リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

2017 女性と女児に対する差別に関するワーキンググループのポジション・ペーパー概要

A/HRC/RES/35/18

https://www.ohchr.org/en/special-procedures/wg-women-and-girls/womens-autonomy-equality-and-reproductive-health

仮訳します。

女性の自律、平等、リプロダクティブ・ヘルス
女性と女児に対する差別に関するワーキンググループ
背景
 女性と女児に対する差別問題に関する国連WGは、国際社会における女性の権利の普遍性に対する厳しい挑戦について懸念を表明している。これらの課題は、経済危機、緊縮財政、また文化的・宗教的保守主義に由来している。

 女性差別撤廃に関するHRC2017決議*1は、平等を求める女性の権利に対するバックラッシュの存在を認めている。現在の国際レベルにおける妊娠中絶をめぐる議論は、こうした原理主義の台頭と女性の人権に対するバックラッシュの文脈の中で行われている。専門家グループが2017年に公表するポジションペーパーで、妊娠の終了に関するスタンスを明確にすることにしたのは、そのためである。


まとめ
 ワーキンググループは、女性の人権が、次のような差別のない権利を含んでいることを読者に想起していただきたい:平等、尊厳、自律、情報、身体の完全性、私生活の尊重、性と生殖に関する健康を含む到達可能な最高水準の健康、拷問と残酷で非人道的で品位を傷つける扱いからの自由。女性または少女が自らの身体および生殖機能に関して自律的な決定を行う権利は、平等、プライバシー、身体の完全性に関する基本的権利の中核をなすものである。

 リプロダクティブ・ヘルスにおける平等には、緊急避妊を含む、安価で質の高い避妊を差別なく利用することが含まれる。妊娠を継続するか、中止するかの決定は、女性の将来の個人生活と家族生活全体を形成する可能性がある。その決定は、女性の他の人権の享受に決定的な影響を与える。したがって、この決定は、基本的に、主として女性の決定である。

 したがって、多くの国の優れた実践にならい、WGは、妊娠初期のあいだは女性の要求しだいの中絶を認めることを求めている。

 また、WGは以下も要求する。

  • 保健サービスの供給における平等は、女性と男性それぞれの生物学的な必要性に応じて、別々のアプローチが必要になることを認識する。
  • 中絶を殺人または過失致死とみなして女性または医療サービス提供者を起訴・処罰することをやめること(1948年に国連人権宣言-UDHRで確立され、市民的および政治的権利に関する人権規約(自由権規約)-ICCPRで支持されているように、国際人権法-IHRLで認められている人権はすでに生まれている人に認められるものである)。
  • 中絶を非犯罪化し、今も根強く残っている女性の生命、健康、その他の人権を守る権利よりも妊娠への社会的関心を優先させるような中絶法、および新たに制定されつつある同類の法律を撤廃すること。
  • ICCPR第6条に謳われている生命に対する権利との関連で、安全な妊娠中絶の権利を保護すること。
  • 思春期の少女が学校教育を修了し、生命と健康に対する高いリスクから保護されるよう、平等と健康のための措置として、中絶へのアクセスを提供すること。
  • リプロダクティブ・ヘルスケアを含むヘルスケアへのアクセスが、自律的で、安価で、効果的であるように国家が保障すること。
  • 妊娠の終了に関する、以下のような一連の措置。

 - 妊娠の終了は、資格を持った医療サービス提供者によって、安全な環境で行われること。
 - 第三者による承認が不要になること。
 - 医療従事者への研修が提供されること。
 - 差別のない健康保険が適用されること。
 - 直接の提供者に対する良心的拒否を制限すること。

*1:A/HRC/RES/35/18:2017年6月22日に国連人権理事会で採択された決議文:リプロへのバックラッシュに言及