リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

政権と女性 尊厳なければ輝けぬ

朝日新聞社説 2020年9月10日

新聞切り抜きが出てきた。
今になっても全面同感! 書き写します!!
さて、「次」の首相は……?

 すべての女性が輝く社会に。女性活躍の旗を高く掲げる――安倍首相が繰り返した約束である。政権の7年8ヵ月で変化はどれほどあっただろうか。
 きのう自民党本部で会った総裁選の討論会で、各候補は女性支援や男女格差の是正を訴えた。だが、本当に議論を深めるには、これまでの政策の功罪を見すえる必要がある。
 安倍政権の女性をめぐる諸策は総じて、経済主導の側面が強かった。人口減のなかで経済成長するために、女性の労働力を活用する考えが垣間見えた。
 子育て後の再就職・起業支援や育児休業の延長、待機児童解消策などは終業を後押しした。働く女性は昨年、初めて3千万人を超え、就業率はこの8年で6割から7割強になった。
 ただ、その過半数はパートなどの非正規雇用だ。コロナ禍では真っ先に解雇や雇止めにされ、この4月に減った非正規職97万人(前年比)のうち、7割以上が女性だった。
 5年前に成立した女性活躍推進法は、大手企業や自治体に女性登用の数値目標づくりなどを義務付けた。具体的な行動計画を促した点は評価できる。 だが政府は、「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」とした目標を断念し、「20年代の可能な限り早期に」というあいまいな表現で先送りにした。
 最も格差がひどいのは政治分野で、衆院議員の男性9割は世界最低レベルだ。一昨年に候補者男女均等法ができたが、昨年の参院選で候補者全体のうち女性は3割に満たなかった。
 世界経済フォーラムによる男女格差指数によると、8年前に101位だった日本は昨年、121位に後退した。主因は政治の遅れだ。国会議席のクオータ制や罰則なども含め、踏み込んだ検討をする時ではないか。
 問題の根底には、女性の人権を軽んじる文化が根強くある。
 近年も財務事務次官による女性記者へのセクハラや、大学医学部での女子受験者差別などが相次いだ。男女の固定的な役割意識を変えようという、社会的な作業がなされてこなかったことの裏返しだろう。
 選択的夫婦別姓も、世論調査で賛成が反対を大きく上回るなか、安倍政権は保守的な家族観を重視する議員や支持層に配慮し、何も動かなかった。
 暮らしのなかでの格差撤廃、官民の高位ポストへの妊孕、そして、女性の尊厳を守る社会的合意の形成。こうした旧来の課題が重く残されている。
 次の首相には、確かな変化をもたらす決意を切に求めたい。真のジェンダー平等のもとでしか、女性は輝かない。