リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

指定医師のアンダーコントロールにある日本の中絶(6)

ミソプロストールとプレグランディンの作用はほぼ同じ

 プレグランディン(成分名ゲメプロスト)が、今回承認されつつある経口中絶薬の第二剤ミソプロストールと効果自体はほぼ変わらない薬であることは、あまり知られていない。
 ミソプロストール(商品名サイトテック)は1986年にブラジルでは店頭販売が開始され、中絶の禁止されているこの国の女性たちは、ほどなくこの薬が人工的に流産を引き起こすことに気づき、口コミで広めたと言われている。その後、研究者たちがミソプロストールの効能を確認し、ゲメプロストと共に、ミフェプリストンと併用する薬の候補に加えたのである。だが、プレグランディンは使いやすさと価格の面でミソプロストールに劣っていると判断され、ほどなく候補から外された。
 ミソプロストールは常温保管が可能で、口腔・舌下・経腟 の3経路で使うことが可能で、料金は1個30円未満とすこぶる安く、1回4錠使っても百数十円ですむ。一方のプレグランディンは氷点下10度で保管する必要があり、経腟しか使えず、価格は1984年に売り出された段階で1個4413.8円だった。これを平均3.5個使うというのだからざっと約1万5千円もコストがかかる。つまり、プレグランディンは高価で使い勝手が悪い薬としてミフェプリストンの第二薬としては棄却されたのである。1991年には、権威ある医学誌Lancetで「ミフェプリストンとミソプロストールの組み合わせが妊娠初期の中絶に有効」だ報告されている 。
 なお、海外では薬を使った中期中絶を行う場合にも、プレグランディンではなく、今回承認されつつある二剤を用いる方法が一般的であり、2022年のWHOのガイドラインミフェプリストンとミソプロストールを併用する方法と、ミソプロストールを単独でくり返し使用する方法が提案されている 。