リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

妊娠9週の胚はどう見える?

MYAネットワークの挑戦 Issue of tissue

 MYAネットワークのジョアン・フライシュマン「ネットに載っている『胎児』の図とは異なり、本物の胚の姿を知って騙されたと感じる人もいます」


The Guardian, 2022.10.19, Poppy Noor, “What a pregnancy actually looks like before 10 weeks – in pictures”
Guardianは有料なので、追っかけの他の記事のサイトを紹介します。
www.dailymail.co.uk


 元々はMYAのJoan Fleischman率いる”Issue of tissue”という活動から始まりました。今、すごい勢いでアメリカや米国外のメディアにも広まっているようです。


HUFFPOSTのU.S.Editionにも載っていました。By Marie Holmes
Oct 21, 2022, 07:57 PM EDT Updated Oct 24, 2022
仮訳します。

妊娠初期はどう見えるか: 話題の写真について医師が説明する
 妊娠4~9週目に子宮から取り出された妊娠組織の写真は、中絶反対派が想像するようなイメージとは全く異なる


 ニューヨークの家庭医であるジョアン・フレイシュマン(Joan Fleischman)医師は、25年以上にわたって中絶医療を提供してきた。フレイシュマン医師は、それが役に立つかもしれないと思ったとき、中絶後に患者に、子宮から取り出した妊娠組織を見たいかどうか尋ねている。

 「私がそれを見せると、患者はショックを受け、驚き、安心する 」とフレイシュマンはハフポストに語った。
 「人々が心に抱いている支配的な妊娠のイメージを思えば、組織をありのままに見ることで、信じられないほど安堵できるのです。」

 6月24日の最高裁判決により、全国レベルで中絶の権利が終了し、すでに16州にわたる66のクリニックが中絶を提供できなくなったことを受け、フライシュマンとMYAネットワークの仲間たちは、今こそ手動吸引法による中絶の際に何が取り除かれているかを正確に全国に示すときだと考えた。

 この写真は10月19日にThe Guardianに掲載され、フライシュマンが何らかの方法で組織の一部を取り除いたか、画像を加工したのではないかという主張に拍車をかけ、評判になった。

 しかし、本紙が取材した他の医師によって、フライシュマンが行ったのは、組織から血液を洗い流し、拡大せずに撮影したことが確認できた。血液を洗い流すと、組織は白く見えるのだ。


この写真で私は一体何を見ているのか?
 「胎嚢と絨毛です。胎嚢は羊膜で、羊膜腔を包んでいて、最終的には羊水が入ります」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジェニファー・カーンズ博士はハフポストに説明した。

 この羊水は妊娠中に増え、最終的には陣痛の際に破れる水の袋となる。

 「胚はこの袋の中で成長します」とカーンズは続ける。「絨毛は胎盤となるシダ状の構造物です。」

 妊娠嚢は、受胎後20日頃に超音波検査で見えるようになる。

 妊娠4週目の写真に斑点状に見える脱落組織は、「経血と同じで、実際、経血なのです」とフライシュマンは説明する。これは、生理のときにはがれ落ちる子宮の内膜で、妊娠すると肥厚する。

 中絶の3分の2は妊娠8週までに行われ、9週未満の中絶はフライシュマンが使っていた手動吸引法で行うことができる。子宮頸管を麻酔し、カニューレを挿入するために拡張し、小さな手持ち器具で妊娠を除去するのである。フライシュマンによれば、全手順は1~2分程度で終わる。

 「組織を残したまま、とても優しく繊細に行います」と彼女は言う。

 電気機器を使って吸引処置を行うことも可能で、この場合、妊娠組織が無傷で除去される可能性は低くなる。

 医師が妊娠初期に吸引中絶を行う場合、「中絶が『完了』したこと、つまり妊娠を排出したことを知るために、胎嚢と絨毛を確認します」とカーンズは言う。


胚はどこにあるのか、なぜ見えないのか?
 妊娠初期に摘出された組織を検査する場合、医師は胎嚢の中で成長している胚を見ることができるとは思っていない。

 「8週目くらいに胚が見えることもありますが、9週目や10週目以降の方が多いですね」とカーンズ氏は言う。

 「ニューヨークのワイル・コーネルの生殖内分泌学者であるアレクシス・メルニック博士は、「私は、これらの標本がどのように見えるか、人々が過大評価しているように常に感じています。」

 「これらの妊娠初期の画像における胎児自体は、肉眼で見ることができるものではありません」と彼女は続けた。「現時点で手術を行うのは10週までなので、私は患者に、肉眼では何も見えませんと伝えています」と語った。

 フライシュマンは、ネット上で「自分が妊娠初期に流産したときに出てきたものとは見た目が違う」というコメントを見ている。これは流産に伴う血液のせいかもしれない。彼女は嚢と絨毛を見やすくするために血液を洗い流しているので、写真に血液は写っていない。

 「誰かの経験を無効にするつもりはありません」とフライシュマンは言った。「でも私には9週未満の胚が見えたことはありません」と、拡大されていない妊娠組織について述べている。


他の場所で見る胚の画像は?
 通常の写真やイラストは教育上重要な役割を果たしており、拡大表示されている。初期の超音波画像も拡大されたものだ。

 フライシュマンは、この特別な写真を撮るために、ふるいを使って組織から血液を洗い流し、写真を撮るためにホルムアルデヒドで保存したと説明している。

 「胎嚢から胚を洗い流したりはしていません」と、フライシュマンは明言する。「私は何も取り除いてはいないのです。」
 写真は、胚が見えるかどうかの証拠として撮影して共有したわけではない、とフライシュマンは付け加えた。


 超音波写真や拡大写真、教科書のイラストなどで拡大されたイメージを見たことがある人もいるだろう。それでもフライシュマンの写真は、初期の妊娠がどのようなものかを自分の目で見るという、平易で生きた体験を提供する。

 「拡大した胚の写真は、2通りに使われています。1つは出生前ケアのため。あるいは、生命は受胎から始まると主張したい人たちが中絶に反対するためです。」

 「このプロジェクトの意図は、私たちに欠けていた臨床的な視点を与えることでした」と彼女は言います。「スタッフ、患者、医師、臨床医......誰もが、実際にどのように見えるかを見て驚きます。」


 メルニックは、この写真が政治情勢に影響を与えるかどうかはわからないが、一部の人々には個人的に影響を与えるかもしれないと考えている。

 「私は、これが『プロライフ』運動を揺るがすために役立つとは思っていません」とメルニックは言った。「ただ私は、(中絶を)決断することに悩んでいる女性にとっては、本当に重要なことだと思うのです。」

 「私たちが高度に発達したものについて全く話していないことを理解してもらうことが重要です」と彼女は続けた。「私たちが実際に取り除いているのは、これを見ると、これは決して体外で自活できるようなものではないのです。」と彼女は続けた。