男女共同参画局
国連特別総会「女性2000年会議」(2000年6月5日~10日)の
アドホック全体会合に関する報告書(2000年9月公表)から
総理府仮訳
北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ | 内閣府男女共同参画局
C 女性と健康
11.
成果:女性の生涯を通じたあらゆる側面に対応する保健計画の必要性について、政策決定者及び政策立案者間の認識を育む計画が実施され、多くの国で平均寿命が伸びた。マラリアや結核、水を媒介とする疾病、伝染病や下痢、栄養失調に対する関心の高まり、行動綱領のパラグラフ94及び95に記載されている女性のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス及びリプロダクティブ・ライツへの関心の高まりや、一部諸国では行動綱領パラグラフ96の実施の更なる強調、家族計画や避妊法の知識の高まりや利用の増加、そして家族計画や避妊法やその利用における男性側の責任に関する男性側の認識の高まり、ヒト免疫不全ウィルス/後天性免疫不全症候群 (HIV/AIDS)などの性感染症、及びかかる感染症の予防方法に対する女性や少女の関心の高まり、母乳哺育、栄養、母子の健康に対する関心の高まり、保健及び保健関連教育や身体活動や、たばこ・麻薬・アルコールなどの薬物中毒に対するジェンダー特有の予防・リハビリプログラムへのジェンダーの視点の導入、女性の精神衛生、職場における健康、環境への配慮や女性高齢者特有の健康ニーズの認識に対する関心が高まった。1999年6月30日から7月2日にかけ、ニューヨークにおいて開催された第21回国連特別総会は、女性の健康分野における成果を見直し、ICPD(国際人口・開発会議)行動計画(注8)の更なる実施に向けての主要な行動(注7)の採択を行った。
12.
障害:世界的に、富裕国・貧困国間、及び富裕国・貧困国に乳児死亡率及び妊産婦死亡率・疾病率の格差があること、ヒト免疫不全ウィルス/後天性免疫不全症候群などの性感染症、その他のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの問題、マラリアや結核、下痢や水を媒介とする疾病といった風土病や感染症や伝染病、あるいは非伝染性の慢性疾患に対して女性や少女が特に弱い立場にあることを考慮すれば、女性や少女の健康に対する処置に格差があることは、いまだに容認できるものではない。一部諸国では、こうした風土病や感染症・伝染病によっていまだに多くの女性や少女の生命が奪われている。また、心/肺疾患、高血圧、変性疾患といった非伝染性疾患がいまだに女性の死亡や疾病の大きな原因となっている国もある。妊産婦死亡率・疾病率については改善が見られた国もあるが、いまだに大半の諸国で容認できないほど高い。基本的な産科医療に対する投資がいまだに十分でない国も多い。生涯を通じて可能な限り最高水準の心身の健康を享受するのは女性の権利であるとの前提に立った全体的な取組が、女性や少女の健康や保健医療に関して欠如していることが、この分野における進展を妨げている。考えうる最高水準の心身の健康を享受する女性の権利を侵害する障害にいまだ直面している女性もいる。また、保健医療制度が、最善の健康を維持することよりも疾病治療を圧倒的に重視していることも全体的取組の妨げとなっている。一部諸国では、健康が社会的・経済的決定要素として果たす役割に関する配慮が不足している。清潔な水、十分な栄養、安全な衛生設備へのアクセスの欠如、ジェンダーに特化した健康に関する研究や技術の欠如、環境的及び職業的な健康障害関連のものも含む、保健情報や保健医療サービスの提供に際してのジェンダーに対する配慮不足が、途上国及び先進国の女性に影響を与えている。依然として多くの途上国では、貧困と開発の遅れにより質の高い医療を提供し拡充することができないでいる。特に途上諸国では、財源や人材の不足により、また保健部門の再編や場合によっては医療制度の民営化が進んだことにより、医療サービスの質が低下し、サービスの縮小・不足を招くとともに、最も弱い女性集団の健康に対する関心の低下も招いている。多くの場合、男女の力関係が平等でなく、女性が安全で責任ある性習慣を主張する権限を持たないことや、また特に女性の健康を守るニーズに関する男女間のコミュニケーションや理解が欠如しているといったことが障害となって、HIV/AIDSを含む性感染症の疾病率が高まるなど、女性の健康が脅かされており、またとりわけ予防に関連するヘルスケアや教育への女性のアクセスが難しくなっている。思春期の若者、特に思春期の少女は、依然としてセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスに関する情報、教育、サービスを利用することができない。女性は保健医療の対象として、多くの場合、敬意をもって扱われることも、プライバシーや秘密保持を保障されることもなく、また、選択肢や利用可能なサービスに関する情報も十分には与えられない。場合によっては、保健サービス及びその従事者が、女性への保健医療サービスの提供時に、人権にのっとった、倫理的かつ専門的でジェンダーに敏感な基準を遵守しない、あるいは責任ある自発的なインフォームド・コンセントを保証しないという場合もある。また、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケア、妊産婦及び産科救急医療に対する十分な注意を含む、適切で、料金が手頃で質の高いプライマリー・ヘルスケアが利用できるかどうか、またどのように利用できるかについての情報がなく、乳癌・子宮頸癌・卵巣癌・骨粗しょう症の予防診断や検診や治療を受けられないという状況が続いている。男性用避妊薬の試験や開発もいまだに十分ではない。行動綱領のパラグラフ106(j)及び106(k)に盛り込まれている、危険な中絶が健康に及ぼす影響と中絶への依存を減らす必要性に関する行動については、一部諸国でいくつかの対策が講じられているものの完全実施に至っているとは言えない。女性、特に若い女性の喫煙率が増加し、癌その他重い病にかかるリスクや、たばこや間接喫煙によるジェンダー特有のリスクが増加している。