打越さく良議員 リプロ関連質疑
042 打越さく良
○打越さく良君 (略)
それでは次に、コロナ禍における出産についてお伺いします。
昨年夏ですが、千葉県柏市で、感染した妊婦の方の入院先が見付からず、自宅で生まれた新生児が死亡すると、そういった痛ましい悲劇が起こりました。このようなことを二度と繰り返してはならないと、現場では努力を重ねられていると思われます。しかし、万全の体制を取る余りに不必要な体制になってしまっていて、御本人が望む環境で出産し、支援を受けるということが妨げられているとしたら、それもまた問題ではないでしょうか。
厚生労働省の診療の手引きの六十八ページに、院内感染対策として、「原則的に帝王切開とすることもやむを得ない」と明記されています。そして、令和二年四月七日の日本産婦人科学会の新型コロナウイルス感染症への対応第三版でも、「なお、感染拡大に応じ、施設によって原則帝王切開とすることもやむを得ないと考えます。」と記されております。
そして、コロナ禍での分娩では、帝王切開が増えているのではないでしょうか。
043 伊原和人
○政府参考人(伊原和人君) お答えいたします。
出生数に対する帝王切開率につきましては、新型コロナウイルス流行以前から徐々に増加しております。新型コロナウイルス以降、感染症流行後のデータにつきましては、現時点ではまだ公表されておりませんので把握しておりません。
一方、日本産科婦人科医会が新型コロナウイルス陽性管理中のときに出産された妊婦の出産方法について調査をしたところ、約六八%がコロナ感染を理由とした帝王切開で出産したという報告が出ていることは承知しております。
また、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会が連名で出した通知によりますと、分娩に関して、新型コロナウイルス感染症への感染のみで帝王切開の適応にすべきとする根拠はない、人材や環境の確保などが得られれば経膣分娩も選択肢となる、妊婦と医療スタッフの安心、安全を第一に判断してほしいと記載しているというふうに承知しております。
御本人の希望を尊重しつつ、妊婦さんの安全を第一に考えて周産期医療が提供されることが適切ではないかと考えております。
044 打越さく良
○打越さく良君 ありがとうございます。
ただ、様々な御報告では、ただ陽性であると、あるいは感染が心配だという理由だけで帝王切開が行われている場合があるということなので、是非実態把握をしていただきたいと考えます。
そして、静岡大学の白井千晶教授や海外で活躍なさっている助産師の方々によるリプロ・リサーチ実行委員会が、昨年九月から十一月にかけて、インターネットで、感染症下における妊娠、出産に関してのアンケートを実施しました。その結果、コロナ禍で本当に妊産婦の方々が大変孤独な中に置かれているということが判明しています。陽性、陰性にかかわらず、付添いを禁止されたり母子分離がされてしまう、あるいは、感染リスクがあるからと医学的理由のない分娩誘発が、分娩誘発や帝王切開が行われているということです。
このような事態では、九五年の北京宣言行動綱領第九十五条の最高水準の性と生殖に関する権利を得る権利が侵害されているということになるのではないでしょうか。
045 橋本泰宏
○政府参考人(橋本泰宏君) 今御指摘いただきました第四回世界女性会議における北京宣言の行動綱領におきまして、全てのカップルと個人が自分たちの子供の数、出産間隔並びに出産するときを責任を持って自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、それから、最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブヘルスを得る権利、これについて記載されているということは承知しております。
一般的に、分娩方法につきましては、各医療機関において、医学的観点等を踏まえて、妊婦と話し合った上で決められているものというふうに承知しております。
厚生労働省におきましては、出産を控えた妊婦が新型コロナウイルスに感染している場合については、新型コロナウイルス感染症と診断されたからといって帝王切開を行わなければならないということはないこと、それから、妊婦の全身状態などを考慮し、分娩時間の短縮が必要と判断される場合は帝王切開となる場合もあること、こういったことなどにつきましてホームページで周知をしているところでございます。
新型コロナの流行下におきましても、妊婦が安全に、そして安心して出産できることが重要であると考えております。引き続き関係団体等と協力してまいりたいと考えております。
046 打越さく良
○打越さく良君 今局長がおっしゃったように、妊婦と話し合って決められているんじゃないかと、現状そうなんじゃないかということですけれども、なかなか現実的には、病院の方から帝王切開がいいものなんだと言われてしまえば、ほかの選択肢というのは現実的にはないのではないかということが私の問題意識です。
そして、WHOの二〇二〇、WHOが二〇二〇年三月十三日に、出産、産後、母乳育児のケアについて、今までと変わらない推奨事項を発表しています。この点、厚生労働省も把握していらっしゃるでしょうか。
このWHOの発表によれば、帝王切開は医学的に正当な場合にのみ行うべきであり、コロナ陽性であることを理由にされるべきではないとしています。また、赤ちゃんに触れる前後の手洗いなど感染対策を行いながら安全に授乳すること、新生児とのスキンシップを保つこと、新生児と同じ部屋で過ごすことを勧めているのではないでしょうか。
047 橋本泰宏
○政府参考人(橋本泰宏君) 今御指摘いただきましたWHOの見解では、新型コロナウイルスに感染している妊産婦について、帝王切開は医学的に正当な理由がある場合のみ実施する必要があるということ、それから、出産方法は産科的適応とともに妊婦の選択に基づくべきであるということ、それから、妊婦は同室で母乳育児を行うための支援を行うべきであるということ、こういったことが示されているということを承知しております。
厚生労働省におきましては、妊婦が新型ウイルス、新型コロナウイルスに感染している場合の対応につきましては、先ほど申し上げたように、新型コロナウイルス感染症と診断されたからといって帝王切開を行わなければならないということではないということ、それから、母乳栄養を希望される際は、母乳を介した感染や接触、飛沫感染のリスクについて御家族や医療機関の医師等と十分に御相談いただいた上で授乳方法や時期を御判断いただきたいということ、それから、授乳に関しては、直接母乳、搾乳、人工栄養の選択肢があるということ、こういったことをホームページで周知させていただいているところでございます。
新型コロナウイルス感染の流行下におきましても、引き続き、母子の健康と安全が守られて安心して出産、育児を行うことができるよう取り組んでまいりたいと考えております。
048 打越さく良
○打越さく良君 国際助産師連盟、ICMも二〇二〇年三月二十九日に提言を発表しました。昨年十月四日に改訂しましたけれども、そこでも、コロナの流行以来、多くの国々で妊娠、出産、産後のケアに不適切な医療介入が導入されたことによって、女性、赤ちゃん、助産師の人権が侵害されていると、こういうことが危惧されています。この点は厚労省として把握されているでしょうか。
049 橋本泰宏
○政府参考人(橋本泰宏君) 今おっしゃっていただいた点について、必ずしも詳細を把握しているわけではございません。
050 打越さく良
○打越さく良君 その提言では、不適切な医療介入は、信頼できるエビデンスに基づいておらず、時には女性とか赤ちゃんに有害となる可能性もありますというふうにしているんですね。
英国産婦人科医師会は、感染予防のために陽性の女性と病院職員の接触を減らすことを目的とする帝王切開は有効な介入ではないとしています。手術は、正常お産と比べ関わる人員が多くなりますし、女性の合併症のリスクは上がり、入院日数が増えることによって入院中に関わる人数が増加するからです。
ですから、厚生労働省の手引きがこうしたWHOやICMの推奨や提言と違うことを日本の妊産婦は知らされていないと思われるんですね。こうした手引きを維持されるんでしたら、まあ維持していただきたくないんですけれども、維持するんであれば、なぜあえてWHOやICMが言っていることと違うのかと、その違いと理由を説明すべきではないかと思います。
それで、説明をあえてしたとしても、もう先ほど申し上げたとおり、介入を断る選択肢は日本の女性たちには事実上ないというふうに思われるわけです。この女性たちが選択肢を示されないままに、施設によってばらばらでエビデンスに基づく有効性を示されていない医療的介入を受けざるを得ないということは避けるべきではないかと思われます。
これではリプロダクティブヘルス・ライツが尊重されるとは言い難いと思われますが、その点、大臣に御見解をお願いします。
051 後藤茂之
○国務大臣(後藤茂之君) 分娩方法は、各医療機関において医学的観点等を踏まえて妊婦と話し合った上で決められるべきものと考えます。このような手だてを講じた上で帝王切開を選択することは、リプロダクティブヘルス・ライツに反するものとは考えてはおりません。
しかしその上で、厚生労働省では、妊婦が新型コロナウイルスに感染している場合の対応については、新型コロナウイルス感染症と診断されたからといって帝王切開を行わなければならないということはないこと、妊婦の全身状態などを考慮して分娩時間の短縮が必要と判断される場合は帝王切開となる場合もあること等についてホームページ等で周知しているところでございます。
新型コロナウイルス感染症の流行下においても、引き続き、母子の健康と安全が守られて安心して出産、育児を行うことができるように取り組んでまいりたいと思います。
052 打越さく良
○打越さく良君 やはり、大臣の方からも現場で妊婦と話し合った上で行われているだろうというお話がありましたけれども、なかなか現実的には、妊婦が、WHOはこう言っているしICMもこう言っているしとかいうことを踏まえて議論すると、話し合うということはほぼほぼ不可能であると思われますので、まず、そうであれば、帝王切開の件数とか、そういうことは今調査していただいているのかもしれませんけれども、それが本当にリプロダクティブヘルス・ライツを尊重したものだと言えるのかと、生の声を是非調査していただきたいと要望いたします。
その点、通告はしていませんが、大臣、いかがでしょうか。
053 後藤茂之
○国務大臣(後藤茂之君) 今いろいろ御指摘もあるので、どのように把握して対応していったらいいか、考えてやらせていただきたいと思います。
054 打越さく良
発言URLを表示
○打越さく良君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。
本当に少子化が言われる中で、こうやって生まれてくるお子さんたち、あるいはその産む女性たちの権利がないがしろにされているんじゃないかということはゆゆしきことではないかと思いますので、是非、調査とともに、手引きをもっと明確に、そういう意味も込めているということかもしれないんですけれども、なかなかそうは読めないところがありますので、手引きを改訂していただきたい、国際的なガイドラインに依拠したものにしていただきたいと要望いたします。
そして、先ほどから申し上げているリプロ・リサーチ実行委員会というところが、陽性患者に帝王切開することを勧める手引きを改訂するよう求める署名を、厚生労働省宛ての署名をオンライン上で集めていまして、先ほど見た段階では一万一千五百五人も集まっていますので、是非その署名が届いたときには、届く前からですけれども、真摯に声を受け止めていただきたいと、これも要望いたします。