リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

米国で増える「自宅での妊娠中絶」  中絶規制は州ごとに大差

毎日新聞 ボストン発 ウェルエイジング実践術 大西睦子・内科医 2022年9月30日

米国で増える「自宅での妊娠中絶」 中絶規制は州ごとに大差 | ボストン発 ウェルエイジング実践術 | 大西睦子 | 毎日新聞「医療プレミア」

 2022年6月24日、米連邦最高裁判所(米最高裁)は、米国における妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決(1973年)」を覆し、州が独自に州法を作って、中絶を禁止、制限することを認めました。その後「中絶の権利を拡大する州」と「厳しく禁止する州」の分裂が激化しています。そして米国では数年前から「オンライン医療を利用した、自己管理による中絶(self-managed abortion)」が広がっていました。米国の中絶事情は今、どうなっているのでしょうか。

自己管理中絶の現状
 中絶には、子宮の内容物を医師が吸引する方法(外科的中絶)と、薬による方法があります。日本で認められているのは外科的中絶だけです。

 一方、世界各国では薬による中絶も行われています。この中絶法は、米国では00年に合法化されました。通常は「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」という2種類の内服薬を使います。

 中絶したい女性は、まずミフェプリストンを内服します。この薬は、妊娠の継続に必要な「プロゲステロン」というホルモンの働きを妨げます。さらに、24〜48時間後にミソプロストールを内服します。こちらの薬は、子宮を収縮させて出血とけいれん性の痛みを引き起こし、胎児や胎盤を排出します。

 性と生殖に関する健康について研究や発信を続けている米国の民間団体「ガットマッハー研究所」によると、薬による中絶は、米国の中絶全体の54%を占めています。

 ちなみに日本では、厚生労働省がようやく経口中絶薬の承認審査を行っているところです。ただし審査中の22年5月、同省は参院厚労委員会で「(経口中絶薬の使用には妊婦の)配偶者の同意が必要」とする見解を示しました。SNSでは「自分の体のことなのに、なぜ配偶者の許可が必要なのか」などと議論を呼んでいます。

 さて、米国で中絶医療の利用がますます制限される中、テキサス大学オースティン校のアビゲイルエイケン博士と「Aid Access(エイド・アクセス=援助の利用)」のレベッカ・ゴンパーツ博士らのチームは、医学雑誌「ランセット 地域保健 アメリカ大陸」の22年6月号に論文を発表し、米国でのオンライン医療による自己管理中絶の現状を記しました。

 論文の内容を紹介する前に、著者たちがどんな仕事をしてきたかを説明しておきます。

 エイケン博士は、意図しない妊娠▽エビデンス(医学的証拠)に基づく産科医療▽中絶へのアクセスを制限する法律や政策が与える影響――などについて研究しています。

 一方、ゴンパーツ博士はオランダの女性医師で、中絶の権利を擁護する活動家として知られています。生殖医療サービスを提供する組織「Women on Waves」と「Women on Web」の創設者で、中絶が違法とされている国で中絶を望む女性に対し、中絶薬を提供しています。さらに18年、主に米国に住む人々に、薬による自己管理中絶を提供する初のオンライン医療サービス組織エイド・アクセスを立ち上げました。

 中絶を望む女性がエイド・アクセスを利用する方法は、住む地域によって違います。

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