リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

1952年時点での優生保護法

日本は中絶に保険がきく

厚生労働省がWHOに対して、以下の文書を証拠に「日本では中絶に保険がきく」と主張しているそうです。

・優生保護法による優生手術及び人工妊娠中絶術の保険給付について(◆昭和27年09月29日保発第56号)

条文が現在の母体保護法とは違い、経済的理由の位置づけも違います。1952年の経済条項が入った時の(あるいはそれ以降の)文書と思われるので、該当する条文は次になるかと思われます。

(医師の認定による人工妊娠中絶)
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師
(以下指定医師という。)は、左の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の
同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 本人又は配偶者が精神病、精神薄弱、精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を
有しているもの
二 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、
遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を有しているもの
三 本人又は配偶者が癩疾患に罹つているもの
四 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそ
れのあるもの
五 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫され
て妊娠したもの
2 前項に同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないと
き又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。
3 人工妊娠中絶の手術を受ける本人が精神病者又は精神薄弱者であるときは、精神衛生
法第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)
又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意
をもつて本人の同意とみなすことができる。

現状では次の通り。

第三章 母性保護
(医師の認定による人工妊娠中絶)
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫かんいんされて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。

【史料】優生保護法の一部を改正する法律(1952年) - 比較ジェンダー史研究会でも確認が取れました。
こちらのサイトでは、当初の優生保護法、1952年の改正時の法文……と優生保護法の変遷が明記されています。史料として助かりますね!

なお、手持ちの本では『中絶禁止への反問 悲しみを裁けますか』編集(社)日本家族計画連盟、発行 人間の科学社(1983)にも当時の(改悪問題が生じていた頃の)優生保護法の条文が載っていました。

国会の議事録でも確認できました。
https://kokkai.ndl.go.jp/minutes/api/v1/detailPDF/img/101315254X02519520327