空疎な美辞麗句ばかり 優先課題、目標もリップサービスだけで何もしていない……
2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021~ポスト・コロナ時代のSDGs達成へ向けて~
1.巻頭メッセージ
新型コロナウイルスの感染拡大により、人間の安全保障が脅かされており、持続可能な開発目標(SDGS)の達成に向けた取組を一層加速させることが求められています。2030年までに、このSDGSの達成を実現するためには、世界が団結して取り組むとともに、各国が、前例にとらわれない戦略を立てて、取組を拡大・加速していかなくてはなりません。多国間主義アプローチを重視する日本は、自らが率先して、こうした国際社会の努力をリードしていく決意です。
私はこれまで、人間の安全保障の理念に立脚し、「誰の健康も取り残さない」という考えの下、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進すると共に、グリーン社会の実現やデジタル改革に向けた取組などを進めてきました。ポストコロナ時代におけるSDGSの達成に向けては、あらゆる分野において革新的なイノベーションを活用し、様々な政策を総動員し、未来を先取りする社会変革に取り組まなければなりません。
特に、気候変動問題は、人類全体で解決を目指すべき待ったなしの課題です。そのため、気候変動への対応が、日本、そして、世界経済を長期にわたり力強く成長させる原動力になるとの考えの下、日本は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、更に、50%の高みに向けた挑戦を続け、2050年には、カーボンニュートラルの実現を目指します。
日本は、新型コロナからの「より良い回復」を遂げるため、この自発的国家レビュー(VNR)にとりまとめたビジョンや取組、現状を踏まえ、あらゆる国・地域、組織・団体、市民社会、そして個人との協力を深めながら、SDGS達成の実現に向けた取組を加速してまいります。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/vnr/:title=全文
(3)8つの優先課題と主な取組
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優先課題1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
「誰一人取り残さない」とのキーワードは、2030アジェンダの根底に流れる基本的理念を示しており、2030アジェンダは、女性、子供、若者、障害者、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を求めている。
国際社会における普遍的価値としての人権の尊重と、ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化は、分野横断的な価値としてSDGsの全ての目標の実現に不可欠なものであり、あらゆる取組において常にそれらの視点を確保し施策に反映することが必要であり、この旨、SDGs実施指針にも明記している。
日本は、国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、脆弱な立場におかれた人々にこそ最初に手が届くように焦点を当ててきた。特に、国際協力においては、人間の安全保障の理念に基づき、持続可能な開発と平和の持続が表裏一体であることを踏まえ、一人ひとりの保護と能力強化を貫徹するために切れ目のない支援を行う「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視してきた。
脆弱な立場に置かれた人々が新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を大きく受けており、一層の対応が求められる。(1)国内の課題と取組
(ジェンダー主流化・女性の活躍推進)
男女共同参画・女性活躍の推進については、1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」に基づき、5年ごとに施策の基本的な方向や具体的な取組などを定めた「男女共同参画基本計画」を策定し、施策を総合的かつ計画的に推進している。また、女性の活躍を加速するために、2015年以降、毎年6月を目途に「女性活躍加速のための重点方針」を決定し、各府省の概算要求に反映させている。
目標5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
女性は、日本の人口の約51%、有権者の約52%を占めている。政治、経済、社会などあらゆる分野において、政策・方針決定過程に男女が共に参画し、ジェンダー平等が進むことは、日本の経済社会の持続的発展を確保するとともに、あらゆる人が暮らしやすい社会の実現につながる。
近年、様々な取組を進めてきた結果、日本の女性活躍は一定の前進が見られている。例えば、上場企業の女性役員数は5年間で約2.2倍に増加し、民間企業の各役職段階に占める女性の割合も上昇するなど、指導的地位に就く女性が増える道筋はついてきた。加えて、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」や「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」等、女性活躍に向けた法制度面の整備も着実に進んできた。
しかしながら、日本のジェンダー・ギャップ指数の総合順位は156か国中120位と、大変残念な状況にある。我が国における男女共同参画社会の実現に向けた取組の進展が未だ十分でない要因としては、①政治分野において立候補や議員活動と家庭生活との両立が困難なこと、人材育成の機会の不足、候補者や政治家に対するハラスメントが存在すること等、②経済分野において女性の採用から管理職・役員へのパイプラインの構築が途上であること、そして、③社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していること等が考えられると総括できる。グローバル化が進む中、男女共同参画の取組は、世界的な人材獲得や投資を巡る競争を通じて、日本経済の成長力にも関わる問題である。
順位 国名 値
1 アイスランド 0.892
2 フィンランド 0.861
3 ノルウェー 0.849
4 ニュージーランド 0.840
5 スウェーデン 0.823
11 ドイツ 0.796
16 フランス 0.784
23 英国 0.775
24 カナダ 0.772
30 アメリカ 0.763
63 イタリア 0.721
79 タイ 0.710
81 ロシア 0.708
87 ベトナム 0.701
101 インドネシア 0.688
102 韓国 0.687
107 中国 0.682
119 アンゴラ 0.657
120 日本 0.656
121 シエラレオネ 0.655
加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が、特に女性に強く出ている。例えば、非正規雇用労働者を中心に、2020年4月の女性の雇用者数が対前月比で男性の約2倍減少している。また、2020年4月から2021年3月のDV相談件数は前年度の約1.6倍に増加しており、2020年の女性の自殺者数は、前年と比べて935人増加している。更に、感染症の拡大が続く中で、家事や育児などの無償ケアの責任が女性に大きくかかっているという指摘もある。こうしたDVや性暴力の増加・深刻化の懸念や、女性の雇用、所得への影響等は、男女共同参画の重要性を改めて示すものである。
(抜粋)