リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

今日,金沢大学で開かれた島薗進先生の講演会に行って来た。質問タイムに思わず口をついて出てしまった「プロネイタリズム」について,先生から文献を求められたのだけど,よく考えてみて困ってしまった。もともとは人口学の言葉だけど,もはや普通名詞のような気がしたからだ。特に文献を思いつかなかったので,私製データベースを漁っていたら次の論文が出てきた。以前,PubMedで調べたまま,暇があったら読んでみたいと思っていたものだ(けど,忘れていた)。

Eur J Popul. 1991;7(4):343-75.

Pronatalism and women's equality policies.

Heitlinger A.

アブストラクトをざっと訳すと次のとおり。

イデオロギーとしてのプロネイタリズムは,様々な意味を持ちうる。最悪のバージョンでは,帝国主義,人種差別,優生主義,男性が所得獲得者で女性が経済的に従属するという伝統的家族構造の強化に関連する。このバージョンは女性のリプロダクティヴ・チョイスを厳しく制限し,強力なプロネイタリズムと強力なアンチネイタリズムとを選択的に組み合わせたものになる。最良のバージョンでは,母親の役割をより所得獲得者としての役割と両立可能にし,子どものいる家庭を国家が支援することで女性の解放を支えるような政策と関連づけられる。McIntoshによれば,プロネイタリズム政策には以下の4つの阻害要因がある。1)人々の需要の欠如,2)政府がすべての公的サービスや現金支給をまかなえるだけの力を有していないこと,3)女性たちがより多くの子どもを産むように奨励する手段としての金銭的インセンティブの効果が疑われること,4)国家主義的原理が弱いこと。

ところで,ここに出てくるMcIntoshって誰なんでしょうね。今日のところは宿題にしておこうっと。