男女共同参画白書におけるリプロの変遷
平成17年(2005年)の白書までは、かろうじてだが「リプロ」の文言も残されていたし、避妊や中絶への言及もあった。「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ等の観点から,生涯を通じた女性の健康に関する調査・研究を推進している。」や、「女性の主体的な避妊のための知識等の普及」もまだ残っていた。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h17/danjyo_hp/html/pdf/DKH17H01.pdf
第9章 生涯を通じた女性の健康支援
第1節 リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識の浸透
女性は,妊娠や出産をする可能性があることもあり,ライフサイクルを通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。こうした問題の重要性について男性を含め,広く社会全体の意識が高まり,積極的な取組が行われるよう,気運の醸成を図っている。
文部科学省では,性教育(エイズ教育)を効果的に推進するため,小・中・高等学校を含む地域を指定し,実践研究を行うとともに,研修会(独立行政法人教員研修センターで実施)を開催している。また,都道府県・市町村が行う,性に関する学習や女性の健康問題を含む目的別・対象別の学級・講座等を開設することを奨励している。
厚生労働省では,思春期の男女に対する性や避妊,人工妊娠中絶等に関する相談や情報提供を推進するとともに,保育所等の児童福祉施設や市町村が実施する乳幼児健康診査の場で思春期の男女が乳幼児と触れ合う機会を提供し,生命の尊厳や性に関する学習活動を推進している。
第2節 生涯を通じた女性の健康の保持増進対策の推進
1 生涯を通じた健康の管理・保持増進のための健康教育・相談支援等の充実
厚生労働省では,女性の健康をめぐる様々な問題について気軽に相談できる体制を引き続き整備している。また,リプロダクティブ・ヘルス/ライツ等の観点から,生涯を通じた女性の健康に関する調査・研究を推進している。
保健所等においては,ライフステージに応じた健康教育を実施している。
また,各学校においては,健康診断や体育・保健体育の教科を中心として健康教育を実施するとともに,学校と地域保健が連携しながら,健康相談活動等を行うための体制を整備している。
2 妊娠・出産期における女性の健康支援
(1)妊娠から出産までの一貫した母子保健サービスの提供
日常生活圏において,妊娠から出産まで一貫して,健康診査,保健指導・相談,医療援護等の医療サービスの提供等が受けられるよう施策の一層の推進を図っている。
また,推進協議会を開催する等により,21世紀における母子保健分野での国民運動計画である「健やか親子21」を計画的に推進し,母子保健サービスの一層の充実を図っている。
(2)不妊に関する相談体制の充実等
子どもを持ちたいにもかかわらず不妊で悩む方々が,正しく適切な基礎情報に基づきその対応について自己決定できるよう,不妊に関する多面的な相談・情報提供の充実を図ることとしており,新エンゼルプランに基づき,不妊専門相談センターの整備を推進してきたところである。また,不妊治療に関する調査研究を推進している。さらに,高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する特定不妊治療費助成事業を創設した。
(3)周産期医療の充実
母子の生命や身体への影響の大きい周産期において,妊娠・出産の安全性や快適さを確保するため,周産期医療ネットワークを平成16年度に47都道府県に整備することを目標に,総合的な周産期医療サービスの充実,調査研究を推進してきたところである。
(4)女性の主体的な避妊のための知識等の普及
人工妊娠中絶が女性の心身に及ぼす影響や安全な避妊についての知識の普及を図っている。また,女性が主体的に避妊を行うことができるようにするための避妊の知識の普及等の支援を行っている。
以後、平成18年(2006年)から、なぜか「第9章 生涯を通じた女性の健康支援」の中にあった「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」への言及が一切消えてしまう。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h18/web/danjyo/pdf/DKH18H01.pdf
やがて平成25年(2013年)、再び様相が変わる。第2部 平成24年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の第 「11 章 生涯を通じた女性の健康支援」の下位項目が「第1節 生涯を通じた男女の健康の保持増進」と、なぜか「男女の健康」に代わり、健康寿命の話がメインになっている。
「4 女性の健康づくり支援」「⑴ 女性の健康保持のための事業等の充実」という項目で、「厚生労働省では,女性健康支援センター事業において,女性が主体的に避妊を行うことができるようにするための避妊の知識の普及を含めた女性の心身の健康に関する相談指導や情報提供等の支援を行っている。」という文言がみられる最後の年である。平成26年からはリプロにも避妊にも全く言及されなくなってしまう。
2003年や2004年の白書と最近のものを見比べると、ジェンダー平等もエンパワーメントもリプロダクティブ・ヘルス&ライツも消えて、いかに「後退」してしまっているのかがよくわかる。令和1年(2019年)版を見ると、第1部「平成30年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」の中で、「リプロ」が出てくるのは海外支援のところだけである。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/pdf/r01_koujita.pdf
男女共同参画基本計画にせよ、白書にせよ、膨大なお金と人力と手間をかけて出しているのに、変化があまりにも感じられないのはいったい何なのか。
根本的に女性の権利を保障する法がないということが、最大の問題ではないかと思う。