リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

<社説>飲む中絶薬承認 女性の権利尊重したい

東京新聞 2023年5月11日 07時53分

<社説>飲む中絶薬承認 女性の権利尊重したい

「リプロダクティブ権」という言葉を使っていると聞いてみてみたら、本当、この言葉をどう理解して書いているのかなぁ?

「安全な普及のためには妥当な措置」……って、どうして「妥当」だと考えているんだろう? 「危険な薬」だと思い込まされているのではないか。なぜ世界では「安全」でWHOも推奨しているくらい「安全」だと思われているのに、日本だと「安全な普及のため」に世界とは違う厳重な管理を行い、高い値段になっているんだろう……? それではアクセスできないではないか。これで「女性の自己決定権」を本当に守れているのか? そこに疑問を抱いてほしい。

 人工妊娠中絶のための飲み薬(経口薬)の製造販売を厚生労働省が初めて承認した。経口中絶薬は医療面だけでなく、女性の自己決定の選択肢も広げる。女性の健康と権利が尊重される社会に向けて必要な対応をさらに進めたい。
 日本では初期の中絶は妊娠十二週未満が対象で、子宮内を器具でかきだす方法と、器具で吸い出す方法のいずれかで行われている。特に、かきだす方法は母胎の負担が大きく、世界保健機関(WHO)は「時代遅れ」の方法としている。
 国内で初承認された経口中絶薬「メフィーゴパック」は妊娠九週までが対象で二種類の薬を時間を置いて服用する。腹痛や出血など副作用の懸念はあるものの外科手術より母胎の負担は少ない。
 経口中絶薬は海外ではすでに広く使用され、WHOは安全な方法として推奨している。中絶を選ばざるを得ない女性の健康と、産まない権利を守るために承認が待たれていた医薬品でもある。
 服用後、体調の変化が想定されるため、安全に使用できる体制が整うまでは、外来でも入院可能な医療機関での待機を求める。製薬会社と医療機関は毎月、販売量と使用量を都道府県医師会に報告することで管理する。安全な普及のためには妥当な措置だろう。
 経口中絶薬の普及の課題は費用負担だ。そもそも中絶手術は自由診療のため高額になりがちで、経口薬にもその懸念はある。費用負担が選択を阻む要因にならないような配慮が必要となる。
 日本の母体保護法は中絶には配偶者の同意を必要とする。未婚や配偶者の暴力などで同意が得られない場合は不要とされるが、同意規定が女性の負担になっているとの指摘があり国連は規定撤廃を求めている。女性の権利尊重に向けて法改正を含めて議論したい。
 未成年者には、中絶に至る前に「望まない妊娠」を減らし、命の大切さを教えるための教育を学校などで進めることも必要だ。
 子どもを産むかどうかや、自分の体に関することを自分自身で選択し、決める「リプロダクティブ権」を尊重する意識が、日本では十分とは言えない。
 子どもを安心して産み、育てられる環境を整備することはもちろん、産みたくない人の権利も尊重されるような社会をつくることもまた重要である。