リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

優生保護法の変遷

制定時(1948)、経済的理由(1949)、指定医師一人で可能(1952)

成立時の条文
優生保護法

衆議院トップページ >立法情報 >制定法律情報 >第002回国会 制定法律の一覧 >優生保護法
法律第百五十六号(昭二三・七・一三)

  ◎優生保護法

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。

2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

   第二章 優生手術

 (任意の優生手術)

第三条 医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、任意に、優生手術を行うことができる。但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない。

 一 本人又は配偶者が遺伝性精神変質症、遺伝性病的性格、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇形を有しているもの

 二 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が、遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神変質症、遺伝性病的性格、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇形を有し、且つ、子孫にこれが遺伝する虞れのあるもの

 三 本人又は配偶者が、癩疾患に罹り、且つ子孫にこれが伝染する虞れのあるもの

 四 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼす虞れのあるもの

 五 現に数人の子を有し、且つ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下する虞れのあるもの

2 前項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。

 (強制優生手術の審査の申請)

第四条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、前条の同意を得なくとも、都道府県優生保護委員会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。

 (優生手術の審査)

第五条 都道府県優生保護委員会は、前条の規定による申請を受けたときは、優生手術を受くべき者にその旨を通知するとともに、同条に規定する要件を具えているかどうかを審査の上、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者及び優生手術を受くべき者に通知する。

2 都道府県優生保護委員会は、優生手術を行うことが適当である旨の決定をしたときは、申請者及び関係者の意見をきいて、その手術を行うべき医師を指定し、申請書、優生手術を受くべき者及び当該医師に、これを通知する。

 (再審査の申請)

第六条 前条第一項の規定によつて、優生手術を受くべき旨の決定を受けた者は、その決定に異議があるときは、同条同項の通知を受けた日から二週間以内に、中央優生保護委員会に対して、その再審査を申請することができる。

2 前項の優生手術を受くべき旨の決定を受けた者の配偶者、親権者、後見人又は保佐人もまた、その再審査を申請することができる。

 (優生手術の再審査)

第七条 中央優生保護委員会は、前条の規定による再審査の請求を受けたときは、その旨を、手術を行うべき医師に通知するとともに、審査の上、改めて、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、再審査の申請者、優生手術を受くべき者、都道府県優生保護委員会及び手術を行うべき医師に通知する。

 (審査に関する意見の申述)

第八条 第四条の規定による申請者、優生手術を受くべき者及びその配偶者、親権者、後見人又は保佐人は、書面又は口頭で、都道府県優生保護委員会又は中央優生保護委員会に対し、第五条第一項の審査又は前条の再審査に関して、事実又は意見を述べることができる。

 (訴の提起)

第九条 中央優生保護委員会の決定に対して不服のある者は、第七条の通知を受けた日から一箇月以内に訴を提起することができる。

 (優生手術の実施)

第十条 優生手術を行うことが適当である旨の決定に異議がないとき又はその決定若しくはこれに関する判決が確定したときは、第五条第二項の医師が、優生手術を行う。

 (費用の国庫負担)

第十一条 前条の規定によつて行う優生手術に関する費用は、政令の定めるところによつて、国庫の負担とする。

   第三章 母性保護

 (任意の人工妊娠中絶)

第十二条 都道府県の区域を単位として設立せられた社団法人たる医師会の指定する医師(以下指定医師という。)は、第三条第一項第一号から第四号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、任意に、人工妊娠中絶を行うことができる。

2 前項の同意には、第三条第二項の規定を準用する。

 (人工妊娠中絶の審査の申請)

十三条 指定医師は、左の各号の一に該当する者に対して、人工妊娠中絶を行うことが母性保護上必要であると認めるときは、本人及び配偶者の同意を得て、地区優生保護委員会に対し、人工妊娠中絶を行うことの適否に関する審査を、申請することができる。

 一 別表中第一号又は第二号に掲げる疾患に罹つているもの

 二 分娩後一年以内の期間に更に妊娠し、且つ、分娩によつて母体の健康を著しく害する虞れのあるもの

 三 現に数人の子を有している者が更に妊娠し、且つ、分娩によつて母体の健康を著しく害する虞れのあるもの

 四 暴行若しくは脅迫によつて、又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて、妊娠したもの

2 前項の申請には、同項第一号から第三号の場合にあつては他の医師の意見書を、同条第四号の場合にあつては民生委員の意見書を添えることを要する。

3 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足り、本人が心神喪失の状況にあるときは後見人又は保佐人の同意をもつてこれに代えることができる。

 (人工妊娠中絶の審査)

第十四条 地区優生保護委員会は、前条第一項の規定による申請を受けたときは、命令の定める期間内に、同条第一項に規定する要件を具えているかどうか及び未成年者についてはその同意が他から強制されたものでないかどうかを審査の上、人工妊娠中絶を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者に通知する。

 (人工妊娠中絶の実施)

第十五条 指定医師は、前条の決定に従い、人工妊娠中絶を行うことができる。

   第四章 優生保護委員会

 (優生保護委員会)

第十六条 優生手術及び人工妊娠中絶に関する適否の審査その他この法律で定める優生保護上必要な事項を処理するため、優生保護委員会を置く。

 (種類と権限)

第十七条 優生保護委員会は、中央優生保護委員会、都道府県優生保護委員会及び地区優生保護委員会とする。

2 中央優生保護委員会は、厚生大臣の監督に属し、主として優生手術に関する適否の再審査を行う外、この法律で定める優生保護上必要な事項を処理する。

3 都道府県優生保護委員会は、都道府県ごとにこれを置き、都道府県知事の監督に属し、優生手術に関する適否の審査を行う。

4 地区優生保護委員会は、保健所の区域ごとにこれを置き、都道府県知事の監督に属し、人工妊娠中絶に関する適否の審査を行う。

 (構成)

第十八条 中央構生保護委員会は委員三十人以内で、都道府県優生保護委員会は委員十人以内で、地区優生保護委員会は委員五人以内で、これを組織する。

2 各優生保護委員会において、特に必要があるときは、臨時委員を置くことができる。

3 委員及び臨時委員は、医師、民生委員、裁判官、検察官、関係行政庁の官吏又は吏員その他学識経験ある者の中から、中央優生保護委員会にあつては厚生大臣が、都道府県優生保護委員会及び地区優生保護委員会にあつては都道府県知事が、それぞれ、これを命ずる。

4 各優生保護委員会に、委員の互選による委員長一人を置く。

 (委任事項)

第十九条 この法律で定めるものの外、委員の任期、委員長の職務その他優生保護委員会の運営に関して必要な事項は、命令でこれを定める。

   第五章 優生結婚相談所

 (優生結婚相談所)

第二十条 優生保護の見地から結婚の相談に応ずるとともに、遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上を図つて、不良な子孫の出生を防止するため優生結婚相談所を設置する。

 (配置)

第二十一条 優生結婚相談所は、都道府県に少くとも一箇所以上、これを設置する。

2 優生結婚相談所は、保健所に、これを附置することができる。

 (設置の認可)

第二十二条 国以外の者は、優生結婚相談所を設置しようとするときは、厚生大臣の認可を得なければならない。

2 前項の優生結婚相談所は、厚生大臣の定める基準によつて医師をおき、検査その他に必要な設備をそなえなければならない。

 (名称の独占)

第二十三条 この法律による優生結婚相談所でなければ、その名称中に、優生結婚相談所たることを示す文字を用いてはならない。

 (委任事項)

第二十四条 この法律で定めるものの外、優生結婚相談所に関して必要な事項は、命令でこれを定める。

   第六章 届出、禁止その他

 (届出)

第二十五条 医師又は指定医師は、第三条第一項、第十条又は第十五条の規定によつて優生手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その日から三日以内に、その旨を、理由を記して、都道府県知事に届け出なければならない。

 (通知)

第二十六条 優生手術を受けた者は、婚姻しようとするときは、その相手方に対して、優生手術を受けた旨を通知しなければならない。

 (秘密の保持)

第二十七条 優生保護委員会の委員及び臨時委員、優生手術若しくは人工妊娠中絶の審査若しくは施行の事務に従事した公務員又は優生結婚相談所の職員は、職務上知り得た人の秘密を、漏らしてはならない。その職を退いた後においても同様とする。

 (禁止)

第二十八条 何人も、この法律の規定による場合の外、故なく、優生手術を行つてはならない。

   第七章 罰則

 (第二十二条違反)

第二十九条 第二十二条の規定に違反して、厚生大臣の認可を得ないで優生結婚相談所を開設したものは、これを五千円以下の罰金に処する。

 (第二十三条違反)

第三十条 第二十三条の規定に違反して、優生結婚相談所たることを示す名称を用いた者は、これを千円以下の過料に処する。

 (第二十五条違反)

第三十一条 第二十五条の規定に違反して、届出をせず又は虚偽の届出をした者は、これを一万円以下の罰金に処する。

 (第二十七条違反)

第三十二条 第二十七条の規定に違反して、故なく、人の秘密を漏らした者は、これを六月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。

 (第二十八条違反)

第三十三条 第二十八条の規定に違反して、優生手術を行つた者は、これを一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。そのために、人を死に至らしめたときは、三年以下の懲役に処する。

   附 則

 (施行期日)

第三十四条 この法律は、公布の日から起算して六十日を経過した日から、これを施行する。

 (関係法律の廃止)

第三十五条 国民優生法(昭和十五年法律第百七号)は、これを廃止する。

 (罰則規定の効力の存続)

第三十六条 この法律施行前になした違反行為に対する罰則の適用については、前条の法律は、この法律施行後も、なおその効力を有する。

 (届出の特例)

第三十七条 第二十五条の規定は、昭和二十一年厚生省令第四十二号(死産の届出に関する規程)の規定による届出をした場合は、その範囲内で、これを適用しない。

 

別 表

 一 遺伝性精神病

精神分裂病
躁鬱病
真性癲癇

 二 遺伝性精神薄弱
白痴
痴愚
魯鈍
 
 三 強度且つ悪質な遺伝性精神変質症
著しい性欲異常
兇悪な常習性犯罪者
 
 四 強度且つ悪質な遺伝性病的性格
分裂病
循環病質
癲癇病質

 五 強度且つ悪質な遺伝性身体疾患
遺伝性進行性舞踏病
遺伝性脊髄性運動失調症
遺伝性小脳性運動失調症
筋萎縮性側索硬化症
脊髄性進行性筋萎縮症
神経性進行性筋萎縮症
進行性筋性筋栄養障碍症
筋緊張病
筋痙攣性癲癇
遺伝性震顫症
家族性小児四肢麻痺
痙攣性脊髄麻痺
強直性筋萎縮症
先天性筋緊張消失症
先天性軟骨発育障碍
多発性軟骨性外骨腫
白児
魚鱗癬
多発性軟性神経繊維腫
結節性硬化症
色素性乾皮症
先天性表皮水疱症
先天性ポルフイリン尿症
先天性手掌足蹠角化症
遺伝性視神経萎縮
網膜色素変性
黄斑部変性
網膜膠腫
先天性白内障
色盲
牛眼
黒内障性白痴
先天性眼球震盪
青色鞏膜
先天性聾
遺伝性難聴
血友病
 
 六 強度な遺伝性奇型
裂手、裂足
指趾部分的肥大症
顔面披裂
先天性無眼球症
嚢性脊髄披裂
先天性骨欠損症
先天性四肢欠損症
小頭症
 
 その他厚生大臣の指定するもの
(法務総裁・厚生・内閣総理大臣署名)

経済条項が入った1949年の法改正

衆議院トップページ >立法情報 >制定法律情報 >第005回国会 制定法律の一覧 >法律第二百十六号(昭二四・六・二四)

法律第二百十六号(昭二四・六・二四)

優生保護法の一部を改正する法律

 優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

 第三条第一項第一号中「遺伝性精神変質症、遺伝性病的性格」を「遺伝性精神病質」に改め、同項第二号中「遺伝性精神変質症、遺伝性病的性格」を「遺伝性精神病質」に、「有し、且つ、子孫にこれが遺伝する虞れのあるもの」を「有しているもの」に改める。

 第四条中「前条の同意を得なくとも、」を削り、「申請することができる。」を「申請しなければならない。」に改める。

 第十三条第一項中第一号から第三号までを次のように改め、第四号を第三号とする。

一 本人又は配偶者が精神病又は精神薄弱であるもの

二 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する虞れのあるもの

 同条第二項を次のように改める。

2 前項の申請には、同項第一号の場合にあつては他の医師の意見書を、同項第二号の場合にあつては身体的理由によるときは他の医師の、経済的理由によるときは他の医師及び民生委員の意見書を、同項第三号の場合にあつては民生委員の意見書を添えることを要する。

同条第三項を次のように改める。

3 第一項の同意には、第三条第二項の規定を準用する。

4 本人が心神喪失の状態にあるため、その意思を表示することができない場合において、親権者、後見人又は保佐人があるときは、親権者、後見人又は保佐人の、親権者、後見人又は保佐人がないときは、親族の同意をもつて本人の同意に代えることができ、そのいずれもないときは、本人の同意を必要としない。

 第二十条を次のように改める。

 (優生結婚相談所)

第二十条 優生保護の見地から結婚の相談に応じ遺伝その他優生保護上必要な知識の普及向上を図るとともに、受胎調節に関する適正な方法の普及指導をするため、優生結婚相談所を設置する。

 第二十八条中「優生手術」を「生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射」に改める。

 第三十三条中「違反して、優生手術を行つた者」を「違反した者」に改める。

 別表を次のように改める。

 別表

一 遺伝性精神病
精神分裂病
そううつ病
てんかん

二 遺伝性精神薄弱

三 顕著な遺伝性精神病質
顕著な性欲異常
顕著な犯罪傾向

四 顕著な遺伝性身体疾患
ハンチントン氏舞踏病
遺伝性脊髄性運動失調症
遺伝性小脳性運動失調症
神経性進行性筋い縮症
進行性筋性筋栄養障がい症
筋緊張病
先天性筋緊張消失症
先天性軟骨発育障がい
白児
魚りんせん
多発性軟性神経繊維しゆ
結節性硬化症
先天性表皮水ほう症
先天性ポルフイリン尿症
先天性手掌足しよ角化症
遺伝性視神経い縮
網膜色素変性
色盲
先天性眼球震とう
青色きよう膜
遺伝性の難聴又はつんぼ
血友病

五 強度な遺伝性奇型
裂手、裂足
先天性骨欠損症

 第一次改正法律附則

 この法律は、公布の日から施行する。

(厚生・内閣総理大臣署名)

中絶可能週数を妊娠8月未満に変更

旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律第21条に基づく調査報告書の提出
末尾に一覧と目次

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/shiryo/140yuusei_houkokusho_1-4.docx/$File/140yuusei_houkokusho_1-4.docx

人工妊娠中絶については、優生保護法第2条第2項において「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう」と定められ、この「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」については、昭和28年6月18日の厚生事務次官通知により、通常、妊娠8月未満とされていた*1 。しかし、未熟児医療の進歩によりこの胎児の生育限界について疑問が呈され、昭和42年の日本産科婦人科学会総会の関連諸会議においても問題提起がなされていたが 、先述した菊田事件で菊田昇医師が「7か月胎児の中絶は殺人」と訴えたことで一般の耳目を集めていた。
 第76回国会(臨時会)の昭和50年11月7日、参議院予算委員会において、菊田医師の要請を受けた下村泰議員 は優生保護法第2条の中絶の定義に関し、いわゆる母体外生存不可能時期を何か月と見ているか尋ね、田中正巳厚生大臣は、優生保護法第2条の「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期」については世界各国に非常な論争があると聞いており、WHOでは8か月未満と一応決めているがアメリカとヨーロッパではまだ意見が違っている、専門家の話を聞くと今日未熟児対策等が進んできたので1か月ぐらい早い期間でも何とかなるケースがあると聞いており、現状の8か月未満を1か月程度短縮するよう検討することを約束したい旨答弁がなされた 。
 この国会答弁を受け、田中厚生大臣が昭和50年11月12日、今の7か月児まで認められている中絶は好ましくないので1か月短縮したい、外部からの反対があっても私の責任で中絶時期の短縮は実行する旨表明したことが、「菊田医師の批判いれる」との見出しで報じられた 。厚生省は昭和51年1月20日事務次官通知を発出し、人工妊娠中絶の実施を認める胎児が母体外において生命を保持することのできない時期の基準は、通常、妊娠第7月未満であることとした 。なお、これについて、日本母性保護医協会の常務理事も務める松浦鉄日本医師会常任理事は、この変更は昭和51年1月中旬の日本産科婦人科学会と日本母性保護医協会からの見解を踏まえたもので、「一部の新聞が、今回の改定を、いわゆる実子特例法推進論者の主張との関連において取り上げているのは誤りである」とあえて断じている 。

「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」については:

  • 1953年6月18日の厚生事務次官通知により、通常、「妊娠8月未満」とした。
  • 1976年1月20日事務次官通知により、「通常、妊娠第7月未満」とされ*2とし。
  • 1990年3月20日に「優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準について」との事務次官通知を発出し、平成3年1月1日から人工妊娠中絶の可能時期を通常妊娠満22週未満とした*3

1952年には指定医師一人で中絶可能になった

衆議院トップページ >立法情報 >制定法律情報 >第013回国会 制定法律の一覧 >法律第百四十一号(昭二七・五・一七)

法律第百四十一号(昭二七・五・一七)

優生保護法の一部を改正する法律

優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。

第三条の見出しを「(医師の認定による優生手術)」に改め、同条第一項中「任意に、」を削り、同項第一号を次のように改める。

一 本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇型を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの

同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。

2 前項第四号及び第五号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による優生手術を行うことができる。

第四条の見出しを「(審査を要件とする優生手術の申請)」に改める。

十三条及び第十四条を削り、第十二条を次のように改める。

(医師の認定による人工妊娠中絶)

第十四条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下指定医師という。)は、左の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。

一 本人又は配偶者が精神病、精神薄弱、精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を有しているもの

二 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を有しているもの

三 本人又は配偶者が癩疾患に罹つているもの

四 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの

五 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。

3 人工妊娠中絶の手術を受ける本人が精神病者又は精神薄弱者であるときは、精神衛生法第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意をもつて本人の同意とみなすことができる。

第十一条の次に次の二条を加える。

精神病者等に対する優生手術)

第十二条 医師は、別表第一号又は第二号に掲げる遺伝性のもの以外の精神病又は精神薄弱に罹つている者について、精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意があつた場合には、都道府県優生保護審査会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。

十三条 都道府県優生保護審査会は、前条の規定による申請を受けたときは、本人が同条に規定する精神病又は精神薄弱に罹つているかどうか及び優生手術を行うことが本人保護のために必要であるかどうかを審査の上、優生手術を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者及び前条の同意者に通知する。

2 医師は、前項の規定により優生手術を行うことが適当である旨の決定があつたときは、優生手術を行うことができる。

第十五条を次のように改める。

(受胎調節の実地指導)

第十五条 女子に対して厚生大臣が指定する避妊用の器具を使用する受胎調節の実地指導は、医師の外は、都道府県知事の指定を受けた者でなければ業として行つてはならない。但し、子宮腔内に避妊用の器具をそう入する行為は、医師でなければ業として行つてはならない。

2 前項の都道府県知事の指定を受けることができる者は、厚生大臣の定める基準に従つて都道府県知事の認定する講習を終了した助産婦、保健婦又は看護婦とする。

第十六条中「及び人工妊娠中絶」を削る。

第十七条第一項中「、都道府県優生保護審査会及び地区優生保護審査会」を「及び都道府県優生保護審査会」に改め、同条第四項を削る。

第十八条第一項中「地区優生保護審査会は委員五人以内で、」を削り、同条第三項中「及び地区優生保護審査会」を削り、同条に次の一項を加える。

5 都道府県優生保護審査会の委員の報酬及び費用弁償については、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三条(報酬及び費用弁償)の規定を準用する。

第五章の章名を「優生保護相談所」に改める。

第二十条中「優生結婚相談所」を「優生保護相談所」に改める。

第二十一条を次のように改める。

(設置)

第二十一条 都道府県及び保健所を設置する市は、優生保護相談所を設置しなければならない。

2 前項の優生保護相談所は、保健所に附置することができる。

3 都道府県及び保健所を設置する市は、優生保護相談所を設置しようとするときは、あらかじめ厚生大臣の承認を受けなければならない。

4 国は、第一項の優生保護相談所の設置及び運営に要する費用について、政令の定めるところにより、その経費の一部を補助することができる。

第二十二条第一項中「国以外の者は、優生結婚相談所」を「国、都道府県及び保健所を設置する市以外の者は、優生保護相談所」に、同条第二項中「優生結婚相談所」を「優生保護相談所」に改める。

第二十三条中「この法律による優生結婚相談所」を「この法律による優生保護相談所」に、「優生結婚相談所たることを示す文字」を「優生保護相談所という文字又はこれに類似する文字」に改める。

第二十四条中「優生結婚相談所」を「優生保護相談所」に改める。

第二十五条中「又は第十五条」を「、第十三条第二項又は第十四条第一項」に、「その日から三日以内に、その旨を、」を「その月中の手術の結果を取りまとめて翌月十日までに、」に改める。

第二十七条中「優生手術若しくは人工妊娠中絶の審査若しくは施行の事務に従事した公務員又は優生結婚相談所」を「優生手術の審査若しくは施行の事務又は人工妊娠中絶の施行の事務に従事した者及び優生保護相談所」に改める。

第二十九条中「優生結婚相談所」を「優生保護相談所」に、「五千円」を「五万円」に改める。

第三十条中「優生結婚相談所たることを示す名称を用いた者」を「優生保護相談所という文字又はこれに類似する文字を名称として用いた者」に、「千円」を「一万円」に改める。

第三十二条中「二万円」を「五万円」に改める。

第三十三条中「五万円」を「十万円」に改める。

第二十九条を第三十条とし、以下第三十七条まで順次一条ずつ繰り下げ、第三十条の前に次の一条を加える。

(第十五条第一項違反)

第二十九条 第十五条第一項の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。

附 則

1 この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。

2 この法律施行の際、都道府県及び保健所を設置する市が設置している優生結婚相談所は、改正後の第二十一条第三項(厚生大臣の設置についての承認)の規定による承認を受けて設置した優生保護相談所とみなす。

3 改正前の第二十二条(優生結婚相談所設置の認可)の規定による優生結婚相談所の設置の認可は、改正後の第二十二条(優生保護相談所の設置の認可)の規定による優生保護相談所の設置の認可とみなす。

4 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

5 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

第五条第二十号を次のように改める。

二十 優生保護相談所の設置を承認し又は認可し、及び優生保護相談所に関する基準を定めること。

(厚生・内閣総理大臣署名) 

優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律第21条に基づく調査報告書の一覧

リンクが貼られている報告書の目次

優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律第21条に基づく調査報告書

 本調査報告書は、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(平成31年法律第14号)第21条に基づく調査報告書として、令和5年6月19日に衆参両院の厚生労働委員長から衆参両院議長に報告されたものです。

概要版

概要(PDF:683KB) (txt:20KB)
概要(わかりやすい版)(PDF:433KB) (txt:9KB)

全体版

表紙/報告文/総目次/はじめに (PDF:672KB)
第1編 旧優生保護法の立法過程 (PDF:5.84MB)
第2編 優生手術の実施状況等 (第1章~第9章) (PDF:14.9MB)
第2編 関連資料 (PDF:19.9MB)
第3編 諸外国における優生学・優生運動の歴史と断種等施策 (PDF:12.67MB)

分割版

表紙/報告文/総目次/はじめに(PDF:672KB) (Word:481KB)

第1編 旧優生保護法の立法過程
目次(PDF:1.15MB)(Word:107KB)
第1章 国民優生法の制定過程(PDF:1.45MB)(Word:253KB)
第2章 旧優生保護法の制定過程(PDF:1.33MB)(Word:202KB)
第3章 旧優生保護法の改正過程―昭和24年改正から昭和30年改正まで―(PDF:1.44MB)(Word:247KB)
第4章 旧優生保護法改正等の動き―昭和30年代から平成7年改正まで―(PDF:1.42MB)(Word:236KB)
第5章 優生保護法から母体保護法へ―平成8年改正以降―(PDF:1.20MB)(Word:136KB)
第6章 教科書にみる優生(PDF:1.27MB)(Word:168KB)
第7章 一時金支給法の制定(PDF:1.15MB)(Word:128KB)
第8章 国会内における調査(PDF:1.14MB)(Word:113KB)
付表・参考(PDF:2.00MB)(Word:309KB)

第2編 優生手術の実施状況等
目次(PDF:960KB)(Word:70.8KB)
第1章 旧優生保護法に基づく優生手術について(PDF:1.90MB)(Word:867KB)
第2章 優生手術の実施件数の推移等(PDF:3.40MB)(Word:936KB)
第3章 国の機関の保有資料の調査(PDF:592KB)(Word:100KB)
第4章 地方自治体に対する調査(PDF:2.71MB)(Word:665KB)
第5章 医療機関福祉施設に対する調査(PDF:1.50MB)(Word:552KB)
第6章 障害者関連団体に対する調査(PDF:1.10MB)(Word:119KB)
第7章 優生手術を受けた当事者等に対する調査(PDF:1.06MB)(Word:87.9KB)
第8章 旧優生保護法一時金支給請求書等の調査(PDF:1.80MB)(Word:2.08MB)
第9章 障害者関連団体、医学関連団体の公表資料(PDF:9.85MB)(Word:75.9KB)
第2編 関連資料
Ⅰ 旧優生保護法に基づく優生手術関係(PDF:11.76MB)
Ⅱ 国の機関の保有資料の調査関係(PDF:321KB)
地方自治体に対する調査関係(PDF:1.65MB)
医療機関福祉施設に対する調査関係(PDF:594KB)
Ⅴ 障害者関連団体に対する調査関係及び優生手術を受けた当時者等に対する調査関係(PDF:447KB)
Ⅵ 旧優生保護法一時金支給請求書等の調査関係(PDF:5.67MB)

第3編 諸外国における優生学・優生運動の歴史と断種等施策
目次(PDF:444KB)(Word:70.5KB)
第1章 優生学・優生運動の歴史と概要(PDF:1.49MB)(Word:335KB)
第2章 各国・地域における優生学・優生運動の歴史的展開(PDF:2.70MB)(Word:602KB)
第3章 アメリカにおける断種政策とその補償
第3-1章 アメリカ総論(PDF:1.09MB)(Word:492KB)
第3-2章 カリフォルニア州(PDF:1.82MB)(Word:393KB)
第3-3章 ノースカロライナ州(PDF:1.26MB)(Word:166KB)
第3-4章 ヴァージニア州(PDF:1.70MB)(Word:331KB)
第4章 ドイツにおける断種政策とその補償(PDF:1.54MB)(Word:232KB)
第5章 スウェーデンの断種法と断種補償(PDF:1.50MB)(Word:224KB)
第6章 イギリスにおける優生政策の動向と断種政策の挫折(PDF:1.42MB)(Word:775KB)

(wordファイルの閲覧環境によっては、本文、図表等のレイアウトが崩れる可能性があります。)

正誤表

正誤表(令和5年11月10日現在)(PDF:373KB)(Word:566KB)


本件照会先:調査局厚生労働調査室

*1:優生保護法の施行について」(昭和28年6月12日 厚生省発衛第150号 各都道府県知事宛 厚生事務次官発)(厚生労働省「旧優生保護法関係資料の保管状況調査の結果について」(平成30年9月6日)【厚生労働省の保管する資料】1.通知及び事務連絡①-6, p.22.)

*2:優生保護法により人工妊娠中絶を実施することができる時期について」(昭和51年1月20日 厚生省発衛第15号 各都道府県知事宛 厚生事務次官発)

*3:優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準について」(平成2年3月20日 厚生省発健医第55号 各都道府県知事宛 厚生事務次官発)