リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開を

日本の少子化対策に欠けているもの:ジェンダーの視点に立った実態把握と必要な支援の実施

浅倉むつ子戒能民江・若尾典子共著『femニズム法学——生活と法の新しい関係』明石書店 2004年
第3章 人口論と女性の身体
7 日本の少子化社会の問題点

ここ大事。抜き書きします。

(人口政策に)女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開が、求められている。…… 
 日本が直面している少子化問題こそ、【前述のような】人口問題に関する国際的な政策アプローチが必要である。人口問題を政策として検討することは、その内容が人口の抑制であれ増加であれ、女性の出産行動を対象にすることになる。その場合、人間の数を問題にする視点は、人間の質の確保と言う問題と連動し、女性の出産行動を上から監視することに結び付きやすい。ブカレスト会議以後、途上国の女性が直面した問題は、途上国の特殊性、すなわち貧困で公衆衛生が保障されず、先進国の支援という名の圧力に屈しなければならなかったという点だけが原因ではない。なにより各国政府が、女性たちの直面している問題に取り組む姿勢をもつか否かによって、人口政策の成否が分かれた。多産であれ、少産であれ、どこにどのような問題を女性たちが抱えているのか。正確な実態把握と、必要な支援策の実施が必要である。これが、カイロ行動計画における、女性のエンパワーメントとリプロダクティヴ・ヘルス/ライツの要請である。……
……
 日本の少子化社会は、子育てを個人、とりわけ女性の負担に委ねているところに問題がある。求められているのは子育てを支援する具体的な施策・法制度である。ところが施策の充実を放置したまま、少子化社会対策基本法という、これまた理念を掲げる法律を追加した。しかも、この基本法は、家庭や子育てに夢をもつことができる社会の実現に努めることを、「国民の責務」とまでしている。これでは、日本政府・少子化社会対策基本法の狙いは、出産・子育てという社会的な支援を必要とする領域で、具体的な施策を講ずることなく、子を産まない女性を非難し、女性に子産みを強要するものではないか、という疑念さえ生じる。日本の少子化にたいする基本視せ右派、女性のエンパワーメントと、リプロダクティヴ・ヘルス/ライツの保障を、欠落しているところに、重大な問題がある。