リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

産科疾患に対する新しい医薬品治療法の開発

お金にならない産婦人科領域の薬の話

RCOG: Developing New Pharmaceutical Treatments for Obstetric Conditions(2015)より

一部仮訳します。

 製薬企業にとって、産科領域における医薬品開発の2つのシナリオを考慮する必要がある。1つ目は、探索・開発への投資の戦略的焦点として産科疾患をターゲットとする決定であり、2つ目は、他の急性疾患や慢性疾患のために開発された医薬品が妊娠中に使用される可能性があり、その場合、特定の投与量とリスク・ベネフィットに関する推奨事項が適用される可能性が高いという認識である。
 登録前、あるいは上市後であっても、業界主導の臨床試験で妊娠中の使用が優先されることはほとんどない。そのため、データシートには限られた情報しか記載されていないことが多く、適応外使用が広まる可能性がある。アカデミアと産業界の協力は、妊娠中に一般的に使用される医薬品の適切な使用をサポートするためのエビデンスにおける重要なギャップを埋める上で重要な役割を果たす可能性があるが、現在のところ、重大な合併症を伴わない治療法の大規模な観察経験では、資金援助が得られる可能性は低い。
 創薬と開発にかかるコストの高さは広く報告されており34 、製薬会社は、より高い投資対効果が期待できる分野にますます力を注いでいる。伝統的なブロックバスター・モデルから、開発期間の短縮や早期承認の機会によって市場収益の減少を補うことができる希少疾患を含む、より多様な治療領域への移行が進んでいる。残念ながら、産科領域は魅力的な売上予測に届かないだけでなく、長く困難な臨床試験、厳しい規制のハードル、潜在的な訴訟リスクなどのイメージから、この治療領域は多くの企業にとって優先されない。希少疾病用医薬品のオーファンドラッグ*1指定は、新規治療薬の商業化コストを削減する一つの方法である。この制度については、付録Iで詳しく説明している。
 医療水準が国によってますます異なってきているため、製薬企業がすべての主要市場のニーズを満たす臨床試験プログラムをデザインすることはより困難になってきている。米国食品医薬品局(FDA)が妊娠中の使用を承認している薬剤は12種類に過ぎない35。アトシバン(子宮収縮抑制薬)は、ヨーロッパをはじめとする世界数カ国で承認された産科治療薬として注目されている。しかし、FDAによる却下はよく知られており、諮問委員会の記録では、急性子宮収縮治療に関する臨床試験の要件や有効なエンドポイントに関するコンセンサスの欠如が強調されている36。

参考:イギリスのミソプロストール情報Cytotec 200mcg Tablets - Summary of Product Characteristics (SmPC) - (emc)

*1:希少疾病(きしょうしっぺい)用医薬品とも呼ばれ、難病といわれるような、患者さんの数が少なく治療法も確立されていない病気のためのくすりのこと 「オーファン・ドラッグ」とは、どのようなくすりですか。 | くすりの情報Q&A | 日本製薬工業協会