私は現実の問題についてお話をしている。多少ものの考え方に違いがあるかもしれません。しかしながら、現在たとえば第三章の医師の認定によるところの人工妊娠中絶が、第十四条四号の「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」これに該当せしめて、実際上人工妊娠中絶によるところの出産の調節が行なわれているということは、あなたも御承知の通りであります。それからまた任意の優生手術が行なわれておる、その法的な根拠は、第三条の五の「現に数人の子を有し、且つ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下する虞れのあるもの」、これでもって今任意の優生手術が行なわれておる。このことはやはり貧困多子家庭という考え方に基づいて、貧困多子家庭は、優生手術もしくは人工妊娠中絶を行なってもいいというふうな広義解釈が、手術をする側には行なわれる。その広義解釈によって、その妊娠中絶がどんどん行なわれ、また政府も黙認しておる。奨励はしておらぬかもしれないけれども、黙認しておるのが現実であると私は思う。しからばその現実の上に立って、こういうことでもって妊娠中絶及び優生手術がどんどん行なわれ、しかもそれが比較的指導的な立場に立ち得るような優秀な人たちの間で出産の制限が行なわれておる。そしてそういうような指導的な立場に立ち得ないような人たちの間では、むしろやみくもに子供が生まれる傾向があるというところに、私はやはり民族全体の優秀性というものを確保するという点で問題点があると思うのです。そういうことが今人口の逆淘汰として懸念されておるわけでございまして、それじゃそういう現象をどうして矯正していくか。では片方でもっと優秀な人たちの優生手術その他の禁止を強くしていって、そういう人たちにもっと多く出産することを要求していくか。あるいはまた知的水準もしくはいろいろな性格的な多少の欠陥のある人の出産を制限していく。二つの方法をとる以外に道はないわけです。しかしながら今ここまで出産というものについていろいろな人的な操作が加わって、それがとうとうとした、こういった傾向になっているとき、それではどうして日本の将来の人口というものを優秀なものにするための努力を払っていくかということについては、何らかの手を打たなければならない。それについてわれわれは真剣に考えなければならない段階になっておるというのに、あなたのように純粋にこういう法理的な解釈の上にだけ立って、それ以外はどうにもならないんだというようなことでは、私は将来困ると思うのですが、それについて重ねて御意見を伺っておきたい。
096 尾村偉久
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○尾村政府委員 確かに今の四万余の毎年の実績のうち、五号によるものが相当多いわけでございまして、すなわち数人の子供を持ったというので、もう今後生まれないように手術してしまうわけです。もう次の世代ができておるということが前提条件で、これは相当行なえる。ところがこれと同様な意味で、まだ子供を持たぬ、あるいは一人か二人というところまでやって、それができが悪いとか、また親が精神障害まではいかぬけれども意志薄弱というのに優生手術をやりますと、そういうような条件がもし改善された場合にも再び子供は得られない。一ぺん手術してしまえば永久に子供は得られないということでございますので、この点まで拡大する諸条件というものはそうなまやさしく——うっかりいたしますと人道の問題がありますし、これはそういうような人間に限ってあとで案外よくなったということがある、そんな場合に取り返しのつかぬことになりますので、この点は十分検討を要する。どこまで拡大するかということは真剣に検討はしなければいかぬと思いますけれども、ただばく然とそういうような社会的な低条件にあるものにまで手術を拡大することについては十分研究の余地をお与え願った方がいいと思います。
097 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 考え方に多少相違があるので、議論していってもしばらくは平行線になると思います。しかし私は、現実に行なわれておる姿を見て、日本民族の将来を考えて、これでは困るということを考えておる一人でございます。あなたもおそらくそういうことはお考えになっていらっしゃるのではないか。ただ法的にどうしようもないというふうなことで、やむを得ぬというふうなことではないかと思うのですが、私も、もう一度研究してみますけれども、あなたもそういう現実にどう対処していくかということを——厚生省としてこのままでいいのだというのなら、このままでいいのだ、ちっとも逆淘汰は行なわれていないし、このままの姿で進行してちっとも差しつかえないというのなら、そのようにお答え願ったらけっこうであります。あるいは何とかしなければならないというようにお考えになっていらっしゃるならば、その辺そうだとお答え願う。その次に、それじゃどうしていくかということについては、これはお互いに研究すべき問題だと思います。人道上問題もあれば、あるいはその他いろいろななにがありますから、それをどうしていくかということについては、真剣にわれわれが研究しなければ、三十年、五十年先になればこれは大へんな問題になる。今は今として、これはちっとも現実の問題としてはどうもない。しかしながら今生まれてくる子供がおとなになってくる、生産年令に達し、国の中堅になってくるというような段階になって参りますれば、平均的な形において、相当な人間的な質の低下を民族全体として起こすということをおそれておるので、それに対する対策というものを厚生省は考える必要がある、考えなければならない、こう私は思っておりますので、その辺について、もう一重ねて御見解を承っておきたいと思います。
098 尾村偉久
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○尾村政府委員 確かに的確に必要なもの、再び要らぬ適格なもののみをうまくつかみ出しまして、それの拡大によって優生手術が行なわれるということならば、非常に適切なことであろうと思うのでありまして、御意見には同意いたしますが、ただとかく従来の人工妊娠中絶のときでさえ逆淘汰の御意見が出たほど、これは一ぺん手術をしてしまいますと、再び何らの措置なしに、心配なしに性交ができるようになるわけであります。むしろその拡大が、他の優良といいますか、社会的に適格でない者により多く悪用されることになりますと、従来以上に風俗を乱したり、あるいは逆淘汰をむしろ促進することになりますので、従ってこういうような場合には、従来以上に非常に的確にねらいを定めたものだけに行なわれる、そういうことがうまくいきますならば、これは非常に有力な方法である、十分考えなければならぬ、こう任じております。
099 岡本隆一
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○岡本(隆)委員 私が最初にお尋ねしておる点についてのお答えを私は求めておるのですが、優生手術によるということは一つの方法論の問題でありまして、私はその方法論については、私の考えに間違いがあれば、幾らでも訂正するのにやぶさかではございません。しかしながら現実に日本の今、優生保護法の運営されておる状態、その結果としてきておるところの出産の制限、それがどの階層により多く行なわれ、どの階層に少ないかというものを見るときに、一つの人口の逆淘汰が行なわれておる、だから、民族の将来を考えるときには、これについては何らかの措置をとらなければ、三十年、四十年先には大へんなことになりますよ、こう言って私も心配しておるし、ほかの先ほどからのみんなの御意見の中にも、相当そういうふうな憂慮の声が出ておったと思う。それに対して、厚生省としては、その事実を認めるか、認めないか、認めるとするなれば、どういうふうにしてそれを矯正していくかということについて、何か方針を持っておるかということを私はお尋ねしておるのであって、さらにその方針があればどうするのかという点を尋ねておるのについて、明確なお答えがございませんので、先ほどからお尋ねしておるわけです。
100 尾村偉久
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○尾村政府委員 今のお話で、優生手術を初め人工中絶等は、要するに今の適格な、ぜひ必要な者に徹底しない。それでむしろ必要ない者に乱用されるということが一番逆淘汰ということになる。ですから、これを実施するには、先ほどのPRもございましょうが、これは衛生当局なり指導員だけではだめなんでございまして、やはり社会福祉に関連のある生活全体からそういうような適格者であるという者をつかむということをタイアップしてやる、そこで地域の組織とかと連携を保っていく、これが一番有効であろうと思いますので、今のように逆淘汰を防ぐということの必要性は十分認識しておりますし、またその具体的な手段を構じませんと、実際には実効は上がりませんから、さような意味で実際に努力したい、こう存じております。
101 岡本隆一
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○岡本委員 この程度にしておきます。
102 八田貞義
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○八田委員 最後に要望しておきたいことがあるのですが、人口問題と人口対策とがごっちゃにされて議論される場合が非常に多いのです。人口問題というのは、長い歴史から考えていかなければならないのです。というのは、人口がふえて国が滅んだためしはどこにもないのです。ただ優生保護法が、雑草のもとにチューリップがはえたためしはないのだという見地から、人口問題を取り上げて、どういうふうな運営でいくべきかということが法の趣旨になっているわけなんです。ところが優生保護法というものが経済政策の一環として進められているところに問題があるのです。ですから、いろいろな議論が出るのですから、厚生省としましても、今後経済政策の一環として家族計画と受胎調節の関係を論じないで、やはり大きな視野から検討されて運営されていくということが非常に必要であろうと思うのであります。この点を特に希望して、今後誤りのない運営方法に進められんことを希望いたします。
103 永山忠則
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○永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。

第38回国会 参議院 内閣委員会 第24号 昭和36年5月9日
127 山本伊三郎
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○山本伊三郎君 それでは理事打合会の精神にのっとりまして、簡単にやりたいと思います。御安心願いたいと思います。
 実は、これは緊急の問題でございますから、それだけは一つぜひやりたいと思いまして、実は質問の時間をとってもらったのでありますが、これは厚生大臣も、また、環境衛生部長も御存じだと思うのですが、去る四月三十日に、大阪で実は胎児の遺棄問題が起こっておるのは御存じだと思います。これは非常に大きい社会問題だと思うのですが、詳細は御存じだと思いますが、三十日の白昼、大阪市東淀川区のどぶ川に胎児の遺棄死体が五十二体か発見された、こういうことなんです。現在の法律ではこれはどうもできないというのです。四カ月以内の胎児であれば、これはもう法的手続を要らずに遺棄しておった。しかし、これは一応やはり埋葬、火葬か、そういう手続をしなければいかぬのですが、慈悦協会ですか、これは手数料を取ってどぶ川に遺棄しておった、こういうことなんです。これについて厚生省はどういう考えでおられるか、もうこれはこのままでいいのかどうか、こういう点について厚生省の御意見を聞いておきたい、かように思って質問した次第であります。
128 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) お話の大阪の事件は、人道上容易ならぬ問題であるわけでありますが、やはりあの種のことは道義上の問題で済むか、あるいは刑事上の問題にまで考えなければならぬか、やはりその辺のことも検討しなければならぬ問題だろうと思うのであります。きょうの法律のことでは、お話のようなことになるのでありますが、私どもとしましては、法律を改正して刑事的な犯罪とするかは、ちょっと所管の関係で、何とも立場、権限の関係で申せませんが、ああいう事実が起こりました原因につきましては、いろいろな複雑なものがあるかと思いますし、私どもの方の関係もないとは言えませんので、その辺はああいうことが起こらないように、原因の点に対してよく検討してみたいものだ、こういう考え方でいるわけであります。
129 山本伊三郎
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○山本伊三郎君 これはたまたまこういう大量の胎児遺棄があったので問題になったと思うのですが、今日、戦後優生保護法その他人工調節という国策もあるかと思いますが、堕胎というものが公然とやられるようになったということから起こってきておると思う。これは人道上の問題もありますが、付近の迷惑はこの上ないのですね。しかも、遺棄したのは五十二体であったが、自分の家に八十何体とかいうものをそのまま家の中に置いておって、もう付近は臭気ぷんぷんとしておった、こういうことが言われておるのです。これは私は発見されたから問題になったが、これは全国どこでもあることだと思うのです。従って、これに対して私は検討すると言われましたが、厚生省は今までこういう点について考えられたかどうか、この点をはっきり聞いておきたいと思う。これが起こったから検討するのか、今までこういう問題について厚生省として考えておったかどうか、全然知らなかったかどうか、この点を一つ聞いておきたいと思います。
130 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) 優生保護法とか妊娠中絶という道がありますことが乱用されてああいうことが起こるわけにもなったようなことがあるかしらぬと思うのです。そこに私どもの関係もあると思いますが、われわれもああいうことがありかねないことのようには思っておるのでありますが、ああまで大量にああいうことをやる者があるというふうには、正直なところ、私どももそこまでには思っていなかったのでありまして、こういうこともあるということは、今度の事件を見て驚いてしまった状況であります。
131 山本伊三郎
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○山本伊三郎君 驚いておられることは驚いておられると思いますが、これは実際問題として、五カ月以上であれば、これは普通のいわゆる死産児として正当な手続をとらなければいかぬのですが、五カ月以上のものが大半であったと、検事の調べによるとそう言われておるのです。従って、現在法律的な措置が全然とられておらないのですが、私が聞きたいと思うのは、法律上の措置がない限りは、今後こういう問題は尽きないと思う。各都道府県あるいは市町村の条例によってこれを処理しておるのですね。そういうことで、私は道義上の問題にしても捨ておけないと思うのですが、厚生大臣としては、この問題が起こってからでも、そういった何らかの措置をとらなければならぬという考えを持たれておるかどうか、この点を聞きたいと思うのですが、その点どうですか。
132 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) こういうことがそっちでもこっちでも起こるというようなことでありますれば、ひとり厚生省という関係でなしに、これは関係の方面とも十分協議をして対策を考えなければならぬと思うのでありますが、これは関係方面の意見もあるかもしれませんし、問題として考えたいというところでおるわけであります。
133 山本伊三郎
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○山本伊三郎君 どうも古井厚生大臣はだいぶ疲れられたと思いますが、何か精気のない答弁なんですが、僕はちょっと意外に思っておるんですが、これは優生保護とか、あるいはその他の法律、厚生省関係のいわゆる優生政策また人口調整政策ということから私は派生的に起こってきている問題だと思う。私は人口調整するということも、日本の現状からもこれはわかると思うのですが、一方、こういうものが出てくるということについては、社会悪であるかどうか、こういうことがやはり真剣に検討されなくちゃならぬと思うのです。そういう点について今の答弁を聞くと、各関係省ともいろいろまた相談もしなくちゃならぬ、いういうことですが、どうも私らが受けておる感じより真剣さが私はないんじゃないか、こういう気持がするんです。これはもう三カ月か四カ月すると一人前の人間として人権を保有する人格者になるんです。三カ月か四カ月か足らないということで、くずのごとく捨てられてしまっておるんです。こういう問題は、厚生当局として、この事件が起きる前に私はあったと思うのですが、もう少し積極的に真剣に私は取り組んでもらいたいと思う。私は、今後こういう問題が大きく出てくると思いますが、結局四カ月未満は人間じゃないんだ、おりものである、従って、これはもう清掃関係の始末をしておればいいんだということで処理するのは、私は少し人間性がないんじゃないかと思うんですが、その点について厚生省としては検討されておると思うんですが、何らかの措置を考えなくちゃならぬかどうか、積極的な意見を私は期待しておった。検討するということであれば、だれでも言うことなんです。そういうことでしておられないと思うのです。きょうはあなたがきわめて冷淡な答弁でよろしい。しかし、将来この問題は私は大きい問題になってくると思うのです。現在もう堕胎はほとんどこれはもう常習のようにやられているといいますけれども、これがどれだけ社会悪に影響してくるかということも考えなくちゃならぬと思うのですが、その点についてもう一回厚生大臣に、疲れておられるけれども、一つ張りのある答弁を願いたいと思います。
134 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) つまり妊娠中絶の乱用だと思うのです。これは乱用が一方にあるという点が考えられる点でありますが、その点は私どもの方ででも、妊娠中絶の乱用ということは、これは戒めねばならぬことなんですかち、運用の上の問題として大きに考えなければならぬ、これは私どもの問題だと思います。それから社会道義に頼る以上に、あれに対して強力な措置といえば、犯罪行為として処罰をするとかという問題になると思うのです。これはさっきも申すように、私どもの方でこの問題を直接の関係の職責としては何とも申し上げかねるのでありますから、これは関係の方面と十分話をいたしまして対処するほかないと思うのであります。事柄は、まあけっこうなことですと言っているのではないので、どういう道があるかということを考えるとそういうことになるのじゃないか。犯罪行為にきめるというならば、やはり所管の責任のところと相談の上でないといたし方のない問題でありますので今のように申し上げた。好ましいことだとは毛頭思わぬので、なくしたいものだと思うのであります。
135 山本伊三郎
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○山本伊三郎君 私も時間を急いでおったので、十分質問の説明が足らなかったので、厚生大臣の今答弁でちょっとわかったのですが、なるほど妊娠中絶ということについてはいろいろ問題があります。それは行き過ぎのやつはいけないというが、私はそれもありますけれども、私は、これは優生政策上、また人口調整の上からにおいても、ある程度そういうこともこれはもう絶対いけないという考えではないのです。やはりそういうこともあり得ると思うのですが、あとの措置について、私は今何らの法的な措置がない、こう言うのです。人間の扱いをしておらないと、こう言うのです。要するに、四カ月以下のものは、これはもう婦人のおりものと同じような措置をされて始末をされている。しかも、それが手数料を取って遺棄されておるという、こういうものに対して私は何か考える必要があるんじゃないかと、こう言っておるのですね。これはまあ環境衛生にも影響する問題であるし、そういう点を私は言っておるのです。大阪の医務課長なんかは、法律の不備でやむを得ない、仕方ないということで手をつかねて、それに対して何ら施すすべもないような状態であるので、それじゃ私はいかぬと思う。私は、今日たまたま厚生大臣が見えたので、これについて何とかやはり方法ないものか、こういうことで私は質問しておるのであります。で、この堕胎した人が相当の手数料を出して、ある程度埋葬なりまた、この火葬場でやってもらおうと手数料を出しておるのです。で、それをやらずにどぶ川に遺棄しておる、こういうのですね。そういうことが許せないと私は考えておるのです。その点についてはどう思われるか、これだけなんです。それさえ解明されたら、私これで質問終わるのです。
136 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) いわば死体遺棄罪と同じようにそういう場合は扱ったらよいじゃないかというお話じゃないのでありますか。それじゃ御質問の、何か方法がありそうなもんだとおっしゃるけれども、こういうことをなぜ考えないんだという点が実はつかみがねておるわけです。これは四カ月未満の場合は非常に問題になってくる、法的にですね。そこの、じゃこれを死体遺棄と同じように扱えばそれだけのものでありますね、犯罪にしてしまえば、そのほかに、もっと研究すれば方法があるかもしれませんけれども、端的に言えばそういう問題になるのじゃなかろうか。それならばやはり刑法的な問題になってくるのでありますから、やはり法務省とかとともども検討しませんと、こっちだけの考えでどうということは言いかねるというのでさきのように申し上げたのです。こういうことが好ましいどころじゃない、何とかなくしたいということはまことにその通りに思うのでありまして、方法論について検討をしなければならぬ、したいものだということを申し上げておるわけであります。
137 一松定吉
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○一松定吉君 私は、今の山本君の質問はごもっともだ、実は、さすが山本君だと感心しておるのです。実はあの新聞の記事を見て、私は自分が専門家としてほんとうは驚いたのです。堕胎ということは刑法において禁じている。ああいうように五カ月や六カ月の胎児が八十、百も一体あるなんというようなことそれ自体が非常なこれは違法です。御承知の通り堕胎は刑法の二百十二条以下二百十六条で明らかに禁じておる。ただ堕胎することのできるのは、懐胎した婦女がそのままに胎児を生み落とすということになれば母体に影響がある、それがためにこのままに生み落とせないという医師の診断があった後にその者がいわゆるこれを堕胎することができるということが今の特別法に規定されておる。しかるに、それは今ではほとんど乱用されておるでしょう。乱用されておるということは、刑法の堕胎罪というものを全く乱用しておることになる。これはほんとうに人身保護の建前からいたしましても、厚生省は進んでこれを一つ取り締らなければならぬ。そうして懐胎をしておる婦女がこのままにこれを生むということになれば、この婦女の生命に危険があるというおそれのあるときに限って堕胎することができる。その堕胎されたいわゆる胎児というものを始末する、その始末の仕方が、今春りようなふうに、八十も百もその胎児の死体というものがまとめられて、そうしてこれが川に流されるか焼かれるか知らないが、そういうようなものはやはり人身を保護し、人の生命というものを尊重するという建前から、かりに胎児であっても、人間のもとをなすものであるがゆえに、そのものをおろそかに扱うということは、これ人道に反するのだという建前から、厚生省に限らず、とにかく政府としてそういう点を立法して、法務省あたりと相談をしてやるということが私は必要だと思うが、いかがですか。それは最も大切なことであって、山本君一人が心配するばかりではありません。われわれいやしくも国民であって、自分の胎児というものを大切にしなければならぬものだということを知っている以上は、そういう点に確かに気づかなければならない。しかるに、今はどうかというと、妊娠しておる女が子供を生めば母体が影響するということ以上に、いわゆる私通した婦女の間において、姦通した婦女の間において、人道に反して男女通じて懐胎したというものが多く、そういうふうな意味において、母体に影響があるとかというようないいかげんなことをいって、また、医者がそういう名前をつけてこれを堕胎するという傾向が非常に多いのです。そういうことをやはり取り締まらなければならない。だからして、不義の女がその結果懐妊する、あるいは結婚しない男女が野合して、それがために妊娠するとかというようなものを、いろいろな名前をつけてこれを堕胎するとかというようなことは、これは法律として禁じなければなりません。そこが刑法の堕胎罪というものと、今の婦女の生命に影響のあるときには、医者の判定によってこれを堕胎することができるというこの法律とが互いに衝突しておる、私をして言わしめれば。これは一つの厚生省の問題だけではなくて、厚生省並びに法務省各方面で研究して、これは必ず一つ立法する必要があると私は痛切に感じておりますから、この点について一つ厚生大臣の御意見を承ります。
138 古井喜實
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国務大臣(古井喜實君) 一松先生のお尋ねで、きわめて問題点は明析でございます。先ほども申しましたように、妊娠中絶をやる動機にはいろいろあると思う。動機には間違った動機、やはりいろいろな場合があると思うのです。これは一般の道義心の問題であり、教育の問題であるかも知れぬと思いますが、ただ法で許された場合でなしに妊娠中絶をやるということはお医者がやる場合でありますれば、お医者をまあわれわれが、監督というか、指導という立場上、そういう乱用を起こさぬようにわれわれは大いにまず考えなければならぬ。それから乱用した場合は、やはりこれは法の許さぬ場合になりましょうから、お話のように堕胎罪になる、乱用ですから堕胎罪ということになると思う。これは刑事問題になってしまうと思う。で、また四カ月未満とかいうふうなおろしたものの処置について、四カ月未満とかいう問題になれば、これは法の一つの穴のようなことになっていると思うのですから、立法問題であります。死体の遺棄というものに準じてこれを考えるということになれば、これは刑事の立法問題になると思うのであります。そこで、そういうわけで犯罪を構成するか、または新しくそういう刑事の立法をするかという問題になりますと、法務省ともどもの問題になりますので、で、こういう事実はまことに困ったもので、なくしたい事実でありますので、そういう関係の方面と十分打ち合わせをして検討をしたいと、まあこういう考え方でおるわけであります。
139 一松定吉
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○一松定吉君 今あなたの御意見でけっこうですが、ところが実際は、これは医者が乱用しているのです。だからして不義の胎児だとか、あるいは結婚しない男女間の胎児だとかというようなものが、みな医者のこの乱用権を乱用させてこういう結果を招来しておるということが非常に多いのですから、まあ厚生省としては、そういうことをする医者を一つ十分取り締まって、彼らはそういうようなことで堕胎することによってずいぶん驚くべき代金を取るのですよ。また、堕胎する婦女は相当の驚くべきほどの金を出して自分の不品行を隠蔽する、それが非常に多い。だからして医者を取り締まるということが一つと、それからいま一つは、いわゆる堕胎した胎児、四カ月なり五カ月なりたっておるその胎児を今のようなふうに一所のごみの中に捨てておいて、そうしてそれを一まとめにして川に流すとか焼くとかというようなことは、全く大切な人間として生まるべきもとなんですから、それはやはり相当にこれを尊敬して、墓地をこしらえて埋めるとか何とかというような手続をするということが私は必要だと思うから、そういうことは今大臣が仰せになるように、厚生省ばかりではありませんから、厚生省、法務省その他の関係方面と至急に御相談の上、これは次の国会に政府の提案として一つ立法措置をしてお出しになる、あなた方がお出しにならなければ、山本君なりわれわれが一つ一緒になって国会に議員提出法律案としてこれは出して公布する必要がある。こういうことが今まで全くほったらかされておったのですから、これはほんとうに私は山本君の質問に感激しているのですから、どうか一つこれは厚生省と法務省が相談をして、至急に一つ立法化するようにしてもらいたいということをお願いして、私の質問を終わります。

第40回国会 参議院 予算委員会 第17号 昭和37年3月22日
004 横山フク
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○横山フク君 幼少人口の急減、この問題はあとで伺うことにいたしまして、この人口増加率が非常に急カーブに落ちたということの内容を分析いたしますと、結局人工妊娠中絶が非常に多くの数を占めております。それが言えると思います。申すまでもなく、真の民主化というものは人権の尊重である。人権の尊重の一番基盤をなすものは人命の尊重だと思う。その人命の尊重は胎児であろうとあるいは普通の人であろうと変わりはない。ところが、それが簡単に経済上の理由とか、母体の健康上の理由で中絶されている姿は嘆かわしい姿だと私は思う。ことに、これが健康保険で認められているという形、健康保険で認められているならば、それはおそらく健康上の理由だ。健康上の理由でもって胎児を中絶する、命を断たなければならないという形は相当の病気があるからであります。ところが、そういう病気を抜きにして、ただ中絶そのものだけが健康保険に入っているという姿は、好ましい姿ではないと私は思うのでございます。厚生大臣はどういうふうにお考えになりますか。
005 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 人工妊娠中絶は、御承知のように経済的に特別困難な家庭でありますとか、あるいは母体の保護の必要な場合に限って認められておるものであります。みだりに人工妊娠中絶を行なうというようなことは望ましいとは私は思っておりません。届け出になりました人工妊娠中絶の数だけでも百万件をこえるような状況でありまして、それ以外にも相当あるものと推定をせられておるわけであります。これにつきましては乱用せられることのないように厚生省としてはもっと積極的にこれは注意しなければならない事態である、かように考えておるわけであります。できるだけすこやかな幼児をたくさんに持つことが最も必要だと、こう思っております。特に注意しておる次第であります。
006 横山フク
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○横山フク君 ある外人は日本は堕胎天国だと言っております。大っぴらに堕胎ができて、しかもその手術は技術が非常にすぐれておって、そうして安い。だから観光を兼ねて日本を訪れて中絶をする、これは外国の新聞に出ている。またある外人は、日本に中絶なんかが多いのはあたりまえだ、日本という国には宗教がないから、だから人の命を断つのは何とも思っていない、無理もない、あの大戦であんなに人を殺したじゃないか、こういう形を喧伝されているということは非常に残念な姿だと思うのでございます。私は、健康保険まで認められているということで、私は国がそういう形に何らか法律改正に本来は行きたいとは思いますけれども、少なくとも健康保険でそれを拡大解釈するような形にあるということは、好ましくない姿だと思うのでございます。重ねて厚生大臣にお願いしたいと思います。
007 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどお答え申しましたように、人工妊娠中絶が認められる場合は限られておるわけでございますが、その限界をこえましてこれが行なわれるということは、われわれとしても見るにたえないところでございます。健康保険におきましても、この規制は当然のことでございまして、もしこれが乱に流れるというふうなことがあれば、よほど規制を加えなければならないものと存じます。御本人はもちろんのことでございますが、これに関係する医師の方々に対しましても十分その辺のことについて注意もし指導もし、また道徳的にもよほど考えてほしいものと私どもも存じます。健康保険だからというので、乱に流れることのないようにいたしたいと存じます。
008 横山フク
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○横山フク君 最近ある週刊誌でございますが「死産胎児−捨てられた小さな生命」、「年間、三百万の小さな生命が、ボロのように捨てられている人工妊娠中絶」、こういう見出しでもって週刊誌に載っているのです。そうしてそこには摘出された胎児が実物で名前までついて写真に載っているのでございます。「たしかに一個の人間なのだ」、こういう形、あるいは「とり出されたとき、この子は猫のような声を出した。」といって、その赤ちゃんの写真が大きく載せられているのです。あるいはそのあとのほうでは、取り出された胎児が重なって、そうして名前までついて写真に載っている。「この子はもう物体でしかない」という形で載っている。そうしてその中にあるところの記事を見ますと、「私は好きな人と同棲しているだけで、子供が生まれても、籍もないとかわいそうだし、それにまだ、ほしくないんです。だから、経済的理由ということで手術をうけました」ということをその人が告白しているのが出ているのでございます。あるいはそのあとのほうで、死亡届けを出す、その死亡届けには父母の名前を書く欄があるが、お父さんはだれなの、お母さんはだれなの、お母さんはあなたなんですよ、あら私がお母さんなんですか、と言って赤い舌をペロリと出して笑い出したといっている。非常に今のこの風潮というものは嘆かわしい風潮であると私は思うのでございます。文部大臣は、これに対しましてどういうふうにお考えになりますか。純潔教育というのは一体どういう形で進められておりますのか、お伺いいたしたいと思うのです。
009 荒木萬壽夫
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国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 学校教育の面では、道徳、社会科、保健体育科、特別教育活動などで純潔教育に関する内容を指導することにいたしております。たとえば中学校の道徳におきまして、異性関係の正しいあり方をよく考え、健全な交際をしようという項で指導しております。また、中学校の保健体育科におきましては、中学校生徒の心身の発達の特徴の項におきまして、身体的発達、精神的発達、行動の特性及び身体的発達と精神的発達との関係について理解させることにいたしております。また、高等学校の社会科には倫理社会におきまして、人間性の理解の内容における青年期の問題におきまして、純潔教育の問題を取り扱っております。また、中学校及び高等学校の特別教育活動におきましては、学級活動、中学ではホーム・ルーム、高等学校の時間におきまして、心身の健康の保持の内容としまして、性に対する正しい理解と処理を指導することにいたしております。
 さらに、社会教育におきましては、純潔教育の普及をはかるため必要な資料を作成しまして、社会教育関係者及び一般の参考に供しております。また、婦人学級やPTA、社会学級、青年学級等の諸講座、社会教育関係団体の学習活動として、家庭教育の向上をはかって、青少年の健全育成をはかっておるのであります。家庭教育におきましては、直接、強力な指導もいたしかねますが、これは親の子供に対するしつけの一つの事柄として期待しておるような次第であります。
010 横山フク
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○横山フク君 時間の関係で重ねて伺うことができないんですが、親が子供を教育するという問題はあとで伺わせていただこうと思いますが、純潔教育と同時に、その性道徳というものと同時に、人の命を大事にする、人命尊重、ここを基本となして、そこからおのずからルールができてくるのではないかと思うのです。まあそういう意味で御教育願いたい、教育方針をおきめいただきたいと思うわけであります。
 次に、こういう雑誌が出て、ここには、全部の人たちの涙と怒りを誘ったとありますけれども、実際にこれを若い娘さんたちが見た場合に、私は涙や怒りを誘う前に、妊娠した場合にはこういう方法があるんだという教えをくんで、安易な方法をとる以外にないと思う。私は雑誌がもう少し健全な形をとってほしいと思う。で、幸いに、と言いますか、二十八日に児童福祉審議会でもって勧告権を発動する——勧告権を発動するという形は好ましくないけれども、いかがわしいものに対してはそこまで行こうと踏み切るような形をとっているということを新聞で拝見いたしましたけれども、厚生大臣に、この児童福祉審議会の出版部会のあり方等について、御説明願いたいと思います。
011 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 審議会に出版部会というものがございまして、児童の健全な育成その他につきまして有害なものにつきましては、勧告権を行使いたしまして、自粛をうながすことにいたしておる次第であります。ただいまお述べになりましたような問題につきましては、その勧告権を発動いたしたいと存じております。
012 横山フク
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○横山フク君 非常に勧告権というものはむずかしい問題だと思われるし、行き過ぎてはいけずで、むずかしい問題だと思いますので、しかるべく御措置をお願いしたいと思っております。
 次に、私たちはこういう人工中絶という形が好ましくない姿で、対外的にもよくないんでございますので、家族計画という形で推進しておるわけでございますが、なかなか思うように進まないところに大きな嘆きがございますが、厚生省として、家族計画に対してどのくらいのお力をお入れいただいておるのか、お伺いいたしたいと思います。
013 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 家族計画につきましては、横山さんよく御存じだと思うのでございますが、母体の保護、母子の保健の見地から、保健所に付設されました優生保護相談所を中心にいたしまして、昭和二十七年度から受胎調節実地指導員制度を設けております。また器具、薬品等の購入に困難する人たちに対しまして、低額あるいは無料でそれを配付する制度を設け、さらにまた中小企業の家族計画普及事業に対しましても、ある種の助成補助制度等を行なって、適正な家族計画の推進に努めているような次第でございます。人口の資質を向上する対策の一環としましても、できるだけその普及に努力いたしたいと存じております。現在の普及率は大体五〇%ちょっとこえる程度ではないかと思っております。
014 横山フク
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○横山フク君 ただいまのお話でございますが、優生保護相談所はもう三十六年度で打ち切りのように私は伺っております。でございますので、私は実地指導員が指導する——私も実地指導員の仲間でございますけれども、実地指導員が指導する対象という者以外のところに、私は指導の手を伸ばさなかったら意味がない、低所得者あるいは生活保護階級というのでなくて、それより以外の、あるいはこういう新聞雑誌に載っているような人たちに対しこのPRというか、指導というものがなければならないと思う。私は、それは厚生省でなさる前に文部省で、あるいは高等学校の一つのセックスの、性の教育をするときに、ある程度こういう方面のことを——行き過ぎて、まあ教え方に非常にむずかしい問題があると思いますが、あるいは花嫁になるときに、結婚するときに教えるというような形をとらなければ、子供が三人もできてからの家族計画ではなくて、そのときはもう中絶あるいは子供を一人も作れない計画という形になるのですから、その出発点というのが私は違うのじゃないかと思うのですが、文部大臣は、この家族計画に対してどのくらい学校教育ですか、あるいは花嫁——いろいろな面で御指導ですか、方針をお立てになっていらっしゃるのでしょうか。
015 荒木萬壽夫
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国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。先ほどお答え申し上げましたように、一般的な男女間の性的な関係につきましても、教育をする建前でございますが、家族計画とおっしゃることそれ自体について、具体的にどういう指導をしておりますか、そのことまでは確かめ得ませんけれども、必ずしもお尋ねにお答えし得るような具体性を持った指導は行なわれていないと存じます。
016 横山フク
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○横山フク君 次に移らしていただきます。最近経口避妊薬を厚生省で許可される態勢になったということを私は伺っておりますが、経口避妊薬に対してどういう御処置をおとりになるのでございましょうか。
017 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 現在経口避妊薬につきまして、製造商人の申請が行なわれておるわけであります。この経口避妊薬につきましては、中央薬事審議会の新医薬品調査会におきまして、現在検討いたしておるところであります。この経口避妊薬ホルモン剤の一種でありまして、かつ相当長期にわたって続いて用いられるものでありますから、特にそれがいいか悪いかという検討につきましては、慎重を必要とするのでございます。調査会の専門家の数を臨時に増加いたしまして、慎重に検討を行なっているような次第でございます。この問題につきましては、それが社会的に及ぼす影響も大きいわけでございますので、医学的、薬学的な見地からの検討のほかに、行政上の取り扱いにつきましても格別の考慮を払う必要があると考えられますので、この面についても同時に慎重を期しておるような次第でございます。
018 横山フク
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○横山フク君 ただいまのお話で私ははっきりしないんですが、ではまだ未確定ということでよろしゅうございますか。
019 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 目下慎重に検討中でございますので、お話のとおりに未確定でございます。
020 横山フク
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○横山フク君 で、いつごろ結論を出すおつもりでいらっしゃいますか。
021 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 今申し上げましたように検討中でございますので、まだいつ結論が出るということを、確たることを申し上げる段階でございません。
022 横山フク
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○横山フク君 私はこの四月の五、六日ごろに内分泌学会が神戸で開かれて、そこの答申を待って調査会が開かれて、そして薬事議会にかかって、そのあとでは許可する方針であるということを、私はしかるべき筋から伺っておるのでございますけれども、それはまだその人のあるいは想像であって、そしてそういう形はとらないんだというふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
023 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 専門の学会の方たちの御意見も十分伺わなくちゃならぬと思いますから、審議会といたしまして、先ほど申しましたように、臨時に人までふやしまして慎重に検討いたしておる次第でございます。
024 横山フク
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○横山フク君 あとで社会部会なんかで伺うことにいたします。
 で、人口問題は今まで伺いましたのは量の問題だと思うのです。質の問題というのがあると思う。私は、今までは人口問題はただ悪いものを押えるという形の角度が優生保護法の角度だったと思う。優生保護相談所もその角度だったと思う。しかし、これからはいいものを伸ばすというほうの角度に変えていく、今曲がり角に来てるんじゃないかと私は思うのでございます。申すまでもなく、資源の開発利用のためには科学技術の革新と健康なからだと透徹した頭によるものであるということは申し上げるまでもないので、わが国のように狭い国土で資源の乏しいところで、しかも人口の稠密したところでございましては、もうこの人的資質の向上、これ以外には繁栄と幸福の道はないと考える。で、この人口問題というものは民族の資質向上という角度から考えるべきであろうかと思うのですが、厚生省ではこういう角度からどういう対策をお講じになっていらっしゃいますか。あるいはどういう検討をなすっていらっしゃいましょうか、お伺いいたしたいと思います。
025 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 出生率が減少いたしまして、将来の日本をになう人口の上におきましてもよほど考えなければならない段階に来たかと思います。ことに労働人口等のことを考えました場合にそう考えるわけであります。それだけに人口の資質の向上をはかっていく、人間の能力の向上をはかっていくということは、将来の日本といたしまして特に大切なことではないかと考える次第でございます。さような意味合いにおきまして、妊娠中から十分気をつけまして健全な子供さんを生んでいただく、さらにまた、幼少人口の死亡率をさらに減少いたしまして健全に育てていくということに主眼を置かなければなるまいと思うのでございます。妊娠中の妊婦の方たちの健康指導等につきましても、一そう努力する必要もございまするし、また、出産後の母子の保健衛生におきましても、もっともっと充実した施策をしていかなければならぬ、おかげさまでだんだんとその方向につきましても手をつける状態になって参りました。御承知のように、三才児の一斉検診というようなことも行なわれます。こういうことによりまして幼少人口を育成する上に大きく役立つだろうと思うのでございます。
 来年度はまた妊娠中毒症に関する若干の施策を講ずることになって参ります。これが適正に行なわれますれば、将来もっと健康な子供さんを生むこともできるだろうと期待をいたしておる次第でございます。何分にもまだ不十分でございますので、この方面につきましては、さらに一そうの努力をいたしたいと存じております。
026 横山フク
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○横山フク君 今の御答弁は生まれてから後の指導といった問題に入っていると思う。そうじゃなくて、生まれる以前にこれは相談するというか、あるいは指導の手を伸べるべきだと思う。先ほどお話しになりました優生保護相談所は、三十六年度で閉鎖になると伺っております。私は悪いものを押えるという角度の、そういう面からの相談のケースがなくなったから閉鎖するという形になったと伺っております。そうではなくて、さらにこれをいいものを伸ばしていくという角度から、これを発展的にむしろ内容を充実していくべきものであるかと考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
027 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 優生保護相談所は明年度から廃止ということではございません。継続してこの活動を促して参るつもりでございます。所管が公衆衛生のほうから児童保護のほうに移ったというだけのことでございまして、お話のとおりに、優生保護相談所の活動をさらに充実し、促進させるために努力して参るつもりでございます。お話のありましたとおりに、生まれた後だけでなく、妊娠中から気をつけて参る、そうして妊婦の指導につきまして手の届くようにいたしたいというのが私どもの考え方でございます。保健所の優生保護相談所を一そう活用いたしまして、この方面のことに努力いたしたいと思います。
028 横山フク
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○横山フク君 私は追及いたしませんが、優生保護相談所の費用は家族計画普及会で一切持つような形になったということを家族計画普及会のほうからはっきり聞いております。君にそれはやめます。
 で、この悪い素質を断って、よい素質を伸ばしていくというためには遺伝学的な指導ということがほしいと思う。遺伝学的な素質を持ってその指導に当たる人が一体そこに何人配置されているのでございましょうか。
029 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) この相談所につきましては、十分ではございませんけれども、政府も従来と大体同様の予算を盛っておるわけでございますが、一そう内容の充実には努めて参りたいと思いますが、内部の人的構成につきましては政府委員からお答えを申し上げたいと思います。
030 横山フク
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○横山フク君 いいです。時間が制約されておりますから。それはまた社会部会でゆっくり伺うことにします。弁解を伺う時間がないように思いますので。
 で、これは優生学の大家である福田邦三さんがはっきり言っている。日本で優生学的に指導する相談相手になっていただける人がない。これは人口問題研究所でも、人口問題審議会でもこの問題が一つの何といいますか、欠陥になっているのです。ですから、この問題がうまく指導ができるはずがないと私は思う。そういう点はもう少し今後充実してやっていただきたいということを私はお願いいたしたいと思います。
 次に、先ほど厚生大臣が御答弁になりましたように、幼少人口の激減でございます。現在は百三十七万くらいが年間生産年令の中に増になっていると思います。しかし、四十年から四十五年に対しては九十一万くらいになる、三分の一減ってくると思うのです、さらに四十五年から五十年には五十万、三分の二は減ってくると思うのです。現在のように百三十七万からの人口増といいますが、幼少の年令はさらに大きなものでございますが、死亡と差し引いてそのくらいになる、これがこういうふうに急角度に人口の出生率の急減から生産年令に送り込まれる人たちが急角度に減ってくる、このひずみがどこかにくると私は思う。現在でも中小企業が人手がなくて困っておるわけでございますが、これがそう遠くない将来、昭和四十年には相当大きなそのひずみがくる、四十五年にはさらにくると思いますが、この中小企業の体質改善ということが、今後ますます強く要請される問題であろうかと、あるいは農林関係におきましても、今、食料品が高い。野菜が高い。で、これが物価高といいますか、物価高の寄与率に対して大きな影響を持っているのですが、これの原因がまた農家の人手不足や生産性の立ちおくれにあると思うのです。人手がますます足りなくなったら、この問題を真剣に考えていかなければならぬ問題だろうと思うのですが、通産省あるいは農林省では、どういうふうにこの人口不足に対して、両面からの人口不足に対する対策をお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
031 森清
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○政府委員(森清君) 大臣は他にのっぴきならない所用がございましたので、私がかわって御答弁申し上げたいと思います。当省の所管物資を見ますと、総じて生産性が向上して参りまして、それに伴いまして物価は下落をしております。ただし、一部の中小企業にありましては、労務費が非常にかさんできておりますので、なかなか思うように物価の低落を見ないという状態でございます。特に耐久消費財等に至りましては、三十年から三十六年までの平均を見てみますと、一〇%から五〇%ぐらい下がってきておる。これは御存じのように、ラジオやテレビや、そうした機械類でございますが、基礎物資を見ますと、たとえば鉄鋼、電気、機械等はおおむね一〇%の値下がりを見ております。
032 田中啓一
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田中啓一君 ちょっと関連して。私ここでひとつ今横山さんのおっしゃったような問題、それからまた文部大臣にもいろいろ御質問になっておるのでありますが、それらの問題をきわめるにつきまして、ひとつ基礎的なデータがぜひほしいのであります。それはむずかしいものをいうのじゃございませんが、厚生大臣、厚生省の方にお聞き願いたいのでありますが、三十七年から先、約二十年間ぐらいにわたりまして、毎年どれくらい生まれるのだろうか。毎年どれくらい死ぬのであろうか。したがって、年令別の日本の人口構成はどのようになるのかというのを、これは百二十枚ほど作らなければなりませんが、もうずいぶん御研究になっておりますから、労をいとわなければできるかと思いますので、それをひとつ御提出を願いたいということが一つ。
 それからもう一つは、教育にも非常に関連するのでございますし、また、経済問題にも関連するのでございますが、生まれるうちでいわゆる精薄児といわれておるようなものがどれくらいの割合になるか。精薄を通り越して白痴というようなものもございましょうが、どれくらいあるのか。それから不具に属するでありましょうが、盲とか、ろうとか、あとかいうような人、あるいは手足その他が不自由な人、そういうようなものの割合も、これはできるかと思うのでございます。私どもは、そういう人たちも何とかひとつできるだけ教育をして、そうしてみずからも飯が食え、社会にも貢献できるように彼らがなっていけば、私は非常に好ましいと考えておるのでございまして、これは文部省のほうにも、若干資料がありましょうし、厚生省のほうはもちろん本職でございますので、これは、中には資料をすぐというわけにはいかない部面もございましょうが、何か毎年こういう割合になるのだ、こういうようなものを、これはできるだけ明らかになるように資料をお作り願えませんか。こういう要望でございます。
 以上二点、これは非常にいろいろな論議の基礎データになると思うのです。
033 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) できるだけ資料を整えまして提出いたします。
034 横山フク
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○横山フク君 すべてのことを人口問題を基礎にして計画を立てなかったら、いろいろの点でゆがみがくるだろうと私は思うのです。それで第二次産業から第三次産業に移行する、あるいは大企業のほうに移行するという形になったのです、中小企業は。あるいは農業のほうの労働人口がとられますが、それにも増して生産年令人口に送り込まれる人の減少がひどいわけです。それとのにらみ合わせからも、零細企業なり農業の近代化といいますか、生産性の向上ということの速度というものを早めなかったら、ひずみが二重のひずみとしてくるだろうと思いますが、こういう点に対して格段の御措置をお願いしたいと思います。
 それから人口問題のもう一つの問題は、寿命が延びました結果、老人が非常にふえて参ったわけであります。前時代的な家族制度というのが破れて夫婦単位になった。その結果、老人が町からはみ出てきたという感じが強いわけであります。家族の中の人間関係がこわれて参った。個人主義を主としておるところのヨーロッパでも、家族の間のモラルというものができておるわけでございますね。スープのさめない距離に限界点を置いて、離れて生活していますが、スープのさめない距離という形になっておるわけであります。日本ではなかなか過渡期にある、その上に老齢人口がふえてきた、その二つで今老人問題というのは非常に大きな問題になっていると思うのです。厚生省では老人クラブが二万できたといって喜んでおられますけれども、私は急速に二万できたというところにこの問題が大きな問題として浮かび上がってきているのだと思うわけでございますが、厚生省でこの老人対策に対して、どういうふうなお考え方を持っていらっしゃいますか、お教え願いたいと思います。
035 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) お話のとおりに、老齢人口がだんだんふえて参っておるわけでございます。しかも、また家庭生活の状況も変わって参りました。いわゆる近代化の傾向と申しますか、さような状態になっておりますので、各方面からこれに対して対処する道を考えなければならないわけでございます。厚生省といたしましては、このふえていく労働人口、老齢者の方々に対する社会保障的方面の充実を一そうはかって参らなければなりません。また、従来からやっておりますところの老人福祉の施設等につきましても、一そうの充実をはかって参らなければならないと存じまして、関係の諮問機関に対しましても、この老人福祉対策について、適正な方策を検討していただきたいというような諮問を発しまして、今日検討中でございますが、あるいは老人ホームでありますとか、あるいは老人のアパートでありますとか、あるいは老人クラブでありますとか、いろいろ考えられる道はございますが、これらにつきまして一そう拡充して参らなければならぬと思いますが、同時に、老齢年金その他につきましても、今後その内容の充実を一そうはかって参らなければなりません。同時にまた、いわゆる老人病と申しますか、そういうふうなものが大きく取り上げられて参りまして、この老人病対策につきましても検討を進め、研究を進めまして、老人の生活の上に一そうの福祉がもたらされるようにいたしたいと思います。
036 横山フク
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○横山フク君 次にもう一度厚生大臣にお伺いしたいのですが、私は現在の民法が個人を重視して、自然的媒介的統一体たる家庭を軽視している。そして家庭が危殆に瀕することほど、国民の精神的、道徳的状態をゆがめるものはないと思うのであります。家庭というものが基本にならなければならぬと思うのですが、家庭保護、厚生省でかつて青少年家庭問題省というものを、これを児童福祉審議会で審議され、その中の家庭作り、それに対して何らかの方針をお立てになるように伺っておって非常にいいことだと思ったのですが、あの問題はどういうふうになったのでございましょうか。
037 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 家庭が大事であることは申すまでも、ございません。ややもすると、家庭が崩壊する傾向もないとは申し上げにくいのであります。また、ある意味においては、これは必然的な傾向があるというふうに考えるのでありますが、その間に家庭作りにつきまして十分配慮しなければならぬと思うのでありますが、この問題につきましては、厚生省といたしましては検討を重ねておるところでございます。ことに近ごろの年若い青少年の状態を考えますときに、この問題を改善いたしますためには、家庭というものが非常に大きな役割を果たすと存じますので、いろいろな対策と合わせてこの問題についてはさらに検討を続けて参りたいと存じます。
038 横山フク
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○横山フク君 現在ある家庭を保護する、あるいは指導するという形でなくて、将来家庭を作らしてあげるという形に対しての家庭青少年問題省がそれをやっているのだ。売春防止法を作って——これは非常にいいことだと思うのですが、それで売春婦の保護更生をするというのは当然だと思うのです。しかし同時に、青年が家庭に落ち着きやすいような状態にするだけの行政的施策というものがなかったら、これは片手落ちといいますか、片手落ちという言葉もおかしいけれども、意味がないと思うのです。厚生省で心配事相談所を作るとか、あるいは結婚相談所を作るとか、あるいは結婚して籍を入れたときに、そういう人は同時に優先的に住宅公団の家に入れるというような、そこまでの配慮をしていただいて、家庭作りに一生懸命になっていただかなければならぬのじゃないかと思うわけです。厚生大臣にその点のお考えを承らしていただきたいと思っております。
039 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 御趣旨はごもっともでございます。いろいろな角度から総合的に努力しなければならぬと思うのでございます。健全な、正常な家庭を作るために、教育的な面もございましょうし、あるいは保健衛生的な面もございましょうし、また最も大きな問題として頭を悩ましておる問題は住宅の問題でございます。この住宅の問題、住居を与える問題につきましても、関係省その他と協力いたしまして厚生省としても努力を払わなければならない問題と存じております。

第40回国会 参議院 予算委員会 第17号 昭和37年3月22日
002 横山フク
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○横山フク君 まず、厚生大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、人口問題に関しまして、厚生大臣はどういうふうにお思いになるのか。出生率が非常に下がって、京都のごときは十四、平均して十七という形になっておりますが、この問題に対しましてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
003 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。わが国の人口の動態が、昔はいわゆる多産多死型と申しますか、出生率も多いかわりにまた死亡率も高かったわけでございます。近来この状態が非常に変わって参りまして、いわゆる少産少死型に移って参りました。人口の構造が大きく変わって参りましたので、その関係からいたしまして、国民生活にも非常に大きな影響を与えて参っておる次第でございます。生産面でもあるいは老令人口が近年非常に著しくふえて参りましたのに対しまして、幼少人口が減っていくような傾向になって参りましたことは、将来の人口問題といたしまして、この辺について特に検討をしなければならないものがあるように思います。
004 横山フク
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○横山フク君 幼少人口の急減、この問題はあとで伺うことにいたしまして、この人口増加率が非常に急カーブに落ちたということの内容を分析いたしますと、結局人工妊娠中絶が非常に多くの数を占めております。それが言えると思います。申すまでもなく、真の民主化というものは人権の尊重である。人権の尊重の一番基盤をなすものは人命の尊重だと思う。その人命の尊重は胎児であろうとあるいは普通の人であろうと変わりはない。ところが、それが簡単に経済上の理由とか、母体の健康上の理由で中絶されている姿は嘆かわしい姿だと私は思う。ことに、これが健康保険で認められているという形、健康保険で認められているならば、それはおそらく健康上の理由だ。健康上の理由でもって胎児を中絶する、命を断たなければならないという形は相当の病気があるからであります。ところが、そういう病気を抜きにして、ただ中絶そのものだけが健康保険に入っているという姿は、好ましい姿ではないと私は思うのでございます。厚生大臣はどういうふうにお考えになりますか。
005 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 人工妊娠中絶は、御承知のように経済的に特別困難な家庭でありますとか、あるいは母体の保護の必要な場合に限って認められておるものであります。みだりに人工妊娠中絶を行なうというようなことは望ましいとは私は思っておりません。届け出になりました人工妊娠中絶の数だけでも百万件をこえるような状況でありまして、それ以外にも相当あるものと推定をせられておるわけであります。これにつきましては乱用せられることのないように厚生省としてはもっと積極的にこれは注意しなければならない事態である、かように考えておるわけであります。できるだけすこやかな幼児をたくさんに持つことが最も必要だと、こう思っております。特に注意しておる次第であります。
006 横山フク
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○横山フク君 ある外人は日本は堕胎天国だと言っております。大っぴらに堕胎ができて、しかもその手術は技術が非常にすぐれておって、そうして安い。だから観光を兼ねて日本を訪れて中絶をする、これは外国の新聞に出ている。またある外人は、日本に中絶なんかが多いのはあたりまえだ、日本という国には宗教がないから、だから人の命を断つのは何とも思っていない、無理もない、あの大戦であんなに人を殺したじゃないか、こういう形を喧伝されているということは非常に残念な姿だと思うのでございます。私は、健康保険まで認められているということで、私は国がそういう形に何らか法律改正に本来は行きたいとは思いますけれども、少なくとも健康保険でそれを拡大解釈するような形にあるということは、好ましくない姿だと思うのでございます。重ねて厚生大臣にお願いしたいと思います。
007 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどお答え申しましたように、人工妊娠中絶が認められる場合は限られておるわけでございますが、その限界をこえましてこれが行なわれるということは、われわれとしても見るにたえないところでございます。健康保険におきましても、この規制は当然のことでございまして、もしこれが乱に流れるというふうなことがあれば、よほど規制を加えなければならないものと存じます。御本人はもちろんのことでございますが、これに関係する医師の方々に対しましても十分その辺のことについて注意もし指導もし、また道徳的にもよほど考えてほしいものと私どもも存じます。健康保険だからというので、乱に流れることのないようにいたしたいと存じます。
008 横山フク
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○横山フク君 最近ある週刊誌でございますが「死産胎児−捨てられた小さな生命」、「年間、三百万の小さな生命が、ボロのように捨てられている人工妊娠中絶」、こういう見出しでもって週刊誌に載っているのです。そうしてそこには摘出された胎児が実物で名前までついて写真に載っているのでございます。「たしかに一個の人間なのだ」、こういう形、あるいは「とり出されたとき、この子は猫のような声を出した。」といって、その赤ちゃんの写真が大きく載せられているのです。あるいはそのあとのほうでは、取り出された胎児が重なって、そうして名前までついて写真に載っている。「この子はもう物体でしかない」という形で載っている。そうしてその中にあるところの記事を見ますと、「私は好きな人と同棲しているだけで、子供が生まれても、籍もないとかわいそうだし、それにまだ、ほしくないんです。だから、経済的理由ということで手術をうけました」ということをその人が告白しているのが出ているのでございます。あるいはそのあとのほうで、死亡届けを出す、その死亡届けには父母の名前を書く欄があるが、お父さんはだれなの、お母さんはだれなの、お母さんはあなたなんですよ、あら私がお母さんなんですか、と言って赤い舌をペロリと出して笑い出したといっている。非常に今のこの風潮というものは嘆かわしい風潮であると私は思うのでございます。文部大臣は、これに対しましてどういうふうにお考えになりますか。純潔教育というのは一体どういう形で進められておりますのか、お伺いいたしたいと思うのです。
009 荒木萬壽夫
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国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 学校教育の面では、道徳、社会科、保健体育科、特別教育活動などで純潔教育に関する内容を指導することにいたしております。たとえば中学校の道徳におきまして、異性関係の正しいあり方をよく考え、健全な交際をしようという項で指導しております。また、中学校の保健体育科におきましては、中学校生徒の心身の発達の特徴の項におきまして、身体的発達、精神的発達、行動の特性及び身体的発達と精神的発達との関係について理解させることにいたしております。また、高等学校の社会科には倫理社会におきまして、人間性の理解の内容における青年期の問題におきまして、純潔教育の問題を取り扱っております。また、中学校及び高等学校の特別教育活動におきましては、学級活動、中学ではホーム・ルーム、高等学校の時間におきまして、心身の健康の保持の内容としまして、性に対する正しい理解と処理を指導することにいたしております。
 さらに、社会教育におきましては、純潔教育の普及をはかるため必要な資料を作成しまして、社会教育関係者及び一般の参考に供しております。また、婦人学級やPTA、社会学級、青年学級等の諸講座、社会教育関係団体の学習活動として、家庭教育の向上をはかって、青少年の健全育成をはかっておるのであります。家庭教育におきましては、直接、強力な指導もいたしかねますが、これは親の子供に対するしつけの一つの事柄として期待しておるような次第であります。
010 横山フク
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○横山フク君 時間の関係で重ねて伺うことができないんですが、親が子供を教育するという問題はあとで伺わせていただこうと思いますが、純潔教育と同時に、その性道徳というものと同時に、人の命を大事にする、人命尊重、ここを基本となして、そこからおのずからルールができてくるのではないかと思うのです。まあそういう意味で御教育願いたい、教育方針をおきめいただきたいと思うわけであります。
 次に、こういう雑誌が出て、ここには、全部の人たちの涙と怒りを誘ったとありますけれども、実際にこれを若い娘さんたちが見た場合に、私は涙や怒りを誘う前に、妊娠した場合にはこういう方法があるんだという教えをくんで、安易な方法をとる以外にないと思う。私は雑誌がもう少し健全な形をとってほしいと思う。で、幸いに、と言いますか、二十八日に児童福祉審議会でもって勧告権を発動する——勧告権を発動するという形は好ましくないけれども、いかがわしいものに対してはそこまで行こうと踏み切るような形をとっているということを新聞で拝見いたしましたけれども、厚生大臣に、この児童福祉審議会の出版部会のあり方等について、御説明願いたいと思います。
011 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 審議会に出版部会というものがございまして、児童の健全な育成その他につきまして有害なものにつきましては、勧告権を行使いたしまして、自粛をうながすことにいたしておる次第であります。ただいまお述べになりましたような問題につきましては、その勧告権を発動いたしたいと存じております。
012 横山フク
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○横山フク君 非常に勧告権というものはむずかしい問題だと思われるし、行き過ぎてはいけずで、むずかしい問題だと思いますので、しかるべく御措置をお願いしたいと思っております。
 次に、私たちはこういう人工中絶という形が好ましくない姿で、対外的にもよくないんでございますので、家族計画という形で推進しておるわけでございますが、なかなか思うように進まないところに大きな嘆きがございますが、厚生省として、家族計画に対してどのくらいのお力をお入れいただいておるのか、お伺いいたしたいと思います。
013 灘尾弘吉
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国務大臣灘尾弘吉君) 家族計画につきましては、横山さんよく御存じだと思うのでございますが、母体の保護、母子の保健の見地から、保健所に付設されました優生保護相談所を中心にいたしまして、昭和二十七年度から受胎調節実地指導員制度を設けております。また器具、薬品等の購入に困難する人たちに対しまして、低額あるいは無料でそれを配付する制度を設け、さらにまた中小企業の家族計画普及事業に対しましても、ある種の助成補助制度等を行なって、適正な家族計画の推進に努めているような次第でございます。人口の資質を向上する対策の一環としましても、できるだけその普及に努力いたしたいと存じております。現在の普及率は大体五〇%ちょっとこえる程度ではないかと思っております。
014 横山フク
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○横山フク君 ただいまのお話でございますが、優生保護相談所はもう三十六年度で打ち切りのように私は伺っております。でございますので、私は実地指導員が指導する——私も実地指導員の仲間でございますけれども、実地指導員が指導する対象という者以外のところに、私は指導の手を伸ばさなかったら意味がない、低所得者あるいは生活保護階級というのでなくて、それより以外の、あるいはこういう新聞雑誌に載っているような人たちに対しこのPRというか、指導というものがなければならないと思う。私は、それは厚生省でなさる前に文部省で、あるいは高等学校の一つのセックスの、性の教育をするときに、ある程度こういう方面のことを——行き過ぎて、まあ教え方に非常にむずかしい問題があると思いますが、あるいは花嫁になるときに、結婚するときに教えるというような形をとらなければ、子供が三人もできてからの家族計画ではなくて、そのときはもう中絶あるいは子供を一人も作れない計画という形になるのですから、その出発点というのが私は違うのじゃないかと思うのですが、文部大臣は、この家族計画に対してどのくらい学校教育ですか、あるいは花嫁——いろいろな面で御指導ですか、方針をお立てになっていらっしゃるのでしょうか。
015 荒木萬壽夫
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国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。先ほどお答え申し上げましたように、一般的な男女間の性的な関係につきましても、教育をする建前でございますが、家族計画とおっしゃることそれ自体について、具体的にどういう指導をしておりますか、そのことまでは確かめ得ませんけれども、必ずしもお尋ねにお答えし得るような具体性を持った指導は行なわれていないと存じます。
S23~29年 10回(会期数)
S32~39年 7回
S40 ~49年 26回
S50 ~59年 43回……優生保護法改正関連
S60 ~H6年 19回
H7 ~16年  47回……ジェンダー、リプロ?? 
H17 ~26年 26回
H27 ~現在 23回

*1:S26発売のエーザイのサンプーン(有効成分Menfegal)ではないか