リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

MISTAKEN BELIEFS ABOUT ABORTION WITH PILLS - AND THE FACTS

薬による中絶の思い違いと真実

International Campaign for Women's Rights to Safe Abortion (2020)

MISTAKEN BELIEFS ABOUT ABORTION WITH PILLS - AND THE FACTS

ジャーナリストは時に錠剤を用いた中絶について誤った報道をしてしまい、間違いに気づかないことがあります。ここに最も一般的な事例を示します。

神話:「中絶薬は危険である」
真実:すべての薬は、薬の安全性を取り扱う国のおよび/または国際的な規制機関で承認を受けています。ミフェプリストンとミソプロストールはどちらもWHOの必須医薬品モデルリストに登録されており、すなわち最も高い規範に照らして安全性と有効性が認められており、すべての国で使えるようにすべき薬です。これまで何十年もかけて数多くの世界各地の医学専門家が関与してWHOやその他の研究機関で厳格な臨床試験が行われてきた結果、ミフェプリストンおよび/またはミソプロストールを中絶のために用いることは非常に安全であることが判明しています――ただしこれらの錠剤が正規のものであること、指示に従って服用されること、必要な時にはいつでも医療施設のバックアップを得られるようにしておくことが条件です。正規の錠剤が使われない場合、正しい投与量または投与計画に従って使われない場合には、合併症が生じることがあります。

神話:「中絶薬は効き目が悪い」
真実:女性たちにこのようなことを言う医師は大勢いますが、それは医師たちが得ている情報が限られているのに投薬を行っているためか、もしくは外科的中絶を行うことでより収入を増やそうとしているためかのいずれかです。正しく服用する限り中絶薬は非常に有効性が高いというのが真実です。ミフェプリストンとミソプロストールを組み合わせて用いる場合、最大で99%の有効性が確認されており、ほどなく刊行される予定のWHOの新ガイドラインによれば、ミソプロストールを追加投与することでさらに有効性を高めることも可能です。ミソプロストールの単独使用の場合、妊娠12週までは3時間ごとに800mcgの容量をくり返し投与することで92~98%の成功率だとされています。この方法で4回または5回を超えて投与する必要があることはごく稀です。

神話:「薬を用いた中絶は非常に痛い」
真実:中絶は痛いものです。これはすべての中絶において正常なことです。妊娠初期の外科的中絶では女性たちは局所麻酔か鎮痛薬を与えられます。鎮痛薬は内科的中絶(薬を内服する中絶)でも推奨されており、イブプロフェンが最も効果があるといわれています。痛みの強さは妊娠期間や、その女性が過去に妊娠経験があるかどうか、あとは運の良し悪しで一人一人変わってきます。ほとんどの人にとって薬を用いた中絶は強い月経痛を伴う重い月経のようなものとして経験されます。

神話:「中絶薬は気持の落ち込みやうつの原因になる」
真実:中絶に反対する人々のプロパガンダとしてすべての中絶についてこのような主張が行われていますが、真実はこれとは真逆です。望まない妊娠をしている女性たちがよく言うのは、中絶が終わって大きな解放感を覚えたということで、それは自分自身の人生に対するコントロール感を取り戻したためなのです。中絶後に動揺する女性もいますが、それは多くの場合、中絶を必要とすることになった人間関係の問題のためおよび/または中絶が非合法的なものであったためです。中絶は常にトラウマを伴うわけではありません。中絶が必ずしも簡単なものでないのは、人生が常に簡単なものではないためです。女性たちは必要なことをしたのであり、それに対処していけます。

神話:「中絶薬をインターネットで売っている業者はどれも悪質だ」
真実:何百種類もの他の薬品と同様に、中絶薬を販売しているオンライン「薬局」は数多く存在しています。その中には正規の薬を販売している業者もありますが、多くはそうではありません。なかには偽物の薬や、使用期限の切れた薬を金儲けのために売っているところもあります。そのため、私たちは常に女性たちに対して、正規の薬を取り扱っていることが分かっているウェブサイトしか使わないように助言しています。

神話:「薬を用いた中絶さえあれば中絶を提供している医療機関はもう必要ない」
真実:内科的中絶を行う薬があるからといって、国家や医療機関が女性たちに安全な中絶を提供する義務から解放されるわけではありません。中絶は自由かつ合法的にアクセスしやすくすることで非常に安全なものになります。しかし、(かつては今日よりもかなり厳しく規制されていた)避妊薬と同様に薬を用いた中絶を過剰に医療化してはなりません。むしろ、中絶ケアはプライマリーケアやコミュニティベースのヘルスケアの場面で看護師や助産師によって提供できるものであり、あるいはネパールで行われてきたように、訓練を受けた薬剤師でも提供できるものなのです。それ以上に、薬の提供者の目の前で、あるいはクリニックの中で女性たちに薬をのませる必要は全くありません。正しい情報を与えられれば、女性たちは自宅で自分の都合のよいタイミングでピルを自己投与し、必要がある時にケアを求めることができます。ただし、すべての人が内科的中絶を希望するわけではないため、真空吸引や外科的中絶(D&E)も提供できるようにしておくべきです。

神話:「外科的中絶は内科的中絶より安全性が高い」
真実:どちらの手法も非常に安全であり、選択肢を与えられればたいていの女性は自分の好きな方を選びます。避妊と同様に選択できることは非常に大切です。しかし、国によっては吸引または外科的中絶を提供するための訓練がほとんどあるいは全く行われていないところもあり、女性たちには内服薬による中絶しか得られないこともあります。それでも、安全ではない方法しかなかった頃に比べれば大きな進歩であり、実際、女性たちはこの薬を「最も待ち望んでいた薬」だと表現しています。

神話:「簡単に手に入るようになると女性や少女たちは避妊代わりに中絶薬を使い始める」
真実:そんな証拠はどこにもありません。そんなことを言うのは中絶に反対するための卑劣な手段に過ぎません。事実、ほとんどの女性は30年間以上も妊娠が可能ですが、今では一生のうちに数人しか子供を産みません。意図しない妊娠は起こります。私たちは、長期間にわたって避妊を用いる女性たちを賞賛しています。一度や二度の中絶をしても何も悪いことはありません。避妊手段を提供することは重要ですが、避妊が失敗することもあり、使いそこねる人もおり、自分の意思に反して無防備なセックスを強いられる女性もいるという現実を決して忘れてはなりません。