リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

NHK:経口妊娠中絶薬 どう使う?安全性は?費用は?

更新日2023年7月6日

こういう基本情報の提供も大切ですね。
経口妊娠中絶薬 どう使う?安全性は?費用は? | NHK健康チャンネル


解説者は対馬ルリ子医師。いつのまにか東京産婦人科医会の副会長になっていたのですね💦

2023/7/6(木) 放送の「今日の健康」:ニュース「のむ中絶薬」ってどんな薬?
から作られた記事だとのこと。

人工妊娠中絶の方法
 厚生労働省によると、2021年に国内で行われた人工妊娠中絶は12万件以上です。その方法はこれまで外科的な2つの方法だけでした。掻爬(そうは)法は、子宮の内容物、胎児や妊娠組織などを硬い金属の鉗子(かんし)やスプーン状の器具を使ってかき出す方法です。吸引法は、先端に穴のあいたプラスチック製の筒などを子宮に挿入して吸い取る方法です。
2023年4月に新しく承認されたのが経口中絶薬です。外科的な方法ではなく、薬をのんで人工妊娠中絶を行う方法です。掻爬法は、子宮内に器具を入れるために、子宮の内壁を傷つけるリスクがありますが、経口中絶薬は子宮に器具を入れることがないので、子宮にも精神的にも負担が少ない中絶法と考えられています。WHO(世界保健機関)も最も安全な方法として経口中絶薬を推奨しています。


経口中絶薬の使い方
 「経口中絶薬」は2種類の薬を順番に服用します。まずは、初めにのむ薬が「ミフェプリストン」です。妊娠を継続するホルモンの働きを抑えて、妊娠の進行を止めます。そして36時間から48時間後に第2薬の「ミソプロストール」を服用します。「ミソプロストール」は、子宮の収縮を促して、子宮の内容物を排出します。この薬は、ゆっくり吸収させる必要があるので、すぐにのみ込まず、左右の奥歯の歯茎と頬の間に2錠ずつ入れて30分間かけて口の中で溶かします。

 経口中絶薬は妊娠9週0日までが対象となっています。それ以降は、経口中絶薬は使えないので、外科的な方法を検討します。一方、海外では妊娠中期の22週まで使用可能なので、薬の効果としては9週0日以降もあると考えられています。しかし今回は、日本で初めて承認された経口中絶薬なので、より安全性を考えて出血や体の負担の少ない時期が設定されました。


経口中絶薬の安全性
(出典)Short‐term efficacy and safety of early medical abortion in Japan
(Reprod Med Biol. 2023)
 日本で行われた臨床研究には、妊娠9週0日までの18~45歳の中絶を希望する女性120人が参加しました。投与24時間以内に、93%の112人が中絶に至りました。58%の69人に下腹部痛やおう吐などの症状が出ましたが、いずれも軽症か中等症でした。子宮内出血や子宮内膜炎・出血性貧血などの重い症状があったのは4人でした。
 痛みについては、第2薬の「ミソプロストール」服用前に「痛み止めの薬」をのむことで緩和することができます。また出血については「重い月経のようだ」と表現する人も多く、掻爬法・吸引法に比べて出血が長引くことも報告されています。生理用ナプキンを1時間に2回以上交換するような出血が2時間以上続く場合は、速やかな対処が必要です。そのため、第2薬の「ミソプロストール」服用後は、中絶が完了するまで、医療機関内に待機します。
 臨床研究では120人中112人と9割以上が24時間以内に中絶に至りましたが、中には、排出が確認できなかったり、体内に一部が残ってしまうこともありました。第2薬を服用して24時間たっても中絶が確認できない場合は手術を追加します。


経口中絶薬が処方できる医療機関
 経口中絶薬を処方するには2つの条件があります。ひとつは「母体保護法指定医」であること。そして、現時点では「入院可能な医療機関・診療所」であることです。
 母体保護法とは、母性の生命と健康を保護することを目的として不妊の手術や人工妊娠中絶を認めた法律。この法律に基づいて、都道府県医師会が設置した審査委員会によって指定されたのが、母体保護法指定医です。現在、全国に約7500人います。(厚生労働省調べ)
 また、出血などの症状に対応するため、中絶が確認されるまでは院内で待機することが必要とされています。そのため、入院が可能な医療機関・診療所だけで処方が可能となっています。
 2023年6月20日現在、経口中絶薬を処方しているのは全国で15施設です。申請中の医療機関が約300施設で、今後、次第に増えていくと予想されます。
 人工妊娠中絶は、原則として健康保険が適用されない自由診療のため、薬による中絶にかかる費用は各医療機関・地域によって異なります。薬の価格はおよそ5万円、それに加えて診察料と入院費などがかかります。


経口中絶薬に関するパブリックコメント
 厚生労働省は経口中絶薬を承認するのに先立ち、インターネットでパブリックコメント募集しました。意見総数は1万1450件で、そのうち7821件(68.3%)が「承認すべき」、3573件(31.2%)が「承認すべきでない」でした。
「承認に賛成」の主な意見としては「手術以外のより安全で心身の負担が少ない選択肢を増やしてほしい」「世界保健機関(WHO)で推奨されており、多くの国で安全に使われている薬である」「女性の性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)を尊重するべき」「望まない妊娠を早いうちに終了する手段が必要」などでした。
女性の性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)とは、誰もが年齢や性別に左右されることなく、安全な性生活や、自分のセクシュアリティを自分で決められるという考え方です。また妊娠・中絶・出産に関して十分な知識が得られ、女性自身が「子どもを産むかどうか」などを自由に決めることができる権利のことを言います。こうした考え方は世界中で高まりを見せており、避妊・中絶・出産が公費負担になる潮流ができ、フランスなどでは出生率の上昇にもつながっていると言います。
 一方、「承認に反対」の主な意見としては、「胎児の命を奪うものであり、生命が尊重されない社会になるおそれがある」「手術が必要となる大量出血や感染症を引き起こすおそれがあり、安全な中絶方法とは言えない」「安易な中絶が増えてしまう」「承認する前に、望まない妊娠を防ぐような教育や、妊娠に悩む女性への相談体制と支援を強化すべき」などでした。


カウンセリングの重要性
 オランダ・フランス・スウェーデンでは、中絶が全額公費負担で行われています。また、女性に対するカウンセリングが重視されています。
 日本でも、さまざまな事情で、やむをえず中絶を選択する場合も、その後の妊娠や出産についてよく考えてもらい、具体的な情報を提供するとともに、精神面を含めてサポートしていくことが大切だと考えられています。