リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本産婦人科医会のCOVID-19に関する妊産婦へのメッセージ

医会は中絶業務を独占しながら、妊産婦ばかり優遇し中絶患者への情報提供は皆無

新型コロナウィルス感染が広まってきて、最初に会長 木下勝之、副会長 平原史樹の連名で妊産婦に対するメッセージを発したのは令和2年2月3日だった。
https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/02/200204.pdf

次のような内容である。

新型コロナウイルス感染症について―
1 2020 年 1 月から,中国(湖北省武漢)を中心にコロナウイルスによる肺炎が流行しています.1 月 31 日 WHO が緊急事態を宣言し、わが国でも 2 月 1 日から厳重に取り扱われる指定感染症となっています。
2 妊婦さんは本症に対しては、インフルエンザ予防と同様に「ひとごみを避ける」、「手洗い・消毒(アルコール等)」、また、マスク着用などを励行してください。さらに心配なことは産婦人科の主治医にご相談ください。
3 症状はかぜ症状と同様で、発熱が認められないものもあるとされていますが一般に発熱等をともない、肺炎を発症して重症になっていることが報告されています。
4 妊娠中に感染すると妊婦さん自身の症状が多少重くなる可能性がありますが報告がなく不明です(判明次第、情報を追加します)。
5 現在は発症例が地域でかぎられているようですが今後の国内での発症(流行)の状況は報道等で十分注意して情報を得てください。
6 感染は飛沫感染(咳、くしゃみ、つば)接触感染(ドアノブなどからも含めて)で感染するとされており、潜伏期(うつってから発症するまで)は数日から10日程度と報告されています。またこの潜伏期でも感染力があることが示されていますので注意が必要です。
*今後さらに新たな情報を追加していく予定です。

第2報から常務理事中井章人が加わり、徐々に情報の厚みが増していった。WHOのパンデミック宣言と東京都知事の「重大な局面」発言を経た第6報からは幹事倉澤健太郎も加わって、問い合わせ先などの情報が一気に増加した。第7報には厚生労働省の「妊婦の方々へ」というチラシも添付された。

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緊急事態が解除された後の5月26日の第8報が最新だが、2月3日からこの日まで8回に渡って発信されたメッセージのどこにも「中絶」患者へのメッセージは見当たらない。日本産婦人科医会は、母性保護指定医の団体ではないのか。

[http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/teikan.pdf:title=
日本産婦人科医会の定款]を確認してみよう。

(目 的)
第3条 本会は、母子の生命健康を保護するとともに、女性の健康を保持・増進し、もって国民の保健の向上に寄与することを目的とする。

(構 成)
第4条 本会は、前条の目的を達成するため、全国を対象として、前条の目的に賛同する各都道府県の母体保護法第14条による指定医師(以下「母体保護法指定医師」という。)及び産婦人科医師その他の医師(以下「産婦人科医師等」という。)をもって組織する。

(事 業)
第5条 本会は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1)母体保護法の適正なる運営と実施の推進

このように、その他の医師も含んでいるとはいえ、やはり主に母体保護法指定医師で構成されているのは明らかで、その第一の事業も母体保護法の運営と実施になっている。

それなのに、女性の中絶ニーズについて何の案内もないというのは、いったいどういうことだろう。産む女性は優遇する一方、中絶を受ける女性に対して全く配慮がないのだ。海外の産婦人科医の動向を見ると、なおのこと、日本の医師たちの中絶患者の冷遇ぶりが引き立つ。それについては、次のログで報告しよう。

日本では、国も産婦人科もコロナの感染拡大のなかそうでなくても不安に陥る緊急時に、中絶医療を求める女性に対して何の情報も与えなかった。パンデミック最中に望まない妊娠を経験してしまった女性たちはいったいどうしたのだろう。中絶医療に行きつけなかった女性もいたのではないかと強く懸念される。