リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

健康保険法に関する古い通知

優生保護法、人工流産に関するものも出てきました

一つ目の資料は、当時、「単に経済的理由による中絶」が行われてきた証拠になるでは。

第11編 保険 第1章 保険 健康保険法(昭和59年以前)

○優生保護法による優生手術及び人工妊娠中絶術の保険給付について

(昭和二七年九月二九日)

(保発第五六号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)


今度優生保護法の一部が改正(昭和二十七年五月十七日法律第百四十一号)されたので、左記事項について療養の給付を行うようその取扱を改めたから、遺漏のないようお取り計い願いたい。なお、これに伴い昭和二十三年十月七日保発第六七号保険局長通 ちよう
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及び昭和二十五年三月二十八日保険発第五〇号医療課長通 ちよう
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は廃止する。但し、人工妊娠中絶のうち妊娠四か月以上のものにあつては、療養の給付及び分娩の給付の対象とし、妊娠四か月未満のものにあつては、療養の給付のみを対象とすること及び優生保護法第四条の強制優生手術は、療養の給付の対象とならないことには変りはないから、念のため申し添える。

おつて、右の取扱については各関係団体に周知徹底方御配意願いたい。


1 優生保護法第三条第一項各号及び第二項の優生手術

2 同法第十二条精神病者等に対する優生手術

3 同法第十四条第一項各号の医師の認定による人工妊娠中絶術

但し、右の第四号に規定するもののうち単に経済的理由によるものを除く。

○人工流産に伴う分娩費並びに出産手当金支給に関する件

(昭和二七年三月二八日)

(厚生省保険局長あて福岡県三菱鉱業健康保険組合飯塚支部照会)

1 分娩費の支給について

分娩費の支給が、分娩の事故により被保険者の経済的な負担となる事を救済する目的であるとすれば、妊娠八五日目位の者は、産婆に対する支払もなく、又人工分娩に対する診療費も健保負担となつているので不支給と決定すべきではないでしようか。

特に本人の不行跡や経済的な理由のみの人工流産の場合は、不支給としてよいでしようか。

2 出産手当金の支給について

母体保護を目的とすれば、妊娠四か月目の人工流産であれば専門医の意見では、健康体の者では一〇日間余りの休養を必要とするのみとの事であるが、もしこうした実情を無視して字句のみにとらわれて給付を行えば、分娩後四二日間は基準法上の休業を強制し(三五日以上は本人の意志と医師の意見で稼働出来るが)、かえつて被保険者の生活をおびやかす事となるのである。

休業を強制して出産手当金を支給し、生活を一〇〇分の六〇に切下げる事は、いささか法の精神にも反するものではないかと思われますが如何でしようか。以上

(昭和二七年六月一六日 保文発第二四二七号)

(福岡県三菱鉱業健康保険組合飯塚支部あて 厚生省保険局健康保険課長回答)

御来照にかかる標記の件について次のとおりお答えする。

1 健康保険による分娩費は、母体を保護する目的のために、分娩の事実にもとづいて支給されるのであつて、妊娠四か月以上(八五日以後)の分娩については、生産、死産、流産(人工流産を含む)又は早産を問わず、すべて分娩費が支給される。人工妊娠中絶術(人工流産)に対しては、単に不行跡又は経済的理由によるものについては、療養の給付は認められない。

2 健康保険による出産手当金は、分娩の前後四二日以内において、労務に服しなかつた期間支給されるのであるが、労務に服すると否とは被保険者の意思によるものであつて強制されるものではない。