リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶ピル日本女性が中絶薬を手に入れるのにパートナーの同意が必要になる理由

31 August 2022, By Rupert Wingfield-Hayes, BBC News, Tokyo


一年半前のBBCの記事ですが偶然見つけました。染谷明日香さんのコメントが載っています。
Abortion pill: Why Japanese women will need their partner's consent to get a tablet

仮訳します。

中絶薬  なぜ日本人女性はタブレットを手に入れるのにパートナーの同意が必要になるのか?

日本の女性が中絶ピルを使用するにはパートナーの同意が必要になる


 アメリカではロー対ウェイド戦の廃止をめぐっていまだに議論が続いているが、日本ではいわゆる内科的中絶の合法化をめぐって、それほど騒がしくない議論が繰り広げられている。

 5月、厚生省の高官は、英国の製薬会社ラインファーマ・インターナショナルが製造する中絶薬をついに承認することになったと国会で述べた。

 しかし同高官はまた、ピルを投与する前に女性は依然として「パートナーの同意を得る」必要があると述べた。

 手術ではなくピルを使った内科的中絶は、34年前にフランスで合法化された。イギリスでは1991年に、アメリカでは2000年に承認された。

 スウェーデンでは中絶の90%以上をピルが占め、スコットランドでは約70%をピルが占めている。


 しかし、ジェンダー平等に関して実績の乏しい日本は、女性のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関連する医薬品の承認に極めて時間がかかったという歴史がある。

 避妊薬や避妊ピルの承認には30年かかったが、男性のインポテンツ治療薬バイアグラの承認にはわずか6カ月しかかからなかったと、この国のキャンペーン関係者は冗談めかして言う。どちらも1999年に発売されたが、後者が先だった。

 避妊用ピルにはいまだに規制があり、高価で使用しにくくなっている。すべては、日本で中絶が合法化された経緯にさかのぼる。

 日本は1948年に世界で初めて中絶法を制定した国のひとつである。

 しかし、それは優生保護法の一部だった。この法律は、女性が生殖に関する健康をコントロールできるようにすることとは何の関係もなかった。むしろ、「劣った」出産を防ぐためのものだった。


 優生保護法の第1条には、「優生学的見地から劣った子孫の出生を防止し、母親の生命と健康を保護すること」とある。

 優生保護法は1996年に名称が変更され、母体健康保護法となった。

 しかし、旧法の多くの側面は残った。そのため、今日に至るまで、中絶を望む女性は、夫やパートナー、場合によっては恋人の書面による許可を得なければならない。

 太田みなみ*に起こったことがまさにそれである。
 恋人がセックスの際にコンドームの着用を拒否したため、彼女は妊娠したのだ。日本では、コンドームはいまだに主要な避妊手段である。

 大田によれば、恋人は中絶を許可する書類にサインすることを拒否したと言う。

 「私が彼に避妊するように頼まなければならなかったのはおかしいです」と彼女は言う。「彼がコンドームを使いたくないと決めたのに、私は中絶するために彼の許可が必要だった」。

 「妊娠は私自身と私の体に起こったことなのに、他人の許可が必要だった。それが私を無力にした。自分の体や将来について決断できなかった」。

 アメリカとは異なり、日本の中絶観は宗教的な信念によって左右されるものではない。むしろ、家父長制の長い歴史と、女性と母性の役割に対する深い伝統的な考え方に由来している。


日本は母親にとって最悪の先進国なのだろうか?
 「それは非常に深いところにある」と太田は言う。「日本で妊娠すると、その女性は母親になる。いったん母親になれば、子供のためにすべてを投げ出さなければならない。素晴らしいことのはずだ。自分の体なのに、妊娠してしまったら、もう自分の体ではなくなってしまう」。

 病院や診療所に入院する必要があるため、中絶薬を入手するのは難しく、費用もかかる。

 「日本では、中絶ピルを服用した後、患者をモニターするために入院しなければならない。従来の外科的中絶よりも時間がかかります」と日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長はBBCに語った。

 英国を含む他の多くの国では、現在、女性が自宅で中絶薬を自分で投与することは合法である。


 「母体健康保護法では、中絶は内科的中絶でなければならないとされている。ですから、残念ながら現在の法律では、中絶薬を市販することはできません。それは違法です」と前田医師は付け加えた。

 女性のセクシュアル・ヘルスを求める活動家たちは、これは医学的な問題というよりも、医療機関が儲かるビジネスを守るためだと言う。

 「多くの決断は、高齢で子供を抱くことのない体を持っている男性によって下されると思います」と、自身のNGOを運営するセクシュアル・ヘルス活動家の染谷明日香は言う。

 セクシュアル・ヘルス・キャンペーナーの染谷明日香は、避妊に関する女性の自主性を高めるよう働きかけている。
 彼女によれば、中絶を容易にすることに対して、男性優位の日本の体制はいまだに大きな抵抗があるという。


 女性が中絶しやすくすれば、中絶を選ぶ女性の数が増えるという主張だ。だから、中絶を困難で費用のかかるものにするのだ。

 しかし、他の国々の証拠が示すように、これは女性の選択肢を狭め、苦しみを増やすだけで、望まない妊娠を減らすことにはつながらない。

 結局のところ、性教育を改善し、男性にコンドームを使わせるのではなく、日本人女性が避妊の主導権を握ることに答えがあるとミズは言う。

 ヨーロッパでは避妊ピルが最も一般的な避妊法である。日本ではわずか3%の女性しか使用していない。

 彼女はこう付け加える。 「若い女の子や女性の声に耳を傾けた政策がもっと作られることを望んでいます」。

投稿者の身元を保護するため、一部名前を変えている。