リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬は患者自身が服用できるとWHOのガイドラインにある

WHOの2022年『中絶ケア ガイドライン エグゼクティブサマリー』は、以下のページのJapaneseバージョンをご覧ください。https://www.who.int/publications/i/item/9789240045163

p.12の推奨事項28(SD)に次のように書いてあります。

12週未満での薬剤による中絶の場合: 患者自身による薬剤の管理(推奨50参照)もしくは、地域保健師、薬局員、薬剤師、伝統医学・補完代替医療 の専門家、補助看護師・補助助産師、看護師、助産師、准・上級准臨床医、一般医、専門医※による薬剤の管理を 推奨する。
* 医師でない人単独によって提供される薬剤による中絶に関しての現存のエビデンスは、10週(妊娠70日)までである。
‡ この推奨では、ミフェプリストンとミソプロストールの併用、またはミソプロストール単独が薬剤による中絶のレジメンとして現在のエビデンスで取り上げら れている(レトロゾールを用いたレジメンは含まれていない)。

この中で参照されている推奨50には次のように書いてあります。

12週未満での薬剤による中絶の自己管理
50(自己管理)
 12週未満での薬剤による中絶の場合(ミフェプリストンとミソプロストールの併用、またはミソプロストール 単独の使用): 薬剤による中絶のプロセスの以下の3つの構成要素の全て、もしくはいずれかを自己管理する選択肢を 推奨する。
• 適性の自己評価(妊娠期間の決定、禁忌事項の除外)
• 医療施設外で、保健医療従事者の直接の監視なしに中絶薬を自身で投与し、中絶の過程を管理すること
• 中絶が完遂したかどうかの自己評価 備考
• 薬剤による中絶の自己管理に関するエビデンスは(いずれのレジメンにおいても)、10週までの方がより多く存在した。
• この推奨は、ミフェプリストンとミソプロストールの併用と、ミソプロストール単独の使用に適用される。この推奨の元となった 研究では、レトロゾールとミソプロストール併用のレジメンについては評価されていない。 • 薬剤による中絶の自己管理を行うすべての人は、正確な情報、疼痛の管理を含む品質が保証された医薬品、保健医療従事者の 支援、必要な場合や希望する場合には、医療施設へのアクセスや紹介体制の支援を受けることができる必要がある。
• 保健医療制度の規制の枠組みの中で中絶薬の処方と調剤の権限に関する制限を修正するか、自己管理するための他の仕組みを 取り入れる必要があるかもしれない。

関連事項として、上記50と同じ「サービス提供の選択肢と自己管理のアプローチ」のセクション(p.16-17)に、次の48-49、51-54のトピックも示されています。

薬剤による中絶ケアを提供するための遠隔医療アプローチ
48 (SD) (NEW) 薬剤による中絶サービスの全てまたは一部を提供するため、保健医療従事者との対面でのやりとりに代わる選 択肢として、遠隔医療を推奨する。
備考
• 上記の推奨は、薬剤による中絶の適性の評価、中絶のプロセスに関するカウンセリングや指導、薬物投与の指導や円滑に行うた めの積極的な支援、中絶後ケアのフォローアップなど、いずれの過程も遠隔医療に適用される。
• ホットライン、デジタルアプリ、または単に情報を提供する一方的なコミュニケーション様式(例:リマインダーのテキストメッセ ージ)は、この推奨のためのエビデンスのレビューに含まれなかった。

情報提供、カウンセリング、薬剤による中絶のためのサービス提供のアプローチ
49(SD) (NEW)
サービス提供に関するベストプラクティス
第1部 中絶サービスを提供するために推奨されるアプローチは一つではない。特定の保健医療従事者の選択 (推奨される選択肢の中から)、または自分自身による管理、サービス提供の場所(推奨される選択肢の中か ら)は、女性、女子、その他妊娠した人の価値観や好み、利用できる資源、国や地域の状況によって決まる。どの ような状況においても、複数のサービス提供の方法が両立することが可能である。
第2部 サービスの提供方法は多様となりえるため、ケアを必要とする個人に対して、様々なサービス提供の選 択肢を総合して、以下の点を確実に提供することが重要である。
• あらゆる段階において、科学的に正確で理解しやすい情報を、入手できるようにすること。
• 品質が保証された医薬品(疼痛管理のための医薬品を含む)を入手できるようにすること。
• 希望する場合または必要な場合は、バックアップの紹介体制を支援すること。
• 中絶後の避妊を希望する人を、適切な避妊サービスの選択肢につなげること。

中絶後の避妊のための自己管理アプローチ(上記の推奨41-47「中絶後の避妊のタイミング」も参照)
51(自己管理) 避妊注射 (開始および継続)
中絶後、避妊注射を自己管理する選択肢を推奨する。
備考
• 避妊注射は、注射器を使用し、筋肉内または皮下に投与することがある。自己注射を容易にするために、CPADs(Compact pre-filled auto- disable devices)が開発された。

52(自己管理) 市販の経口避妊薬
 経口避妊薬を使用する人が、処方箋なしで市販の経口避妊薬を入手できるようにすることを推奨する。

53(自己管理) 市販の緊急避妊薬
 緊急避妊を希望する人が、処方箋なしで市販の緊急避妊薬を入手できるようにすることを推奨する。

54(自己管理) コンドームの使用
 男性用・女性用コンドームの一貫した正しい使用は、HIVの性感染防止、どちらかのみHIV陽性のカップルにお ける男性から女性、女性から男性へのHIV感染のリスク低減、その他の性感染症や尖圭コンジローマ・子宮頸が んなど関連疾患のリスク低減、意図しない妊娠の防止に非常に効果的である。