リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

CASAとWoWを訪問

CASA Amsterdam 中絶クリニック(アムステルダム)とWoW ウィメン・オン・ウェーブス オフィス(アムステルダム)を訪問してきました。詳細は後日。

後日日記です。なかなか時間が取れないので簡単に。

CASAとはCentra voor Anticonceptie, Seksualiteit en Abortusの略で,「避妊・セクシュアリティ・中絶センター」を意味する全国組織です。CASAでは(というか,今回訪問した組織はどこもそうでしたが)クライエントの求めに応じて,最高の質のケアを当人の尊厳を最大限に保障する形で,しかもオープンで,フレンドリーで,温かい環境のなかで提供しています。

訪ねたのはCASA Amsterdamのクリニックで,オランダ全体のCASAを統括している理事に面会しました。私が先に送っておいた日本の中絶事情を書いた英文資料を前日に読んだばかりだということで,日本の中絶医療が遅れていることへの驚きと動揺を隠せないようすで,あいさつもそこそこに「僕に何ができる?」と尋ねられました。話し合いの末に,IPPFやWHOの知り合いのオフィサーに日本の事情を話しておくと約束してくれました。(3月26日現在,すでにWHO担当者に連絡した旨を知らせるメールが来ています。)

その後,クリニックのマネジャーに平日の診療時間中だからと白衣を着せられ,クリニック内を案内していただきました。

このクリニックでは,吸引機を使った外科的中絶と,薬を使った内科的中絶を行っている他,避妊や避妊薬の相談,IUD等の挿入,若者に対する性に関する情報提供などが行われています。SENSEという若者に対して性に関するあらゆる情報提供を行う組織とも密接に関わっているそうです。

情報提供のパンフレット等はオランダ語だけではなく,移民や海外から中絶を受けにくる人々のためにヨーロッパやアフリカの国々の言葉の他,インドネシア語など多言語に翻訳されていました。残念ながら日本語はありませんでしたが。

追記です。

CASAでのMA(内科的中絶=薬による中絶)導入は2000年。

外科的中絶(吸引)との2本立てになったが,基本ポリシーは「女性自身に選ばせる」こと。結果的に,妊娠8週までは3割が薬,7割が吸引となっている。

吸引手術を行う場合は局所麻酔が基本。希望があれば全身麻酔(Propofolなどを使った静脈注射による鎮静処置)もするが,その場合は2時間余分にクリニックに滞在しなければならない。

妊娠8週までの第一トリメスタの中絶は5日間の待機期間が設けられている。

妊娠6週までのオーバータイムトリートメントの場合はこの待機期間が必要がない。

欧州の多くの国では中期中絶が禁止されているため,英国やオランダに処置を受けにくる人たちが少なくない。CASAアムステルダムでは17〜18%が外国人クライエントが占めている。料金は450〜1200ユーロ程度である。

今回,私たちの報告で日本の中絶事情の劣悪さ(特にD&Cが今も使われていること,薬が導入されていないこと,吸引が旧式の金属製器具で行われていること)が分かったので,WHOやIPPFの担当オフィサーに話をしておくと確約してくれた。(帰国後,実際にWHO担当者に話を通した旨,連絡を受けている。)

オーバータイムトリートメント(次の月経が来なかった場合の処置)は,6週と2日まで行われており,法的には「中絶」の分類には入らないそうです。薬も吸引も使われているとのこと。

なお,オランダでは手動吸引(MVA)はまだあまり一般的ではなく,機械式吸引(EVA)を使う医師が多いそうです。