リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

人工中絶、広がる選択肢 飲み薬の使用始まる―負担軽く、課題は拘束時間

JIJI.comの記事にコメントしました。

人工中絶、広がる選択肢 飲み薬の使用始まる―負担軽く、課題は拘束時間:時事ドットコム

 薬による中絶の最大のメリットは、中絶を「脱医療化」することです。日常生活に溶け込んだ当たり前のできごとにすることです。最少の医療介入で、使いやすい価格で入手でき、きちんと情報を得ることで、安心して自宅で自分の都合の良いタイミングで服用できることが最大の利点なのです。
 服用方法も入手しやすさもがちがちに管理しておいて、上から目線で「普及に10年かかる」なんてうそぶくのはやめてほしい。このままでは日本の低用量避妊ピルの二の舞になってしまいます。日本の低用量ピルは、承認までに40年、その後20年以上が経っても、未だに日本社会に普及していません。最も重要な「薬の入手しやすさ」が阻まれているからです。医師の診察・処方が不可欠で、言われるがままにたっぷり検査も受けさせられ、3か月間で1万円、しかも未だに女性が個人の判断で避妊することへの文化的ハードルも高いのでは普及するわけがありません。
 中絶薬は世界の「中絶の常識」を変えた薬です。妊娠のごく初期に流産を引き起こすのは心身にも優しく、中絶を望む人を主体化し、生殖のくびきから解放しました。望まない妊娠をしている人に安全な中絶を阻むのは差別です。