リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

生理用品の薬機法の見直し  リプロの視点に立った政治を

赤旗 2021年10月8日【政治総合】

政府「重点方針」
 政府が6月に決定した「女性活躍・男女共同参画重点方針2021」には、半年前の「第5次男女共同参画基本計画」(昨年12月)に盛り込まれていた「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点が重要である」との文言が消えています。

 子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決める基本的な権利についての記述が削除されています。

 一方で、第5次基本計画にはなかった「フェムテックの推進」が新たに加わっています。「フェムテック」とは、「女性」と「技術」からなる造語で、生理や更年期など女性特有の悩みについて、先進的な技術を用いた製品・サービスにより対応するものだとしています。

「雑品」と価格差
 「重点方針」は、「フェムテック関連製品」として、吸水ショーツ月経カップなどをあげ、「消費者に速やかに普及できるよう、薬機法上の位置づけを産官で議論する場を設ける」としています。

 産官で議論する場として設けられている「薬機法ワーキンググループ(WG)」の事務局によると6月から9月までに6回の会合が開かれています。吸水ショーツについては、薬機法上の「医薬部外品」として承認を受けるための審査項目をまとめるとしています。

 承認するのは国や都道府県。1961年から経血を吸収処理することを目的とする綿類(紙綿類を含む)は、「医薬部外品」指定を受けています。それとの関連で、「吸水ショーツ」も、「経血吸収処理」の効能をうたうためには、「医薬部外品」指定が必要というのが厚生労働省の見解です。

 生理用と同様の、尿ケア製品やパンティライナーは、医薬部外品の指定を受けない「雑品」です。

 東京都内に住む40代の女性は、20代で病院に勤務。生理の時、量が多く、吸水量にすぐれる尿とりパットを使うようになりました。使い心地もよくトラブルもありません。同じメーカーの生理用ナプキン(尿とりパットより少し小さい)と比べ値段は約半分です。価格差の要因を、一つに限ることはできないものの「医薬部外品の指定」の影響は否定できません。医薬部外品の承認を受けると、製造販売(輸入)事業者は、専門の技術責任者を配置することが義務付けられます。

 吸水ショーツについて、いまでも消費者に生理用として受け入れられているので、医薬部外品の承認申請をしないという事業者もいます。では、承認申請を出さない選択をした事業者や消費者に不利益はないのか。それを考えるヒントが、生理用の紙ナプキンの寡占化です。現在、製造販売企業は大手数社に集約されています。

 「フェムテックの推進」は、すでに政治課題となっている「生理の貧困」支援と、どうかかわるのか。WGを主催する一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアムの青木勇気事務局長は、「(フェムテック推進は)生理の貧困にかかわるというより、(自民党の)野田聖子議員もかかげているんですけど、3本柱で、生理、妊活、更年期のところをやっていこうというものです」と話します。

 野田氏(現男女共同参画担当相)が会長を務める、自民党内の「フェムテック振興議員連盟」は昨年10月に発足。今年3月の提言で、1961年当時の紙ナプキンの医薬部外品指定にふれ、フェムテック製品の薬機法上の位置づけを議論するWGの設定を盛り込んでいます。「生理の貧困」問題は、議連の提言にも、青木氏らの視野にも入っていないのです。

生理の貧困とは
 「生理の貧困」とは、生理用品や生理に関する教育に十分にアクセスできない状況を指します。生理の貧困に真剣に向かい合うなら、生理用品についても消費者のニーズにあった新たな需要は生まれるはずです。吸水ショーツについても医薬部外品の指定に頼る必要はありません。

 いま求められているのは、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」の視点に立った政治です。国連などから指摘されている教育や避妊、中絶、法律の遅れを解消し、社会問題となっている「生理の貧困」への支援です。

 政府の「重点方針2021」から「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」を削除することではありません。

 (武田恵子

フェムテックと薬機法の関係については、どう考えたものかと思っていたら、次の記事が目に留まった。


WWD 2021/07/31 ライター 大杉真心
「生理用品」として販売できない吸水ショーツ “薬機法に気を付けて”
フェムテック
www.wwdjapan.com


政府の骨太方針、成長戦略に書き込まれた「フェムテックの推進」
法規制などの条件整備に着手 庄子 育子=Beyond Health 2021.7.2
project.nikkeibp.co.jp


東京新聞 2021年3月30日 12時00分
生理の悩み、政治でも議論が活発に 先端技術で解決、「生理の貧困」対策で無料配布も
 生理を巡る政策議論が活発化している。テーマは生理や妊娠に伴う女性の体の悩みを最新の技術で解決しようとする「フェムテック」分野の振興や、新型コロナウイルスの影響で必要な生理用品が買えない「生理の貧困」対策だ。(坂田奈央)
www.tokyo-np.co.jp