リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

女性に対する暴力に関する国連調査の報告書

大学女性協会のサイトで下記の報告書を見つけました。

あらゆる形態の女性に対する暴力に関する詳細な調査 事務総長報告書(2006 年10 月)A/61/122/Add.1

原文(英語版)はこちらにあります。

この調査における「女性に対する暴力」とは、次のように定義されています。

20.本調査では、「女性に対する暴力」という用語は、女である
が故に女性に対して向けられ、女性に不相応な悪影響を及ぼす
全てのジェンダーに基づく暴力行為と理解される。(囲み記事1
参照)本調査は、男性が受けるジェンダーに基づく暴力には対処
しない。「女性」という用語は、18 歳未満の者も含めたあらゆる
年齢の女性を含めたものとして使用される。

上記の囲み記事1は、次のとおりです。下記の「総会」とは国連総会のことですね。

囲み記事1

女性に対する暴力の定義
一般勧告第19 号
女性に対するジェンダーに基づく暴力は、「女性であるがため
に女性に向けられ、または不相応に女性に悪影響を及ぼす暴力
である。それには、身体的・精神的・性的害悪または苦しみ、
そのような行為の脅し、強制及びその他の自由の剥奪を加える
行為を含む。
ジェンダーに基づく暴力は、一般の国際法または人権条
約の下での人権と基本的自由の女性による享受を損ない、無
にするものであるので、「条約の第1 条の意味での差別であ
る。」a

「女性に対する暴力撤廃宣言」第1 条
女性に対する暴力とは、「公的生活で起こるものであれ、私的
生活で起こるものであれ、行為の脅し、強制、又は恣意的な
自由の剥奪を含め、身体的・性的・心理的害又は苦しみを女
性に与える結果となるまたは結果となりそうなジェンダー
基づく暴力行為を意味する。」b

女性に対するDV の撤廃に関する総会決議
「DV には経済的剥奪及び孤立を含み、そのような行為が女性
の安全、健康、ウェルビーイングに差し迫った害を引き起こ
すかも知れないことを」認める。c

a 女子差別撤廃委員会一般勧告第19 号パラ7。
b 総会決議48/104。
c 総会決議58/147。

次は、国の不作為について述べた部分です。

3. 国の不作為
96. 国は、ジェンダー役割と力関係を構築し、維持する際に重
要な役割を果たしている。国の不作為は、女性の人権を損ない、
女性の力を奪う差別的法律や政策をそのままにする。国は、防
止と救済措置の責任をNGO 及びその他の市民社会のグループ
に移す。国は、暴力を維持する女性の従属性を認めるもの、暴
力そのものを黙認するものとしても機能する。刑事司法制度の
適切な機能に関する国の不作為は、女性に対する暴力行為に対
する無罪放免が更なる暴力を助長し、女性の従属性を強化する
ので、特に腐食的効果を持つ。女性に対する暴力の原因に対処
するそのような国の不作為は、人権責務遵守の欠如となる(セク
ションVI を参照)。

訳語の問題はさておき、こういう文書を和訳して公開することには意味がありますよね。

大学女性協会は社団法人で、基本的に大卒の女性であれば誰でも正会員になれるようです。(趣旨に賛同すれば、それ以外の人でも賛助会員になれます。)会長は知る人ぞ知る房野桂さん(!)です。