リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

Exotic abortifacients and lost knowledge, Londa Schiebinger

The Lancet, Published: March 01, 2008

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(08)60330-X PlumX Metrics

ロンダ・シービンガーの「エキゾチックな堕胎薬と失われた知識」

著者はジェンダーの視点で科学史を見直してきた方。堕胎薬に関する「知識」が選択的に捨てられてきた歴史を明らかにしています。

最後を仮訳してみます

 この実現しなかった歴史の中に、文化的に培われた無知の典型的な例を見出すことができる。それは、生命の木からある種の知識を抜き取ることができないように収束する、語られることのない、しかし明確な出来事の構成である。マリア・シビュラ・メリアンの孔雀の花の不思議な歴史は、航海者たちが国や世界の政策、庇護や貿易のパターン、発展途上の学問階層、個人の興味、職業上の必要性に応じて、自然の恵みである知識をいかに選択的に淘汰してきたかを明らかにしている。新世界の堕胎薬に関する知識は、貿易風によってヨーロッパに伝わらなかった。この例では、ジェンダー・ポリティクスが、独特の知識体系にではなく、独特の無知体系に認識可能な輪郭を与えたのである。無知の身体は、女性の生活体験を形成する。18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパでは抗妊薬の開発・試験が主流の医学・薬学に受け入れられず、抗妊薬に対する認識が低下していった。その過程で、多くの有用な知識が失われ、多くの生命が失われていったのである。