リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

リプロダクティヴ・フリーダム reproductive freedom の定義を集めてみました。

1970年代のフェミニスト基本的人権の一として導入した言葉で,安全な避妊と中絶,強制的な不妊手術,妊娠や出産の最中のヘルス・ケアなどを含むものとして定義される。かつてこの種の問題は,特に一部の人種や経済階層を対象に強制力をふるうことが含意された「人口コントロール」という名の下で取り扱われていた。(Gloria Steinem 1980, 15)
「リプロダクティヴ・フリーダムは,子どもをもつかもたないかを決定する個人の権利を提唱した。女性にとってより重要性の高い権利ではあるが,男性もこれによって保護される。」(Gloria Steinem 1983, 151-2.)
Cheris Kramarae and Paula A. Treichler, A Feminist Dictionary, 1985.【訳 塚原久美】

1970年代にフェミニストは性と生殖に関する自由を基本的人権として定義づけた。妊娠中絶や産児調節の権利を含むが,さらにもっと多くのことを意味している。これらの権利を実現するためには,性と生殖に関する自由は,出産か中絶か,不妊産児調節かを選択する女性の権利のみでなく,こうした選択を女性が男性,医師,政府や宗教の権威から圧力を受けることなく自由にできる権利をも含むべきである。性と生殖に関する自由がなければ,教育を受けたり,働いたり,平等賃金を受ける権利など女性が持っていると思われるその他の自由も有名無実なものになってしまうので,この性と生殖に関する自由は女性にとって重要な問題なのである。さらに育児施設,医療,子どもに対する世間の態度もかかわってくる。(後略)
リサ・タトル/渡辺和子監訳『フェミニズム事典』1991(原著1986)

女性の生殖能力管理の権利,母親にならない選択をする権利,母親になる権利を含む包括的言葉。これには,性教育産児制限,家族計画,中絶,自発的不妊処置の利用が含まれる。
ジャネット・K・ボールズ,ダイアン・ロング・ホーヴェラー編著/水田珠枝,安川悦子監訳『フェミニズム歴史事典』2000(原著1996)

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以下はオマケ。

Reproductive rights 性と生殖に関する権利,リプロダクティヴ・ライツ
 母になる権利,避妊・中絶の権利などを含む諸権利。リプロダクティヴ・ライツは,伝統的な男性の政治ではしばしば欠落させられてしまう分野である。フェミニズム理論は,リプロダクティヴ・フリーダム(性と生殖に関する自由)を求める議論において,公的な領域での合法性と私的な経験を対照することでこの男性の伝統を覆した。
 妊娠中絶のコントロールは女性と女性の居場所の将来にとって重要であるという認識によって,中絶の権利を求めるフェミニストの闘いはかたちづくられている。リンダ・ゴードンは,生殖のコントロールこそが女性の自己決定権をめぐる政治的闘争であったのだと論じている[Gordon 1976]。エイドリアン・リッチは,リプロダクティヴ・ライツがフェミニズムの核心であるのは,それが生殖の義務からの自由であるということと,母親であることを自分の手に取り戻すということ,この二つの意味においてであると述べている[Rich 1976]。リプロダクティヴ・ライツによって,女性は天地万物との新しい関係性の創造者となるであろう。
マギー・ハム著/木本喜美子・高橋準監訳『フェミニズム理論辞典』1999(原著1995)