リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬はWHOの必須医薬品中核リストにも入っており

国民民主党の議員 第208回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 令和4年3月7日

どこまで分かってるのかな……と思いつつ。

155 長友慎治
○長友委員 ありがとうございます。
 今、若年の方の妊娠についてお話もありましたけれども、沖縄の人工妊娠中絶の数につきまして、その数が全国平均で比較するとどのような状況にあるのかを教えていただけますでしょうか。


156 田中佐智子
○田中政府参考人 お答えいたします。
 本年一月二十七日に公表いたしました令和二年度衛生行政報告例によりますと、令和二年度の沖縄県の人工妊娠中絶件数は千九百六十七件となってございます。女子人口千人に対する実施率で比較いたしますと、全国では五・八、沖縄県では六・六となってございます。


157 長友慎治
○長友委員 ありがとうございます。
 全国の中でどのくらいの位置にあるかというのも分かりますか。四十七都道府県の中で。


158 田中佐智子
○田中政府参考人 お答えいたします。
 全国の順位づけといったようなものはしてございませんけれども、例えば、鹿児島県では七・八、宮崎県では八・二といったような数字になってございます。


159 長友慎治
○長友委員 ありがとうございます。
 私の出身地である宮崎の話も出てきましたけれども、九州が多いような傾向が今お話からは出てくるかと思いますが、そのことはまた別な機会に議論したいと思いますけれども、今、日本での中絶の主流は、御存じのとおり、掻爬法でございます。
 その手術費用について私は皆様とちょっと議論をしたいなと思っているんですけれども、妊娠初期の人工中絶手術、十万円から四十万円というふうな相場が言われております。この沖縄の問題、平均所得が全国で最も低いということがさんざん言われている中でございますけれども、妊娠した際の中絶費用も負担になることが容易に想像できるわけですね。
 最低でも日本では十万円、そして四十万円ぐらいと言われている人工中絶手術に対しまして、先進国における世界の潮流は経口中絶薬の処方が今一般的になっております。この原価は平均すると七百四十円ぐらいだそうです。日本は、今、経口中絶薬の承認申請は出ていますけれども、まだ承認はされていません。しかし、沖縄の子供の貧困の問題が全国に比べ深刻な状況になっている理由に、望まない妊娠が多いということもはっきりと要因とされているところでございます。
 沖縄は経口中絶薬の使用が最も求められる地域だと思われますけれども、沖縄に限定して経口中絶薬を承認し、貧困の連鎖を断ち切る、そのような施策は取れないものか、伺いたいと思います。


160 島村大
○島村大臣政務官 まずは、喉がかれてしまって済みません。
 お答えさせていただきます。
 経口中絶薬に関しましては、委員御質問のように、海外では約八十か国が承認されているものがございます。今委員がお話ありましたように、日本でも昨年の十二月に薬事申請がなされまして、現在、PMDA、医薬品医療機器総合機構において審査中でございます。
 医薬品の承認審査は、臨床試験の結果等については、最新の科学的知見に基づき、日本での日本人の有効性と安全性の評価を行うものであり、例えば、沖縄県とか、地域によってこの基準を設けるものではございません。
 ですから、科学的な評価としては、沖縄を先行させるというよりは、全国的に、科学的な安全性、有効性が確認されれば、しっかりとこれは承認していきたいと思っております。
 以上です。


161 長友慎治
○長友委員 ありがとうございます。
 当然、全国的に承認されてからというのが普通の手続だとは思います。
 ただ、二〇一二年、世界保健機関、WHOは、掻爬法はもう時代遅れとして、安全な中絶、吸引法又は中絶薬に置き換えるような要請というのがもう出ております。中絶薬はWHOの必須医薬品中核リストにも入っておりまして、最も安全で最優秀な薬というふうにされています。
 沖縄の振興についての調査審議結果報告の方にも、望まない妊娠を避けるための知識の啓発等を進めていくことも効果的というふうに指摘されているところでございます。
 そしてまた、こちらの沖縄振興特別措置法の法律案の参考資料を私も読ませていただいておりますけれども、ここにはこのような考察がしっかりと書かれているんですね。
 沖縄の子供を取り巻く環境について、子供の相対的貧困率は二五・〇%、全国平均が一三・九%のところを二五・〇%と全国を大きく上回る水準にあり、高い離婚率や若年出生率に起因すると考えられる母子世帯の出現率、全国平均の約一・八倍、一人当たりの県民所得全国最下位、そのほか、非正規雇用の割合全国一位、そして、大学等進学率が全国最下位等の指標からも明らかなように、全国と比較して極めて厳しい状況にあると。
 極めて厳しい状況にあるという沖縄において、この問題を何とか解決したいという前向きな施策を取れないものか、そのように私は思うわけでございます。
 また、先日、私たちの国民民主党の会派の方にこの法案の説明に来ていただいたときに、このような質問が出ました。沖縄の離婚率の高さをどのように分析しているのかということにつきまして、まず分析ができないと貧困から抜け出せないでしょうと。そのときに、内閣府の方からの御説明の中には、沖縄の離婚率は高くて一人親の家庭が多い、理由として話を聞くと、明らかに十代の出産率が高いんです、その十代で出産する子が周囲ともめて社会的に孤立するようなことがあると。
 その十代の妊娠した子たちが中絶したくても、十万円から四十万円の中絶費用というのは普通は自分で払えないですよね。それによってどうしても出産をしてしまうかもしれない。それによって貧困の連鎖が断ち切れないということが因果関係として分かっているのであれば、早くそこに対策を打たないと、この沖縄の貧困の問題というのは解決できないというふうに私は思います。
 そのときは所得改善と両輪で支援していくことが必要だというふうにお話がありましたけれども、今日、いろいろな先生方の議論の中で、なかなか沖縄の賃金が上がらない、所得が改善するのが難しいというところが出てきているわけです。であれば、今、負の連鎖の原因になっていることがはっきりと分かっているのであれば、しっかりと対策を進めるということも私は大事なのかなというふうに考えているところでございます。
 おっしゃることも分かるんです。沖縄だけ先に経口中絶薬を導入するということは多少乱暴な議論かもしれないんですけれども、三月の三日のこの委員会でも大臣からもお話がありました。沖縄は島国である日本の縮図でありまして、沖縄が全国に先駆けて先導性の高い事業を行って、得られた成果を県内外に還元することで、我が国全体の助けになるということも実は沖縄は期待されているという部分もあると。
 そういうことも考えると、この全国に先駆けた先進的な取組というものを沖縄から始めるということも、本気で課題を解決するということであれば私は考える余地はあるのではないかというふうに思っており、質問させていただきました。ありがとうございます。