リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

2014~2015年の計画策定専門調査会

男女共同参画局の第4回計画策定専門調査会で見つかった「中絶」または「リプロ」の議論

H26(2014)年12月25日の計画策定専門調査会(第4回)及び監視専門調査会(第29回)議事録以降にリプロや中絶に関する他の委員によるやりとりが出てきた。

文部科学省(生涯学習政策局男女共同参画学習課長) ……文部科学省ではこの第10分野につきましては、自らの健康を適切に管理、改善するための健康教育という観点、それから、スポーツの振興を通じた健康支援、更には周産期医療等の充実といった観点から取り組んでいるところでございます。
 御質問に沿いますと、まずリプロダクティブ・ヘルス/ライツについてどのような教育をというような御質問をいただいておりますけれども、それにつきましては、資料5-1の12ページのところにございます。特にリプロダクティブ・ヘルス/ライツという用語自体としては使用していないものの、学校教育全体を通じまして、児童・生徒の発達段階に応じた性に関する指導というところで、受精、妊娠・出産とそれに伴う健康課題ですとか、あるいは家族計画の意義、人工妊娠中絶の心身への影響等々について指導しているところでございます。
厚生労働省(雇用均等・児童家庭局母子保健課長補佐)……また、人工妊娠中絶の安全性に関します御指摘もいただいているところでございますが、こちらにつきましては日本産婦人科医会の御協力を得まして、全国的な調査を行った上で、国内でどのような方法で行われているか、またその際の合併症、大量出血の合併症の頻度が欧米各国と比較いたしましても大きく差はないというような結果を得られた分析も行っているところでございます。
……
○種部恭子委員……もう一点よろしいですか。もう一つ、人工妊娠中絶の方法については、確かに日本では安全だとされているのですが、世界標準のやり方からはかなり遅れている分野かなと思っております。今後学会とか委員会の中からも新しい世界標準のやり方に近づけようという方法が出てくるかと思うのですが、それについては積極的に取り入れるように取り計らっていただきたいと思っています。
……
○宗片惠美子委員 リプロダクティブ・ヘルス/ライツは大変重要な視点であるということで第3次計画に盛り込まれていまうが、この考え方については各府省超えて認識をしてくださっているのだろうと思いますが、どちらかというと妊娠・出産に光が当たる傾向がありますので、産めない、産まないという選択も十分に尊重すべきだということを一般にも広めていく、そういった取組も是非お願いしたいと思っております。また、人工妊娠中絶について、10代の数値はわずかではありますが増えているのです。こういったことについてはどのようにお考えなのか、そして、今、どのような取組を今後必要と思っているのか。学校現場でもそうでしょうし、さまざまな相談窓口というものもきめ細かく行われなければいけないのではないかと思うのですが、その点について伺いたいと思います。
○鹿嶋会長 今の質問はどちらがいいのだろう。文科省でいいのですか。
文部科学省(生涯学習政策局男女共同参画学習課長) 文科省では先ほど申し上げましたけれども、性教育という観点で家族計画というか、そういう妊娠をどうするか、自分の意思でどうしていくかということですとか、妊娠中絶の心身への影響といったものについて教えているところでございますが、担当部局ではないのでさらに詳しいところは分かりかねます。
○宗片委員 例えば個別に相談窓口を設けるということは実際には行っているのでしょうか。
文部科学省(生涯学習政策局男女共同参画学習課長) 多分学校の中では養護教諭等がそういった相談を受けていると思います。
○宗片委員 学校現場ではそうでしょうが、そのほかに例えばそういった悩み相談も含めた形で体の問題の相談を受けるような若者向けのような窓口というのはないのでしょうか。
厚生労働省(雇用均等・児童家庭局母子保健課長補佐) 若者向けということではございませんが、女性の健康相談支援センターというのを自治体の方で設けていただいておりまして、そちらの方で対応している部分もございます。
○宗片委員 それは保健所であるとか、保健センターであるとか、そういうことになるわけですね。それ以外にはなかなかないのですか。
厚生労働省(雇用均等・児童家庭局母子保健課長補佐) センターの設置主体が自治体なのですけれども、それのお願いする先で看護協会でありますとか、そういった地域の団体の御協力を得ながら取組を進めているところでございます。
○宗片委員 分かりました。


H27(2015)年1月9日男女共同参画会議 計画策定専門調査会(第5回)及び女性に対する暴力に関する専門調査会(第76回)議事録

○種部恭子委員……質問番号の11にありますが、DV被害者の方がまさに今、保護命令を受けていた場合に妊娠をしていた場合、これは抗拒不能の状態でパートナーから性行をされて妊娠をしている場合には、中絶をするときに相手の同意が必要ということになります。これは非常に人権的に問題であって、その同意を取りに行くことで生命に係る危険もあるということを申し上げたのですが、コメントとしては第三者を介して同意を得るということだったのですけれども、これは例え第三者を介するなり、あるいは間接的に同意をいただくような形をしても、配偶者が拒否をした場合は中絶ができない。産むという選択肢しか残されないことになってしまいますが、それでよろしいのでしょうか。人権的に非常に問題があると思いますので、今後これを見直すつもりがあるのかないのか。
……
厚生労働省 ……厚生労働省からもう一つ、種部先生からいただいた11番の御質問ですが、これは多分、先生同じお答えを何度もお聞きになっているかもしれなくてすごく心苦しいのですけれども、現時点で法改正レベルの検討がされているという状況にはございません。確かにいろいろな御意見をいただくのですが、胎児の生命尊重であるとか、女性の自己決定とか、本当にいろいろな意見がございまして、様々な意見が存在しているために現時点では難しい問題であるという認識は変わっていないところでございます。

H27 (2015)年1月14日計画策定専門調査会(第6回)及び監視専門調査会(第 30 回)議事録

○伊藤調査課長 それでは、お手元の資料1を御覧いただきたいと思います。時間の関係
もありますのでごく簡単に御紹介させていただきます。これまで 11 月、12 月と専門調査
会を開催してまいりましたが、各委員の皆様からいただいた第9分野の暴力分野を除く分
野の意見等について、事務局の方で取りまとめさせていただきました。
……
第 10 分野につきましては、男女の性差やコストベネフィットを考慮した健診の在り方の見直し、人工妊娠中絶の新しい方法の導入、早く出産することとキャリア形成を両立できるような職場環境の整備、女性の身体のメカニズムを学校教育の中で教えるべき等の御意見がございました。
……
○廣岡守穂 委員……健康支援の問題なのですけれども、ここから先は私の言葉使いなので、ここに出てくる言葉ではないのですが、一番健康支援で重要なのは女性の性的自己決定権だと思うのです。
 もろもろ考えてみて最も取り組まなければいけない課題の1つが、10 代の人工妊娠中絶の数が減っていないということだと思います。人工妊娠中絶はすごく減っていて、とてもいいと思うのですけれども、そこだけ減っていなくて、その根っこにあるのは最近の若い女の子はボーイフレンドから求められたときに断りにくいとか、避妊をしてほしいと言うと性的な経験が豊富ではないかと思われて、それがすごく嫌だとか、そういうものがあって、これはいわば内なる性的自己決定権の侵害だと思うのです。そういう問題がある意味では本当の意味で可能なのではないかと感じています。性的自己決定権という言葉を使えというわけではないのですけれども、1つ感じていることです。

H27 (2015)年7月6日の計画策定専門調査会(第10回)議事録では、担当課の課長説明の後で、種部恭子氏と鹿嶋氏が次のようなやりとりをしている。

○大隈推進課長 それでは、「Ⅱ安全・安心な暮らしの実現」ということで第6分野「生涯を通じた女性の健康支援」につきまして、前回からの修正を説明させていただきます。……45ページにまいりまして、2の妊娠・出産等に関する健康支援のところでございます。
 (2)の具体的な取組でございますが、従前、旧⑦というものがありまして、今の⑦が⑧で、⑥と⑦の間にもう一つパラグラフがございました。そこには、より安全な人工妊娠中絶が受けられるよう、人工妊娠中絶の方法について検討を進めるという書きぶりがございましたけれども、改めまして事務局でも検討いたしまして、この点はまずは学会などで御議論いただくことということで、そのパラグラフについては削除させていただいております。
 現在の⑦でございます。前回は人工妊娠中絶・生殖補助医療に関する法制度等のあり方についてという書きぶりをしてございましたが、現在、実際に議員立法等の検討がされておりますのは生殖補助医療に関するものでありまして、人工妊娠中絶に関する法制度のあり方について現在、特段の議論はないとうことで、ここは事務局の事実誤認に基づく記述ということで、人工妊娠中絶というところは削除させていただいております。

○種部委員……45ページ、先ほどの御説明でよくわかりましたが、中絶に関する安全性ですとかいろいろ社会的な背景も含めて非常に大きな問題で、これは学会で議論すべきということも非常によくわかりますが、その学会自体に政策決定の場に女性がいません。それが一番問題だと思います。次のページのところと絡むと思うのですが、医療分野における女性の参画の拡大の(2)具体的な取組ですが、⑥で指導的地域に占める女性割合30%に向けてということで、見える化を奨励するという形で末尾が終わっております。その後に女性活躍推進法の適用がある事業主ということになるのですが、具体的な事業主に誰が入るのか私もよくわからないのですけれども、ちなみに医療というのは診療報酬という公定価格で行われておりまして、これというのは最大のインセンティブだと私は考えているのですが、とするとそれを使う医療行為を行う全ての医療機関見える化の症例が適用になるのかどうか。
 医療機関の中ででも意思決定の場に女性はなかなか入っていけない。それから、医療にかかわる学会などにおいても女性というのは全く姿が見えないという状況ですので、ここでは対象が企業となっているのですが、企業ではなくて学会とか学術団体、さまざまな医療団体、そういうものが入るのかどうかということを教えていただきたいと思います。
……
○種部委員 もう一点、先ほどの人工妊娠中絶のことについて削除という、この中で話すことではないというのはよくわかったのですが、女性の暴力の分野で前に第3次のフォローアップのときに何回か意見を申し上げたと思うのです。厚労省の方にも御回答いただきました。DVで望まない妊娠をする。それも性的暴力によって妊娠をしている方が中絶を選ぶときには、配偶者の承諾が必要という母体保護法の規定がございます。これがあるために配偶者のところに命の危険を冒してそこに承諾を得に行くということは大変大きな問題だと。人命にかかわる問題にもかかわらず、暴力に関する分野のところでは被害者の安全を確保するということを重点的に扱っているにもかかわらず、そのことが今回文言としても書いていなかったのは非常に残念だったのですが、これはきょう議事録に残していただくとともに、もしここに今回載せないのであれば、今後も引き続きフォローアップしていく必要があると思っています。リプロダクティブヘルスという視点からいきますと、胎児の生命権と女性の人権という話になりますが、これは命にかかわる問題ということで取り上げていただきたいと思います。
○鹿嶋会長 要望として議事録にとどめます。第3次基本計画には実はこの点は載ってい
ないのです。これからの課題として考えます。

H27(2015)年10月26日の計画策定専門調査会(第11回)議事録でも、種部恭子氏が次のようにくり返し論じていた。

第7分野、暴力のほう……
パブコメの中にもやはりありました。人工妊娠中絶の問題がありまして、配偶者からの暴力によって妊娠している場合に、配偶者の承諾を得ないと人工妊娠中絶ができないということで、同意をとりに行くことが命がけであるということのために、中絶を選択できないということがあります。最近、無戸籍の子供の問題というのもありますので、これに対しても早急に法のあり方を変えるべきだということを前回の委員会のときに議事録に残していただいたと思いますが、パブコメにもありましたので、もう一度、再度検討していただきたいと思います。

DVがある場合の配偶者同意の問題である。鹿嶋氏は次のように対応している。

○鹿嶋会長 それから、人工妊娠中絶の同意の問題ですが、内部でもかなり議論はしたのです。なかなか難しいのは、例えば議員立法等によって、方向性とか検討がある程度進んでいれば、入れやすくなるのですけれども、そのような動きがない中で果たしてできるのか。御承知のように基本計画は行政のアクションプランですから、各政党の議員さんにそれをつくれということで促すというのは、現実問題としては難しいと思います。そのようなこともあって、今回は入れていません。私のほうでそういう指示をしています。
 この問題は第3次計画でもやはり入らなかったのです。種部委員のおっしゃっている趣旨は私もよく理解できますが、どうしてもこのあたりの限界が個人的にはあると思っているのですが、そういうことで今のところは入れていません。これから、また検討をしますが、御了解ください。