リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

[社説]ノーベル経済学賞が提起した男女格差

日本経済新聞 2023年10月14日 19:00

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK1245I0S3A011C2000000/

有料記事ですが無料で読めるところまで。

 スウェーデン王立科学アカデミーは、2023年のノーベル経済学賞を米ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏に授与すると発表した。経済学賞で女性の受賞は3人目で、単独では初めてだ。

 功績にあげられたのは、女性労働の歴史と男女の賃金格差についての包括的な研究だ。米国の200年におよぶ労働統計などを精査し、高かった女性の労働参加率が工業化で一時、低下し、経済のサービス化で再び上昇したことなどを明らかにした。

 なかでも注目したいのは、今なお続いている賃金格差の要因を分析したことだ。男女の教育水準や職業が同じでも格差が生じており、主な要因は子どもの誕生だと指摘した。先進国で共通してみられる「チャイルドペナルティー」と呼ばれる現象だ。

 女性は男性より育児の責任を担うことが多く、キャリアアップや収入増が難しくなりがちだ。長時間いつでも働くことが優遇される職場でこの傾向は強くなる。

 女性が職場で十分に力を発揮できないことは大きな損失であり、世界的な社会課題だ。とりわけ日本にとって指摘は示唆に富む。

 日本は先進国のなかで飛び抜けて、家事・育児分担の男女格差が大きい。「男性は仕事、女性は家庭」を前提にした仕組みは、労働慣行だけでなく税・社会保障制度でも続いている。女性の多くはパートなど非正規で働き、管理職・役員は少ない。

 ゴールディン氏は記者会見で、働く女性が増えている日本の現状を評価する一方、「女性を労働力にするだけでは十分ではない」と述べた。世界経済フォーラムジェンダー・ギャップ指数で日本は23年、過去最低の125位になった。女性に偏る育児分担は、少子化の要因ともなっている。政府や企業は働き方、暮らし方を根本から見直すことが欠かせない。

 世界は格差解消に向かっている。日本はこれ以上、後れを取ることはできない。