リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

国連の人権規約、条約による「中絶」の保障

女性差別撤廃条約社会権規約自由権規約子供の権利条約

女性差別撤廃条約一般勧告24(1999年)

女子差別撤廃委員会による一般勧告(内閣府仮訳)です。

31. 締約国は、また、とりわけ次のことも行うべきである。
(a)女性の健康に影響を及ぼすあらゆる政策及びプログラムの中心にジェンダーの視点を据え、また、かかる政策及びプログラムの計画立案、実施及びモニタリング、並びに女性に対する保健サービスの提供に女性を関与させること。
(b)セクシュアル・ヘルス及びリプロダクティブ・ヘルスの分野を含め、女性が保健のサービス、教育及び情報を享受する機会を阻害するあらゆる障害の排除を確保するとともに、とりわけ、HIV/AIDS を含む性感染症の予防及び治療のための思春期の若者向けのプログラムに資源を配分すること。
(c)家族計画及び性教育を通じて望まない妊娠の予防を優先事項とし、安全なマザーフッド・サービス及び産前の援助を通じて妊産婦死亡率を低下させること。可能な場合は、妊娠中絶を刑事罰の対象としている法律を修正し、妊娠中絶を受けた女性に対する懲罰規定を廃止すること
(d)保健サービスを享受する平等の機会とケアの質を確保するため、女性に対する保健サービスの提供について、公的機関、非政府機関及び民間機関によるモニタリングを行うこと。
(e)すべての保健サービスに対して、自主性、プライバシー、秘密保持、インフォームド・コンセント、及び選択の権利を含む女性の人権との整合を要求すること。
(f)保健従事者の訓練カリキュラムに、とりわけジェンダーに基づく暴力をはじめとする女性の健康と人権に関するジェンダーに配慮した包括的な必修講座を含めることを確保すること。

国際連合 経済社会理事会 社会権規約委員会 第12条:性と生殖に関する健康に対する権利に関する一般勧告22(2016年)(訳日本弁護士連合会訳をもとに一部改訳

I. イントロダクション

1. 性と生殖に関する健康に対する権利(the right to sexual and reproductive health)は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第12条に規定されている「健康を享受する権利」の重要な一部を成すものである[1]。性と生殖に関する健康に対する権利は、他の国際人権文書にも反映されている[2]。人権の枠組みにおける性と生殖に関する健康の問題は、1994年に「国際人口開発会議行動計画」が採択されたことにより、さらに強調された[3]。これ以降、性と生殖に関する健康に対する権利についての国際的・地域的な人権基準及び判例は、大きく発展した。最近では、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に、性と生殖に関する健康の分野において達成すべき目標とターゲットが盛り込まれている[4]。

2. 性及び生殖に関する健康のための様々な施設、サービス、物資及び情報へのアクセスは、多くの法的、手続的、慣習的及び社会的な障壁により著しく制限されている。実際に、全世界の数百万人の人々(特に女性と少女)にとって、性と生殖の健康に対する権利を十分に享受することは、依然として遠い目標である。法律上・事実上の排除を深刻化させる複合的・交差的な差別の対象となっている個人や集団(例:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーインターセックスの人々[5]、障がい者)による性と生殖に関する健康に対する権利の享受は、さらに制限されている。

3. 本一般勧告は、締約国による規約の実施と、規約に基づく報告義務の遵守を支援するべく作成された。本一般勧告は、主として、すべての個人が性と生殖に関する健康に対する権利を享受できるよう保障する締約国の義務(規約第12条において義務付けられているもの)を扱うものであるが、規約中のその他の条項にも関係する。

4. 当委員会は、すでに、到達可能な最高水準の健康に対する権利(経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第12条)に関する一般勧告第14 (2000)において、性と生殖に関する健康の問題を部分的に扱った。しかし、この権利に対する深刻な侵害が継続していることを踏まえると、当委員会は、この問題について、個別に意見一般勧告を出すべきであると考える。


II. 背景

5. 性と生殖に関する健康に対する権利には、様々な自由(freedom)と権利(entitlement)が含まれる。上記の自由には、暴力、強制及び差別を受けることなく、自分の身体や、性と生殖に関する健康に関する事項について、自由に責任ある決定及び選択を行う権利が含まれる。また、上記の権利には、妨害を受けることなく、健康に関する様々な施設、物資、サービスおよび情報にアクセスする権利が含まれる(これにより、規約第12条に基づく性と生殖に関する健康に対する権利の十分な享受が、すべての人に保障される。)。

6. 性の健康(sexual health)と生殖の健康(reproductive health)は、互いに区別されるが、同時に、密接に関係している。性の健康は、世界保健機関(WHO)が定義するように、「セクシャリティに関し、身体的、感情的、精神的、そして社会的に良好な状態(well-being)にあること」[6]を意味する。生殖の健康とは、国際人口開発会議行動計画で説明されているように、生殖能力、及び十分な情報に基づく自由かつ責任ある決定に関するものである。これには、個人が、自分の生殖行動に関し、十分な情報に基づき自由に責任ある決定を行うことを可能にするために、生殖の健康に関わる様々な情報、物資、施設及びサービスにアクセスすることも含まれる[7]。


基礎的決定要因及び社会的決定要因

7. 当委員会は、一般勧告第14において、到達可能な最高水準の健康に対する権利は、単に疾病・疾患がないことや、予防的、治療的及び緩和的な健康サービスを受ける権利に限られるものではなく、健康の基礎的決定要因(underlying determinants of health)にも及ぶと述べた。これは、性と生殖に関する健康にも当てはまる。性と生殖に関する健康は、性と生殖に関する医療のみならず、性と生殖に関する健康に関する基礎的決定要因にも及ぶ。これには、安全な飲用水、十分な衛生設備、十分な食料・栄養、適切な住居、安全で健康的な労働条件・労働環境、健康に関する教育・情報、並びにあらゆる形態の暴力、拷問、差別及び性と生殖に関する健康に悪影響を与えるその他の人権侵害からの効果的な保護へのアクセスが含まれる。

8. また、性と生殖に関する健康は、WHOが定義する「健康の社会的な決定要因(social determinants of health)」[8]にも強く影響される。どの国でも、性と生殖に関する健康の有り様には、一般的に、ジェンダー、民族的出自、年齢、障がい及びその他の要因に基づく社会的不平等や権力の不平等な配分が反映されている。貧困、所得格差、及び当委員会が明示した根拠に基づく構造的な差別・疎外は、いずれも性と生殖に関する健康の社会的決定要因であり、これは他の様々な権利の享受にも影響を与える[9]。こうした社会的要因(これらは、法律や政策で明示されていることが多い。)の本質は、個人が自分の性と生殖に関する健康について行使しうる選択権を制限する。したがって、締約国は、性と生殖に関する健康に関する権利を実現するため、法律、制度的取決め及び社会的慣行に明白に表れている、個人の性と生殖に関する健康の実効的な享受を阻害する社会的要因に対処しなければならない。


他の人権との相互依存性

9. 性と生殖に関する健康に対する権利を実現するには、締約国が、規約の他の条項に基づく義務を果たすことも必要である。例えば、教育に対する権利(第13条及び第14条)、差別を受けない権利及び男女間の平等に対する権利(第2条第2講及び第3条)も相まって、性と生殖に関する健康に対する権利には、セクシャリティと生殖に関する教育(包括的、非差別的であり、エビデンスに基づいており、科学的に正確であり、かつ年齢に適した教育)を受ける権利が必然的に含まれる[10]。また、性と生殖に関する健康に対する権利は、労働の権利(第6条)、公正かつ良好な労働条件を享受する権利(第7条)、差別を受けない権利及び男女間の平等に対する権利と相まって、労働者(移民労働者や障がいを持った女性など、弱い立場にある労働者を含む。)のための母性保護及び育児休暇が保障された雇用を確保すること、職場でのセクシャル・ハラスメントからの保護を確保すること、さらに妊娠、出産、親であること[11]、性的指向性自認又はインターセックスであることを理由として差別の禁止を徹底することを国家に要求する。

10. また、性と生殖に関する健康に対する権利は、他の人権と不可分であると同時に、他の人権と相互依存の関係にある。この権利は、生存権等の市民的・政治的権利(これは、個人の身体的・精神的な完全性(integrity)及び自立性の土台を成す。)、人身の自由及び安全、拷問及びその他の残虐、非人道的又は侮辱的な取扱いからの自由、プライバシー及び家庭生活の尊重、並びに差別の禁止及び平等と密接に関連している。例えば、産科救急ケアサービスの不存在や妊娠中絶の拒否は、しばしば妊産婦の死亡及び罹病をもたらすが、これらは、ひいては生存権又は安全に対する権利を侵害するものであり、場合によっては、拷問又は残虐、非人道的もしくは侮辱的な取扱いに該当する可能性もある[12]。

ここで初めて中絶が出てくる。
社会権規約一般勧告22の10「中絶を拒否することは、生存権又は安全に対する権利を侵害するものであり、場合によっては、拷問又は残虐、非人道的もしくは侮辱的な取扱いに該当する可能性もある」

以降、「中絶」が出てきた段落のみピックアップする。

利用可能性
12. できる限り幅広い性と生殖に関する医療を人々に提供するため、十分な数の機能的な医療施設、医療サービス、医療物資及び医療プログラムの利用が可能であるべきである。これには、性と生殖に関する健康に対する権利を実現する基礎的決定要因を保障する、施設、物資及びサービス(例)安全な飲用水、十分な衛生設備、病院、診療所)の利用可能性を確保することが含まれる。
13. 訓練を受けた医療関係者及び専門職員、並びに性と生殖に関する医療サービスを提供する訓練を受けた医療提供者の利用可能性を確保することは、利用可能性の確保における極めて重要な要素である[14]。また、必須医薬品の入手も可能であるべきである。これには、様々な避妊法(例:コンドーム、緊急避妊、妊娠中絶薬、妊娠中絶後のケア用の医薬品)、並びに性感染症及びHIVの予防・治療用の医薬品(ジェネリック医薬品を含む。)が含まれる[15]。

社会権規約一般勧告22の13「中絶薬は入手可能にしなければならない」

情報へのアクセス可能性
18. 情報へのアクセス可能性には、性と生殖に関する健康に関する一般的問題についての情報及び意見を求め、入手し、広める権利、及び個人が自らの健康状態に関する具体的情報を得る権利が含まれる。すべての個人及び集団(青少年及び若者を含む。)が、性と生殖に関する健康のあらゆる側面に関し(母体の健康、避妊薬・避妊具、家族計画、性感染症HIV予防、安全な妊娠中絶及び妊娠中絶後のケア不妊及び妊孕性に関するオプション並びに生殖器のがんを含む。)、エビデンスに基づいた情報を得る権利を有する。

19. こうした情報は、年齢、ジェンダー、言語能力、教育レベル、障がい、性的指向性自認及びインターセックスであるか否かといった点を考慮しつつ、個人及びコミュニティのニーズに即した方法で提供しなければならない[19]。情報へのアクセス可能性により、個人の健康データ及び健康情報の取扱いにおいてプライバシー及び秘密性が尊重される権利が害されるべきではない。

社会権規約一般勧告22の18情報へのアクセス可能性「安全な妊娠中絶及び妊娠中絶後のケア……について、エビデンスに基づいた情報を得る権利を有する。」

21.性と生殖に関する健康に関連する施設、物資、情報及びサービスは、良質のもの(つまり、エビデンスに基づいており、科学的及びイラク的に適切かつ最新のもの)でなければならない。これには、訓練を受け、技術を持つ医療関係者、並びに科学的に認められた有効期限内の医薬品及び設備が必要となる。性と生殖に関する医療サービスの提供において、技術的進歩及び革新(例:妊娠中絶用の医薬品[20]、生殖補助医療、HIV及びエイズ治療の進歩)を取り入れることを怠り、または拒絶すると、治療の質が損なわれてしまう。

社会権規約一般勧告22の21質の保障「中絶薬など医療サービスの提供において技術的進歩及び革新を取り入れることを怠り、または拒絶すると、治療の質が損なわれる。」

男女間の平等、及びジェンダーの視点

25. 女性は生殖能力を持つことから、性と生殖に関する健康に対する女性の権利を実現することは、女性の様々な人権を実現する上で、極めて重要である。性と生殖に関する権利に対する女性の権利は、女性の自律、及び自分の人生や健康について有意義な決定を行う女性の権利に不可欠である。男女平等は、女性の健康上のニーズ(これは、男性のニーズとは異なる。)が考慮されること、また、女性のライフサイクルに合わせ、女性に適切なサービスが提供されることを要求する。
<中略>
28. 法律上及び事実上、女性の権利と男女平等を実現するには、性と生殖に関する健康の分野における差別的な法律、政策及び慣行を廃止または改正する必要がある。性と生殖に関する健康のための広範なサービス、物品、教育及び情報に対する女性のアクセスを妨げる障壁は、すべて排除される必要がある。妊産婦の死亡率及び罹病率を下げるには、産科救急ケアと熟練助産者(農村部及び僻地を含む。)、そして危険な中絶の阻止が必要である。望まない妊娠と危険な中絶を阻止するには、負担可能な価格の安全かつ効果的な避妊薬・避妊具及び包括的性教育へのアクセスをすべての個人(青少年を含む。)に保障すること、中絶を制限する法律を緩和すること、女性と女子に安全な中絶サービスおよび良質な妊娠中絶後のケア(訓練を受けた医療従事者が提供するものを含む。)へのアクセスを保障すること、並びに女性が自分の性と生殖に関する健康について自律的決定を行う権利の尊重を目的とする法的・政策的措置を国家が講じることが必要となる[25]。

社会権規約一般勧告22の28 男女間の平等、及びジェンダーの視点より、「望まない妊娠と危険な中絶は阻止すべき」

IV.締約国の義務

 A. 一般的な法律的義務

33. 規約第2条第1項に規定されているように、締約国は、性と生殖に関する健康に対する権利の完全な実現を漸進的に達成するため、利用可能な自国のリソースを最大限に用いて、措置を講じなければならない。締約国は、到達可能な最高水準の性と生殖に関する健康に対する権利の完全な実現に向けて、可能な限り迅速かつ効率的に行動しなければならない。これは、完全な目標達成は漸進的かもしれないが、それに向けた措置は、即時に、または合理的短期間のうちに講じられなければならないことを意味する。これらの措置は、あらゆる適切な手段(立法措置及び予算措置を含むが、これらに限定されない。)を用いた、慎重、具体的かつ目標が特定されたものであるべきである。

34. 締約国は、性と生殖に関する健康に対する平等な権利を保障するため、個人及び集団に対する差別を撤廃する即時的な義務を負っている。この義務は、特定の個人及び集団について性と生殖に関する健康に対する権利を実現される能力を失わせ、または阻害している法律及び政策を廃止または改正する義務を国家に貸す。性と生殖に関する健康の十分な享受における自律性、平等権及び差別の禁止を損なう様々な法律、政策及び慣行が存在するのが現状である(例:中絶の犯罪化又は妊娠中絶を制限する法律)。締約国は、すべての個人及び集団が、性と生殖に関する健康のための様々な情報、物品およびおサービスに平等なアクセスを有するよう徹底するべきである(特定の集団が直面している障壁をすべて除去することを含む)。

社会権規約一般勧告22の34締約国の一般的な法的義務「中絶の犯罪化又は妊娠中絶を制限する法律は廃止または改正すべきである。」

尊重義務

40. 尊重義務は、国家に対し、個人が行う性と生殖に関する健康に関対する権利の行使を、直接的にも間接的にも妨害しないことを義務付ける。国家は、何人にも、性と生殖に関する健康へのアクセスを制限または否定してはならない(性と生殖に関する医療サービス及び情報を犯罪とみなす法律による場合を含む。)が、同時に、医療データの秘密性は維持されるべきである。国家は、性と生殖に関する健康に対する権利の行使を妨げる法律を改正しなければならない。かかる法律の例には、妊娠中絶、HIVステータスの非公表、HIVの感染および伝染、同意に基づく成人間の性行為、並びにトランスジェンダーとしての性自認又は性表現を犯罪とみなす法律が含まれる[31]。

41. 尊重義務もまた、性と生殖に関する医療サービスへのアクセスに障壁を課す法律や政策を廃止すること、及びその制定を行わないことを国家に義務付ける。これには、第三者の許可要件(例:性と生殖に関する医療サービスおよび情報(妊娠中絶、避妊具・避妊薬を含む。)へのアクセスに、親、配偶者及び司法の許可を要求する要件)、偏ったカウンセリング、並びに離婚、再婚又は妊娠中絶サービスへのアクセスを行うための義務的待機時間、義務的HIV検査、並びに性と生殖に関する特定の医療サービスを公的資金及び海外援助資金から除外することが含まれる。誤情報を流布する行為、及び性と生殖に関する健康についての情報にアクセスする個人の権利に制限を課す行為も、人権尊重義務の違反にあたる。国家及び援助国は、性と生殖に関する健康についての情報の検閲、留保、虚偽表示、またはかかる情報の提供(公衆に対するもの、及び個人に対するものの双方を含む。)の犯罪化を控えなければならない[32]。こうした制約は、情報及びサービスへのアクセスを妨げるうえに、スティグマと差別を助長する可能性がある[33]。

社会権規約一般勧告22の40 締約国の具体的な義務-尊重義務「中絶を犯罪と見なす法律は改正すべき」
社会権規約一般勧告22の41 締約国の具体的な義務-尊重義務「中絶に第三者の許可要件を設けている政策・法律は廃止すべき」「性と生殖に関する特定の医療サービスを公的資金及び海外援助資金から除外する政策は廃止すべき」「誤情報を流布する行為…は人権尊重義務の違反にあたる」

充足義務

45. 充足義務は、性と生殖に関する健康に対する権利を完全に実現するため、適切な立法措置、行政措置、予算措置、司法的措置、促進的措置及びその他の措置を講じることを国家に義務付ける[36]。国家は、すべての個人(不利な状況に置かれ、疎外された集団に属する個人を含む。)が、差別を受けることなく、性と生殖に関する様々な良質な医療に普遍的アクセスを有するよう徹底することを目指すべきである。かかる医療には、母体保護、避妊に関する情報及びサービス、安全な妊娠中絶のケア、並びに不妊生殖器のがん、性感染症及びHIVエイズの予防、診断及び治療(ジェネリック医薬品を使用するものを含む。)が含まれる。締約国は、あらゆる状況で行われた性的暴行及び家庭内暴力の被害者に、身体的・精神的な医療を保障しなければならない(暴露後予防、緊急避妊及び安全な妊娠中絶サービスへのアクセスを含む。)。

46. また、充足義務は、性と生殖に関する健康に対する権利の完全な実現を妨げる事実上の障壁(例:過度な費用負担、性と生殖に関する医療への物理的・地理的アクセスの欠如)を根絶するための措置を講じることを国家に義務付ける。国家は、医療提供者が、性と生殖に関する良質かつ丁寧な医療サービスを行う訓練を十分に受けるよう徹底しなければならず、また、そのような医療提供者が自国内に均等に分配されるよう徹底しなければならない。

47. 国家は、性と生殖に関する医療サービスの提供と供給に関し、エビデンスに基づく基準及びガイダンスを作成し、実施しなければならない。また、このガイダンスは、医学の進歩を反映させるため、日常的に更新しなければならない。同時に、国家は、性と生殖に関する健康についての教育(年齢相応であり、エビデンスに基づく、科学的に正確な包括的教育)をすべての人に提供する義務を負う[37]。

48. また、国家は、様々な年齢やジェンダーの個人、女性、女子及び青少年が性と生殖に関する権利を自律的に行使することを、規範又は信条の点において妨げている社会的障壁を根絶するために、積極的改善措置もとらなければならない。月経、妊娠、出産、自慰、夢精、パイプカット及び妊孕性に関する社会的誤解、偏見及びタブーは、個人の性と生殖に関する健康に対する権利の享受を妨げることがないよう、改められるべきである。

社会権規約一般勧告22の45 締約国の具体的な義務-充足義務「性と生殖に関する健康に対する権利を完全に実現するため、適切な立法措置、行政措置、予算措置、司法的措置、促進的措置及びその他の措置を講じることは国家の義務」「性的暴行及び家庭内暴力の被害者に、身体的・精神的な医療(安全な中絶サービスを含む)を保障しなければならない」
社会権規約一般勧告22の46 締約国の具体的な義務-充足義務「性と生殖に関する健康に対する権利の完全な実現を妨げる事実上の障壁(例:過度な費用負担、性と生殖に関する医療(安全な中絶サービスを含む)への物理的・地理的アクセスの欠如)を根絶するための措置を講じることは国家の義務」
社会権規約一般勧告22の47 締約国の具体的な義務-充足義務「性と生殖に関する医療サービスの提供と供給に関し、エビデンスに基づく基準及びガイダンス(医学の進歩を反映させるため日々更新する)を作成し、実施する義務、すべての人に包括的性教育を行う義務」
社会権規約一般勧告22の48 締約国の具体的な義務-充足義務「個人の性と生殖に関する健康に対する権利の享受を妨げる社会的誤解、偏見及びタブーを根絶する積極的改善措置をとる義務」

C. 中核的義務

49. 締約国は、少なくとも、性と生殖に関する健康に関する権利について、必要最低レベルの充足を確保する中核的義務を負う。これに関して、締約国は、近時の人権文書及び判例[38]、並びに国連機関(特に、WHO及び国連人口基金UNFPA))が制定した最新の国際的ガイドライン及びプロトコル[39]の指針に従うべきである。この中核的義務には、少なくとも、以下が含まれる。

(a) 個人又は特定の集団による性と生殖に関する健康のための施設、サービス、物資及び情報へのアクセスを犯罪とみなし、妨害し、又は害する法律、政策及び慣行を廃止し、又は撤廃すること。

(b) 十分に予算配分された、性と生殖に関する健康に関する国家戦略及び行動計画を採用し、実施すること。これらは、透明性のある参加型の手続きを経て考案され、定期的に見直し及び監視を受け、かつ差別的禁止事由を個別的に示したものでなければならない。

(c) 性と生殖に関する健康のためのサービス、物品および施設(手ごろな値段で、許容可能かつ良質なもの)に対する普遍的及び平等なアクセスを、特に、女性及び不利な状況に置かれ、疎外された集団に保障すること。

(d) 性と生殖に関する個人のニーズと行動に関し、プライバシー、秘密保持、及び情報に基づいた、責任のある自由な意思決定(強制、差別又は暴力をうけるおそれのない意思決定)を確保すると同時に、悪しき慣行及び性差に基づく暴力(女性器切除、子どもの結婚、強制結婚、家庭内暴力、性的暴力(特に、婚姻内強姦を含む。)を禁止する法律を制定し、実施すること。

(e) 危険な妊娠中絶を阻止するための措置、並びに妊娠中絶後のケア及びカウンセリングを、それを必要とする女性に提供するための措置を講じること。

(f) すべての個人及び集団が、性と生殖に関する健康についての包括的教育及び情報(無差別で、偏見がなく、エビデンスに基づいており、子も及び青少年の能力の発達を考慮したもの)へのアクセスを有するよう徹底すること。

(g) 性と生殖に関する健康に必要不可欠な医薬品、設備及び技術を提供すること(WHOの「必須医薬品モデルリスト」に基づく提供を含む[40]。)

(h) 性と生殖に関する健康に対する権利の侵害に対し、効果的で透明性のある是正措置及び救済策(行政上及び司法上のものを含む。)へのアクセスを確保すること。

社会権規約一般勧告22の49 すべて中絶に関連しているが、特に明示したいのは:
49「締約国は、近時の人権文書及び判例[38]、並びに国連機関(特に、WHO及び国連人口基金UNFPA))が制定した最新の国際的ガイドライン及びプロトコル[39]の指針に従う」…WHOの『アボーションケア・ガイドライン』に従うべきである。」
(a)刑法堕胎罪は廃止すべき。
(b) 十分に予算配分された、性と生殖に関する健康に関する国家戦略及び行動計画を採用し、実施すべき。
(c) 手ごろな値段で、許容可能かつ良質な中絶サービスを提供すべき。
(d) 性と生殖に関する個人のニーズと行動に関し、プライバシー、秘密保持、及び情報に基づいた、責任のある自由な意思決定を確保すべき。
(e) 危険な妊娠中絶を阻止するための措置、中絶後のケア及びカウンセリングを、必要とする女性に提供すべき。
(f) 包括的性教育を提供すべき。
(g) 中絶薬を含む必須医薬品を提供すべき。
(h) 性と生殖に関する健康に対する権利の侵害に対する是正措置及び救済策を提供すべき。

V. 違反
55. 不作為による違反には、性と生殖に関する健康に対する万人の権利を完全に実現するための適切な措置を講じないこと、また、これに関連する法律の制定及び実施を行わないことが含まれる。性と生殖に関する健康に対する権利の享受における形式的平等及び実質的平等の確保を怠った場合は、上記権利の侵害に該当する。性と生殖に関する健康に対する権利の平等な享受には、法律上及び事実上の差別を撤廃することが必要である[42]。

56. 国家が、法律、政策又は行為を通じて、性と生殖に関する健康に対する権利を損なった場合は、尊重義務への違反に該当する。かかる違反には、個人が自分の身体をコントロールする自由、及びこれに関して十分な情報に基づく自由かつ責任ある決定を行う能力を妨げることも含まれる。また、国家が、性と生殖に関する健康に対する権利の享受に必要な法律及び政策を廃止または停止した場合も、尊重義務違反に該当する。

57. 尊重義務違反の例には、個人による性と生殖に関する医療サービスへのアクセスを妨げる法的障壁を設けることが含まれる(例:女性の妊娠中絶の犯罪化、同意している同性成人間の性交渉の犯罪化)。性と生殖に関する医療サービスおよび医薬品(例:緊急避妊)へのアクセスを事実上禁止又は否定することも、尊重義務違反となる。非任意又は強制的な医療行為を定める法律及び政策強制(強制不妊術、又は義務的なHIVエイズ検査、処女検査若しくは妊娠検査を含む。)も、尊重義務への違反にあたる。

社会権規約一般勧告22の56「国家が、法律、政策又は行為を通じて、性と生殖に関する健康に対する権利を損なった場合は、尊重義務への違反に該当する。
社会権規約一般勧告22の57「個人による性と生殖に関する医療サービスへのアクセスを妨げる法的障壁(女性の中絶の犯罪化を含む)を設けることは尊重義務違反」
社会権規約一般勧告22の59「性と生殖に関する健康に対する健康の享受を妨げること(中絶若しくは妊娠中絶後のケアを求める女性を標的にした暴力、悪しき慣行を含む)を阻止するために効果的な措置を国家が講じなかった場合は、保護義務への違反」
社会権規約一般勧告22の60「日本産婦人科医会が、個人による性と生殖に関する健康に対する権利の享受を損ない、又は侵害していないことを確認するために、これらを効果的に関し・管理しなければならない。」「国家は、民間の健康保険会社が、性と生殖に関する医療サービスを保険の適用対象とすることを拒否しないよう徹底する義務を負う。」


自由権規約第6条: 生命に対する権利に関する一般勧告36
国連自由権規約委員会一般勧告36 第6条: 生命に対する権利

>>  
8. 締約国は、自主的な妊娠中絶を規制するための措置を採用することは可能であるが、そのような措置は、妊娠中の女性又は少女の生命に対する権利、若しくは自由権規約の下において保障されているその他の諸権利を侵害する結果となってはならない。
 したがって、妊娠中絶を求める女性又は少女の能力に対する制限は、とりわけ、 彼女たちの生命を危険にさらし、あるいは彼女たちに第7条に違反する肉体的又は精神的な苦痛や苦しみを与え、彼女達を差別し、彼女らのプライバシーに対する恣意的な干渉となるようなものであってはならない。
 締約国は、妊娠中の女性又は少女の生命及び健康が危険に曝される状況、又は妊娠を予定日まで継続することが妊娠中の女性又は少女に相当の苦痛や苦しみを引き起こすような状況、なかでも妊娠がレイプや近親相姦の結果の場合、あるいは胎児が致命的な損傷を負っている場合などの状況下における妊娠中の女性又は少女に対して、安全かつ合法的、効果的な妊娠中絶へのアクセスを提供しなければならない[注7]。
 加えて、締約国は、女性又は少女が安全でない妊娠中絶に頼る必要がないように配慮しなければならない義務を負うのであり、この義務に違背するような形で妊娠や妊娠中絶を規制することは許されず、これに沿うように締約国はその中絶に関する法律を改正しなければならない[注8]。
 例えば、締約国は未婚女性の妊娠を刑事罰の対象とすること、あるいは中絶を経験した女性及び少女に対して刑事罰を適用すること[注9]、それを手助けした医師に対して刑事処罰を適用することなどの措置は、その措置により女性及び少女が安全でない中絶を強制されるので、採用するべきではない。
 締約国は、安全かつ合法的な中絶[注10]に対して女性又は少女が効果的にアクセスすることを否定する新たな障壁を導入するべきではなく、又はそのような既存の障壁[注11]を取り除くべきであり、そのような障壁には医療提供者個人の良心的拒否の結果としてもたらされるものも含む[注12]。
 さらに締結国は、安全でない妊娠中絶に伴う精神的・肉体的な健康リスクから女性及び子どもの生命を効果的に保護しなければならない。
 特に、締結国は、全ての人、特に、少女及び少年[注13]に対して、性と生殖 にかかる健康[注14]に関する質が高く、科学的根拠に基づいた情報及び教育、 並びに様々な手頃な価格の避妊方法[注15]へのアクセスを確保するべきであり、 更に妊娠中絶を求める女性又は少女へのスティグマを防止するべきである[注16]。
 締約国は、いかなる状況においても、秘密厳守で[注18]、女性及び少女に対して[注17]、出産前及び妊娠中絶後の適切な健康管理が利用でき、効果的なアクセスができるよう確保しなければならない。

自由権規約一般勧告36 「締約国は妊娠中の女性又は少女の生命に対する権利、若しくは自由権規約の下において保障されているその他の諸権利を侵害する措置を取ってはならない。」「中絶に関して、女性の生命を危険にさらし、肉体的又は精神的な苦痛や苦しみを与え、差別し、プライバシーに干渉するような中絶への制限を加えてはならない。」「中絶を経験する女性に刑事罰を与えてはならない。」「女性や少女が安全な中絶にアクセスできなくなるような障壁を作ってはならない。」「安全でない妊娠中絶に伴う精神的・肉体的な健康リスクから女性を守らねばならない。」「締約国は、女性又は少女が安全でない妊娠中絶に頼る必要がないように配慮しなければならない義務を負うのであり、この義務に違背するような形で妊娠や妊娠中絶を規制することは許されない。」「妊娠継続が女性又は少女に相当の苦痛や苦しみを引き起こすような場合、特に性犯罪による妊娠の場合は特に、安全かつ合法的、効果的な妊娠中絶へのアクセスを提供しなければならない。」「国家はプライバシー厳守で、中絶後の適切な健康管理ができるようにしなければならない。」


子どもの権利条約第24条到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関わる一般的意見 15 号

31.子どもは、子どもとともに活動する専門家によって子どもの最善の利益にのっとっていると評価される場合には、その発達しつつある能力にしたがい、親または法定保護者の同意を得ることなく、秘密が守られるカウンセリングおよび助言にアクセスできるべきである。国は、親または法定保護者がいない子どもを対象として、子どもに代わって同意を与え、または子どもの年齢および成熟度によっては子ども自身による同意を援助することができる適切な養育者を指名するための、法律上の手続を明確にすることが求められる。国は、HIV検査ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのサービス(セクシュアルヘルス、避妊および安全な妊娠中絶に関する教育および指導を含む)など一定の医学的治療および介入策について再検討を行ない、これらの治療および介入策については親、養育者または保護者の許可を得ることなく子どもが同意できるようにすることを検討するべきである。

54.この連続的期間全体を通じて利用可能とされるべき介入策には、必須保健としての予防および健康促進ならびに治療的ケア(新生児破傷風、妊娠時のマラリアおよび先天性梅毒の予防を含む)、栄養ケア、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、情報およびサービスへのアクセス、健康的行動教育(たとえば喫煙および有害物質濫用に関するもの)、出産準備支援、合併症の早期認識および管理、安全な妊娠中絶サービスおよび中絶後のケア、出産時の必須ケア、ならびに、HIVの母子感染の予防ならびにHIVに感染した女性および乳児のケアおよび治療が含まれるが、これに限られるものではない。分娩後の産婦および新生児のケアにおいては、母親が子どもから不必要に分離されないことが確保されるべきである。

56.青少年の妊娠率が世界的に高く、かつ、青少年の妊娠には関連する罹病および死亡のリスクが付け加わることを踏まえ、国は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる青少年の特有のニーズを保健制度および保健サービス(家族計画および安全な妊娠中絶のためのサービスを含む)が満たせることを確保するべきである。国は、女子が自己のリプロダクティブヘルスについて自律的な、かつ十分な情報に基づく決定を行なえることを確保するために行動するよう求められる。青少年の妊娠を理由とする差別(停退学等)は禁止されるべきであり、また継続的教育の機会が確保されるべきである。

57.健康的な妊娠・分娩の計画および確保にとって男子・男性がきわめて重要であることを考慮し、国は、セクシュアルヘルス、リプロダクティブヘルスおよび子どもの健康のためのサービスに関する政策および計画に、男子・男性を対象とする教育、意識啓発および対話の機会を統合するべきである。

70.コンドーム、ホルモン避妊法および緊急避妊薬のような短期的避妊法を、性的活動を行なう青少年が容易にかつ直ちに利用できるようにするべきである。長期的かつ恒久的な避妊法も提供することが求められる。委員会は、国が、妊娠中絶そのものが合法であるか否かに関わらず、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスへのアクセスを確保するよう、勧告する。

こども権利条約一般勧告15の31「子どもは避妊および安全な妊娠中絶に関する教育および指導を受けられるべきである。」
こども権利条約一般勧告15の54「子どもはセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、情報およびサービスへのアクセス……安全な妊娠中絶サービスおよび中絶後のケアを受けられるべきである。」
こども権利条約一般勧告15の56「子どもが安全な中絶サービスを利用できるようにすべきである。セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスについて女子が自律的かつ十分な情報に基づく決定を行えるようにすべきである。中絶したことを理由に女子を退学させてはならない。」
こども権利条約一般勧告15の57「セクシュアルヘルス、リプロダクティブヘルスおよび子どもの健康のために、男子・男性を対象とする教育、意識啓発および対話の機会を設けなければならない。」
70「短期的避妊法を性的活動を行う青少年が容易にかつ直ちに利用できるようにしておかねばならない。子どもたちが、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスにアクセスできるようにすべきである。」