リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

避妊ピルは1950年代のアメリカで,産児制限運動の指導者マーガレット・サンガーとその友人で大金持ちのページ・マコーミックの依頼によって,ピンカスやロックらが考案したことになっている。しかし,じつは1920年代後半に,オーストリア生理学者Ludwig Haberlandt (l885-l932) が“ホルモンによる不妊法”を早くも開発していたという。

Harberlandtは1921年頃からホルモン作用によって不妊状態を作る研究に乗りだし,1927年にはブタペストの製薬会社との共同でInfecundinと名づけた試薬を作りあげた。1931年に彼は「生物学的原理にもとづくホルモン式不妊法は理想的な産児制限法」と述べていたが,翌年の死によって試験は途絶した。【Potts et al., 2002:11&17; Muller-Jahncke, 1988:420-2.】

Pottsが言うとおり,もしこの避妊法が1930年代に普及していたら世界の中絶事情は全く違うものになっていただろう……。