Center for Reproductive Rights: FACT SHEET
FACT SHEET A, B and C v. Ireland
仮訳します。
A、B、C対アイルランド
2010年12月16日、欧州人権裁判所(裁判所)は、A、B、C対アイルランド裁判の判決を言い渡した1。この裁判の申請人らは、女性の生命が危険にさらされている場合にのみ中絶を認めるという現行の中絶法をアイルランドが履行していないことを争うとともに、この制限的な法律のあり方についても争った。判決において裁判所は、アイルランドの厳しい中絶法が欧州人権条約(ECHR)に違反しているとは認めなかった。しかし、アイルランドで妊娠中絶が合法である状況(妊娠が女性の生命を脅かす場合)において、アイルランドは女性が合法的な中絶を受けるための効果的で利用しやすい手続きを法律で定めていなかったとした。この失敗は、私生活を尊重する権利であるECHR第8条に基づくアイルランドの積極的義務違反に相当する。その結果、裁判所はアイルランドに対し、中絶法を実施するための法的枠組みを確立し、女性が合法的な中絶サービスを受けられるよう効果的な手続きを採用するよう命じた。
I. 事件の事実
a. 各申請者に関する事実
A、B、C対アイルランドの裁判は、A、B、Cの3人の非公開の申請者によって提起されたもので、各申請者は安全な中絶手術を受けるためにイギリスへの渡航を余儀なくされた2。
申請者Aは、裁判所が「健康とウェルビーイング」と呼ぶ理由で中絶を求めた3。彼女は貧困の中で暮らしていたが、パートナーが不妊症であると信じ、意図せずに妊娠した。彼女は4人の幼い子供を養護施設に預けており、以前の妊娠ではいずれもうつ病を経験していた。申請人Aは、その時点でもう一人子供を産むことは彼女の健康を危険にさらし、家族の再統合の可能性を危うくすると主張した。彼女はアイルランドでは法的に中絶する権利がないと考え、イギリスへ渡航することにした。彼女は渡航費とイギリスの私立クリニックでの治療に必要なお金を貸金業者から高利で借りた4。
裁判所によれば、申請人Bは「ウェルビーイングの理由」5 から中絶を求めた。彼女はまた、性交後に緊急避妊をしたにもかかわらず、意図せずに妊娠した。彼女は、その時点で一人で子供を養育することができず、アイルランドでは法的に中絶を受ける権利がないと考えたため、中絶のためにイギリスに渡航することを決めた。彼女は旅費を捻出するのに経済的な困難を経験した。アイルランドに帰国後、彼女は血栓ができ始めたが、中絶のために海外に渡航することの合法性について確信が持てなかったため、治療を受けるのが遅れた6。申請者Cは、がんの寛解期に意図せず妊娠した。妊娠していることを知らなかった彼女は、妊娠中は禁忌とされているがんの検査を受けた。妊娠発覚後、妊娠が彼女の生活や健康に与える影響や、検査が胎児に与える影響について十分な情報を提供してくれる医師を見つけることができなかった。その結果、彼女は胎児へのリスクを調べ、中絶のためにイギリスへ渡航することを決めた7。
b. 各申請人の主張
申請者らは、同国の制限的な妊娠中絶法に対する不満に対処するための有効な国内救済手段を有していなかったため、同裁判所に提訴した。彼らの申し立ては以下の通りである:
- 各申請人は、中絶のために海外渡航を余儀なくされた同法により、身体的・心理的な不安や苦痛を受け、非人道的かつ品位を傷つける取扱い(第3条)から自由である権利の侵害に相当すると主張した8。
- 各申請人は、この法律は女性に過度の負担を強いるため、性による差別から自由である権利に違反すると主張した。さらに申請人 A は、貧困にあえぐ女性として差別を受けたと主張した(第 14 条および第 8 条)9。
- 申請人AとBは、健康上または福祉上の理由からアイルランドで中絶サービスを調達することを禁止した法律は、身体的完全性を含む私生活を尊重する権利の侵害に相当すると主張した。申請人Cは、女性の生命が脅かされている場合に中絶できる憲法上の権利を実施する法律を国が採択しなかったことが、この権利(第8条)を侵害したと主張した10。
- 申請人AとBは、制限的な法律に異議を申し立てるための効果的な国内救済を受ける権利が否定されたと主張した11。申請人Cは、合法的な中絶を規制するアイルランドの法的枠組みが不十分であるため、効果的な国内救済を受ける権利が侵害されたと主張した(第13条)12。
- 申請人Cは、アイルランドの最高裁判所が女性の生命が危険にさらされている場合に中絶を認めると解釈している憲法40条3項3号の生存権に関する憲法規定を国が履行していないため、アイルランドでは生命が脅かされている状況であっても中絶ができないと主張した。このことは、彼女の生命に対する権利(第2条)の侵害にあたると彼女は主張した13。
II. アイルランドの状況
アイルランドは中絶を制限する法律を持つ数少ないヨーロッパ諸国のひとつである。1861年に制定された「人身に対する罪」は、あらゆる状況での妊娠中絶を禁じている14。この法律によれば、「流産させる」罪で有罪判決を受けた女性や医師などの者は、終身刑の対象となる15。さらに、アイルランド憲法第40条3項3号は、「胎児の生命に対する権利と、母体の生命に対する平等な権利に配慮して...」を認めている16。このあいまいな規定は、アイルランドの最高裁判所によって、女性の健康とは異なる生命に対する「現実的かつ実質的な」危険が存在する場合、中絶を許可すると解釈されており、これには自殺のおそれも含まれる17。このように、中絶に関するアイルランドの法的枠組みは、この例外を明確に取り入れるようには改正されていないが、判例法は、女性の生命が危険にさらされている場合、アイルランドでは中絶が合法であることを明確に立証している。さらに憲法は、女性が中絶サービスを受けるために海外に渡航する権利と、海外で受けられる合法的な中絶サービスに関する情報を得る権利を認めている18。アイルランドの制限的な中絶法の結果、毎年、妊娠の中絶を望む女性が海外渡航を余儀なくされるか、違法で安全でない可能性のある中絶サービスを受けざるを得なくなり、健康や、場合によっては命が危険にさらされている19。アイルランド政府はアイルランド国内の中絶サービスや、安全な中絶サービスを受けるために海外に渡航する女性の数に関するデータを収集していないため、この問題の大きさを定量化することは困難である20。英国保健省(Department of Health)は、イングランドとウェールズの中絶クリニックにアイルランド人の住所を提供した女性と少女の数に関する統計を毎年発表しており、2010年だけでも4,000人以上のアイルランド人がこれらの地域で中絶サービスを求めていることを示している21。しかし、これらの数字はこのような理由で海外に渡航するアイルランド人の数を過小評価している。例えば、女性は守秘義務への懸念など、いくつかの理由から住所を教えたくない場合がある22。また、オランダなど他のヨーロッパ諸国で中絶サービスを求めることもある23。
さらに、アイルランド医薬品委員会は、2009年に中絶を誘発することが知られている薬物のパッケージ1,216個がアイルランドの税関当局によって押収されたことを確認している24。この数字は、アイルランドの何百人もの女性が、アイルランドの制限的な法律のために、妊娠を終了させるために違法な手段に頼っていることを示している。
III. 決定
2010年12月16日、欧州人権裁判所は次のように決定した:
- いかなる申請者についても、第3条(拷問または非人道的もしくは品位を傷つける扱いの禁止)違反はない25。
- 第14条(差別の禁止)の下で、申請者について第8条の下ですでに検討されていない別の問題は生じなかった26。
- 第8条(私生活を尊重する権利)は、苦情を審査するための最も適切な規定であった。しかし、申請人AとBに関して、裁判所はこの条項の違反を認めなかった。
- 申請人Cに関しては、裁判所はアイルランドが第8条の積極的義務に違反していると判断した。同裁判所は、アイルランドが憲法第40条3項3号を実施する法律を採択しておらず、これによって申請人Cがアイルランドで合法的な中絶を受ける資格があるかどうかを決定することができる効果的で利用しやすい手続きを確立していなかったと裁定した27。
- 第13条(有効な救済を受ける権利)に関して、裁判所は、申請人AおよびBに関しては違反は生じていないと判断した。申請人Cに関しては、この条文に基づき、第8条の下で既に検討されていない別個の問題は生じないと判断した28。
- 申請人Cに関しては、第2条(生命に対する権利)の違反はない29。
IV. 救済措置
- 個別的措置:
裁判所は、アイルランドにおいて合法的な中絶を受ける権利を決定する効果的な手続きがないために申請人Cが経験した不安と苦痛に対する非小額損害賠償として、申請人Cに15,000ユーロを与えた30。しかし、「アイルランドにおいて、関連する規制手続きを利用することができたならば、中絶を受ける資格があったか否かについて推測することはできない」と考え、中絶のためにイギリスに渡航したことに関する金銭的損害に対する正当な満足を求める申請人Cの請求を棄却した31。
- 一般的措置
裁判所は、アイルランドが条約上の義務を遵守するためには、妊娠が女性の生命を脅かす状況において、女性が合法的な中絶を受ける資格があるかどうかを判断できるように、「アクセスしやすく効果的な手続きを提供する実施的な立法または規制体制」を確立する必要があるとした32。
V. 権利の意味合い
各申請者が直面している状況は、アイルランドでは珍しいことではない。合法的な中絶サービスを受ける資格があるかどうかを女性が判断できる効果的で利用しやすい手続きがないため、妊娠が生命に危険を及ぼす多くの女性は、安全な中絶サービスを受けるために海外に渡航せざるを得ない。同様に、健康や福祉上の理由で妊娠の中絶を希望する女性も、海外に渡航しなければならない。
この事件の判決は、女性が法的権利を有する中絶サービスを利用するための効果的で利用しやすい手続きを国家が確立しないことは、女性の人権侵害であると認識する国際人権機関による一連の決定に加わるものである33。
さらに人権機関は、アイルランドのような強権的な中絶法が女性の人権を侵害していることを認識しつつある34。
残念なことに、この訴訟の裁判所は、妊娠が女性の健康や幸福を脅かす状況において、女性がこのサービスを合法的に利用することを禁止するアイルランドの制限的な中絶法に起因する人権侵害を認識しなかった。a. 理由 申請人C
裁判所は、第8条に関連して申請人AおよびBの請求を棄却した一方で、同条に基づく国家の積極的義務を検討することによって、申請人Cの訴えを再検討することを決定した35。申請者Cの場合、第8条に関して以下の原則を再確認または確立した:
- 私生活には、人の身体的または心理的な統合性と個人の自律の権利が含まれる36。さらに、「妊娠の中断を規制する法律は、女性の私生活の領域に触れている」37。したがって、裁判所は、中絶法が私生活の尊重の権利に属することを再確認した38。
- 妊娠が女性の生命に及ぼす危険性を立証する必要性は、女性の私生活を尊重する権利の基本的価値と本質的側面に関わるものである39。
- 裁判所は、女性が合法的な中絶を受ける資格を確立する手段としてのアイルランドの医療相談手続きの有効性に疑問を呈した。裁判所は、妊娠が女性の生命にもたらすリスクを医師が評価する基準を明記したガイドラインが存在しないことに依拠した。さらに、女性と医師、あるいは相談した医師間の意見の相違を解決するための枠組みがないことを強調した。そのような枠組みがあれば、特定のケースが女性の生命に危険をもたらすかどうかを法律問題として立証することができ、女性が合法的な中絶サービスを利用できるようになる40。最後に、裁判所は、終身禁固刑のリスクを伴う中絶サービスに課される刑事罰が、「女性と医師の双方にとって、医療相談のプロセスを著しく冷え込ませる要因となる」と指摘した41。
- 司法手続きは、中絶が合法的に行われるかどうかを決定する手段としては、アクセスしにくく効果的でない42。特に、憲法裁判所は、医学的な性質を持つこの問題を決定する場としては不適切である43。したがって、この問題について複雑な憲法上の異議申し立てを進めることを女性に要求することは不適切である44。
- こうして裁判所は、アイルランドにおいて合法的な中絶を受ける憲法上の権利を履行していないとして、アイルランドを第8条の積極的義務に違反していると判断した45。裁判所は、「第40条3項3号、とりわけ......同規定に基づく中絶の権利を確立するための効果的で利用しやすい手続きの欠如は、......アイルランドにおける女性の生命に関連する危険性を理由とする合法的な中絶への理論的権利と、その現実的実施との間に著しい不一致をもたらした」46と指摘した。
b. 理由: 申請人AおよびB
裁判所は、申請者Cに関する重要な発見があったにもかかわらず、他の申請者の8条の訴えが意味する人権侵害を同様に認めなかった。同裁判所は、第8条に基づく国家の消極的義務を検討することによって、申請人AとBの訴えを検討することを決定し47、以下のように立証した:
- 裁判所は、「健康および/またはウェルビーイングを理由とする......申請者の妊娠の終了の禁止は、申請者の私生活を尊重する権利に対する干渉に相当する」48と判断したが、そのような干渉が不当であるとの裁定は下しなかった。
- この干渉を分析するにあたり、裁判所は、健康またはウェルビーイングを理由とする妊娠中絶の禁止が、申請者の私生活を尊重する権利と、「生命の本質に関するアイルランド国民の深い道徳的価値観、ひいては胎児の生命を保護する必要性に関するアイルランド国民の深い道徳的価値観」との間で合理的な均衡が保たれているかどうかを判断しようとしたことを示した49。
- これらの権利のバランスをとるにあたり、裁判所は、女性の私生活を尊重する権利を妨害する制限的な中絶法を採用することによって、国家が人権上の義務に違反したかどうかを判断する際に、国家に認めるべき適切な「余裕(マージン)」を定義しようとした50。
- 裁判所は、(i)個人のアイデンティティの重要な側面が危機に瀕している場合、または(ii)欧州評議会加盟国間のコンセンサスが存在する場合、国家に認められるマージンはより狭くなることを示した51。裁判所は、アイルランドの人工妊娠中絶法が申請者たちの私生活を尊重する権利を侵害していることを認めた52が、「アイルランドの法律で認められているよりも広範な理由で」53中絶を認めている欧州評議会加盟国の間に幅広いコンセンサスが存在することを確認し、中絶法の自由化に向かう欧州の傾向に言及した54が、最終的には国家に広範な評価余地を与えることを決定した。アイルランドは、「中絶の問題が提起する道徳的・倫理的問題の鋭敏さ」から、「......アイルランド法の下で胎児の生命に対する権利に与えられる保護と、私生活の尊重に対する第一申請者と第二申請者の相反する権利との間で公正なバランスが取られているかどうか......」を判断する際に、アイルランドに広範な考慮の余地を与える権利があると指摘した55。したがって、裁判所はアイルランドに、女性がどのような理由で合法的に中絶を受ける権利を有するべきかを判断することを委ねた56。
- これらの権利のバランスをとる上で、国家は広範な評価余地を与えられるべきであるという結論に達するにあたり、裁判所は特に、アイルランド人女性が合法的な中絶サービスを受けるために海外に渡航するという選択肢、海外で中絶を受けるための情報を入手すること、中絶後のケアを含むアイルランド国内の医療を受けることができることに依拠した57。
VI. 分析
反対意見で述べられているように、本判決は、裁判所が国家に与える評価余地の範囲を決定する際に、欧州のコンセンサスの存在を無視した珍しい例である58。欧州評議会加盟国47カ国の大半は、女性の妊娠中絶を選択する権利を認めており、また、広範な理由で中絶を認めている。具体的には、35カ国が理由による制限なしに妊娠中絶を認めており、5カ国が健康と福祉を理由に妊娠中絶を認めている。健康上の理由による中絶を認めているのは3カ国であるのに対し、いかなる理由による中絶も明確に認めていないという点で、アイルランドよりも制限的な中絶法を定めているのは3カ国だけである60。
さらに、反対意見が認めているように、この判決は、裁判所が「深い道徳観」61 に基づいて広範なコンセンサスを無視した初めてのケースである。裁判所は、アイルランドの健康上または福祉上の理由による人工妊娠中絶の禁止は、「生命の本質に関する......アイルランド国民の深遠な道徳的見解に基づくものであり、その結果、胎児の生命に対する権利に与えられるべき保護に関する......」62、過去の法理を引用して、裁判所は、女性の権利と「胎児の保護」のバランスを決定する際に、国家は余裕の恩恵を受けると結論づけた63。 しかし、反対意見は、道徳的信条を根拠にヨーロッパの圧倒的なコンセンサスを覆すことは、裁判所のこれまでの法理から逸脱していると認識している64。
さらに、アイルランドの法律が、中絶のために女性が海外に渡航することを認め、中絶の調達に関する情報を得る権利を女性に認め、一般的に医療へのアクセスを提供しているという点で、女性の健康を十分に保護しているという裁判所の指摘は、異例であり、問題である65。裁判所は、アイルランドに居住する女性が人権を行使するために国外に渡航せざるを得ないことを認めながらも、近隣諸国がこの権利を保障するために必要な情報やサービスを提供していることを指摘することで、アイルランドが自国領土内のすべての女性の私生活を尊重する権利を確保する自国の義務に対する責任を問うていない。この結論は、国際条約に定められた人権を各国が遵守しているかどうかは、その国の実績のみに基づいて判断されるという、確立された人権原則から著しく逸脱している。この決定は、欧州評議会加盟国間の人権原則の一貫した適用を要求するのではなく、近隣諸国がそのような義務を遵守していることを指摘することによって、アイルランドの人権義務を免責するものである。
VII. 影響
裁判所の審判にもかかわらず、アイルランドの多くの女性、特に恵まれない女性にとっての現実は、安全な中絶サービスを受けるために海外に渡航することができず、中絶に関する正確な情報にアクセスできず、中絶後の医療ケアにアクセスできていない66。例えば、中絶サービスを受けるために渡航する憲法上の権利があるにもかかわらず、2007年、致命的な異常のある胎児を身ごもった17歳の少女は、この権利を主張するために高等法院で訴訟を起こすことを余儀なくされた67。高等法院は、このサービスを受けるために渡航することを妨げる法的または憲法上の根拠は存在しないと判決を下した68。さらに、この事件をめぐる報道によって、中絶サービスを受けるために少女が海外に渡航することを妨げるために政府がとった措置が浮き彫りにされ、中絶を受けるために海外に渡航する女性の権利に関する明確な情報が欠如していることから、多くの女性がいまだにこのような理由で海外に渡航することは禁止されていると信じている69。さらに、何らかの理由で渡航できない女性は、その理由が入国管理、経済状況、または国家に拘束されているためであろうと、健康や福祉を危険にさらす妊娠を継続するか、違法で、おそらくは安全でない中絶を調達するかの選択を余儀なくされる。アイルランド政府はアイルランドで行われた合法・非合法の中絶件数に関するデータを集計していないため、この問題の範囲を特定することは不可能である70。さらに、中絶サービスを受けるために海外に渡航する可能性に関する情報を得る上で、多くの女性がいまだに障害に直面している。例えば、1995年に制定された「情報規制法(妊娠中絶のための国外でのサービス)」は、中絶に関する情報提供に厳しい制限を課しているため、多くの女性がそうした情報にアクセスすることを困難にしている可能性がある。さらに、女性の中絶へのアクセスに反対する規制のない機関は、中絶に関する不正確で誤解を招くような情報を女性に提供することが多い71。
最後に、アイルランドでは中絶に関する法的枠組みがあいまいなため、多くのアイルランド人女性が中絶後のケアの法的地位について混乱している。中絶後のケアは合法であるが、女性は迫害を恐れ、中絶後のケアを受けることに消極的である72。さらに、アイルランド政府は中絶後のケアに関する統計をとっていないため、中絶後のケアのための医療サービスが実際に利用可能で、女性に受け入れられているかどうかを判断することはできない73。
VIII. 判決後の展開
国は、裁判所が認定した非人道的損害を申請者 C に補償した74 。
2011年6月、国は裁判所が下した判決の執行を監督する欧州評議会閣僚委員会に行動計画を提出し、判決の迅速な実施と、「この問題がどのように適切に対処されるべきか」について政府に勧告を行う専門家委員会の設置を約束した75。2012年1月、アイルランド政府は判決を検討するため、高等法院判事Seán Ryanを委員長とし、医師、弁護士、保健省職員で構成される専門家委員会を設置した。同委員会の職務権限には、「この分野における公共政策の策定に関わる憲法、法律、医学、倫理上の考慮事項、および迅速な措置の最優先の必要性を考慮して、判決を実施する方法に関する一連の選択肢」を提言することが含まれている76。委員会は6ヶ月以内にアイルランド政府に報告し、その後2012年10月末までに閣僚委員会に行動報告を提出する。
その後、2012年10月末までに閣僚委員会に行動報告書を提出し、判決の実施状況を報告する。
を提出する77。2012年3月、閣僚委員会はアイルランドの本件判決執行に関連して決定を下した。同委員会はまた、「第3の申請者が経験したのと同様の状況において、妊娠によって生命が危険にさらされる可能性があると考える女性の状況」78 に懸念を表明した。さらに委員会は、「専門家グループが可能な限り速やかに作業を完了するよう......また、当局が講じる予定の実質的な措置を可能な限り速やかに報告するよう、当局に強く促した」79 。
注目すべきは、1996年以来、3つの専門家グループが中絶に関連して勧告を行い、政策オプションを概説しているが、裁判所が判決で嘆いたように、国はこれらの過去の勧告のいずれにも基づいて行動していないことである80。欧州人権理事会委員は最近、妊娠が原因で女性の生命が危険にさらされているという限定的な状況において中絶を認める枠組みを確立する法律がアイルランドでは整備されていないことに懸念を表明した81。同様に、国連拷問禁止委員会は2011年にアイルランドに出した最終見解の中で、「一部の妊娠が母体の生命に現実的かつ実質的な医学的危険をもたらすかどうかを立証するための効果的で利用しやすい国内手続きが締約国に存在しないこと」82に懸念を表明した。さらに、アイルランドに対し、「合法的な中絶の範囲を法定法によって明確にし、異なる医学的見解に異議を唱えるための適切な手続きと、中絶を実施するための適切なサービスを提供し、その法律と実践が(拷問禁止)条約に適合するようにすること」83を求めた。
それ以上に、アイルランドの最近の普遍的定期的審査(UPR:国連が国家間の人権慣行について直接審査することを認めるメカニズム)において、法務大臣は、判決の実施へのコミットメントを再確認したにもかかわらず、アイルランドにおける人工妊娠中絶へのアクセス拡大に関連する英国、スロベニア、ノルウェー、デンマーク、スペイン、オランダからの勧告を拒否した84。欧州条約の主な人権規定
人権および基本的自由の保護に関する欧州条約85は、本件に関連する以下の人権を認めている:
第2条1項 生命に対する権利
すべての人の生命に対する権利は、法律によって保護されなければならない。何人も、法律で刑罰が定められている犯罪の有罪判決後、裁判所の刑の執行の場合を除いては、故意にその生命を奪われてはならない。
第3条 第3条 拷問又は非人道的若しくは品位を傷つける取扱いの禁止
何人も、拷問又は非人道的若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。
第8条 私生活および家庭生活を尊重される権利
1. すべて人は、自己の私生活、家庭生活及び通信を尊重される権利を有する。
2. 2.公権力は、国の安全、治安または経済的福祉のため、秩序もしくは犯罪の予防のため、健康もしくは道徳の保護のため、または他人の権利および自由の保護のために、法律に従い、かつ、民主的社会において必要な場合を除くほか、この権利の行使を妨げてはならない。
以下、原文:
On December 16, 2010, the European Court of Human Rights (the Court) handed down its decision in A, B and C v. Ireland.1 The applicants in this case contested Ireland’s failure to implement its existing abortion law, which only authorizes abortion if a woman’s life is at risk, and also challenged this restrictive law as such. In its decision, the Court declined to find that Ireland’s harsh abortion law violated the European Convention on Human Rights (ECHR). However, it held that in circumstances in which abortion is legal in Ireland, which is the case when a pregnancy poses a threat to the life of a woman, Ireland had failed to adopt legislation and establish an effective and accessible procedure for women to access lawful abortions. This failure amounted to a violation of Ireland’s positive obligations under Article 8 of the ECHR, the right to respect for private life. Consequently, the Court ordered Ireland to establish a legislative framework to implement its abortion law and to adopt effective procedures to ensure women’s access to legal abortion services.
I. Facts of the Case
a. Facts with Respect to Each Applicant
The case of A, B and C v. Ireland was brought by three undisclosed applicants, A, B and C, each of whom was forced to travel to England in order to procure a safe abortion.2 Applicant A sought an abortion for what the Court called “health and well-being” reasons.3 She was living in poverty when she became pregnant unintentionally, believing that her partner was infertile. She had four young children in foster care, and had experienced depression during each of her previous pregnancies. Applicant A maintained that having another child at that time would have placed her health at risk and jeopardized the potential reunification of her family. She believed that she was not legally entitled to an abortion in Ireland, and therefore decided to travel to England. She borrowed the money needed for travel expenses and treatment at a private clinic in England from a money lender at
high interest rate.4 Applicant B sought an abortion for, according to the Court, “well-being reasons.”5 She also became pregnant unintentionally, despite her use of emergency contraception following intercourse. She decided to travel to England for an abortion, because she could not care for a child by herself at that point in her life and believed that she was not legally entitled to an abortion in Ireland. She experienced financial difficulties in generating the funds for her travel costs. Upon her return to Ireland, she began to pass blood clots, but delayed seeking medical care because she was unsure about the legality of traveling abroad for an abortion.6Applicant C unintentionally became pregnant while in remission from cancer. Unaware that she was pregnant, she underwent tests for cancer that were contraindicated during pregnancy. Upon discovering that she was pregnant, she was unable to find a doctor willing to provide sufficient information about the pregnancy’s impact on her life and health or the impact of the tests on the fetus. Consequently, she researched the risks to the fetus and decided to travel to England for an abortion.7
II. Context in Ireland
Ireland is one of the few European countries with a restrictive abortion law. The Offenses Against the Person Act 1861 prohibits abortion in all circumstances.14 According to this statute, a woman or other person, such as a physician, who has been convicted of “procur[ing a] miscarriage” is subject to life imprisonment.15 Furthermore, Article 40.3.3 of Ireland’s Constitution recognizes “the right to life of the unborn and, with due regard to the equal right to life of the mother….”16 This ambiguous provision has been interpreted by the Irish Supreme Court to permit abortion when a “real and substantial” risk to a woman’s life, as distinct from her health, exists, which includes the threat of suicide.17 Thus, although Ireland’s statutory framework on abortion has not been amended to explicitly incorporate this exception, case law has clearly established that abortion in Ireland is legal if a woman’s life is at risk. Additionally, the constitution accords women the right to travel abroad to procure abortion services, and to receive information about legal abortion services available abroad.18Each year, as a result of Ireland’s restrictive abortion law, women who wish to terminate their pregnancies are forced to travel abroad or seek illegal and potentially unsafe abortion services, which place their health and possibly their lives in danger.19 Since the Irish Government does not collect data on abortion services in Ireland or the number of women that travel abroad to procure safe abortion services, the magnitude of this problem is difficult to quantify.20 The United Kingdom (UK) Department of Health releases annual statistics on the number of women and girls providing Irish addresses to abortion clinics in England and Wales, demonstrating that in 2010 alone, more than 4,000 Irish residents sought abortion services in these regions.21 However, these figures underestimate the number of Irish residents who travel abroad for this reason. For example, women may not wish to provide their addresses for several reasons, including confidentiality concerns.22 Additionally, they may seek abortion services from other European countries, such as the Netherlands.23
Furthermore, the Irish Medicines Board confirmed that in 2009, 1,216 packages of drugs known to induce abortions were seized by Irish customs authorities.24 This figure indicates that hundreds of women in Ireland are resorting to illegal means in order to terminate their pregnancies due to Ireland’s restrictive law.
III. Decision
On December 16, 2010, the European Court of Human Rights determined:
• No violation of Article 3 (prohibition of torture or inhuman or degrading treatment) for any applicant.25
• No separate issue arose under Article 14 (the prohibition of discrimination) that was not already examined under Article 8 for any applicant.26
• Article 8 (the right to respect for private life) was the most appropriate provision under which to review the complaint. However, with respect to Applicants A and B, the Court declined to find a violation of this article.
• With respect to Applicant C, the Court found Ireland in violation of its positive obligations under Article 8. It ruled that Ireland had failed to adopt legislation implementing Article 40.3.3 of the constitution, which would have established an effective and accessible procedure by which Applicant C could have determined whether she qualified for a legal abortion in Ireland.27
• As to Article 13 (the right to an effective remedy), the Court decided that a violation had not occurred with respect to Applicants A and B. With respect to Applicant C, it decided that no separate issue arose under this article that was not already examined under Article 8.28
• No violation of Article 2 (right to life) with respect to Applicant C.29
IV. Remedies
• Individual measures:
The Court awarded 15,000 euros to Applicant C in non-pecuniary damages for the anxiety and suffering she experienced due to the lack of an effective procedure for determining her right to a lawful abortion in Ireland.30 However, it rejected her claim for just satisfaction for pecuniary damages in connection with traveling to England for an abortion, considering that it could not speculate “on whether she would have qualified or not for an abortion in Ireland had she had access to the relevant regulatory procedures.”31
• General measures:
The Court held that in order to comply with its obligations under the Convention, Ireland needs to establish an “implementing legislative or regulatory regime providing an accessible and effective procedure” so that women can determine whether they qualify for a lawful abortion in circumstances in which the pregnancy threatens their lives.32
V. Rights Implications
The situation faced by each of the applicants is not uncommon in Ireland. Due to the lack of an effective and accessible procedure by which women can determine whether they qualify for legal abortion services, many women whose pregnancies pose a risk to their life are forced to travel abroad to procure safe abortion services. Similarly, women who wish to terminate their pregnancies for health or well-being reasons must travel abroad.
The judgment in this case joins a series of decisions by international human rights bodies recognizing that the failure of states to establish effective and accessible procedures for women to access abortion services to which they are legally entitled is a violation of their human rights.33
Furthermore, human rights bodies are increasingly recognizing that draconian abortion laws, such as Ireland’s, violate women’s human rights.34 Unfortunately, the Court in this case failed to recognize the human rights violations that stem from Ireland’s restrictive abortion law that prohibits women from legally accessing this service in circumstances in which the pregnancy threatens their health or well-being.a. Reasoning: Applicant C
While the Court dismissed the claims of Applicants A and B in connection with Article 8, it decided to review Applicant C’s complaint by examining the state’s positive obligations under this article.35 It reaffirmed or established the following principles with respect toArticle 8 in the case of Applicant C:
• Private life encompasses a person’s physical or psychological integrity and her right to personal autonomy.36 Furthermore, “legislation regulating the interruption of pregnancy touches upon the sphere of the private life of the woman….”37 Thus, the Court reaffirmed that abortion laws fall within the right to respect for private life.38
• The need to establish the relevant risk to a woman’s life caused by a pregnancy concerns fundamental values and essential aspects of her right to respect for her private life.39
• The Court questioned the effectiveness of the Irish medical consultation procedure as a means of establishing a woman’s qualification for a lawful abortion. The Court relied on the absence of guidelines that specify the criteria by which a doctor is to assess the risk that a pregnancy poses to a woman’s life. Furthermore, it highlighted the lack of a framework for resolving differences of opinion between a woman and her doctors or between the doctors consulted. Such framework could establish as a matter of law whether a specific case presents a risk to the woman’s life so that she can access legal abortion services.40 Finally, the Court indicated that the criminal penalties imposed on abortion services, which carry the risk of lifetime imprisonment, “would constitute a significant chilling factor for both women and doctors in the medical consultation process….”41
• Judicial proceedings are an inaccessible and ineffective means of determining whether an abortion can be lawfully performed.42 Specifically, constitutional courts are an inappropriate forum for determining this issue, which is of a medical nature.43 Thus, requiring women to proceed with complex constitutional challenges on this issue is inappropriate.44
• The Court thus found Ireland in violation of its positive obligations under Article 8 for failing to implement the existing constitutional right to a lawful abortion in Ireland.45 It noted that the “lack of legislative implementation
of Article 40.3.3, and more particularly … the lack of effective and accessible procedures to establish a right to an abortion under that provision, … has resulted in a striking discordance between the theoretical right to a lawful abortion in Ireland on grounds of a relevant risk to a woman’s life and the reality of its practical implementation.”46
• Thus Ireland must establish a legislative framework to implement Article 40.3.3 of the constitution and guarantee women’s right to abortion when their lives are in danger.b. Reasoning: Applicants A and B
Despite the Court’s important findings with respect to Applicant C, it failed to similarly recognize the human rights violations implicated by the other applicants’ Article 8 complaints. It decided to review the complaints of Applicants A and B by examining the state’s negative obligations under Article 8,47 and established the following:
• The Court determined that “the prohibition of the termination of the … applicants’ pregnancies sought for reasons of health and/or well being amounted to an interference with their right to respect for their private lives,”48 but declined to rule that such interference was unjustified.
• In analyzing this interference, the Court indicated that it sought to determine whether the prohibition of abortion for health or well-being reasons struck a reasonable balance between the applicants’ right to respect for their private lives and the “profound moral values of the Irish people as to the nature of life and consequently as to the need to protect the life of the unborn.”49
• In balancing these rights, the Court sought to define the appropriate “margin of appreciation” to accord to the state in determining whether it violated its human rights obligations by adopting a restrictive abortion law that interfered with women’s right to respect for their private lives.50
• The Court indicated that the margin allowed to the state is narrower where (i) an important facet of an individual’s identity is at stake or (ii) a consensus among the Council of Europe member states exists.51 Although the Court recognized that Ireland’s abortion law interfered with the applicants’ right to respect for their private lives,52 affirmed the existence of a broad consensus among Council of Europe member states that permit abortion “on broader grounds than accorded under Irish law,”53 and remarked upon the European trend toward liberalization of abortion laws,54 it ultimately decided to accord the state a broad margin of appreciation. It indicated that the “acute sensitivity of the moral and ethical issues raised by the question of abortion” entitled Ireland to a broad margin of appreciation in determining “whether a fair balance was struck between … the protection accorded underIrish law to the right to life of the unborn, and the conflicting rights of the first and second applicants to respect for their private lives ….”55 Thus, it deferred to Ireland to determine on what grounds a woman should be lawfully entitled to an abortion.56
• In reaching the conclusion that the state should be accorded a broad margin of appreciation in balancing these rights, the Court specifically relied on Irish women’s option to travel abroad to obtain legal abortion services, their access to information about obtaining abortions abroad, and their access to medical care in Ireland, including post-abortion care.57
VI. Analysis
As noted in the dissenting opinion, this decision marks a rare instance in which the Court disregarded the existence of a European consensus in determining the scope of the margin of appreciation to accord to a state.58 The vast majority of the 47 Council of Europe member states recognizes a woman’s right to choose to terminate her pregnancy or permit abortion on broad grounds. Specifically, 35 countries permit abortion without restriction as to reason and five countries allow abortion for health and well-being reasons, otherwise known as
socioeconomic grounds.59 Three member states permit abortion on health grounds, whereas only three member states have an abortion law that is more restrictive than Ireland’s in that it does not explicitly permit abortion onany grounds.60
Furthermore, as recognized by the dissenting opinion,
this judgment marks the first time that the Court has disregarded a broad consensus on the basis of “profound
moral views.”61 The Court explained that Ireland’s prohibition of abortion for health or well-being reasons did not exceed the margin of appreciation because it was based “on the profound moral views of the Irish people as to the nature of life … and as to the consequent protection to be accorded to the right to life of unborn …”62 Citing its past jurisprudence, the Court concluded that states benefit from the margin of appreciation in determining the balance between the rights of women and the “protection of the unborn.”63 The dissenting opinion, however, recognizes that overriding an overwhelming European consensus on the basis of moral beliefs is a concerning departure from the Court’s previous jurisprudence.64Moreover, the Court’s suggestion that Irish law sufficiently protects women’s health in that it allows women to travel abroad for abortion, permits women the right to information about procuring abortions, and generally provides access to medical care is both unusual and troubling.65 Although the Court recognizes that women residing in Ireland are forced to travel outside their country to exercise their human rights, by noting that neighboring states provide the necessary information and services to guarantee this right, it fails to hold Ireland accountable for its own obligation to secure the right to respect for private life for all women in its territory. This conclusion is a remarkable departure from well-established human rights principles according to which each state’s compliance with the human rights set forth in international treaties is judged based only on the performance of that state. This decision excuses Ireland of its human rights obligations by pointing to the adherence of neighboring states to such obligations, rather than demanding a consistent application of human rights principles among the Council of Europe member states.
VII. Impact
Despite the Court’s findings, the reality for many women in Ireland, particularly disadvantaged women, is that they are unable to travel abroad to receive safe abortion services, they do not have access to accurate information about abortion, and post-abortion medical care is inaccessible.66 For example, despite a constitutional right to travel to procure abortion services, in 2007, a 17-year-old girl carrying a fetus with a fatal abnormality was forced to initiate a proceeding at the High Court in order to claim this right.67 She was in the care of Ireland’s Health Service Executive, which tried to prevent her from traveling abroad to procure an abortion. The High Court ruled that no statutory or constitutional grounds existed to prevent her from traveling to obtain this service.68 Furthermore, as a result of the media coverage surrounding this case, which highlighted the steps taken by the government to prevent the girl from traveling abroad to seek abortion services, and the lack of clear information about a woman’s right to travel abroad to procure an abortion, many women still believe that it is prohibited to travel abroad for this reason.69 Additionally, women who are unable to travel for any reason, whether as a result of their immigration status, financial situation or because they are in state custody, are forced to choose between continuing a pregnancy that places their health or wellbeing at risk or procuring illegal, and possibly unsafe, abortions. Since the Irish Government does not compile data on the number of legal or illegal abortions performed in Ireland, the scope of this problem is impossible to determine.70In addition, many women still face obstacles in obtaining information about the possibility of traveling abroad to procure abortion services. For example, the Regulation of Information (Services Outside the State for the Termination of Pregnancies) Act 1995 imposes strict limitations on the provision of information about abortion, which may make such information difficult for many women to access. Furthermore, unregulated agencies that oppose women’s access to abortion often provide inaccurate and misleading information about abortion to women.71
Finally, as a result of the ambiguous legal framework on abortion in Ireland, many Irish women are confused about the legal status of post-abortion care. Although post-abortion care is legal, women may be reluctant to
access it because they fear persecution.72 Moreover, since the Irish Government does not compile statistics
about post-abortion care, it is impossible to determine whether medical services for post-abortion care are actually available and acceptable to women.73
VIII. Developments Subsequent to the Judgment
The state has compensated Applicant C for the nonpecuniary damages awarded by the Court.74
In June 2011, the state submitted an Action Plan to the Committee of Ministers of the Council of Europe, which supervises the execution of judgments issued by the Court, committing to the expeditious implementation of the decision and to the establishment of an expert committee to make recommendations to the government on “how this matter should be properly addressed.”75 In January 2012, the Irish Government established the expert committee, which is chaired by High Court Justice Seán Ryan and comprised of physicians, lawyers and Department of Health officials, to examin the judgment. The committee’s terms of reference include recommending “a series of options on how to implement the judgment taking into account the constitutional, legal, medical, and ethical considerations involved in the formulation of public policy in this area and the over-riding need for speedy action.”76 The committee will report back to the Irish Government within six months and
subsequently file an Action Report with the Committee of Ministers by the end of October 2012 to update it on
the implementation of the judgment.77In March 2012, the Committee of Ministers issued a decision in connection with Ireland’s execution of the judgment in this case. It expressed concern over “the situation of women who believe their life may be at risk due to their pregnancy in circumstances similar to those experienced by the third applicant.”78 The Committee also “strongly encouraged the authorities to ensure that the expert group completes its work as quickly as possible … and to inform it of the substantive measures that the authorities plan to take as soon as possible.”79
Notably, since 1996, three expert groups have made recommendations and outlined policy options in connection with abortion, but, as the Court lamented in its decision, the state has failed to act on any of these previous recommendations.80The Council of Europe Commissioner for Human Rights recently expressed concern that legislation establishing a framework for allowing abortion in the limited circumstances where a woman’s life is in danger because of her pregnancy is not in place in Ireland.81 Similarly, in the concluding observations issued to Ireland in 2011, the United Nations (UN) Committee against Torture expressed concern “about the absence of an effective and accessible domestic procedure in the state party for establishing whether some pregnancies pose a real and substantial medical risk to the life of the mother ….”82
Additionally, it urged Ireland “to clarify the scope of legal abortion through statutory law and provide for adequate procedures to challenge differing medical opinions as well as adequate services for carrying out abortions …so that its law and practice is in conformity with the Convention [against Torture].”83
Moreover, during Ireland’s recent Universal Periodic Review, a UN mechanism that permits states to directly examine each other on their human rights practices, despite reaffirming its commitment to the implementation of the judgment, the Justice Minister rejected recommendations from the United Kingdom, Slovenia, Norway, Denmark, Spain and the Netherlands, related to increasing access to abortion in Ireland.84Key Human Rights Provisions from the European Convention
The European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms85 recognizes the following human rights, as relevant for this case:
Article 2(1). Right to Life
Everyone’s right to life shall be protected by law. No one shall be deprived of his life intentionally save in the execution of a sentence of a court following his conviction of a crime for which this penalty is provided by law.
Article 3. Prohibition of torture or inhuman or degrading treatment.
No one shall be subjected to torture or to inhuman or degrading treatment or punishment.
Article 8. Right to respect for private and family life.
1. Everyone has the right to respect for his private and family life, his home and his correspondence.
2. There shall be no interference by a public authority with the exercise of this right except such as is in accordance with the law and is necessary in a democratic society in the interests of national security, public safety or the economic well-being of the country, for the prevention of disorder or crime, for the protection of health or morals, or for the protection of the rights and freedoms of others.