リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ユニバーサルな勝利(Universal Win)

Center for American Progress

もう推測はいらない。国民皆保険制度が中絶率の低下につながることがわかったのだ。多くの人が長い間疑ってきたが、米国ではこれまで証明できなかったことが確認されたのである。今週発行されたNew England Journal of Medicine誌に掲載された報告書によると、マサチューセッツ州医療保険制度改革を実施してから最初の2年間で、中絶率が低下したことが明らかになった。


この研究によると、2006年にマサチューセッツ州医療保険を拡大する前の保険加入率は86%だった。2008年には94%の人が保険に加入していた。その同じ時期に、中絶件数は全体で1.5%、10代ではなんと7.4%も減少した。しかし、全米では、着実に減少していた中絶率が停滞しており、実際には、2005年から2006年(最新のデータ)にかけて3.2%増加し、10代の中絶率は1%上昇した。

もうひとつ興味深い事実がある。マサチューセッツ州では、データが入手できる最後の年である2007年に出生率が上昇している。このように中絶件数の減少と出生率の上昇が起きたのは、マサチューセッツ州のメディケイドプログラムが最貧困層の中絶を完全にカバーしており、次の所得層の人々が加入するプライベートプランでも中絶がカバーされているにもかかわらず。


貧困層の女性が中絶をする確率は、最富裕層の女性の4倍以上であることを考えると、この結果は、一般的に考えられているのとは逆に、中絶を保障することで中絶の利用が促進されたり増加したりすることはないという、特に印象的な証拠となる。


本研究では、手頃な価格の医療を利用できるようになったことが、このような傾向の主な原動力であると結論づけている。中絶率は複雑な社会的決定要因の結果であり、一つの要因だけではバランスを崩すことはできないだろう。しかし、出産を希望する女性にとって、必要なときに医療を受けることができるということは、経済的な負担を軽減するだけでなく、安心感につながることは言うまでもない。


さらに、保険を提供することで、多くの女性が医療機関を受診したり、リプロダクティブ・ケアを含む日常的なヘルスケアを受けることを妨げている現実的な経済的障壁を取り除くことができる。保険が適用されれば、女性は望まない妊娠を防ぐための避妊を受けることができるだけでなく、望まれる健康な妊娠をするために必要なケアを受けることができる。実際、健康な妊娠を実現するために最も重要なのは、妊娠前の女性の健康状態である。つまり、リプロダクティブ・ヘルスの良好な結果を得るためには、総合的な健康管理が不可欠なのである。


中絶が合法か犯罪かにかかわらず、医療インフラが充実している国は中絶率が低く、医療アクセスが悪い国は中絶率が高いことが、何十年も前から国際的なデータで証明されている。実際、今週初めにワシントンポスト紙が報じたところによると、米国は国民皆保険制度を導入していないこともあり、先進国の中で最も中絶率が高い国であり続けている。しかし、今回の調査では、文化的な違いなどを指摘する懐疑論者であっても、アメリカ国内に目を向ければ、同じ結果が得られることが判明した。


これは、中絶の権利を支持する人も反対する人も含め、すべての人にとって良いニュースである。国民皆保険になれば、プロライフを自称する人たちは中絶率が下がるのを目の当たりにし、プロチョイスを自称する人たちは、女性の妊娠の決断が状況よりも心によるものであることを知るだろう。

国民皆保険制度が妊娠中絶率を低下させるという有力な証拠がある中で、医療保険の議論で最大の争点の1つが妊娠中絶であるというのは、まさに皮肉なことである。5万9千人のローマ・カトリック修道女を代表する組織が最近述べたように、現在審議中の医療改革法案は「真の意味でのプロライフの姿勢であり、私たちカトリック教徒はこれに賛成します」。


ここまでくると、政治の世界に入り込んでしまって、事実関係はほとんど関係ないかもしれない。しかし、中絶を心配する政治家にとっては、包括的な医療制度改革に投票することが一番の近道ではないだろうか。


ジェシカ・アロンズはCenter for American ProgressのWomen's Health and Rights Programのディレクターである。

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