リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

Ecuador legislature approves rules for abortion in cases of rape

Reuter 2022年2月18日 「中絶へのアクセスは人権」闘うエクアドルの女性たち

www.reuters.com

以下、仮訳します。

エクアドル議会がレイプの場合の中絶に関する規則を承認
アレクサンドラ・バレンシア


クイト 2月17日(ロイター) - エクアドルの国会は17日、ほとんどが保守的な同国でこの問題についての議論が広がる中、女性や少女がレイプされた場合に中絶を行えるようにするための規則を承認した。

 昨年4月、憲法裁判所が強姦による中絶に許可を出し、立法府にこの手続きを迅速に規制するよう命じたことを受けての採決である。

 国民議会は賛成75票、反対41票、棄権14票で規則を採択したが、保守派のギジェルモ・ラッソ大統領によって規則が成立する前に阻止される可能性がまだ残っている。

 ラッソ大統領は、個人的には中絶を支持しないが、裁判所の規定を超えない限り、議員による中絶手術の規制を認めると発言している。

 18歳以上の女性は妊娠12週目まで、10代と18歳未満の少女は妊娠18週目まで、レイプによる妊娠を中絶することができるようになる。

 また、先住民族に属する成人女性や農村部に住む女性も、妊娠18週目まで中絶することができます。


 この規則では、女性はレイプを警察に届け出ている必要はありませんが、インフォームド・コンセントの書式に記入しなければなりません。医療制度はこの処置を提供しなければならないが、個々の医師は良心的な反対をすることができる。

 中絶権運動の人々は、この時間制限はあまりにも制限的で、女性たちは違法な、時には命にかかわる中絶を求め続けなければならなくなるだろうと述べている。

 フェミニスト団体Las ComadresのSarahi Maldonadoは、議会の外でロイターに対し、「議会は再び少女、女性、性暴力の生存者や被害者を失望させた」と述べた。「彼らは、少女たちが出産し、違法な中絶を求めざるを得ないように、より多くの障壁を設置したのです」。

 エクアドルでは1938年以来、女性の命が危険にさらされている場合や、レイプ被害者が知的障害を持っている場合、中絶が合法とされてきた。2019年、議会はレイプに対する中絶を合法化する法案を通過させることができなかった。

 フェミニスト団体Trenzando Feminismosによると、エクアドルでは毎年2万1000件以上の中絶が行われており、そのほとんどが危険な違法クリニックで行われているという。

 「生命は交渉の対象にはなりません」と、中絶反対派とともに議会前で抗議していたポール・ガルシアは言う。「彼らは母親の子宮の中にいる別の犠牲者を殺したいのです」。

 アルゼンチンやウルグアイでは、一定の期限付きで自由に中絶が可能であり、他のラテンアメリカ諸国でもレイプの場合に合法化している国がある。

 メキシコの最高裁は昨年、中絶を非犯罪化し、コロンビアの憲法裁判所も同じ決定を検討している。

 レイプなど限られたケースでの中絶が認められているチリでは、ガブリエル・ボリック次期大統領が中絶を自由にできるようにすると宣言している。

ふぇみん(2022/3/5)にもエクアドルに在住したアーティスト岩間佳純さんから寄せられた記事がありました。

ラテンアメリカにおいて、人工妊娠中絶(以下、中絶)の非犯罪化運動には長い歴史がある。現在「国際セーフ・アボーション・デー」として知られている日(9月28日)は1990年のラテンアメリカ/カリブ諸国で「Campana 28 Septiembre」という運動(中絶の非犯罪化のための9月28日キャンペーン)に由来する。このように、この地域の女性やフェミニストたちは戦ってきたが、完全に非犯罪化されている国は極めて少なく、条件付きで(1部合法化)されている国がいくつかある程度だ。


一気に議論が変化
 エクアドルでは193 8年に中絶が合法化されたものの、母体への健康や命の危険と、知的障害のある女性がレイプによって妊娠した場合と言う2つの限られた条件のみであったため、この問題は様々な角度から議論されてきた。もちろん最初は女性の人権の観点から非犯罪化が主張されたが、悲しいことに「女性の人権」程度のことで夜は動かないのが、バチスタ(男性中心主義)社会だ。そこで中絶を「公衆衛生」(パブリック・ヘルス会)の問題であると位置づける議論がここ数年で目立つようになった。中絶へのアクセスが困難であるほど妊産婦死亡率が高いこと、10代女子の妊娠が彼女たちの健康や教育にひどく影響していること、経済階級と10代女子の妊娠が関係していること、などを指摘し、中絶を違法とするのは公衆衛生観点からも問題として位置づけることによって、それが社会全体に影響することであると強調した(人権もそもそもそうではあるが)。
 しかし議論は大きく変化することになる。なんと、エクアドル憲法裁判所が議論の末、2021年4月29日に「レイプによる妊娠の場合の人工妊娠中絶を犯罪として扱うのは人権侵害である」という判決を下した。それによって一気に中絶合法化の追い風が吹いた。

 どのような議論になるのか、高まる緊張と強まる日差しの中、デモを続けた。(「中絶のアクセス=人権と言う概念が再び夜に上がってきてから、フェミニストたちの要求もまた変化した。今求めるものは「Ley justa y reparadora」。それはつまり、「公正で修復的な法律」。
 特に「reparadora」という概念に注目したい。簡単に行ってしまうと「修復的」ではあるが、これから法律が変わったところで、過去の法律のせいでなくなってしまった人、刑務所に入れられてしまった人の時間は戻ってこない。修復的な法律に求めるのは、過去が繰り返さないこと、そのような人権侵害が国家によって平然と行われていたことの国民、特に被害者たちへの謝罪である。
 具体的には、レイプによる中絶に「妊娠〇週まで」と期限を設けないこと、医者が宗教的または何らか個人的な理由によって中絶の実施を拒否する場合、問題なく実施する医療先に速やかに紹介することが義務付けられることなど、形だけの法律ではなく、実効性のある法律が要求されている。これも、憲法裁判所の判決により「中絶へのアクセス=人権」という概念が再び強調されたからであろう。
 エクアドルで安全な中絶情報の提供と支援を行う活動者グループ「ラス・コマドレス」のサライ・マルドナド氏は、修復的な法律に関してこう語る。「それは、人権を認知したもの。安全で合法的な中絶が可能であれば、私たちは自由になれる。権利であることを理解し、罪悪感や重荷を感じずに手術を選択できる。それによって手術の経験がトラウマ、恐怖、罪悪感、沈黙として私たちの記憶や体に刻み込まれることがなくなる。私たちは強制された妊娠や母性に従うのではなく、別の人生を歩む権利があること、産むか産まないかを決めるに一番適した人物が自分自身であることを主張できる。『人権』を抽象的にではなく、極めて行形的に具現化できるのが『修復』祝福であろう」