リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

PubMedで見つけた女性の患者の(ディス)エンパワメントに関するWerner AとMalterud K.による論文2本をご紹介。

  • It is hard work behaving as a credible patient: encounters between women with chronic pain and their doctors.(Soc Sci Med. 2003 Oct;57(8):1409-19.)
  • "The pain isn't as disabling as it used to be": how can the patient experience empowerment instead of vulnerability in the consultation?(Scand J Public Health Suppl. 2005 Oct;(66):41-6. )


慢性的な痛みに悩まされていたノルウェーの女性患者たちは,(医師に逆らっている印象を与えることなく)さりげなく自分の訴えを正当化するのに苦労していた。自らが苦しめられている「医学的に説明のつかない症状」を,医師たちがなかなか信用してくれないためだった。医師たちは医学の限界を認めたがらない。しかし,女性たちの言うことをまるごと受けとめることが,患者のエンパワメントのためにも重要ではないか……と著者は呼び掛けている。

もっともな主張だと思う。この調査では慢性的な痛みが対象になっているけれど,妊娠や出産といった女性特有の経験を扱う(そして「言葉化されていない」)リプロティヴ・ヘルスの領域は,当事者の経験と医学的に限定された言語のずれが当事者のディスエンパワメントを引き起こしている最たるものだとも思う。


余白:それにしても,エンパワメントもディスエンパワメントもいい訳語がないなぁ……。後者は無力化,非力化,脱力化(奪力化?)……あたりだろうか。でも前者は?? カタカナ表記にするのなら,「エンパワーメント」と,「パワー」を訳出したほうがいいのかしらん。いろいろと悩むところだけど,結局,そのままにしておいた。