米国科学アカデミー紀要(PNAS)に性差別と脳の性差の関連を明らかにした研究が載る
性差による不平等が女性のメンタルヘルスの悪化や低学歴傾向に関連していることが明らかに。
京大も協力している。
京大の日本語による紹介:男女間の不平等と脳の性差 ―男女間の不平等は脳構造の性差と関連する―
世界中で性差による不平等が存在し、それが女性のメンタルヘルスの悪化や低学歴傾向に関連しています。
チリカトリック大学精神医学教室の Nicolás Crossley 助教、アメリカ国立衛生研究所 André Zugman 研究員を中心とする研究グループは、29 カ国にわたる多施設共同研究により、18~40 歳までの健康な男性 3,798 人と女性 4,078 人の実験参加者について、ジェンダー・ギャップ指数およびジェンダー不平等指数から算出した性別間の不平等の指標と MRI による脳の構造画像との関連を解析しました。18~40 歳までの健康な男性 3,798 人と女性 4,078 人の MRI の脳の構造データを用いて、脳の皮質の厚さや表面積と性別間の不平等の指標の関係を調べ、右半球の皮質厚の男女差は性別間の不平等と関連が認められました。領域ごとの解析では、特に右前部帯状回で同じ関連を認めました。これは社会的・文化的な要因が脳の発達に影響すること、ひいては性別間の不平等を改善する政策が平等で公正な社会を実現するために求められることを示唆しています。
英語の原著論文はこちら
「Significance(本論文の意義)」を仮訳します。
ジェンダー不平等は、女性のメンタルヘルスや学業成績の悪化と関連している。29カ国に住む健康な成人7,876人のMRIスキャンデータセットを用いて、男女不平等が男女の脳の違いに関連していることを示した。右半球の皮質厚、特に右尾前帯状や右内側眼窩前頭などの辺縁系領域、左外側後頭部に、男女不平等国の男性のみと比べて女性で薄い皮質を示すことが明らかになった。これらの結果は、男女不平等な環境における女性の転帰の悪化の根底にある神経メカニズムの可能性を示唆するとともに、女性と男性の脳の違いにおける環境の役割を明らかにするものである。