リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブコメを出しました

受付番号 495220301000007681

「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関する御意見の募集について
案件番号 495220301
所管省庁・部局名等 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課
電話:03-5253-1111(内4225)
受付開始日時 2022年12月27日0時0分
受付締切日時 2023年1月31日23時59分

提出しました!

緊急避妊薬のスイッチOTC化に賛成します。

 以下、理由を簡単に述べます。
(1)人権保障の観点より
 緊急避妊を利用可能であることは、妊娠しうるからだをもつすべての人の権利です。国連でも様々な形でこの人権を保障すべきだとしていますが、ここでは一例として、日本も締約している「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」の第12条性と生殖に関する健康の権利に関して、2016年に発せられた一般勧告第22号から関連部分を示します。
 この一般勧告では、性と生殖に関する健康への権利は、達成可能な最高の身体的・精神的健康に対するすべての人の権利の不可欠な一部であるとして、緊急避妊についても、具体的に以下の3か所で保障を求めています。

1.入手可能性
 十分な数の機能するヘルスケア施設、サービス、商品、プログラムが、可能な限りの性と生殖に関する健康管理を国民に提供するために利用可能でなければならない。これには、安全で飲用可能な飲料水や適切な衛生施設、病院、診療所など、性と生殖に関する健康の権利の実現の根本的な決定要因を保障するための施設、商品、サービスの利用可能性の確保が含まれる。
 また、コンドームや緊急避妊などの幅広い避妊法、中絶用の薬や中絶後のケアのための薬、性感染症HIVの予防・治療のためのジェネリック医薬品を含む必須医薬品も入手可能にすべきである。

2.履行義務
 履行義務とは、性と生殖に関する健康への権利の完全な実現を確保するために、国家が適切な立法、行政、予算、司法、宣伝およびその他の措置を採用することを求めている。国は、不利な立場にある人や周縁化された人を含むすべての人が、妊産婦の健康管理、避妊に関する情報とサービス、安全な中絶のケア、不妊症、生殖器がん、性感染症HIV/AIDSの予防、診断、治療など、あらゆる種類の質の高い性と生殖に関する健康管理を、ジェネリック医薬品を含めて、差別なく普遍的に利用できるようにすることを目指すべきである。国は、あらゆる状況下において、性的暴力や家庭内暴力の生存者に対し、曝露後の予防、緊急避妊、安全な中絶サービスへのアクセスを含む、身体的・精神的ヘルスケアを保障しなければならない。

3.尊重義務違反
 尊重義務の違反は、国が法律、政策、行動を通じて、性と生殖に関する健康への権利を損なったときに生じる。このような侵害には、個人が自分の身体を管理する自由や、この点に関して自由で十分な情報を得た上で責任ある決定を行う能力に対する国の干渉が含まれる。また、国が、性と生殖に関する健康の権利を享受するために必要な法律や政策を削除したり、停止させたりすることも起こる。
 尊重義務への違反の例としては、中絶を受ける女性の犯罪化や、成人間の合意に基づく性行為の犯罪化など、性と生殖に関する健康サービスへの個人のアクセスを妨げる法的障壁の設定が挙げられる。また、緊急避妊薬などの性と生殖に関する健康サービスや医薬品へのアクセスを実際に禁止または拒否することも、尊重する義務に違反する。

 上記のように、日本は条約締約国としても、女性の性と生殖の権利と健康を保障する義務を課せられているのです。緊急避妊薬の使用を必要とする当人が自己決定できるようにし、アクセスよく、すべての人が使えるような形で提供していくことは、人権保障のために求められています。医学的に不必要な介入をすることは人権侵害にあたります。また、「緊急」に必要とされる薬なのですから、できるだけ広く入手可能にするのが合理的です。

(2)避妊・中絶の充実は少子化対策です
 日本はリプロダクティブ・ヘルスケアのほとんどを自由診療としてきました。この国のリプロダクティブ・ヘルス&ライツ政策も抜本的な見直しが必要です。緊急避妊薬のOTC化のみに留まらず、利用者にとっての避妊・妊娠・中絶等々のリプロダクティブ・ヘルスケアの費用負担を全般的に引き下げる必要があります。
 20世紀のあいだに女性の身体は大きく変化しました。生涯に経験する月経回数が9倍も増え、性行動が変化したために、「望まない妊娠」をするリスクも膨大になっています。一方、少子化のために日本は女性の労働力や潜在的な能力を活用しなければ社会として立ち行かない状況に直面しています。それにも関わらず、政府が女性が自分自身の妊孕力を自己コントロールする手段をできる限り奪おうとしてきたのは、大きな間違いです。
 国連でリプロダクティブ・ヘルス&ライツが重視されるようになり、多くの国々がその保障のために努力しているのは、個人の幸福のためであるのと同時に、公正な社会を持続発展させていくためでもあります。緊急避妊薬のOTC化は、日本社会がリプロダクティブ・ヘルスを充実させていくために必要な第一歩です。