リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

避妊ピルについてインフォームド・コンセントを求めたフェミニスト:バーバラ・シーマン

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第85回:ピル(医療と性と政治)(16):副作用(1)李 啓充

 ピルに重篤な副作用があるという危険性が米社会に広く認識されるようになったきっかけは,69年の“The Doctors' Case Against The Pill”の出版だった。著者のバーバラ・シーマンは,広範な医学データ,医師・研究者そして副作用の被害に遭った患者の証言を集め,ピルの安全性に大きな疑問を投げかけたのだった。
 シーマンの著書は政治家にも大きな影響を与えたが,その一人が,ウィスコンシン選出上院議員ゲイロード・ネルソンだった。ネルソンは,当時,上院委員会で,抗生物質や鎮静剤の乱用を巡って製薬業界の実態を調査する公聴会を開催していたが,ピルの安全性にテーマを絞って公聴会を開くことを決めたのだった。

 70年1月,ネルソンが主催した公聴会には,当時力を強めていたウーマン・リブ(女性解放運動)の活動家が多数詰めかけた。活動家のほとんどは自身でピルを服用していたし,「患者」としても,真剣に傍聴に臨んだのだった。しかし,招致された参考人に女性が一人も含まれていなかったことなど,女性=患者の立場が無視された公聴会の運営に,傍聴していた活動家たちのいらだちは強まった。いらだちが募る中,ある参考人が,ピルと癌の関係を「畑にまく肥料」と喩えた時点で,活動家たちの怒りが爆発した。

「危険にさらされているのは私たちなのに,委員にも参考人にも,女性が一人もいないのはなぜか?」
「なぜ男用のピルがないのか?」
「製薬会社はなぜ情報を隠してきたのか?」と,活動家たちは,疑問の数々を,大声で,委員と参考人たちにぶつけたのだった。

 委員長のネルソンは静粛を求めたが,怒った活動家たちは聞かず,ネルソンは,傍聴人をすべて退席させなければならなかった。

そして「思わぬ副作用」を産むことに……。とても面白いです!

医学書院/週刊医学界新聞 【〔連載〕続・アメリカ医療の光と影(85)(李啓充)】 ( 第2685号 2006年6月5日)

National Women's Health Networkの記事もご紹介。
www.nwhn.org