SRHRが使われることになった経緯
実はカイロ会議の頃から、考え方としてはsexual healthとrights to sexual healthもあったのです(sexual rightsという考え方はないとは断言できませんが、あまり見当たりません)。日本の女性たちがreproductiveを「性と生殖の」と訳したのは先進的だったわけです。だけど、reproductive rightsであそこまで揉めて「カイロの妥協」が行われたくらいなので、sexualにはあえて触れなかったのだろうと推測しています。結果的に、カイロ文書にはsexual healthとsexual rightsの定義は書き込まれませんでした。
1995年の北京会議の行動綱領には、「女性の人権には、強制、差別、暴力のない状態で、性と生殖に関する健康(sexual and reproductive health)を含むセクシュアリティに関する事項について、自由かつ責任を持って管理し、決定する権利が含まれる」となどと数カ所で"sexual and reproductive"に触れています。2016年の社会権規約一般的意見22にも「性と生殖の健康への権利」が書き込まれています。ただ、いずれもその中身はまだ漠然としていました。
1997年には第13回世界性科学会議で初めて"sexual rights"が定義されました。会議開催地の名を付けてバレンシア宣言と呼ばれています。
2014年には性の健康世界学会(WAS)が性的権利の宣言を出しました。
2017年UNFPA戦略計画(2018-2021)で、おそらく国連で初めてsexual and reproductive health and rightsが使わ
れました。
2018年にランセットとガットマッハー研究所がSH、SR、RH、RRの4つをきちんと定義しました。
https://okumi.hatenablog.com/entry/2023/06/20/123719
2019年にナイロビで開かれたICPD+25の「ナイロビサミット報告書」と「ナイロビ宣言」はSRHRオンパレードです。宣言の最初に出てくるところで次の注が付いています。
>性と生殖に関する健康と権利」という用語は、2017年9月11日のUNDP/UNFPA/UNOPS理事会決定2017/23で承認されたUNFPA戦略計画(2018-2021)の第23項と第31項で使用されている。
今のところ国連ではworking definition of sexual healthはありますが、rightの方は見当たりません。
とりあえず、経緯はこれで押さえることができたと思います。