リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスを "健康の文脈 "に位置づける

日本政府は何もしてこなかったことを反省すべき

Implementing the ICPD Programme of Action: What a Difference a Decade Makes
Marianne Haslegrave (Director)

一部仮訳してみます。

 ICPD行動計画では、新しい概念が導入され、非常に議論を呼んだ問題がいくつかありました。その一つが、リプロダクティブ・ヘルスを公衆衛生の文脈の中に位置づけたことです。リプロダクティブ・ヘルスは、産科・婦人科疾患、性感染症STI)、生殖がんの治療などの側面を除き、治療というよりは予防に関わるもので、カイロでは決して完全には受け入れられなかった視点でした。それでも、リプロダクティブ・ヘルスはプライマリー・ヘルス・ケアの中にしっかりと位置づけられており、カイロ以降、各国政府はリプロダクティブ・ヘルスをプライマリー・ヘルス・ケア・サービスに統合することに大きな困難を感じていない。カイロ以前は、プライマリー・ヘルス・ケアを支持する人々と、個別の家族計画サービスを推進する人々との間で、この点が激しく対立していた。

 興味深いのは、行動計画の「健康、死亡率、罹患率」の章のプライマリー・ヘルス・ケアとヘルスケア・セクターのセクションで設定されている目標が、リプロダクティブ・ヘルスに特に言及していないことである。しかし、取るべき行動のセクションでは、各国政府は「母子保健や家族計画サービスを含むリプロダクティブ・ヘルスを統合し、利用可能なサービスの範囲と質を向上させることを目的として、コミュニティ・ベースのサービス、ソーシャル・マーケティング、費用回収スキームを活用することにより、基本的なヘルスケア・サービスを財政的に持続可能なものにすること」が求められている7。

 ICPD行動計画では、保健分野の改革の必要性が取り上げられているものの、リプロダクティブ・ヘルス・ケアの統合については言及されておらず、1999年に総会で採択された「ICPD+5レビューの主要行動」でも言及されていないが、「妊産婦の死亡率と罹患率の減少を重視し、このような改革の成功の指標とすべきである」と強調している。 その理由として考えられるのは、いずれの会議でも、人口問題や家族計画の専門家や提唱者に比べて、保健大臣の参加が少なかったことです。
 振り返ってみると、保健分野の改革の中でセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスをしっかりと位置づける必要性が強化されなかったという点で、これは不幸なことでした。
 実際、政府、NGO、その他の人々が、この不作為の重大な意味に気付いたのは、ここ数年のことである。例えば、セクター・ワイド・アプローチ(SWAps)の開発において、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスが十分に取り上げられていないことが多い。このことは、多くの開発途上国リプロダクティブ・ヘルス・サービスの提供をドナーの資金に大きく依存していることを考えると、特に残念なことです。同様に、最近の貧困削減戦略ペーパー(PRSP)では、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスのケアがカバーされていないことが多く、世界銀行が最近導入した貧困削減クレジット(PRC)では、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスはおろか、保健に関する優先事項が全く含まれていないこともあります。

SRHおよびRHRに関するこの不作為から抜け出すためにすべきこととして、まずは北京行動要綱の「健康」と「女性の人権」に関する項目に照らして、日本政府の不作為をチェックしていくことを提案したい。

第Ⅳ章 戦略目標及び行動
C 女性と健康

戦略目標C.1. ライフサイクルを通じ,適切で,手頃な料金の良質の保健,情報及び関連サービスへの女性のアクセスを増大すること

戦略目標C.2. 女性の健康を促進する予防的プログラムを強化すること

戦略目標C.3. 性感染症HIV/AIDS及び性に関する健康とリプロダクティブ・ヘルス問題に対処する,ジェンダーに配慮した先導的事業に着手すること

戦略目標C.4. 女性の健康に関する研究を促進し,情報を普及すること

戦略目標C.5. 女性の健康のための資源を増加し,フォロー・アップを監視すること

女性の人権についても:

第Ⅳ章 戦略目標及び行動
I 女性の人権

戦略目標I.1. あらゆる人権文書,特に「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の完全な実施を通じて,女性の人権を促進し,保護すること

戦略目標I.2. 法の下及び実際の平等及び非差別を保障すること

戦略目標I.3. 法識字を達成すること

具体的な目標については追々検討していきたい。