社会権規約12条健康権に関する一般勧告14
1 健康は、他の人権の行使にとって不可欠な基本的人権である。 すべての人間は、尊厳ある人生を送るために到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有する。健康に対する権利の実現は、保健政策の策定、世界保健機構 (WHO) が行っている保健政策の実施、又は具体的な法文書の採択のような、数多くの補完的手法によって追求されうる。さらに、健康に対する権利は、法的に執行可能な一定の要素を含んでいるl)。
2 健康に対する人権は、数多くの国際文書で認められている。世界人権宣言の第25条1項は、「すべての者は、自己及び家族の健康及び福祉のための十分な(adequate)生活水準(食料、衣類、住居及び医療並びに必要な社会的サービスを含む)についての権利を有する」ことを確認している。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、国際人権法上、健康に対する権利に関する最も包括的な条項を規定している。規約の第12条1項に従い、締約国は「すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利」を認め、第12条2項は例示として、「締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置」をいくつか列挙している。 加えて、健康に対する権利はとりわけ、1965年の人種差別撤廃条約の第5条(e)(iv)、1979年の女性差別撤廃条約第11条1項(f)及び第12条、並びに1989年の子どもの権利条約第24条で認められている。1961年の(改正)ヨーロッパ社会憲章第11条、1981年の人及び人民の権利に関するアフリカ憲章第16条, 並びに1988年の、経済的, 社会的及び文化的権利の分野における米州人権条約追加議定書第10条のように、いくつかの地域的な人権文書も、健康に対する権利を認めている。 同様に、健康に対する権利は、国連人権委員会によっても2)、また、1993年のウィーン宣言及び行動計画、並びにその他の国際文書の中でも宣言されている3)。
3 健康に対する権利は、国際人権章典で述べられているように、食料、住居、労働、教育、人間の尊厳、生命、無差別、平等、拷問の禁止、プライバシー、情報へのアクセス、並びに結社、集会及び移動の自由を含む他の人椎の実現と密接に関連しており、また依存している。 これら及び他の権利自由は、健康に対する権利の中心的な構成要素にかかわっている。
4 規約の第12条を起草するにあたり、国連総会第三委員会は、WHOの基本文書前文にある健康の定義を採択しなかった。 これは、健康を「身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態(well-being)であり、単に疾病や疾患がないことではない」と概念づけたものである。しかし、規約の第12条1項が「到達可能な最高水準の身体及び精神の健康」と述べているのは、医療に対する権利に限られない。 反対に、起草の過程及び第12条2項の明文の文言は、健康に対する権利は人々が健康的な生活を送ることができる状況を促進する広範囲の経済的、社会的要素を含み、食料、栄養、住居、安全な飲み水及び十分な衛生へのアクセス、安全 14かつ健康的な労働条件、並びに健康的な環境のような、健康の基礎となる決定要素に及ぶことを認めている。
5 委員会は、世界中の何百万もの人々にとって、健康に対する権利の完全な享受はなお遠い目標であることを認識している。 さらに、多くの場合、特に貧困の中で生活する者にとっては、この目標はますます遠いものになりつつある。 委員会は、多くの締約国において、第12条の完全な実施を妨げる、国家の力の及ばない国際的及びその他の要素から生ずる強力な構造的及びその他の障害があることを認める。
6 締約国による規約の実施及び報告義務の遵守を支援するため, この一般的意見は, 第12条の規範内容(第I部)、締約国の義務(第II部)、違反(第III部), 国内レベルにおける実施(第IV部)に焦点をあて、締約国以外の主体の義務については第V部で扱う。 本一般的意見は、長年にわたり締約国の報告を審議してきた委員会の経験に基づくものである。
I. 第12条の規範内容
7 第12条1項は健康に対する権利を定義し、第12条2項は、締約国の義務を例示的に、網羅的でないかたちで挙げている。
8 健康に対する権利は、健康である権利 (a right to be healthy)と理解されるべきではない。健康に対する権利は、自由と権利 (entitlements)の両方を含んでいる。 自由には、自らの健康と身体を管理する権利(性と生殖に関する自由(sexual and reproductive freedom)を含む、並びに、拷問、同意のない医療及び実験を受けない自由のような、干渉からの自由を含む。 これに対し、権利には、人々が到達可能な最高水準の健康を享受するために平等な機会を与える健康保護の制度に対する権利を含む。
9 第12条1項における「到達可能な最高水準の健康」の概念は、個人の生物的及び社会・経済的な前提条件と、利用可能な国家の資源の双方を考慮に入れている。 国家と個人の関係においてのみでは解決できない側面は数多くある。 特に、良好な健康は国家によって確保されうるものではなく、また、国家は、人間の疾病の原因となりうるすべてのものに対して保護を与えられるわけでもない。 例えば、遺伝的要素、疾病に対する個人のかかりやすさ、不健康な又はリスクの多い生活習慣は、個人の健康に関して重要な役割を果たすことがありうる。 従って、健康に対する権利は、到達可能な最高水準の健康の実現のために必要なさまざまな施設、物資、サービス及び条件の享受に対する権利として理解されなければならない。
10 1966年の2つの国際規約の採択以来、世界の健康の状況は劇的に変わり、健康の概念は相当な変化を遂げかつその範囲も広がった。 資源配分や性差など、健康の決定要素がより多く考慮に入れられるようになっている。 より広い健康の定義はまた、暴力や武力紛争のような、社会的関連をもつ関心事項をも考慮に入れている4)。 さらに、HIV/AIDSのような、以前は知られていなかった病気、及び、がんのようにより広がった病気、また、世界人口の急速な増加は、健康に対する権利の実現にとって新たな障害を作り出しており、第12条を解釈する際にはこれらを考慮に入れる必要がある。
11 委員会は、第12条1項で定義された健康に対する権利を、時宜に適いかつ適切な医療だけでなく、安全な飲み水、十分な衛生、安全な食料、栄養及び住居の十分な供給、健康的な職業及び環境条件、並びに健康に関連する教育及び情報(性と生殖に関する健康を含む)へのアクセスのような、健康の基礎となる決定要素に対しても及ぶ包括的な権利として解釈する。 加えて、一つの重要な側面は、地域社会、国内及び国際的なレベルでの、健康に 15)関連するすべての意思決定の人々の参加である。
12 健康に対する権利は、そのすべての形態及びレベルにおいて、以下の相互に関連する本質的な要素を含むが、これらの具体的な適用は、特定の締約国において現存する条件に依存することとなろう。
(a) 利用可能性。 締約国内で、機能する公的な保健及び医療施設、物資及びサービス並びにプログラムが、十分な量で利用可能でなければならない。 施設、物資及びサービスの具体的な性質は、締約国の発展段階を含む数多くの要素によって異なるであろう。 しかし、これらには、安全な飲み水、十分な衛生設備、病院、診療所及びその他の健康関連施設、訓練を受け国内で妥当な給与を得ている医療及び専門職員、WHOの「必要不可欠な薬品に関する行動計画」で定義されている必要不可欠な薬品のような、健康の基礎となる決定要素が含まれるであろう5)。
(b) アクセス可能性。 保健施設、物資及びサービス6)は、締約国の管轄内において、差別なくすべての者にとってアクセス可能でなければならない。 アクセス可能性は、4つの互いに重なり合う側面をもつ。
無差別:保健施設、物資及びサービスは、すべての者、とりわけ最も脆弱な又は周辺に追やられた(marginalized)人々に対して、法律上及び事実上、いかなる禁止事由による差別も
なくアクセス可能でなければならない7)。
物理的なアクセス可能性:保健施設、物資及びサービスは、人々のあらゆるセクター、とりわけ、種族的少数者、先住民、女性、子ども、青少年、高齢者、障害をもった人及びHIV/AIDSウイルスをもった人のような脆弱な又は疎外された集団にとって、物理的に安全に手が届く範囲になければならない。アクセス可能性はまた、医療サービス並びに、安全な飲み水及び十分な衛生設備のような、健康の基礎となる決定条件が、農村地域を含めて安全に手が届く範囲にあることをも含意する。 アクセス可能性はさらに、障害をもった人にとっての施設への十分なアクセスを含む。
経済的なアクセス可能性(負担可能性) :保健施設、物貿及びサービスは、すべての者にとって負担可能なものでなければならない。 医療サービス及び、健康の基礎となる決定条件に関連したサービスに対する支払いは、これらのサービスが、民間で提供されるにせよ公的に提供されるにせよ、社会的に不利な状況にある集団を含めてすべての者にとって負担可能であることを確保する、平等の原則に基づくものでなければならない。 衡平さから、より貧しい家庭がより豊かな家庭に比べて健廉に関する負担を不均衡に負わされるべきではないことが要求される。
情報のアクセス可能性:アクセス可能性は、健康の問題に関する情報及び考えを求め、受け及び伝える権利8)を含む。 しかし、情報へのアクセス可能性は、個人的な健康データが内密に取り扱われる権利を妨げるべきではない。
(c) 受容可能性。 すべての保健施設、物資及びサービスは、倫理を尊重しかつ文化的に適切な、すなわち、個人、少数者、人々及び共同体の文化を尊重し、ジェンダー及びライフサイクル上の必要性に敏感であるとともに、機密性を尊重しかつ関係者の健康状態の改善を目的としたものでなければならない。
(d) 質。 文化的に受容できるものであることと並んで、保健施設、物資及びサービスはまた、科学的及び医学的に適切かつ良質のものでなければならない。 このことはとりわけ、技術 16をもった医療要員、科学的に認可されかつ有効期限内の薬品及び病院器具、安全な飲み水、並びに十分な衛生を必要とする。
13 第12条2項の非網羅的な例示は、国家がとるべき行動を定めるにあたっての指針を提供している。 本項は、第12条1項に含まれた健康に対する権利の広い定義から生ずる措置の具体例を挙げ、それによって、以下の段落で示されるようなこの権利の内容を例示したものである9)。
第12条2項(a). 母体, 子ども及び生殖に関する健康
14 「死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策」(12条2項*110)は、子どもと母体の健康、性と生殖に関する保健サービス(家族計画、産前及び産後のケア11)、 緊急の産科医療並びに、情報及びその情報に基づいて行動するために必要な資源、を改善するための措置を必要とすると理解することができる12)」。第12条2項(b). 健康的な自然及び職場環境に対する権利
15 「環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善」(12条2項(b)は、とりわけ、職業上の事故び疾病に関する防止措置、安全な飲み水の十分な供給及び基本的な衛生を確保する必要性、人々が放射能及び有害化学物質のような有害物質、又はその他人間の健康に直接もしくは間接的に影響を与える有害な環境条件にさらされることの防止及び削減からなる3)。さらに、産業衛生は、合理的に実行可能な限りにおいて、労働環境に内在する健康への危険の原因を最小にすることをさす14)。 第12条2項(b)はまた、十分な住居及び衛生的な労働条件、十分な食料供給及び適切な栄養をも包含し、アルコールの濫用並びに、たばこ、薬物及びその他の有害物質の使用を戒めている。
第12条2項(c). 疾病の予防, 治療及び管理に対する権利
16 「伝染病、風土病、職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧」 (第12条2項(c))は、性的
に感染する疾病(特にHIV/AIDS)のように生活習慣に関連した、また性と生殖に関する健康に悪影響を与える関心事に対する予防及び教育計画の設定、並びに、環境安全、教育、経済発展及びジェンダーの平等のような、良好な健康にとっての社会的な決定要素の促進を必要とする。治療に対する権利は、事故、伝染病及び同様の健康に対する危険の場合の緊急医療制度の創設、並びに、緊急事態における災害援助及び人道的援助の供給を含む。疾病の抑圧とは、とりわけ、人口学的調査及び細分類に基づいたデータ収集、免疫計画及びその他の伝染病管理の戦略の実施又は発展を用いかつ改善しつつ、利用できる関連技術を用いるために国家が個別及び共同の努力を行うことをさす。
第12条2項(d).保健施設, 物資及びサービスに対する権利15)
17 身体及び精神の「病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出」 (12条2項(d))は、基本的な予防的、治療的、リハビリ的保健サービス及び健康教育への平等かつ時宜に適ったアクセスの提供、定期的な検査計画、できれば共同体レベルでの、一般的な疾病、負傷及び障害の適切な治療、必要不可欠な薬品の供給、並びに、適切な精神医療及びケアを含む。さらに、一つの重要な側面は、保健部門の組織、保険制度のような予防的及び治療的健康サービスの供給における人々の参加、並びに特に、地域社会及び国内レベルの双方でなされる、健康に対する権利に関する政治的決定への参加の改善と拡張である。
第12条. 幅広く適用される具体的な事項
無差別及び平等の取扱い
18 第2条2項及び第3条により、規約は、医療及び健康の基礎となる決定条件へのアクセ
17)スにおいて、またそれを得るための手段及び権利に関して、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的又は社会的出身、財産、出生、身体的又は精神的障害、健康状況(HIV/AIDSを含む)、性的志向性並びに、市民的、政治的、社会的その他の地位に基づき、健康に対する権利の平等な享受又は行使を無効にし又は妨げる意図又は効果をもついかなる差別をも禁じている。 委員会は、健康に関連する差別をなくすためのほとんどの戦略及び計画のような多くの措置は、法律の採択、修正もしくは廃止、又は情報の流布を通して、最小限の資源の必要性しか伴わずに追求できることを強調する。 委員会は、たとえ深刻な資源の制約時でも、目標を定めた比較的低費用の計画の採択によって社会の脆弱な構成員が保護されなければならないと述べた一般的意見第3、パラグラフ12を想起する。19 健康に対する権利に関しては、医療及び保健サービスへのアクセスの平等が強調されな
ければならない。 国家は、十分な資力がない者に対して、必要な健康保険及び医療施設を提供し、医療及び保健サービスの提供において、特に健康に対する権利の中核的義務に関して、国際的に禁じられた事由に基づくいかなる差別をも防止する特別の義務を負っている16)。 健康に関する資源配分が不十分なことは、明白ではないかたちでの差別につながることがありうる。 例えば、投資は、人々のはるかに大部分の利益となる予防的医療よりも、人々の中のわずかな特権的階層にのみアクセスしうるものであることが多い高価な治療的健康サービスの方を不均衡に利するべきではない。
ジェンダーの視点
20 委員会は、女性と男性双方のためにより良好な健康を促進するため、国家がその保健関連政策、立案、計画及び調査においてジェンダーの視点を組み込むことを勧告する。 ジェンダーに基づくアプローチは、男性と女性の健康への影響において、生物的及び社会・文化的要素が大きな役割を果たしていることを認める。 性別による健康及び社会・経済的なデータの細分化は、健康における不平等を認識し是正するために不可欠である。
健廉についての権利と女性
21 女性に対する差別をなくすためには、女性のライフ・スパン全体を通して、健康に対する女性の権利を促進するための包括的な国内政策を発展させ実施する必要がある。 そのような政策は、女性がかかる疾病の予防及び治療を目的とした介入、並びに、性と生殖に関するサービスを含め、質の高く支払可能な全範囲の医療のアクセスを与えるための政策を含むべきである。 主な目標は、女性の健康上のリスクを軽減すること、特に、出産にかかわる死亡率を減少させること及び、家庭内暴力から女性を保護することである。 健康に対する女性の権利の実現は、性と生殖に関する健康(sexual and reproductive health)の分野を含め、保健サービス、教育及び情報へのアクセスを妨げるあらゆる障害を除去することを必要とする。 女性に生殖に関する完全な権利を否定する、有害な伝統的文化慣行及び規範の影響から女性を守るための予防的、促進的及び救済措置をとることも重要である。
子どもと青少年
22 第12条2項(a)は、幼児の死亡率を低下させ並びに、幼児及び児童の健全な発育を促進す
るための措置をとる必要性について述べている。 その後の国際人権文書は、子どもと青少年が、最高水準の健康を享受する権利及び疾病の治療のための施設へのアクセスを有することを認めている17)。
子どもの権利条約は国家に対し、子ども及びその家族のための不可欠の健康サービス(母親のための産前及び産後のケアを含む)を確保するよう要求している。同条約はこれらの目標を、予防及び健康促進的な生活習慣についての、子ども向けの情報へのアクセス、並びに、これらの行動を実施するにあたっての家族及び地域社会への支援を確保することと結
18)びつけている。 無差別原則の実施は、女子が男子と同様に、十分な栄養、安全な環境、身体的及び精神的健康への平等なアクセスを有することを要求している。 早期の婚姻、女性
性器切除、男児優先の食事及びケアを含め、子ども特に女子の健康に影響する有害な伝統
的慣行を廃絶するため、効果的かつ適切な措置をとる必要がある18)。 障害をもった子どもは、充実した、しかるべき人生を送り、また地域社会の中で参加する機会を与えられるべきである。
23 締約国は、青少年がその健康に影響する決定に参加し、生活上の技術を習得し、適切な情報を得、カウンセリングを受け、また彼らがなす健康に関する生活習慣の選択を話し合う機会を確保するため、青少年にとって安全かつ支援的な環境を与えるべきである。 健康に対する青少年の権利の実現は、機密性とプライバシーを尊重し、かつ適切な性と生殖に関する健康サービスを含む、若者向けの医療の発展にかかっている。
24 健康に対する子ども及び青少年の権利を保障するためのすべての政策及び計画においては、彼らの最善の利益が第一の考慮を受けるべきである。
高齢者
25 健康に対する高齢者の権利の実現に関しては、委員会は、一般的意見第6 (1995)のパラグラフ34及び35に従い、予防的、治療的及びリハビリ的健康治療の要素を組み合わせた統
合的アプローチの重要性を再確認する。これらの措置は、男女のための定期的な健康診断、高齢者の機能と自立性の維持を目的とした身体的及び心理的リパビリ措置、慢性的疾患及び回復不能な疾患をもつ人のために、避けられる苦痛をなくし尊厳をもって死ぬことができるようにする看護とケア、に基づくべきである。
障害をもった人
26 委員会は, 身体及び精神の健康の文脈において、障害をもった人の問題を扱った、一般的意見第5のパラグラフ34を再確認する。 さらに委員会は、公的保健セクターのみならず民間の保健サービス及び施設の供給者も、障害をもった人に関して無差別の原則に従うことを確保する必要性を強調する。具体的な法的義務
34 国家は特に、とりわけ次のことによって、健康に対する権利を尊重する義務を負う。それは、囚人ないし被拘禁者、少数者、庇護申請者及び不法移民を含めすべての人に対して、 20)予防的、治療的健康サービス及び緩和的健康サービス[訳注 : 主として末期ガンの患者に行われる緩和ケア]への平等なアクセスを拒否又は制限するのを控えること、また、女性の健康上の地位及び必要性に関して差別的行為を行うのを控えることである。 さらに、尊重する義務は、精神病の治療もしくは伝染病の防止及び抑圧のため例外的に行われるものでない限り、伝統的な予防的ケアを禁止もしくは妨げることを控えまた、安全でない薬品の販売及び強制的な医療実験の実行を控えるという国家の義務を含む。そのような例外的な場合は、最善の方法並びに、「精神病の人の保護及び精神医療の改善のための原則」を含む適用可能な国際基準を尊重しつつ、具体的かつ制限的な条件に服するべきである24)。
加えて、国家は、避妊具及びその他の、性と生殖に関する健庚を維持するための手段へのアクセスを制限すること、性教育及び性に関する情報を含め、健康に関連する情報を差し控えないし意図的に不正確に述べること、また、健康に関連する事項に対する人々の参加を妨げることを控えるべきである。 国家はまた、例えば国有施設からの産業廃棄物によって違法に空気、水及び土壌を汚染すること、実験が人間の健康に有害な物質を排出する結果となる場合には核、生物もしくは化学兵器の使用もしくは実験を行うこと、また、例えば国際人道法に違反した武力紛争の際に懲罰的措置として健康サービスへのアクセスを制限することも控えるべきである。一般的意見第14 (2000)到達可能な最高水準の健康に対する権利(規約12条) (E/C.12/2000/4 ) 13頁以降を参照
CESCR General Comment No. 14: The Right to the Highest Attainable, Standard of Health (Art. 12)
到達可能な最高水準の健康に対する権利(規約12条) (E/C.12/2000/4 ) 一般勧告第14 (2000) - リプロな日記
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