リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

法務省人権擁護局 令和3年度版『人権の擁護』

わざとやっているとしか思えない

https://www.moj.go.jp/content/001375185.pdf

「はじめに」の中で、「人権」は以下のように説明されている。

私たちは,「人権」とは,「全ての人々が生命と自由を確保し,それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で,生まれながらに持つ権利」であり,誰にとっても身近で大切なもの,違いを認め合う心によって守られるものだと考えています。子どもたちに対しては,「命を大切にすること」,みんなと仲良くすること」と話しています。
 「人権」は難しいものではなく,誰でも心で理解し,感じることのできるものです。しかし,現実の社会では,いじめや虐待等によって子どもの命が奪われたり,インターネット上に個人の名誉やプライバシーを侵害したり,差別を助長するような書き込みがされたりすることがあります。……後略

人権は「道徳」とも「思いやり」とも別物であり、保障されるべき権利であるということが、全く説明されていない。


そして人権課題の最初に出てくるのが「女性」なのだが、「個人的な加害者によって被害を受ける女性」像しか出てこない。「国が性差別を助長するという加害行為をしている」という自覚が全くない。

1.主な人権課題
 あなたや,あなたの周りの方々の人権が守られていないと感じたことはありませんか。この章では,取組が求められている主な人権課題について取り上げています。


①女性~性犯罪・性暴力・DV・ハラスメント~
 今なお,「女だから…。」などと言う人がいます。女性というだけで社会参加や活躍の機会が奪われることはあってはなりません。また,女性を,性犯罪・性暴力,DV,ハラスメント等から守ることが必要です。
 男女平等の理念は,「日本国憲法」に明記されており,法制上も「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」等によって,男女平等の原則が確立されています。しかし,現実には今なお,「男は仕事,女は家庭」といった男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており,このことが家庭や職場において様々な男女差別を生む一因となっています。
 また,性犯罪・性暴力,配偶者等からの暴力(DV),職場におけるセクシュアルハラスメントや,いわゆるマタニティハラスメントなどの妊娠,出産等を理由とする不利益取扱い等の問題も,近年多く発生しています。
 こうした女性の人権問題に対して,平成28年4月,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が施行され,国と地方公共団体に加え,一定数の労働者を常時雇用する事業主に対して,女性の活躍状況の把握・課題分析,数値目標を掲げた行動計画の策定,策定した行動計画及び女性の活躍状況に関する情報の公表等が義務付けられました。令和2年6月には,義務の対象を拡大することなどを内容とする改正法が一部施行され,職業生活において,女性がその希望に応じて十分に能力を発揮し,活躍できる環境を整備するための取組が進められています。また,同時に改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)では,事業主のパワハラ防止対策義務や,労働者が事業主に各種ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とした不利益取扱いの禁止が明記された中で,妊娠,出産,育児休業に関するハラスメント,セクシュアルハラスメントに係る規定も一部改正されました。
 女性に対する暴力等への取組については,毎年11月12日から25日までの2週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間とし,社会の意識啓発等を行うほか,都道府県に設置された配偶者暴力相談支援センターや性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等において,相談や支援を行っています。さらに,令和2年6月に策定された「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」に基づき,被害者支援の充実や教育・啓発の強化など,性犯罪・性暴力を撲滅するための総合的な対策に取り組んでいます。

ここでも、人権侵害は「個人間」「民間」で起きるものという前提があり、国家が女性の人権を守るための核であるリプロダクティブ・ライツを保障していないことは隠されている。