リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

男女共同参画計画(第二次)における後退

女性白書2006(日本婦人団体連合会編 2006年8月31日発行)より,2005年12月閣議決定された「男女共同参画基本計画(第二次)」が,計画の大幅な後退を目的としたバックラッシュ派の動きが活発化したため大きな影響を受けたことを抜き出して示します。

以下,p.26より抜粋

2001年の終わりごろから激化したバックラッシュ派からのジェンダーフリー教育や性教育に対する攻撃は,男女共同参画社会基本法の改悪や廃止を主要なターゲットの一つにしていました。それに加えて,2005年度には,基本計画からリプロダクティブ・ライツやジェンダー概念を削除するなどの内容の後退も活動の目標としました。
 自由民主党は,2005年4月に安倍晋三氏を座長,山谷えり子氏を事務局長とする「過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト」を立ち上げました。・・・さらに同プロジェクトは,男女共同参画会議で進めていた男女共同参画会議で進めていた男女共同参画基本計画の見直しに際しても,リプロダクティブ・ライツやジェンダー概念を削除しようとしました。

余談だが、安倍晋三はのちに高橋史郎との対談でこう語っている。

安倍――(前略)雛祭りや端午の節句も、女らしさや男らしさを押し付けるものだと教えていました。
 ジェンダーフリーの特徴は、過激な性教育です。ここにもやはり、「個人の家族からの解放」と言う目的が隠されている。というのも、男女の関係は生でしか結ばれないと言うわけです。家族の絆、夫婦の絆などは一切認めない。私は、ジェンダーフリー教育のもとになっている、男女共同参画基本計画については、約170カ所を修正し、正常化に努めました
高橋――年末(二〇一〇年)には第三次男女共同参画基本計画が改定されます。民主党政権は、内容を元に戻そうとしているようですが。
安倍――そうなんです。このことは、家庭崩壊、日本文化の崩壊に繋がることですから、何とか阻止しなければなりません。

この安倍氏が現首相であり,現政権もジェンダー差別をなくそうとする動きを抑制するのではないかと懸念されます。

以下、P.29より抜粋

(2)施策の基本的方向から「リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識の浸透:,具体的施策から「性教育」の後退

 一次計画では「8.生涯を通じた女性の健康支援」の(1)として「リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識の浸透」のもとに,「(1)女性の健康問題への取り組みについての機運の醸成,(2)学校における性教育の充実,(3)性に関する学習機会(社会教育)の充実(括弧内と数字は筆者(ママ))」が文部科学省厚生労働省が担当する具体的施策として明記されていましたが,二次計画では,(1)が削除されました。そのうち(1)については,新たに(1)となった生涯を通じた女性の健康の保持増進のもとに入りました。しかし,(2)と(3),つまり,性教育については,「(2)妊娠・出産等に関する健康支援」のもとに「イ 学校における適切な性教育の推進」の見出しとなり,後退した内容になりました。

結局,「妊娠・出産」するための性教育であって,避妊や中絶,性感染症,性暴力等の現実の問題は脇に押しのけられているわけです。また,「学校教育」の中でしか性教育が考えられていないのも目を引きます。実際には,性や生殖に関する諸問題について,正しい理解をしていない大人にも社会教育を施していく必要があると思います。

なお,第三次計画でも,「第10分野 生涯にわたる女性の健康支援」の「基本的考え方」の中に次のように書いてあるものの,リプロダクティヴ・ヘルス&ライツ(RHR)を啓発・推進するための具体的な施策は皆無です。

特に、女性は妊娠や出産をする可能性もあるなど、生涯を通じて男女は異なる健康上の問題に直面することに男女とも留意する必要があり、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)の視点が殊に重要である。

このままでは2015年の第四次計画もリプロに関する進展は期待されず,新たな働きかけが必要ではないでしょうか。

後日追記
2005年7月に行われた共同参画基本計画に関する専門調査会の会議に、自民党過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査委員会が提出した資料が見つかっています。
関連資料:

第12回男女共同参画基本計画に関する専門調査会議事録

(配布資料)
資料1
自民党過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム会合(7月7日)提出資料
その1→http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku/siryo/pdf/12-1-1.pdf
その2→http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku/siryo/pdf/12-1-2.pdf