「中絶の擁護」を書いた米フェミニスト哲学者亡くなる
ジュディス・ジャーヴィス・トムソンの訃報が飛び込んできました😥
中絶に関するバイオエシックスとフェミニストエシックスの発端になった論文「妊娠中絶の擁護(A defense of abortion)」を1971年に書き、人々をあっと言わせた独創的なフェミニストの哲学者です。
「国際的に有名なヴァイオリニストの命を救うために誘拐され、身体をつながれてしまったあなた」の有名なたとえ話は、何となくご存じの方もいるのでは? 妊娠した女性がどのような立場におかれるかということを、様々な論点から巧みに、そしてユーモアたっぷりに論じており、女性のみに「善きサマリア人」になることを法的に義務付けることの性差別性の指摘など、今でも十分読む価値があると思います。
中絶の倫理を考えるために超重要なトムソンのこの論文を、日本に生命倫理学をもちこんだ学者たちが、「脳死」の問題を考えるために「つまみ食い」して(論旨をめちゃくちゃにして)紹介していたことに私が気づき、全訳し直したといういわくつきの論文でもあります。
翻訳は江口聡先生監修の『妊娠中絶の生命倫理――哲学者たちは何を議論したか』(勁草書房 2011年)に収録されています。トムソンの思考を受け継ぎ、活かしていきましょう。
ご冥福をお祈りします。
英文はオンラインで読めます。
Judith Jarvis Thomson: A Defense of Abortion
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