リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

若年女性に広がる市販薬の過剰摂取 救急搬送122人「氷山の一角」

朝日DIGITAL 2023年9月8日(金)

国連の女性差別撤廃委員会からも「女性の自殺」が多いと指摘されている日本。
政府はほとんど対策を取っていない。女性が生きにくい社会構造を変えていく必要がある。
若年女性に広がる市販薬の過剰摂取 救急搬送122人「氷山の一角」

本日のナビゲーター
三橋麻子首都圏ニュースセンター長
 頭痛持ちです。いつ何時痛みに見舞われるかわからないので、カバンの中には常にお守りとして鎮痛剤が入っています。やや強い薬も街中の薬局やインターネットで買えるようになり、便利だな、と思っていたのですが、その裏で自殺や自傷目的での過剰摂取が起きていました。厚生労働省研究班が「氷山の一角」とみる疫学調査の結果からは、生きづらさを抱えた孤独な若者の姿が浮かびあがります。
若年女性に広がる市販薬の過剰摂取 救急搬送122人「氷山の一角」
写真・図版
過剰摂取された市販薬の種類
 市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)で救急搬送された人は、2021年5月~22年末に全国7救急医療機関で122人いて、10~20代や、女性がともに約8割を占めていたことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。「自傷・自殺」目的が最多で、若年女性を中心に乱用が広がっている可能性が示された。

 研究班によると、市販薬の過剰摂取による救急搬送に関する疫学調査は初めて。調査対象以外の医療機関への搬送や、医療につながっていない人も含めると、さらに多くの過剰摂取者がいるとみられ、研究班は「122人は氷山の一角にすぎない」としている。

 市販薬は医師の処方がなくてもドラッグストアやインターネットで購入できる。一方、依存性のある成分が含まれているものがあり、治療目的以外での使用や決められた回数や量を上回って服用するケースがあった。こうしたことから、生きづらさを抱える若年者の間で過剰摂取が増えているとの指摘がある。

 研究班は、全国の救急医療機関7施設から、市販薬の過剰摂取後に救急搬送された122人の登録を受け、背景などを調べた。

 122人のうち、男性は25人(20・5%)、女性は97人(79・5%)、平均年齢は25・8歳、最年少は12歳だった。10代が43人(35・2%)、20代が50人(41・0%)で、20代までが約8割を占めた。若い女性に多い傾向がみられた。

 搬送時の症状は嘔吐(おうと)や不整脈意識障害などが見られた。113人(92・6%)が入院、うち69人が集中治療室で治療を受けた。死者はいなかったが、11人に臓器障害などの後遺症が残った。

 薬の入手経路はドラッグストアなどの実店舗での購入が85件(65・9%)で、置き薬20件(15・5%)、インターネットでの購入が12件(9・3%)だった。ドラッグストアが増え、手軽に入手できるようになっている。店頭に薬剤師らがいて複数購入できず、3店舗を回り購入した例があったという。

 服用された市販薬は計83種類189品目。解熱鎮痛薬が47品目(24・9%)、せき止めが35品目(18・5%)、かぜ薬が34品目(18・0%)だった。過剰摂取が初めてだったのは77人(63・1%)の一方、3回以上の「常用」は33人(27・0%)いた。

 使用した理由(複数回答可)は「自傷・自殺」目的が97件(74・0%)と最も多く、自由記述には、死にたいわけではなく、「いなくなってしまいたい」「自らを罰したい」との意見も含まれていた。「その他」31件(23・7%)の中には、「気分を上げたい」というストレス発散、「楽になりたかった」「嫌なことを忘れたかった」という現実逃避のほか、「薬を飲みたくなってしまう」と依存がうかがえる意見もあった。

 家族などと同居していたのが約7割、市販薬の情報をインターネット検索から得ていたのが約4割だった。身近な人に悩みを打ち明けられず、抱え込んでいる例が多いとみられる。調査にあたった埼玉医大臨床中毒センターの喜屋武(きゃん)玲子医師は「悩みや生きづらさが過剰摂取に走らせるのではないか」と指摘する。「ドラッグストアで薬剤師らが悩みを聞く仕組みを整えるなど社会全体で支援する必要がある」と話している。

 乱用につながる成分を含む市販薬について、厚労省は、購入時に薬剤師らが名前の確認をしたり使用目的を聞いたりする「指定第2類医薬品」と位置づけており、今年4月からは乱用を防ぐため、その対象範囲を拡大した。

 同大の上條吉人・臨床中毒センター長は、指定された成分以外にも乱用につながるおそれがある成分は他にもあり、「厚労省や製薬会社を巻き込んで対策を考えていく必要がある」と述べた。(米田悠一郎)