リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

胞状奇胎の処置 Treatment for molar pregnancy or hydatidiform mole

医会研修ノートNo.99『流産のすべて』より

5.後期流産の処置の中に次の記述が出てきます。

○妊娠12 週以降の死産であっても,子宮内容物が胎児の形を成していない場合および胎児と認め得ない場合や,妊婦が死亡し,胎児の死亡も確実な場合は死産証書を作成する必要はない.

これ何? とびっくりして、産婦人科医の早乙女智子さんに質問したら、胞状奇胎のことだろうと教わりました。

「後期流産」に入れられてるけど、まさか分娩式で処置してないよね? と疑問に思って聞いてみたら、「吸引でしょう」とのこと。

海外ではどうかなと、英語の文献も調べてみました。

すると、Mayo ClinicAmerican Cancer Societyでは何とD&Cが第一の手段で、どちらも第二の手段としてHysterectory(子宮摘出)になっていたので、ちょっとびっくり!

イギリスのRCOGでは吸引(suction curettage)が第一手段でした。第二の手段は「薬」ですが、できるだけ避けた方がいいとの記述です。他にもPubmedでいくつか調べたけど、吸引が多いようです。Cocrane Libraryには該当する文献が見当たりませんでした。

早乙女さんいわく、現在は超音波診断などがあって胞状奇胎そのものが稀になっているそうです。D&Cを選んでいるのは、取り残しがないようにしてるのかも、ということでした。

MayoとCancer Societyの情報は、めったに行わない施術なので古い手法のまま記述が改められていない……なんてことないですよねぇ?

追記:胞状奇胎は一種の癌のようなものだとか。妊娠反応が陽性になるため、放っておくと危険なのだけど、今の時代は早期発見、早期介入されることが多いそうです。となると、どうして後期流産にわざわざその処置の説明が書かれているのか、謎でしかありません。