リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

子宮頸がんの予防接種は必要?

娘が小学校高学年になったため、子宮頸がんワクチンのことが少々気になっていた。だけど先日、知り合いの産婦人科の先生から「男の子が受けてもいいんだよ」と言われて、はたと膝を打った。

そう、自分(の娘)一人が助かることを考えるのではなく、この社会から子宮頸がんをなくすということが目的ならば、男の子にもワクチンを打てばいいのだ。だってヒトパピローマウイルス(HPV)は性感染症なんだもの! そして、「ぼくはHPVフリーです」って証明書をもたせれば、女の子はそういう「安全な男の子」しか選ばなくなるのでは……そんなことは馬鹿馬鹿しい、不要だと言うのであれば、女の子だけに(しかも高額のワクチンを自費で)接種させることが本当に望ましいのかどうかを再考してみるべきだ。

子宮頸がんは予防可能な唯一のがんだと言われる。しかも最近、頸がんは若年層に急増している。だから親として、金銭的に余裕があれば、娘にも打たせたほうがいいだろうかと考えていたのだけれど、よく聞いてみれば、長期的な副作用はまだまだ分かっていないらしいし、すべてのHPV感染を予防できるわけでもないという(約7割を予防できる)。もっと恐いのは、予防接種をしたことで「自分は安全」と思いこむことで、健診を受けなくなったり、他の予防方法(たとえば、他の性感染症と望まれない妊娠の予防手段も兼ねられるコンドーム)を使わなくなったりすることだ。

冷静になって見ると、「子宮頸がんの予防」を叫んでいる人々は、必ずしも「ワクチン接種」を呼びかけているわけではなく、定期的な検診を呼びかけていたりする。

英語でリプロの文献を読んでいると、パップスミア(pap smear)とかパップテスト(pap test)という言葉をしばしば見かける。リーダーズをひいたら「【医】 パプ塗抹標本[試験]」という小難しい訳語が出て来たけれど、何のことはない、子宮頸がん健診のことだ。ワクチンのみに頼るのではなく、こちらの大切さも主張したい。